龍と少女とデコヒーレンス-the another story 作:現実逃避人間
龍と少女とデコヒーレンス
序章
気が遠くなるくらい昔のこと、ある王国があった。
王国はとても豊かな国で、野菜や果物は太陽の光で作物を実らせ、魚や貝は、王国の近くにある海でよく獲れた。
国民の生活は充実しており、衣食住には困らず、毎日豊かな暮らしをしていた。
しかし、ある日を境にその生活が一変し、王国は地獄に変わった。
王国から約300km離れた山の奥に、龍と一人の少女が生まれた。
少女の名はモードと言った。
少女はまだ生の意味を知らず、生まれてすぐは動けなかった。
しかし、龍は生まれた瞬間耳を劈くような絶叫を放ち、暴れ始めた。
王国はその絶叫を聞き、震え上がった。
国民の一人が悲鳴をあげた。
その瞬間、視界が白に染まった。
それまでが国民達の記憶の最後だった。
龍の攻撃により、数千万人いた国民達のうち、生き残ったのは、数万人ほどだった。
しかし、その内の半分が瀕死状態で、医者も死んだため、助からなかった。
生き残った国民達は龍に反撃するため、立ち上がろうとしていた。
しかし、食糧がなければ、武器も無く、龍を倒す術が残されていなかった。
国民達は絶望し、龍に殺されるのを待つだけだと腹をくくった。
生き残った人々は
「もうこんな生活いやだ…」
「死にたい…」
「この世の終わりだ…」
とつぶやくようになり、自殺者も増えた。
龍の攻撃から半年、生き残っている人は、ついに3桁になってしまった。
もう希望はない。
ずっとそう思っていた。
しかし、一筋の希望の光が差し込んだ。
一人の男が現れた。
名はフレイ。勝利の神フレイの名から付けられたらしい。
フレイは龍を討伐するためにこの地を訪れたという。
「必ず倒してこの地に平和をもたらしてみせる。」
そう言い残し、フレイは龍と少女の住む山に向かった。
国民達は、絶望していた未来を変えてくれるかもしれない。そう思って疑わなかった。
フレイは龍に勝負を挑んだ。
そして、フレイはこの地に帰ってくることは無かった。
生き残った人々をまとめていた、長が様子を見に行った。
そこには、血まみれで倒れているフレイと、首が切り落とされていた龍と、放心状態の少女がいた。
そして、放心状態だった少女は長が駆けつけたそのとき、
「私の龍が…」
そう言い残し、死んだ。
そして、その地に平和が戻った。
倒された龍は死んだが、魂はまだ死んでいなかった。
魂はその地のどこかに眠り、少女の転生を何千年も待ち続けた。
そして、時は現代。
ついに、龍の眠りが覚めた。
(モード!転生が完了したか!今向かう)
龍は、 脳の中に直接響いてくるような声で歓喜の声をあげた。
また、世界が壊れる時がくるのだ。
空に異変が起きていた。
第一章
時は現代、普通の高校に一人の女生徒がいた。名前は、比多木小瑠璃(ひたぎ こるり)。
小瑠璃には、特徴があった。それは目である。小瑠璃の目は真紅の瞳だった。
もちろん天然だが、先生には、「カラーコンタクトをいれているなら外せ!」と言われ、何度説明しても信じてくれない。さらに、生徒の間では、化け物扱いをされる。無口なせいもあり、学校では常に孤独でいた。
しかし、小瑠璃に必要以上につきまとう、男子がいた。名前は、掛布零太(かけふ れいた)と言い、成績はよく、スポーツ万能、顔もいい、パーフェクトな男子だった。
なぜか、小瑠璃に話しかける。
小瑠璃はいつも無視するが、零太はあきらめずに、話しかけてくる。
そして、下校の時はいつも校門に待ち伏せして「一緒に帰ろう!」と笑顔で肩を組んできたりする。
小瑠璃は、零太の存在を良くは思わなかった。
なぜなら、零太からは他の人間とは違う、何かを感じたからである。
何か零太と因縁のようなものを感じたりする。
しかし、それは何かわからないので、零太を良くは思わないが、受け入れている。
少し学校が楽しかった。
学校で5時間目の授業を受けていたとき、ふと窓の外を見た。
小瑠璃は自分の目を疑った。
空に不自然なヒビが入っているのだ。
驚愕でヒビから目を離さないでいると、ヒビから何かが出てきた。
(あれは何?…まさか龍?)
