主に山田がなぜfate世界に転生したかなどの話になっています。
「やっと動き出したか。しかし私の見ることのできる世界で本当に良かったのぉ」
その声が静謐な空間に響いてからしばらくするとシワだらけのまるで老木のような老人が瞼を開き、自らの座っていた安楽椅子から立ち上がると僅かに生えた白い髭を上唇で押し上げ、どこかこの空間には無相応に見える紙タバコを咥えて、ため息を吐くかのように紫煙を吐き出す。
「いやはや、まさかこのような事が起きるとはな。長生きはしてみるものだ」
タバコをくゆらせながら老人は微笑むかのように顔を緩ませると、ゆったりとした動きで安楽椅子しか存在していない白い空間を見つめる。
「はてさて…この部屋もそろそろ飽きたな。どれ、久方振りに模様替えでもしてみるか」
老人がそう声を出してから、目の前の虚空をなぞる様に指を動かしたと思えば、まるで見ている画像を切り替えたかのように白い空間が何処までも果てしなく広がる草原へと豹変した。
「しかしまぁ、あのような異界の人間がここに紛れ込むとは思ってもいなんだ。時空列という概念ですらなく、まったくもって別の世界からたまたまこちらの世界に滑り込んでくるなど……それこそ、我々神ですら為し得ない所業だ」
通常、世界というのはひとつの木のような物で繋がれている。
例えば神の作り出した原初の場所であるエデンの園も通常人間が住んでいる世界からは、神かそれに匹敵する力の持ち主の助けがなければ行けないという制約があるとはいえども、確かに行ける存在である。
しかし、そんな無数の枝のように広がる世界の中にすらない世界という物は、もはや次元やそういう類でなく、例え世界を幾度も作り変えることができるような者でも行くことはできない……否、行くことという概念すら存在していないのだ。
しかし彼の者はその遥か彼方の世界から、まったくの隔絶した世界へと何の因果か訪れてしまった。
だが、そのような者が他の神々や力のあるものにバレたらどうなるか?
ヘラクレスの如き神に翻弄され死んだ勇者のようになるか、はたまた神の尖兵として操り人形にされるか。
どちらにせよ、まともな未来など存在していない。
奴らにとって異界の異邦人など、自らの装飾品ですらないのだから。
それ故、自身がひとまず最初に彼の魂を掴んだ。
別世界といえどとそれほどこちらの世界と内実は変わらないようだったので、彼を彼のいた地方へと転生させることにした。 もっとも、彼はもともとこの世界の住民ではないので、生まれたばかりの赤ん坊に憑依させる形にするつもりだった。
そして、彼は元いた時代へと固執しているようだったので、こちらも元いた時代の世界へと転生させるべく動いたのだが……。
「まさか、英霊に彼を奪われることになるとは迂闊だった。"座"から干渉するなど、普通に出来ることではないからな」
その英霊の名は、人間達の歴史にてその名を刻み込んだロシア帝国初代皇帝ピョートル一世。
史実でも破天荒な人間だったらしいが、更に恐ろしいのはそいつは無理矢理彼の転生先を変え、挙句の果てには未来を変えようと……いや、既に変わってしまったか。
異邦人である彼に抑止力といった存在は気づくことなど到底ない。
見た目は人間だろうと、根本からしてこの世界のモノではないのだ。
異質なものでもこの世界の色が或るモノであれば、まだ抑止力は作動するだろう。
だが、先ほど言ったように彼はまったくの別物なのだ。 感知すらできない。
それゆえ、彼が歴史を変えようと動き、歴史を本当に変えてしまっても世界はその方向へと舵を切ってしまう。どのような手段を持ってしても、彼が一度世界の方向を変えてしまえば、あとは彼を殺そうが何をしようが歴史を修復することはできない。
事実、何故か魂だけ現界したピョートル一世が神を騙りロシアの王朝を断絶させぬ為にと、彼が現代に戻りたいという本質を突いて、王朝を生存させることができたなら現代へと戻してやると、世界でも類を見ないような歴史を改変させる嘘をついたのだ。
そして、実際に彼は歴史を変えてしまう。
結果的にソビエト連邦という国は消え、ロシアは2つに分裂した。 なんとか私の努力で他の歴史は変わらないよう抑えることができたが、それでもピョートル一世のせいで世界は大きく変化してしまった。
やつを罰そうにも座には神は干渉できない掟があるのでどうすることもできない上、他の神々は彼に気付いても魂が器に入ったことと、更に自らの世界の物でないためどうもできない。
無論、その神は私でもあるのだが。
どちらにしても、あのように変質した世界をそのままにはできない。
だが、世界を作り変えるというのも一種の抑止力のようなものである。
つまり、世界を作り変えても歴史は彼の変えたままに進む。
であれば、と。
彼が老衰したのを見計らい、彼の改変した世界と酷似してはいるがまったく別の…まぁいわゆる裏の世界へと強制的に転生させた。
裏の世界というのは表の世界と対を成す存在であり、色々と表とは違う点が多い。
表には魔術がないのに魔術があったりだとか、一部の英雄が女性になったりだとか、だ。
「だが、まさか裏の世界に飛ばしたはいいものの、特異点に転生するとは……やはり第三者が干渉しなくとも思い通りには飛ばせんというのか?」
いかん。また頭が痛くなってきた。
そう俯きながら、私は天井…というより真っ青に染まった晴れやかな天空へと顔を上げる。
「しかし、あの爆発で死なんで本当に良かったわい。流石の私でも裏の世界には干渉できんからな。表の世界には表の世界の神しか、裏の世界には裏の神しか動けんことは未来永劫じゃからな」
されど彼を視ることはできる。
それに、二度とないような機会。
彼がどのように生き、どのように軌跡を描いていくのか?
良い暇潰しになるかもしれん。
そこらの英雄史よりかは楽しめそうだ。
「うーむ、しかし考えれば考えるほどに不自然だ。あのロシア皇帝はなぜここに干渉することができた?しかも、なぜ私にすら制御できない転生の時代指定が、奴にはできた?」
ジャンヌオルタや獅子王に協力すればどれだけカルデアが頑張っても人理修復できないという、ちゃっかり主人公からラスボス候補のほうが相応しいようになってしまった山田