日本国をエリア11とは呼ばせない   作:チェリオ

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第09話 「決戦前夜」

 皇歴2010年十月六日。

 枢木 ゲンブが亡くなって以降、士気と反ブリタニア精神は高まったものの戦況に変わりはなかった。

 第三次ブリタニア侵攻軍は緩やかながらも進軍を継続。

 日本陸軍と日本空軍は最低限の戦力で時間稼ぎ目的の遅滞戦闘を主眼に防衛線を展開。

 残る日本海軍は残存兵力を長崎へと集結させて、陸軍の艦隊を中心に再編成を行っている。

 

 すでに東北の防衛線は突破され、今や東京・山形・長野・富山の四県が最終防衛ラインに設定されてしまった。

 最終防衛ライン…。

 

 対ブリタニア日本軍総指揮権を澤崎 敦内閣総理大臣臨時代理より預かった枢木 白虎が発表した日本がブリタニアに飲み込まれるか押し返せるかの分岐点。

 ここを突破されるともはや日本に打つ手なしとまで言い放った放送は国民に良くも悪くも衝撃を与えた。

 もう日本は駄目なのかと諦める者。

 逆に押し返せれば軍神と称される白虎によって勝利をもたらされると期待する者。

 すべての思惑を感じている白虎は東京を決戦の地として準備を始めた。

 

 勿論白虎の発表はブリタニア側も聞いており、クロヴィス・ラ・ブリタニアの親衛隊を含めた第三次侵攻軍の主力部隊が東京に向けて侵攻準備に入っている。

 グラスゴーのみで編成されたナイトメアフレームだけでも三個大隊用意し、戦闘機・装甲車・戦車・歩兵など東京に集められた日本軍の総数の倍も用意された。その大軍勢にコーネリア率いるナイトメア中隊が合流。

 東京侵攻軍以外の部隊は最低限の部隊を残して、残りは山形・長野・富山の防衛戦力を釘付け、または突破するべく東京侵攻と同時に攻撃を開始する予定。

 

 この状況となっても前線には藤堂 鏡志郎に四聖剣の面々は前線どころか東京にも姿を現していない。

 白虎の指示で成田連山にて待機させられているのだ。

 攻撃されていない地域では本当に最低限の防衛能力しか残していないので名目上危機的状況に陥った地域へ派遣する援軍という事になっている。

 ルルーシュも藤堂と行動を共にしている事から政府や軍上層部の間では負けた際には国外に逃げ延びて再起を図るべく、その時の部隊を集めているのではと憶測が飛び始めている。

 本人はまったく気にしてもいないし、説明も弁明する気もない。

 確かに脱出の準備はしているがそれは澤崎との約束を守るためのものであり、白虎自身逃げる気は微塵もない。

 

 

 

 

 枢木邸。

 東京での決戦が迫る中、多くの東京都民も避難を開始した。

 名家で働く者の多くは分家や昔より仕えていた家の者だったりして、避難することなく最後まで当主に付き従う姿勢を取っていたが、枢木家当主となった白虎は労いの言葉をかけて避難させた。

 色々理由を付けて避難させたが、実際戦闘も行えない女中達が居た所で戦いが始まればナイトメア相手に我が身も守れないし、守ってやれるような余裕はない。忠義を向けてくれる相手を無駄に危険に晒すぐらいならとっとと離れて貰った方が楽でいい。

 

 なので枢木邸に残っている者のほとんどは警備担当のSP達で女中は名目上のC.C.と咲世子ぐらいだ。

 紅月さんも女中なのだが、決戦前という事で俺らの世話を焼くぐらいならナオトやカレンとの家族団欒をしてくれと言って過ごさせている。

 後はスザクと神楽耶、ナナリーの三人。

 神楽耶は皇家の当主という事もあって本来ならもうとっくに避難先に行っていないというのに、頑なに拒んだそうなのだ。

 「夫が戦地に向かうというのに自分だけ逃げる事はできませんわ!」ってね。

 嬉しくて目頭が熱くなったが先も書いたように今回は余裕がないので、親父ほどではないけど意外に頑固なんだよな…。何とか説得して見送りをしてから避難して貰う事に。その先にここに残っている面子も連れて行ってもらう事になっている。ナナリーはブリタニア皇族という事もあって下手すると怒りをぶつける対象にされかねない。その点神楽耶が面倒を見てくれるというのは本当に有難い。

 

 で、白虎本人だが枢木邸で摂る最後の食事(・・・・・)中なのだが、その表情は暗く、雰囲気は重い。

 

 「如何なさいましたか白虎様。お食事がお口に合いませんでしたか?」 

 「いや、そんな事は無い。実に美味しいよ。うん…」

 「では、なにが…」

 