どう見ても龍にしか見えない。
龍がこっちを向いた。
すると、脳内に声が響いて来た。
(迎えに来たぞ。モード)
迎えに来たぞ?誰を? モードって誰?
数々の疑問が浮かんできた。
他の人達は聞こえてないの?そう思った。
他の人達はみんな普通に授業を受けている。
おかしい。なんで私だけ!?
そう疑問に思っていると、明らかに挙動不審な人物がいた。
頭を抱えて、目が泳いでいる。
あの人も聞こえたのか?
頭を横にずらして頭を抱えている主を探した。
(…やはりあいつか)
零太だった。
零太も聞こえた様子で、明らかに様子がおかしい。
すると、授業のチャイムが鳴った。
あの声が聞こえたのか 聞いてみよう。
そう思い、零太に近づいた。
すると、また脳内に声が響いてきた。
(やめろモード!そいつに近づくな!)
と聞こえてきた。
零太が小瑠璃に向かって、
「今の声聞こえたか!?なんだ今の声!」
「わからない!私とあなただけしか聞こえてないみたい!」
「いったいどうなって…」零太が叫ぼうとした瞬間、地面が揺れ出した。
次第に揺れは強くなり、立っていられないくらいまでな揺れになった。
「あ、あぁ…」
悲鳴にも出来ないほどの強い揺れだった。
零太は…?どうなってる?
必死に力を振り絞って前を向いた。
すると、驚くべき光景が目の前に広がっていた。
世界がくずれている…
教室が砕けて、消えていく瞬間が見えた。
生徒や先生の姿が断片化して消えていく。
「なに、これ……」
手が半分消えていた。
「これが世界の終わ…」
全て言い切る前に、口まで消滅した。
小瑠璃は自分が世界の崩壊とともに体が断片化していくのを感じ、徐々に意識を失っていった。
小瑠璃は量子の海の中をさまよいながら、何かを思い出そうとしていた。
とても大切な何かだ。
私は何者…?
自分自身に問いかける。
すると、目の前に龍が現れた。
龍は空想上の生物だと思っていたが、こうして目の前にすると、本物に見える。
この龍は本物なのか?
すると、その質問を読み取ったかのように龍が答えた。
(私は数千年前に生まれてきた本物の龍だ。)
「あの声はあなただったの?」
(そうだ。お前いや、モードに話しかけていた。)
「ずっと思っていたのだけれど、モードって誰?」
すると龍は、
(まさか、覚えていないのか、前の記憶を)
「私はあなたと会ったことがあるの?」
(何を言う。お前は私と共に生まれ、共に過ごしたではないか。)
「では私は何者なの?」
(お前はモードと言う。数千年前、命を引き取ったが、人間として転生してきたのだ。この世界に存在するのは、私とモードだけだ)
「他の人間達は?」
(他の人間達は断片化した量子の海の一部分となり、新たな世界を再構成するための材料となった。)
「と、いうことは私はこの世界で存在している唯一の人間ね?」
(そうだ。お前は神となり、新たな世界を作り上げるんだ。)
「私の世界?」
「待て、小瑠璃!!!」
「誰?」
この世界で存在しているのは、私と龍だけのはず。
しかも、この呼び方をするのは…
後ろを振り向いた。
よく知っている男が立っていた。
「零太…」
「小瑠璃!一体これは?」
すると、龍が威嚇の雄叫びをあげた。
(まさかここで会うとはな…王国の英雄フレイ!!!!)
