日本国をエリア11とは呼ばせない   作:チェリオ

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第25話 「幕開け前に」

 元々ユーロピアの王族や貴族だったが、亡命を余儀なくされた者らの末裔がブリタニアに助力を乞い、奪われた地を取り戻すべき組織されたユーロ・ブリタニア。

 自国を護るにしても、ブリタニアという大国を背後に持つ敵に対して、一国ずつでは戦力差があり過ぎる為、協力体制を築き上げたユーロピア共和国連合。

 戦力の上では同等であろう。

 だが、それだけだ…。

 

 ユーロピア共和国連合は所詮寄せ集め。

 どうしても国の壁が存在し、最終目的はユーロ・ブリタニアの打倒であるが、国々で如何に自国に有利なように他を動かすか、自分達が富を得られるか、誰を利用しようかと他人――他国への足の引っ張り合い。

 それに加え、ユーロピア共和国連合は、何より民衆からの言葉に機敏である。

 喝采ならまだしも作戦失敗による非難の声が多ければ多い程、パリの統合本部でも問題として挙げられ、失敗した誰かに責任を取らせることも辞さない。

 結果、佐官や将軍達は如何に責任を取らないようにするかと、戦いに対して消極的になってしまい、思うように動けないのが実情である。

 そんなユーロピア共和国連合が、ブリタニアの支援を受け、先祖代々の土地を取り返すという意思の下で一つになっているユーロ・ブリタニアに後れを取るのは必然だったろう。

 戦線は後退し、その度にユーロ・ブリタニアの勢力圏が拡大していった…。

 しかもユーロ・ブリタニアの四大騎士団のひとつには、元皇帝最強の十二騎士に所属していた猛者が居るという。

 戦力の質も、戦士の技量も、統制や連携でも後れを取るユーロピア共和国連合が敗北するのは、時間の問題と思われた。

 

 ゼロが訪れるまでの話だが…。

 

 自室にて作戦計画書に目を通すゼロ―――ルルーシュは深いため息を漏らす。

 白虎から日本の上層部には碌な奴は居なかったと聞いたが、それ以上にここは無能の巣窟かと、呆れを通り越して哀れに思ってきた。おかげでユーロピア共和国連合を掌握するのは簡単であったが、それだけに自分が来なければ終わっていたのではないかと、本気で心配するレベルだ。

 ルルーシュがゼロとして行った事は簡単だ。

 策を巡らして伏兵に奇襲、強襲を行って勝利を納め、メディアを使って情報を流したりしただけで、統合本部のモグラ達が喉から手が出るほど欲していた民衆からの支持が集まった。

 そこから交渉を重ねて統合本部の者と接触し、彼らは全員俺の手駒になっている。

 

 「失礼します」

 

 ノック音と共に聞き覚えのある声が扉の向こうより聞こえ、ルルーシュはゼロの仮面をつけると入室を許可した。

 部屋に入って来たのは一緒にユーロピアに渡ったカレンやジェレミア、ラクシャータではなく、レイラ・マルカルという女性であった。

 彼女は統合本部にて、人材確保のために資料を眺めていたら見つけた、唯一優秀だと思った人材である。

 特筆すべきは彼女が立案した作戦であろうか。

通称“アポロンの馬車”と呼ばれる大気圏離脱式超長距離輸送機を用いて、大気圏外より目標地点に降下して、ナイトメア部隊を敵地のど真ん中にでも展開できるというもの。

 統合本部は被害と人員を確保できないという事で否決したが、それはこの作戦の有用性を正しく理解していないからだろう。

 

 “亡国のアキト”ではユーロピアに亡命した日本人達に、作戦に従事すれば家族が優遇される条件で、自国民では無く死んでも痛くないという判断から人員を確保した。だが、こちらでは白虎はエリア11になる事を阻止したので、一時的にユーロピアに避難した日本人もそのまま帰国して人員がいなくなったのだ。

 ちなみに同理由で、日本人の主要メンバーはユーロピアに存在しない。居るのはユーロピアで過ごしていたアキトだけである。

 