 浮かない表情をしている白虎に、ナナリーの食事の手伝いをしていた咲世子が手を止めて気にかける。

 夕食はカツ丼に鰹節をたっぷりかけた冷奴、歯ごたえのよいたくあん、ワカメと油揚げのお味噌汁などで嫌いな物はなく、ゲン担ぎの意味も込めてあるカツ丼は好物の部類だ。

 味付けもまさに好みのものに仕上げられ、咲世子さんの腕前には恐れ入る。

 

 別段この食事関係で不満がある訳ではないのだ。

 まぁ、まるでお通夜のように静かな事は多少思うところがあるがそこまでじゃない。C.C.が食べているトンカツを乗せたピザとかどうなんだろうと思うがそれはどうでも良い。

 

 不満があるとすれば―――…。

 

 「着物ってやっぱり落ち着かないなぁ」

 

 これである。

 当主となったことで当主として相応しい服装をしなければならない。

 軍人としているときには軍服を、今のような時には日本の名家としての恰好がある。

 それがこの枢木家の家紋が入れられた羽織付きの着物。

 

 女性物よりは着やすいそうだが、やはり普段着よりは着にくく、落ち着かない。

 

 「あら?とても良く似合いますのに」

 「嬉しいけどさ。どうもこう…隙間が気になる。それにこの余った裾とか気が付かない間に蚊とか入って来そうで嫌なんだよ」

 「ではいつもの服装にしますか?」

 「あー…うん。用意だけ頼むよ。とりあえず今日一日はこれで通すからさ」

 「でしたら後で写真を撮っておかないと」

 

 ふふふと笑う神楽耶や不安げなスザクやナナリーを目にしながら白虎はカツ丼を掻っ込む。

 カツを噛み締め、汁とトロットロな卵の絡まった白米を胃へと流し込むと、立ち上がりナナリーの横へと行く。

 

 「しろさん?」

 「不安げな顔すんな。大丈夫だっての。すぐにルルーシュとも会えっからそんな不安げな顔すんな」

 「…いえ、でも…」

 「――すんな。笑ってろ、ほれほれ」

 「わかりまひひゃ。わかりまひひゃはらほおはら手をはなひへくだひゃい」

 (※訳:分かりました。分かりましたから頬から手を放してください)

 

 指で頬をグイっと押して無理に笑みにさすとナナリーは恥ずかしそうする。

 カカッと笑い今度は神楽耶に視線を向けるといつもと違って睨まれず、微笑みを向けられていた。

 

 「神楽耶」

 「はい、なんでしょう」

 「そんな作り笑いすんな」

 

 今度は神楽耶の元に行き、額にデコピンを喰らわす。

 ついでにスザクにもだ。

 

 「ガキがいっちょ前に平然を装うな。言いたい事があるなら言え。泣きたいときは泣けや。みっとも無くても、我がままでも何でもいい。ため込むんじゃねぇよ」

 

 二人共デコピンを喰らったおでこを押さえながら聞き、目元に涙が溜まり始めた。

 ダムが決壊するが如しに涙が一気に溢れだし、嗚咽を漏らしながら二人共白虎に抱き着く。

 

 「しろにい、いかないで!いっしょににげようよ!!」

 「いやなのじゃ!こんな別れ、いやなのじゃ!!」

 

 溢れだした感情を吐き出しながら泣き続ける。

 二つ返事してやれない罪悪感を感じながら責めて泣き止むまで優しく抱き締める。

 

 「白虎――分かっているな」

 「ったく、分かっているよC.C.。お前との契約もあるし、何より俺はこいつらの為に生き延びなきゃならんからな」

 「無事なお帰りをお待ちしております」

 「あぁ、そもそも負ける気なんて微塵もねぇがな」

 

 獰猛な笑みを浮かべながら答えた白虎はふと思った。

 この着物、いつもの服より厚みがあるから二人の涙を拭くハンカチ代わりにはちょうど良かったなと…。

 

 

 

 

 

 

 日本国千葉県防衛軍指揮所。

 ブリタニアの侵攻により今やブリタニアの勢力圏内とされてしまったこの指揮所は、第三次ブリタニア侵攻軍の拠点として運用されている。

 周囲にはナンバーズは存在せず、純血のブリタニア人のみで構成された精鋭部隊や親衛隊により強固な警備体制が敷かれていた。

 指揮所の最奥では侵攻軍総大将であるクロヴィス・ラ・ブリタニア皇子に専属のバトレー・アスプリウス将軍、それにコーネリア・リ・ブリタニア皇女殿下など侵攻軍の頭を務める面子が揃っていた。

 

 壁には大型のモニターが取り付けられ、今まさにクロヴィスに東京侵攻への作戦案が提示されるところであった。

 

 「ではご説明を行わさせて頂きます。こちらをご覧ください」

 

 モニターには拡大された日本地図に青色と赤色で分かりやすくしたブリタニア軍()日本軍()の部隊が表示されている。その中でブリタニア軍の戦力のほとんどが千葉県に集中している。

 