すると、零太の背中から一人の男が現れた。
数千年前、王国を救った一人の英雄フレイだった。
(また現れたか龍!今度こそ貴様を倒す!)
小瑠璃と零太は動揺していて、身動きがとれなかった。
両方が戦闘体制をとり、襲いかかった。
二人の攻撃がぶつかり合うその瞬間、変動が起きた。
断片化していた量子が、固まり始め、得体の知れないブラックホールのような渦が現れた。
「なんだこれは!」
「まさか…世界の改変!通称''リントブルム''だ!」
「そんな現象がなぜ起きたんだ!?」
「くそ!ここはまずい!」
龍とフレイが零太と小瑠璃をつかんで猛速度で走り出した。
しかし、すぐに速度は減少し、ブラックホールに吸い込まれ始めた。
「ばかな!もう量子の海が発動するなんて!」
「一体どうなっているんだ!」
龍とフレイはブラックホールに吸い込まれそうになりながらも、必死に耐えていた。
そのとき、零太と小瑠璃が龍とフレイの背中から手を離してしまった。
「きゃあああああ!!!!」
「うわあああああ!!!!」
龍とフレイの気が緩んだ。
その瞬間、龍とフレイはブラックホールの中に吸い込まれた。
「あ、が……」悲鳴にもならない声をあげながら、4人はブラックホールの中に吸い込まれて、消えていった。
第二章
小瑠璃はどことも分からない場所で目を覚ました。
「ここは…?」
思い出した。ブラックホールに吸い込まれたんだった。
みんなは…?
辺りを見渡す。
「みんなどこへ行ったんだろう?零太!」
呼んでみるが、返事はない。
とりあえず、歩いてみよう。
小瑠璃は誰もいない世界で独り言をつぶやいた。
「ひどく殺風景だな…」
一面真っ白な世界だった。
ここはどこへだろうという疑問は置いておいて、まずは零太や龍を探すことにした。
とりあえず、みんなを探そう。
いることを信じて、小瑠璃は白い世界を歩き続けた。
どれくらい経っただろう。
少なくとも一週間は歩いた。まだ見つからない。
しかし、不思議な事に疲れない上に、空腹を感じないのだ。
私はこの世界に一人で取り残されたのだろうか?
白い世界はずっと同じ風景のまま変わらない。
少し、休憩しようと考え、腰を下ろした時、何かを見つけた。
何、この赤い液体…まさか血?
血の跡は線になっていた。
(これを辿って行けば!)
小瑠璃は希望を見つけ、急いで走り出した。
たどり着いた場所は、小瑠璃の想像を軽く凌駕していた。
「ひどい…」
そこには、フレイ、龍、零太が倒れていた。
三人とも血だらけだった。
「みんな!」
急いで駆け寄った。
フレイは首と胴体が切り離されていた。恐らく、生きてはいないだろう。
龍は口から大量の血を吐き出しており、既に事切れていた。
小瑠璃は零太に駆け寄った。
「零太!零太!しっかりして!」
自分の服を引き裂いて、血が流れ出ている部分に強く結びつけた。
「零太!零太!」
涙を流しながら叫んだ。
すると、
「うっ………ぁ小瑠璃?」
零太が目を覚ました。
涙腺が崩壊した。
「よかった…よかったよ…」
人生で始めて涙を流した。
涙ってこんなに熱いものなんだ…涙を流すのがこんなに心地よいなんて………
零太も安心したようにこう言った。
「俺も小瑠璃にまた会えてよかったよ。その…ごめんフレイのこと隠してて。本当は俺フレイの魂を受け継いでいることも、小瑠璃がモードの魂を引き継いでいることも知っていたんだ…。」
