「...ター、..ろ」
深いまどろみの中、ある声が聞こえる。
その声は透き通っていて、耳によく残る声だ。
「..スター...きろ」
だが、その声にどことなく力強さを感じる。
まるで、”ダレカ”を起こしているかのように。
「マスター、起きろ。マスター」
抑え目の声で自分を起こしてくる目の前の西洋人形のような顔たちをした少女。
そう、たしか名前は。
「!、ご、ごめん。寝惚けてた」
覚醒。
一気に夢の世界から引き離され、現実が脳を飲み込む。
「いや、いい。マスターは私とは違う。本来なら昼間まで起こさないつもりだったが...あいにく魔力反応が出たせいでな」
その一言で俺も一気に警戒を強めた。
眠りながら握っていたナガンリボルバーの撃鉄をいつでも下ろせるように、指へと力を僅かに籠める。
「先程から近づいてきているようでな。だが殺意があるにしては動きが緩慢だ。もっとも、警戒を緩める理由にはならないが」
そう言うとアーサー王...セイバーは黒剣をどこからともなく取り出せば、眼光鋭く扉を見る。
俺は後ろのベランダへの鍵を空け、いつでも逃げられるように整える。
「近いぞ」
刹那、俺にも近づいてくる感覚が理解できた。
心臓の鼓動のように”魔力”を感じ、そしてそれは徐々に近づいてくる。
そして....。
コンコンコン、と焦り気味のノックが早朝の部屋へと鳴り響く。
俺が出ようとすると、セイバーは人差し指を唇に当て、そして目線で俺に出るなと制止をしてきた。
確かに、仮に俺が死ねばセイバーも共倒れだ。セイバーは見た目こそ華奢だが内実鋼の肉体を持った騎士と同格なのは、ハンバーガーショップで爆死しなかった時点で目に見えているので、俺もおとなしくそれに従う。
そしてセイバーは扉の前に立つと、すぅーと息を吸い込み、そして。
「えっと...どなたでしょうか?」
猫なで声ではないが、明らかにいつもの声とは違う、まるで夢見る少女やお姫様みたいな可憐な声。お前は花畑で百合でも摘んでるのか?というレベルだが、まぁ油断させる意味もあるのだろう。実際問題先入観は重要だ。
「はあはあ、す、すみません。助けてください!お願いします!」
返ってきた声は若い男のものだった。
おそらく十代後半ごろだろうか。少なくともその声に敵意を感じられない。
「えっ!?わ、わかりました!すぐお開けしますね!」
そしてセイバーは鎧と手元の黒剣を消すと、普段着の黒いドレスへと変わる。
そして俺にまた視線を向けてきた。その視線の先はナガンリボルバー。なるほど、隠せと言うことらしい。
俺はベッドに腰かけると、薄手の掛け布団の下へと右手を滑り込ませる。分厚くはないが、十分に形は隠せているので、及第点と言ったところだろうか。
それを確認したセイバーが、まるで立ち振舞いも少女のようになりながら扉を開ける。
すると、そこに立っていたのは、泥だらけで擦り傷の多い茶髪の気弱そうな少年だった。だが、確かに見えるのは、その右手にある赤い刻印・・・、いわゆる令呪だ。
しかしセイバーはそれを理解していたのか、あせる様子もなく、まるで本当に心配しているような顔になり、目の前の男に言葉を投げ掛ける。
「すごい傷だらけですね・・・。すぐ手当てしないと!」
「あ、ありがとうございます。ありがとうございます!」
男は何度も頭を下げると、それに応じた数の感謝をセイバーに伝えているようで。
セイバーは部屋に備え付けられている救急セットに目をやると、花のような微笑みを浮かべ、俺に対し言葉を伝えてくる。
「タロウさん、そちらの救急セット。よかったら投げてもらえますか?」
女と言うのは怖い。さっきまであんな殺意ましましだったのにこんな転身できるなんて。
いや、女ではなく、王としての彼女にとっては慣れていたのだろうか。
まぁ、どちらにせよ乗るしかあるまい。
俺も、なぜあの男がサーヴァントを連れていないか、気になるところだしな。
「ん、どうぞ。しかし、それにしても凄い傷だ。早く消毒しないとね」
そして俺も微笑んだ。
上手くやれてるかは知らんが。
4人目のマスターはどんな人物にすべきか
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サイコ野郎
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ナルシスト
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熱血
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冷血
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典型的魔術師