結月ゆかりの人間関係   作:アニヴィア

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もう一回!もう一回!っていうかずっとそれがいい!!

 マキさん、マキちゃん、マッキー、マキマキ。

うーん。

どれも『弦巻さん』より仲良さそうな呼び方だよね。

 なんて、後ろの席で机に突っ伏して寝ているゆかりちゃんを見ながら考える。

 

 「それなりに長いし深い付き合いのはずなんだけどなー」

ゆかりちゃんからの呼び方は、初対面のときからずっと『弦巻さん』

 

 同じクラスの皆や先輩達も名字さんづけで呼んでるみたいだから、同年代以上を名字さんづけで呼ぶ癖なんだろうけど。

 

 「名前で呼んでくれてもいいのに」

 

 ずんちゃんが羨ましい。

この間まで名字で呼ばれている友だったずんちゃんは、妹のきりたんちゃんと区別するためか、呼ばれ方が東北さんからずん子さんに。

おのれずんちゃん。私を置いていくなんて。

 

 「うーん。どうしたら呼んでくれるんだろ……」

考えてたら頭痛くなってきた。

うん。よく分かんないけどきっとゆかりちゃんが悪い。

そういうわけでいたずらしよう。

突っ伏して寝ているゆかりちゃんの頬を横から突く。

 

 ぷにぷに。

うーん、すべすべ。もちもち。

起きないな?もう少しやっちゃお……あ。

 

 私の指が握られた。

ゆっくりとゆかりちゃんの頭が向きを変える。

瞼が小さく開いて、宝石のように綺麗な紫色の瞳が私を見上げた。

起こしちゃった。

「違うんだゆかりちゃん。これは私の指が勝手に」

ぺたり。

 

 言い訳を始める私の言葉は、私の頬に伸ばされたゆかりちゃんの手によって遮られた。

ひんやりする、じゃなくて、何なになに?

 

 行動の主であるゆかりちゃんを見つめる。

少し目がとろんとしてるけどいつもの無表情。

だけど、いつもと何かが違う。

何かをしようとしてるけど、その何かが私には分からない。

「ゆ、ゆかりちゃん?どどど、どうしたの?」

得体のしれなさに慌てた私の質問に、ゆかりちゃんは、

 

 さらりと、自然に、短く、私の目を真っ直ぐに見つめながら答えた。

 

 

 

 「マキ」

 

 

 

 心臓が破裂した。

思考はどこかへ吹き飛んだ。

 

 

 「ゆ、ゆゆゆゆゆゆ?」

 言葉にならない。

心臓の音がうるさい。よかった、私の心臓まだあった。

頬が熱い。その分ゆかりちゃんの手が冷たくて気持ちいい。

じゃなくて、駄目だ、いや、何が駄目なのか分かんないけど。

どきどきする。熱い。顔と頭から火吹きそう。

 

 

 「これでいいですか?弦巻さん」

そんな私を無視してゆかりちゃんはあっさりと私の頬から手を離し、再び眠りの体勢に入ろうとする。

 

 なるほど、ゆかりちゃんは実は少しだけ起きてて、私の呟きを聞いて、呼んであげたからイタズラやめてと言ってるのか。でも、絶対、

 

 「駄目!」

教室中に響く大声を出し、机を叩く。

 

 「……はい?」

「マキ!ノット弦巻さん!もう1回!」

「え、えっと……?いえ、さっきのは仕返しみたいなもので」

「そういうのいいから!マキ!もう3回くらい!」

「弦巻さんでもいいじゃないですか。」

 

 『マキ』

たった二文字。たった二文字。

それだけでいいの。

私にとって何より特別な二文字。

貴方の口からまた聞きたいんだ。

 

 「よくない!早く!!」

「弦巻さん、クラスの皆から見られてますよ」

「マーキ!せめてマーキーちゃーん!!」

「お願いですから落ち着いてください」

「落ち着かない!じゃあマキって呼んでくれたら私ゆかりんって呼ぶから!!」

「何でそうなるんですか……」

 

 どうしてこうなったのかとゆかりちゃんの頭に疑問符が見える。

私にもよく分からない。

でも、今は勢いのままに叫ぶだけ!

 

 

 

 私の叫びは、授業時間が始まり先生に何故か私だけ怒られるまで続いた。




 最後まで読んでいただいて有難うございました。
SSを書いたのは初めてで、拙いところが多かったとは思いますが、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
 内容やタグに不備などがあれば、お教えいただけると有り難いです。

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