小瑠璃は涙を流しながら、言った。
「大丈夫…。零太が生きていてくれてよかった。」
安心して、小瑠璃は眠ってしまった。
それはとても深く、心地よい眠りだった。
小瑠璃が起きると、隣で零太が眠っていた。
「零太…。起きて!」
「うぅん…うおぅ!!小瑠璃!!!」
「あ、ごめん突然起こしちゃって」
「小瑠璃!顔が近い!近い!」
小瑠璃は顔を赤らめて、その場からバッと遠のいた。
「びびった〜!よぉ小瑠璃。なんか久々だな」
まだ顔が赤いまま、小瑠璃は平然を装って、
「久しぶり零太。目覚めはどう?」
「どうって言われても…小瑠璃が目の前にいてびっくりしたなあ」
小瑠璃はまた顔を赤くした。
「そういえば小瑠璃俺のこと零太って呼ぶようになったよな!俺としては嬉しいぞ!」
「そう?なら掛布君と読んでもいいんだよ?」
「なぜそうなる!零太と呼んでくれ!」
「ふふっ冗談だよ。そういえばなんであなた達は血まみれで倒れていたの?」
「そうだ!あいつだ!龍の仲間かと思ったらいきなり襲ってきたんだよ!それで俺をかばってフレイが……。」
「そうだったの…。」
小瑠璃は話の途中だったが、黙祷をした。2人の死を祈るために。
黙祷が終わった後、零太が話かけてきた。
「そういえば、小瑠璃はなんで別の場所で目覚めたんだ?俺達は3人まとまっていたのに…。」
「分からない…。」
「もしかしたら俺達を襲ってきたやつが関係してるのかも!」
「なぜ?」
「あいつは小瑠璃を探していたんだ!名前はなんつったかな…」
「思い出して!」
「あ!確かモードって言ってたぞ!なんか、小瑠璃が私の後継者だとか言ってた!」
「モード!?」
そこで一つ疑問が浮かんだ。
モードは確か龍と仲間だったはず…。なんで仲間を殺したの?
「おい!小瑠璃!大丈夫か?」
「あ、ああ…ごめん考え事を…それより!モードってどんなやつだった?」
「えっと…何か普通の人間だったぞ?女で、年は多分小瑠璃と同じくらいだったな…」
「ようするに、少女ってこと?」
「そうだな!そいつが恐ろしく強くて、フレイでも歯が立たなかったんだ!」
「そんな…モードは何を求めているの!!!!!」
「おお…大声出すなよ!そういえば小瑠璃を探してこの世界の神にしたいらしいぞ?」
「私を神に…?」
「そうそう!だから、神以外の生き物はいらないって言って攻撃してきたんだ!」
「そんな理由で…じゃあ原因は私にあるの?」
「そんなわけないだろ!小瑠璃は悪くない!悪いのはあのモードってやつだ!あいつを倒せば元の世界に帰れるんじゃないか?」
「帰れるかもしれない!でも、どうやって?」
「それが問題なんだ…あ、これ!三日ぐらい前に見つけたんだ!」
零太はポケットの中から一枚の紙を取り出した。
解読不能な文字だった。
「なんて書いてあるかわかる?学年第一位さん?」
「嫌味ったらしく言うなよ!あれはまぐれだ!てか、なんだこの文字?この世界の言語か?」
零太はその紙を上下逆にしたり、裏から見たりしていた。
「考えてることは小学生レベル…」
「うるさいな!このくらいしか思いつかないんだよ!」
小瑠璃はため息をついて、もう一度辺りを見渡した。
一つ不思議なものを見つけた。
(あれは…?量子の海!!!)
