お父さんとお母さんと夕ご飯の後に一緒にテレビを見ていました。
ウェールズで今度行うラグビーの世界大会のニュースをやってました。
ウェールズ人は大人も子供もみんなラグビーが好きです。
学校でも、クラスメイトのジョンくんとポールくん、ジョージくんにリンゴくんが大きくなったらラグビー選手になるって大声で皆に話していました。
お父さんとお母さんにその事を話すと………お父さんは………
「アスカはラグビーは好きか?」
「うん、ラグビーの選手は格好いい」
「うむ、俺も昔、ラグビーをやってたことがある」
「お父さん、すごい!ラグビーの選手だったんだ」
「うむ」
お父さんは何処か嬉しそうでした。
「宗介、アスカの前だからってカッコつけるんじゃないの。あんたルールもまともに知らなかったじゃない」
「そうなの?」
「う、うむ。しかし、俺は弱小チームを育て上げ強豪チームを打ち破らせたこともある」
「やっぱりお父さんすごい!コーチもしてたんだ。格好いいね!」
お父さんはやっぱり格好いいです。
「………まあ、そうなんだけど」
何故かお母さんは呆れたような顔をしていました。
ニュースキャスターのお姉さんが海外から来た代表チームの紹介をしてました。
今日はお父さんとお母さんの国の日本のチームを紹介していました。
『アジア代表日本、サムライチームのキャプテンに来ていただきました。世界屈指のタックル力をほこり、今、世界各国のクラブチームが最も注目している選手と言えば……こちらの日本代表キャプテンの郷田選手です。郷田選手、今、このウエールズにも貴方と日本チームの活躍が聞こえて来てますよ』
『恐縮であります』
……あれ?背筋がピーンと伸びて、後ろでに手を組んでます……何処かで見た気がします。
『しかも、今回の日本代表チームには、なんと高校時代のチームメイトが5人も選ばれています。高校時代。当初は無名だったと聞いていますが、なぜそんな無名の学校が強豪校となり、代表選手5人も選ばれるという快挙をなしえたのでしょうか』
『はっ、全てはコーチのおかげであります』
………日本のキャプテンの喋り方、何処かで聞いた事があります。
『こちらの調べでは、実質郷田選手が選手兼コーチをされていたと聞いておりますが………』
『いえ、コーチに比べれば自分など、足元にも及びません』
『ほほう。郷田選手を世界屈指の選手まで育て上げた人物に俄然興味が湧いてきました。その伝説のコーチとは?』
『相良軍曹であります!』
お母さんはソファーから大きな音を立てながら滑り落ちました。
「あは、あははははははっ」
サガラグンソウ?…サガラ…軍曹?…サガラ…そう言えば、お父さんがお母さんと結婚する前の名前がサガラだったそうです。昔のお父さんとお母さんのお友達が皆そう呼んでました。
『サガラグンゾウ氏?すみません。こちらのリサーチ不足で存じ上げませんでした……嘸かし素晴らしい方なのでしょうが、どのような方ですか?』
『厳しくも優しい方であります』
『ほほう、今は何方で指揮を取られているのでしょうか』
『今はもう………軍曹殿!見て居られますか!!我々は軍曹殿のお陰で、アジア代表になり!!世界と戦うこの舞台まで来ることが出来ました!!』
日本代表の郷田キャプテンは大きな体をふるわせ、涙を流しながら叫んでました。
でも……その話し方とか……どこかで………思い出せません。
『申し訳ございません。故人だとは知らずに…………』
お母さんはソファーから滑り落ちたまま、ずっと乾いた笑いを繰り返していました。
「あは、あはっ、あははははははっ」
お父さんはテレビをじっと見ながら一言。
「うむ、流石に予想外だ」
まさか………お父さんが伝説のコーチ?