Fate/Yamada   作:処炉崙霸β

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殺し合い

銃声が、鳴り響く。

パン、パン、と硝煙の香りや破裂音と共に所々明るく光らせながら。

 

軍服の裾が、揺れる。

パタパタと風を受けながらも、服の主はそれを気にもせずその足を動かしていく。

男が手に持った小銃は細かな傷がいくつも刻まれており、幾多の戦場を繰り広げていたのだということが目に見えてわかるほどだ。

 

男からそれ程離れていない位置の丘陵地に設置され、連続した銃声を辺りに反響させる機関銃はその銃身から吐き出す弾と比例するかのように犠牲者を増やしていき、遂にはその照準が男のいる方向へと合わされてしまう。

 

迫り来る死、その死をもたらす鋼鉄の嵐。

誰もが怖い、誰もが逃げたい、誰もが狂いたい、誰もが泣きたい。

それでもなお、男は猛獣のような咆哮を上げながら、火を噴く機関銃を恐れることなく、自分の牙であり爪である小銃を携えながら、ただただひたすらに真っ直ぐ突撃する。

 

「ぅああああああああァア!」

顔のすぐ横を銃弾が通り過ぎ、近くにあった雑木の木肌を抉り木片を散らす。

次々と過ぎ去っていく無数の光の線や光の後を健気に追っていく硝煙の痕。

 

それでも、男は立ち向かっていく。

許されるのならその場で塞ぎこんでしまいたい。それでも、止まれば自らは文字通り蜂の巣のごとく皮膚や臓器を貫かれ、無惨な死に至ることだろう。

 

それだけは嫌だ。

戦友の仇を取ってから死んでやる。だからクソ野郎、神様が俺の運命を今死ぬ事に確定したって、お前だけは道連れにしてやる。

お前を殺して、腐敗させて、蛆虫の巣にして、お前がさっきから傷つけまくっている木や草の養分にしてやる。

 

だから、テメェは、テメェだけは。

この銃剣で刺し殺してやる。

 

男は鈍く陽光で反射させた銃剣の刃先を水平に向けながら、がむしゃらに走る。

右腕を熱い何かが貫いた。しばらくしてとんでも無いほどの痛みが襲い掛かった。 それでも、男は走ることを止めるわけにはいかない。

 

「ばけ、ばけもんがぁぁぁ!なんで死なないんだよおおおおお!」

パラララララと新品のタイプライターのような銃声を響かせながらも機関銃は発射炎で周辺を激しく照らし、たった一人の男を無様に殺すだけの為に凶暴な唸りを上げる。

機関銃を操る兵士は何度撃っても絶命しない男に対し畏怖するが、それでもまだその引き金を引き続けた。

 

「がぁぁぁぁ!」

そして、男は姿勢を低くし、小銃を握っていた手をまるで槍を持つかのような手つきに持ち替え、憎き仇敵を殺す為に殺気の込められた鉄色の刃先を兵士に向け。

 

血肉の飛び散る甘美な音を奏でたのだ。

 

 

 

 

 

 爆炎が起こる。

喧騒に満ちていた大通りの至るところが燃え上がり、瓦礫が飛び散り、人々の悲鳴が響き渡った。

 

 太郎たちの居たハンバーガーショップはまるで野砲でも撃ち込まれたかのように無惨に破壊し尽くされており、内部には黒く焦げ辛うじて人の形をしたように見える"ナニカ"が所々転がっており、そこから発せられる焦げ臭い肉の焼ける匂いは思わず吐き気を催すことだろう。

 

「ヒャァーハッハァ!やはり愉快ですねェ!いやはや私…人が焼ける臭いは大の好きなものでして!」

 そして聞こえただけで背筋が震えるような不快で道化じみた声が、今も尚燃え盛るハンバーガーショップの隅々にまで響き渡る。

 そうして不気味な笑いを浮かべた男は、化粧に塗り尽くされた顔をぐにゃりと歪め、更にその笑いを人外じみたものとした。

 

「まさか黒の騎士王様がこのような所にいるとはワタクシ歓喜でございます!なんと言っても破壊しやすいですからね!それに大通りの、それもど真ん中にある立地最高の場所でテロを起こすとは非常に非常にヒジョーッに愉快で最高に気持ちのいいものといいますしねぇ?」

 男はひとしきり喋り終わると、その目玉をぐるりとハンバーガーショップの奥へと向け、大きく口を開け声を発した。

 