ブラックホールの中心から少女が現れた。
零太は腰を抜かして立てない様子でいる。
「あ、あ、あいつ……」
「まさかあなたがモード?」
少女が口を開いた。
「始めまして小瑠璃、私の後継者…。」
「あいつが俺達を…」
少女が零太を視界に入れると零太を睨みつけた。
「まだ生きていたか…フレイの魂…。」
少女が言葉を言い終わった瞬間、零太が吹き飛ばされた。
「かっ、は……」
「零太!」
「小瑠璃…なぜ人間の味方をする?お前は私の後継者であり、新しい世界の神なのだぞ?」
「私は人間だから!私は零太と一緒に元の世界に帰りたいの!」
「まさか…お前が情に流されるとはな…考え直せ、小瑠璃お前は神と死どちらを選ぶ?」
「どちらでもない!私は零太と一緒に元の生活を取り戻したいの!」
「ならば、死ね!」
「小瑠璃!!!」
零太が起き上がり、モードの攻撃を受け止めた。
「零太…その姿…」
背中に炎の翼が生えていた。
「死ぬ間際にフレイがくれたんだよ!力をな!!!」
「ばかな!攻撃を防げるもの等いないはず!」
「俺があいつを食い止める!だから、小瑠璃はその紙の解読を頼む!」
「分かった‼零太一緒に帰ろう!」
「当たり前だ!」
「人間風情が調子にのるなああああああああ!!!!!」
少女の背中から真っ白な翼が生えた。
「特別に本気で相手をしてやる。お前が消えれば小瑠璃はいくらでも説得できる。小瑠璃は神にしてみせる!力尽くでもな!」
「そんなこと俺がさせない!」
今、白い翼と赤い翼がぶつかり合い、戦いが始まった。
第三章
新しい世界を賭けた戦いが始まった。
「うおぉぉぉぉ!!!」
零太は炎の剣を取り出し、思い切り、モードに叩きつける。
しかし、空振りだ。
反動で反応が遅れた零太に空気の刃が襲いかかる。
「あぶねっ」
ギリギリでよけた。
しかし、追撃はまだ続く。
今度は避けきれないほどの空気の刃が零太に向かって襲いかかってきた。
「おらぁぁぁぁ!!」
炎剣で薙ぎ払う。
しかし、炎の向こう側からモードが直接殴りかかって来る。
「ぐっ…」
防御は成功したものの、モードの拳は、強く、重かった。
防御しきれなかった衝撃が体全体に響きわたる。
地面に叩きつけられ、一瞬呼吸が止まる。
「がっ!げほっげほっ!」
しかし、呼吸を整えてる時間は無い。
反射的にその場離れる。
すると、元いた場所が爆発した。
背中に冷や汗をかく。
「よく避けられたな人間にしてはよく出来てる。しかし、次で終わりだ。」
一瞬で距離を詰めてくる。
「速いっ!?」
防御できず直接拳をくらった。
「があああぁぁぁ!!」
零太の悲鳴が小瑠璃の耳に入ってくる。
(お願い!もう少し時間を稼いで!なんとか解読してみせる!)
小瑠璃はまた考えることを再開した。
「くそっ!どうすりゃいいんだ!あいつ速いくせに力が強い!フレイもっと力をくれ!」
すると、背中の炎が強く吹き出した。
( ありがとうフレイ。もう少しがんばれそうだ。)
零太はまたモードと拳を交えに、モードの元へ、飛びたった。
「モーぉぉぉぉぉぉドぉぉぉぉ!!!!」
「まだ生きていたか。ならばこれをくらえ!」
(お!攻撃が見える!)
あっさりと攻撃をよけ、モードの懐へ潜りこんだ。
「一発いただき!」
モードの腹へ炎剣を叩き込んだ。
すると、異変が起きた。
「私が攻撃を受けた?この私がふざけるなよ…ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!」
「ぐっ!」
零太は得体の知れない強大な力で吹き飛ばされた。
「な、なんだあれは!!」
モードの背中から漆黒の翼が生えていた。
「☆+○「<5328々*」
意味不明な言葉を言った瞬間、目で追えないほどの速度で一瞬で零太に近づき、拳を思い切り零太に叩きつけた。
「あっ……」
零太は恐怖で動けなくなっていた。
モードの顔はこの世の物とは思えない程歪んでいて、憎悪に満ち溢れていたからだ。
何回も拳を叩きつけられた零太の体の耐久力も落ちて行き、もう立っているのが精一杯だった。
また、拳を叩きつけられる。
零太の意識が飛びそうになる。
(ああ…死ぬのか…小瑠璃を守ってやれなかった。)
モードが拳を振り上げる。
走馬灯のようなものが脳内に蘇って来る。
(さよなら…小瑠璃…)
零太は死を覚悟し、目を閉じた。
その瞬間、モードの動きが止まった。
「寿命が…来たか…」
(なんだ…?俺は生きているのか?何が…起きた?)