 とりあえず使わないのならと、副指令として引っ張って来たのだ。

 すると、彼女が前々から目をつけていた人材も合わさって、かなり充実した組織と相成った。

 特に技術班は、ユーロピア随一と言っても良いほどに。

 独自に“アレクサンダ”という優れたナイトメアフレームを開発したアンナ・クレマン大尉に、今は輻射波動開発からアレクサンダの改修の手伝いなどを行っているラクシャータ・チャウラー。

 下手したら白虎の元より技術力があるのではと思うほどだ。

 統合本部よりおまけのように送られてきたピエル・アノウとかいうやつは、早々に叩き返したがな。

 

 「もうすぐ作戦開始時刻です」

 「もうそんな時間か」

 

 時刻を確認すると、確かに予定時刻が近くなっていた。

 これより、カレンやジェレミアなどの黒の騎士団メンバーを含んだ一個大隊ものナイトメア部隊“ワイヴァン隊”が、敵陣営に降下して作戦行動を行う為に、アポロンの馬車にて出撃するのだ。 

 指令室に向かおうと、統合本部より黒の騎士団の拠点として提供させたヴァイスボルフ城の廊下を歩いて行く。

 自分と白虎の願いが叶う事を想いながら、今すべきことを行おうと歩み続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 白虎により秘匿されている地下に広がる実験室。

 ここでは日本政府ですら知らない技術が開発され、日の光を浴びるその日まで、ただただ待ち続けている。

 そんな一室にて、今まさに長年かけてきた実験が形に成ろうとしていた。

 強化ガラスに仕切られた観測室では、白衣のような研究着を着用している男女数名が、画面に映し出される数値と走らせている文字列をひたすら見続けている。

 緊張と薄っすらと興奮の色を浮かべた一同は、ガラスの向こうで横たわっている物へと視線を移す。

 飛行機のような翼を左右に広げてはいるものの、誰がどう見ても飛行する物では無かった。

 楕円形の中央部に翼が生えただけで、推力装置は見当たらない上に尾翼もない。まるで子供の玩具のような現実味の無い形状の物。

 これこそが彼ら・彼女らが取り組んできた研究の成果―――“フロートユニット”である。

 

 「フロートユニットの接続を確認。システムチェック開始―――問題なし」

 「実験を開始してください」

 「了解。実験開始」

 

 カタカタカタとキーボードを叩く音が室内に広がり、試作実験機のフロートユニットが起動する。

 翼の先端が開いて僅かな隙間が翼の間に出来る。

 そこにエナジーにより生成された輝く板が現出した。

 ここまでなら今までの実験でも確認された。

 重要なのはここからだ。

 

 「フロートユニット両翼よりエナジー体の生成を確認。エナジー消費量及び生成体の形状の誤差、許容範囲内で収まっています」

 「飛行開始」

 「飛行開始します」

 

 エナジーの形成物を生むだけなら簡単だ。

 すでにロイド博士が自慢のナイトメアフレーム(玩具)“ランスロット”に搭載している。

 “ブレイズルミナス”。

 現行のナイトメアフレームの装備で盾と言えば暴徒鎮圧用。

 つまり対人を想定しての盾であり、対ナイトメア戦を考えての盾は無い。寧ろ機動力特化のナイトメアに盾を持たせても速度が落ちるので、持たせないというのが一般的だ。

 しかしながら、ロイド博士が開発したブレイズルミナスはエネルギー体を生成して盾にするので、消費エナジーによって強度は自由自在に変更でき、重さは発生装置だけなので同じ強度の盾以下。しかもずっと持っている必要がないので邪魔にならない。

 こちらもエネルギー体を使用するが、それは盾では無く飛行する為。

 エネルギー体を生成してから飛行する為に、何が必要で何が不必要かを何度も試験し、長い期間をかけてようやくここまで辿り着いたのだ。

 ふわりと浮いた実験機は、少しずつ天井に向かって上昇して行く。

 

 「飛翔を確認。等速で上昇中」

 「目標高度に到達。上昇加速度をマイナスにシフト。上昇速度プラスマイナスゼロ。停止を確認」

 「水平方向への加速を計測」

 