「おやおやおやァ?騎士王様は静寂がお好きなのでしょうか?でしたら失礼!私静寂は大嫌いでしてグハァ!」

 

「汚い声を響かせ聞かせるな道化。生憎だが、私は気分が悪い。それにそんなイカれ文句を長々と聞くと」

 少しくすんで入るが、まるで金細工のように美しい金髪をした少女がまるで猪のごとき獣性を感じさせる速さで、風のように男へと近づいたと思いきや、少女が力を込め繰り出したアッパーが男の顎を容赦なく狙い当たり、その衝撃は男の顎から脳天までを瞬時に貫いた。

 

「耳が腐るだろう?」

 男は先程の余裕ぶった表情から一変、口から血を吹き上げ一気に白目を剥いて倒れたと思いきや、ぬらりと立ち上がり、目玉を白目から瞳に反転させた。

 

「フヒャヒャ、いい拳です、いい拳ですよぉ!騎士王陛下ァ!不肖ながらこの"メフィストフェレス"、思わず気絶しそうになってしまいました!まぁしないんですけどぉ!」

 ピエロのような男……メフィストフェレスはそういうと少女(アルトリア)へと思い切り放射状に投げナイフを投擲する。

 風を切る音を奏でながらも殺意に満ちた投げナイフはアルトリアの喉元を食いちぎろうと恐るべき速度で迫りくるが、彼女は身を屈めると右手に持った漆黒の剣を横に薙ぎ、その斬撃から発せられる風圧でメフィストフェレスの体制を崩そうとし。

 

「くひぃ!こんな攻撃、私に効くとでも…!?」

 メフィストフェレスは余裕の笑いを浮かべた顔を崩さず軽く風圧を避けようとするが、次の瞬間ーー

 

 綺麗に晒されたメフィストフェレスの腹めがけて焦げたパイプ椅子が折れ曲がりながらそこそこな速さで飛んできたのだ。

メフィストフェレスは僅かに驚いた風の目つきをしたが直ぐにニヤついた平常時の顔に戻し、飛んで来たパイプ椅子を蹴り飛ばせばアルトリアへと飛び掛かって。

 

「さぁ死になさあい!ヒヒヒヒヒ!」

そういって異常に長い丈の刃のハサミで眼前のパイプ椅子ごと少女の細首を掻き切ろうとするが、それより先に少女が剣を薙ぐほうが速かったようで、メフィストフェレスはなんとか後ろへと跳躍して避けようとするが.......。

 

(ん?そういえば、何故生体反応が二人?死に損ないが残ったのですかねぇ?まぁどうせ放っておけば死ぬでしょう、こんな暑さの中で普通の人間が生きられるはずはないのですからぁ!クヒヒヒ)

依然余裕の表情は崩さず、体制を立て直すため後ろの地形を確認しようと目玉をずらす。

そうして足の曲げ具合を調整しようとした刹那。

 

 

 

パァン!

 

乾いた銃声が鳴ると共に、思わずメフィストフェレスの顔へと、露骨に驚愕の色が浮かんだ。

痛みはそれほどない、銃声に驚くほど肝が据わっていないわけでもない、痛みが走ったわけではない。

ただ、自らの体勢が崩れた。

立て直そうにも銃弾の違和感が邪魔し、完全に立ち直るまでに、ほんの0.1秒ほどロスが出てしまう。

 

たった0.1秒。

だが、その呼吸をする間もないような時間の流れが。

 

「ッ!?チクタ」

 

「見誤ったな、道化」

風の切る音と共に燃え盛る炎に照らされた鮮血が飛び散った。

そして、ぼたりと肉塊の落ちるような音がした。

 

「マスター、いい腕前だったぞ。それで、肝心のソレはどこで手に入れた?」

 

「少し夢の中でね。まさか持ってこれるとは思ってなかった」

騎士王の名を持った少女が微笑みながら見ている先には、黒髪を揺らす青年が一人。

その青年が持っている鉄色に輝いた異質なモノ。

微かに硝煙の上がるソレは、まるで泡沫の夢のような雰囲気を纏っていたのだ。

 

無名の英雄が持った唯一の遺物。

その風貌はアンティークと呼ばれる代物だろう。だが殺意を孕んだその遺物は、見て只者ではないと察することが出来る。

 

「こいつの名前はナガンリボルバー。皇帝を助けた時にもらった大事な家宝だ。結構可愛いらしい見た目してるだろう?」 

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