「さようなら勝者はお前だ。小瑠璃とともに未来を作れ」
そう言った瞬間、モードの体が断片化し、徐々に消えていった。
「俺は助かったのか…。はっ、小瑠璃は?」
痛みも忘れて走り出した。
「小瑠璃!無事か!」
「零太!生きてたの?よかった!本当によかった!」
二人は泣きながら抱き合った。
「本当によかった…零太ともう会えなくなるかと思った…」
「俺もだ…小瑠璃を助けられてよかった。」
二人は、息を落ち着かせると、小瑠璃が先に話し出した。
「零太!この紙に文字が浮かび上がってきた!」
「何て書いてある!?」
「デコ…ヒーレンス」
「デコヒーレンスか?意味が分からないが、もしかしてそれを言えばこの世界から出られるんじゃないか?」
「そうかも知れない!デコヒーレンス!デコヒーレンス!」
しかし、世界に変化は無かった。
「なんだ…外れか…」
零太が肩を落とした。
すると、小瑠璃が突然何かを思い出したように言った。
「モードの声が頭の中に聞こえてきて、それがこの世界から脱出するためのヒントかも知れない!」
小瑠璃が紙の解読をしていた時、突然、モードの声が聞こえてきて、モードはこう言っていたらしい。
(私の後継者である小瑠璃よ…私はもう寿命で死ぬ…。なので、お前に私の能力、力、記憶、全てを与える。私は龍を殺していない。あいつにも寿命が来たのだ…。龍は私にとって、とても大切な仲間だったのだ…。だから、私と龍との思い出をお前の思い出として、永遠に忘れないでくれ……。)
「そう言って声は途切れた…」
「そのモードの思い出は小瑠璃の頭の中にあるのか?何か思い出せるか?」
「覚えてる…。全部…。龍との思い出も…。神に作られたということも覚えてる。」
「小瑠璃…本当に記憶があるんだな…」
「この世界を作り、私達を生んだ神の名前は…デコヒーレンス」
「それは神の名前だったのか…」
「龍と私と神それが答え…」
小瑠璃は息を吸い込んだ。
「龍と少女とデコヒーレンス」
その瞬間、白い世界が壊れ始め、2人の前に空色の扉が現れた。
「これは…」
「新たな世界への入り口!行こう!零太!」
「ああ!小瑠璃!」
2人は手をつなぎ、断片化していく世界を背に、扉の中に消えて行った。
終章
扉をくぐった二人は、新たな世界を目にしていた。
その世界は…
まるで、エデンの園と呼ばれる、神が作り出した世界のようだった。
二人は、この世界で生きていくことを決め、この世界のアダムとイブとなった。
二人は子どもを作り、その子がまた子どもを生み、その世界で五万年が過ぎた頃、今の日本のようなビルが立っていたり、車が走っていたりした。
小瑠璃はその世界を魂となり、見守り続けていた。
そして、これからも見守り続けていくつもりだ。
この世界は、本当の世界ではない。
もしかしたら小瑠璃が住んでいた元の世界も先代の神が創り上げた別の世界かも知れない。
今、生きている人は小瑠璃の事を知っている人間は一人もいない。
しかし、小瑠璃の魂はまだ生きていた。
小瑠璃はまだ生きている魂を使い、この記憶をだれかに託そうとしていた。
そして、託した誰かがまた誰かに託す。それを繰り返していく。
この世界の起源、経過そして、終焉を知るために誰かに伝えなければならない。
この世界を作り出した言葉…
「龍と少女とデコヒーレンス」
fin