 ゆっくりと上へ上へと上がり、時間が止まったかのように停止。のちに実験機は指示した方向へと動いた。

 本当にゆっくりながら飛行したのだ。

 それを観察していた皆が固まり、喜びから肩を震わせ始める。

 次の瞬間には鼓膜に響くほどの歓声が巻き起こる。

 

 「せ、成功だ…成功ですよ!!」

 「やりましたね主任!」

 

 主任と呼ばれた女性―――セシル・クルーミーは笑みを浮かべて、喜んでいる仲間達へ見渡した。

 

 「この結果は私だけの成果ではありません。ここに居る皆さんの協力あってこそです」

 

 社交辞令のようだが本心で想っている言葉を述べ、興奮状態にあった彼ら・彼女らを見つめ安堵し、少し席を外すと言ってその場をあとにする。 

 部屋を出たセシルは達成感と満足感を噛み締めながらも、これまで溜めに溜めていた疲労感によりため息を漏らす。

 フロートユニット開発チームは良い人たちばかりだ。

 年下である私の指示に文句も言わず、同じ目的の為に協力してくれた。

 最初は年齢云々からのいざこざが発生したりするかなと思っていただけに、これは有難かった。けれど彼ら・彼女らのそれに甘えるだけではいけない。

 主任として周りを引っ張っていくように努力しつつ、地位を笠に着て命令して言う事を聞かすのではなく、相手を尊重して頼む形で波風を立てないように気を使った。それもその気遣いを気付かせないようにしてだ。

 彼女に溜まった心労はかなりの物だった。

 今まで倒れなかったのが不思議なほどに。

 廊下を進んで角にある、自動販売機が置かれている休憩室につくと、誰も居ない事を確認して、置いてあるソファに寝そべった。

 施設には休憩室が幾つかあるが、セシルが訪れた休憩室は他の研究室より離れており、ここを使用するのはセシルの班ぐらい。それも今はあの部屋で騒いでいるであろうことから誰も来ない。

 だから人の目を気にせずに、いつもならやらない行動をとれる。

 普段の真面目で周りに気を配れる彼女を知っている人が、今の彼女の状態を目にしたら、何かあったんですかと心配を口にしていただろう。

 それほど彼女は疲れ果てている。

 

 横になった事で疲れが表層にまで上がり、急激に瞼が重たくなってきた。

 うつらうつらと意識が落ちかけ、何度か抵抗を行ったものの、セシルはいつの間にか眠りこけてしまっていた…。

 ふわりと髪が揺れた。

 温かいナニカが頭に触れている。

 髪を触れらているのに不快とは思わなかった。

 寧ろその優しい感触に、もっとと寝惚けながら欲しがった。

 摺りつけるように頭を動かし、寝ぼけていた意識がゆっくりと覚醒し始める。

 

 「―――ぇ」

 

 薄っすらと目を開けて、ぼやける意識と視界が徐々にハッキリするにつれて、頬が熱を持って真っ赤に染まる。

 横になったソファには転がった自分だけだったはずが、今は枢木 白虎も腰かけていた。

 撫でり撫でりと絶えず撫でられ、恥ずかしさからこの場から逃げ出そうとするが、どうにもその手を払い除けれずにいる。

 

 「し、白虎さん!?」

 「おう、おはようさんセシル嬢――つってももう夜だけどな」

 

 ニカっと笑いかける龍黒 虚を名乗った詐欺師(枢木 白虎)を恨めしく見上げる。

 いや、契約条件は違えてなかったから詐欺師という訳ではないが、物腰柔らかで爽やかな青年(龍黒 虚)という仮面は詐欺では無いだろうか。

 実際は真逆に近い人物であったが、これはこれで接しやすくはあるのだが…。

 口は悪く、性格もねじ曲がっているが、性根が腐っている訳ではなく、寧ろ優しい人物だというのがよく分かった。

 変に気を張る事もないし、気楽に接せられる。

 それ以上に今まで頼られる事が多かったが、この人は何故か妹みたいに扱って甘えさせてくれる。

 多分無意識なんだろうけど、どうしてと疑問を浮かべるが未だに答えは出ない。

 