 「まずトウキョウ侵攻はこのチバにて待機している侵攻軍主力隊が行います」

 「敵勢力はどれぐらい居るのだ?」

 「ハッ、戦力差は我が方に比べて三分の一程度とか。敵総大将は枢木 白虎中佐…いえ、准将です」

 「准将?階級が二つも飛び越したのか?」

 「はい。今までは現場指揮を主に行っていたそうですが、トウキョウでは総大将として指揮を執るとの事で政府上層部が軍部に階級を将まで上げるように言ったとの事で…」

 

 白虎の名が出てコーネリアは眼光を鋭く光らす。

 それは獰猛な肉食獣が獲物を見つけたかのような瞳。

 隣に並ぶ騎士ギルフォードとダールトン将軍の顔が険しくなった。

 

 コーネリアは敗北した。

 数だけで性能は天と地ほどの差がある海戦にて、策を巡らされ大打撃を当てられ、戦場を逃げるという屈辱を味わった。

 ゆえにコーネリアは白虎の名が挙がった瞬間、殺気立ったのだ。

 今度こそあの屈辱を晴らすべく。

 

 「本隊のトウキョウ侵攻に合わせて二個中隊のナイトメア部隊を主軸とした第二から第四での侵攻部隊がヤマガタ、ナガノ、トヤマの三県に進軍。日本軍の連携を止めます」

 「こ、これで本当に終わるんだな」

 「勿論ですよ殿下」

 「待て。トウキョウの制空権はどうなっている?」

 「それが…日本軍の空軍がこちらに集中しておりまして制空権を奪うのは難しいかと。なので侵攻作戦が開始と同時に制空権奪取に向けて空軍による攻撃も行います。爆撃や敵拠点の攻撃は制空権奪取後となります」

 

 空からの支援が受けれない事は不満だが、敵の空軍支援を抑えれるだけ良いかとコーネリアは考える。

 戦争を詳しく理解しきれていないクロヴィスは二度も失敗している事から不安になっている。だから今度こそ終わらせないと自分の立場がなくなる。これで失敗すれば皇位継承権の剥奪は確実だろう…。

 

 「そういえばルルーシュの件はどうなっている?」

 「ルルーシュ皇子とナナリー皇女殿下は枢木家で預かられており、枢木家所有の枢木邸に居ると思われます。他にも居ると思われる場所にも救出部隊を展開するべき準備を始めております」

 「そう…それは良かった」

 

 どことなく安堵の表情を浮かべる。

 これで後は本国との通信を安定させることだけだ。

 

 本国との通信を安定させれれば提案だけとは言え兄上(・・)がこの戦争に参加される。

 

 今度こそ奴から勝ちを取ってやる。

 コーネリアは出撃の時間を待つ間、自身の愛機となっているカスタムされたグラスゴーの調子を確かめるのであった。

 




●おまけ
 ある雑誌でルルーシュやスザクに一問一答の企画があったとの事で
【白虎への一問一答】

 『まずはお名前と年齢、人種』
 「枢木 白虎。年齢は今年で18…だったかな?勿論日本人です」

 『血液型は何型ですか?』
 「スザクと一緒でO型」

 『誕生日はいつですか?』
 「八月十日だな。ちなみに星座は獅子座」

 『身長は?』
 「185cm。扇君の方が一センチ高いんだよなぁ。どうでも良いけど」

 『目の色&髪の色』
 「あー…目は暗い焦げ茶色じゃないで髪色は黒だ。俺的には茶色が良かったんだがなぁ」

 『弱点』
 「弱点て……スザクかな。スザクからの頼み事となると弱いんだよな」

 『好きなもの』
 「弟のスザク」

 『嫌いなもの』
 「嫌いなものかぁ…敵対者。という事じゃないなら辛い物…酸っぱい物。苦い物」

 『好きな食べ物』
 「みたらし団子。後はこしあんの白玉団子」

 『好きな色』
 「茶色だな。ちなみに嫌いなのは灰色」

 『好きな女性のタイプ』
 「タイプか。強引にでも引っ張ってくれるぐらい強い女性。男性を尻に敷くぐらいの女性が良いかな。俺、大雑把な所あるしさ」

 『愛とは?』
 「……愛?尽くすもの……かな」

 『尽くす方?尽くされる方?』
 「――尽くされたい。けど尽くすんだろうな」

 『好きな季節』
 「夏かな。夏は良い思い出も多いから。過ごしやすさなら冬だけど」

 『嫌いな季節』
 「春。花粉症なんだ俺。目薬とか花粉症対策の医薬品を切らしたら酷い目にあった」

 『服装』
 「黒を主体にした奴だな。きっちりしない感じの奴。だから制服や着物は苦手だな。着慣れないし」

 『趣味』
 「強いて言うなら読書と睡眠」」

 『得意科目』
 「得意かぁ…数学だな」

 『特技』
 「作戦指揮と将棋、お菓子作り」

 『特殊能力』
 「ギアス」
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