 …最初は憐れみから始まった。

 開発チーム内に気を配り、少しでも手が空いたらロイド博士やラクシャータ博士のお手伝いに奔走し、年下のスザクの面倒を見たり(ロイドがその辺のフォローをしないため)、放っておいたら何をするか分からないロイドの介護――ではなかった。尻拭い――ゴホン、世話を焼いたりと、苦労の上に苦労を重ねて大変そうだったので労わったのが始まり。

 最近では白虎もセシルも慣れて、兄妹みたいな扱いになっていた。

 ちなみにセシルは白虎の一個下である。

 

 「安心して良いぞ。入り口には清掃中の看板を置いといたから」

 「チームの皆さんは…」

 「金渡しといたから今頃羽目を外して飲み食いしてるだろうさ(施設職員に対して絶対順守のギアス処理済みで情報漏洩の危険無し)。今日はよく休め。これでフロートユニットはひと段落した訳だしな」

 「いえ、これはまだまだ完成には及んでません。何よりエナジーの消費問題が大きいですから」

 「なにも一つで全てを完結させよとは言わないよ。これからも研究に励んで完成させればいいさ。本当によくやった」

 

 最後に頭をゆるりと撫でると、白虎は立ち上がる。

 振り返った、彼は不思議そうにこちらを眺め首を傾げた。

 何か可笑しなところでもあっただろうか?

 

 「なんだ?まだ甘えたかったか?」

 「――ッ!!そ、そんなに物欲しそうな顔してました!?」

 

 甘えれる相手がこの人しかいないから、無意識に甘えている自覚はあった。けれど表情に出す程というのはさすがに恥ずかしい。

 鏡がないために確認は出来ず、手で覆う様にして隠す。

 

 「いんや、全然」

 

 ――揶揄われた。 

 ムッと睨むとカラカラと笑って流された。

 あまりこういう感じで絡む友人も居なかったもので、この白虎との距離感は案外と気に入っている。

 すぐに機嫌を直したセシルは笑みを向ける。

 こんな時間が長く続けばいいのにと思いながら。

 

 

 

 

 

 

 夜九時。

 夕食もお風呂も済ませた皇 神楽耶は静かに戦術書に目を通していた。

 ぺらりぺらりと紙が擦れる音がやけに大きく聞こえるこの空間に、どたどたと慌ただしい足音が入り込み、正体を察した神楽耶はしおりを挟む。

 まるで我が家のように皇家の屋敷に入った枢木 白虎は、我が物顔で警備の制止を気にも止めずに、一つ一つ部屋を確認して行く。何部屋か回って探していた神楽耶を見るや否や、近づいて寝っ転がった。

 慣れ切っている神楽耶は驚く素振りも見せず、手にしていた書物を置いて、寝転がって来た白虎の頭を太ももで受け止めた。

 ゆっくりと頭を撫でながら、神楽耶は手短に人払いをしておく。

 大抵人に聞かれると不味い話しかこの二人はしない。勿論日常的な会話もあるが、下手な“英雄像”が出来上がっている為に、ひとたび会話を耳にすれば瓦解する者も多いだろう。それに対しての配慮であるが、いきなり上がり込んで少女に膝枕をして貰う成人という時点で手遅れのような気もする…。

 

 「今日はどうされたのですか?」

 「神楽耶の顔が見たくなった―――では不満か」

 「とても嬉しく思いますよ」

 

 温かな手が頬を撫でる。

 微かに紛れた香りを放ちながら…。

 

 「あら、今日どなたかに御触れになりまして?」

 「んぁ?あー…セシル嬢の頭撫でたっけか」

 「それでですか」

 「怒んなって。ただ褒めてやっただけだ」

 

 先ほどの光景を思い浮かべる白虎の視界に、頬を膨らませて不満を募らせる神楽耶の顔が映り込む。

 原作では別段気にしている風もなく、浮気にも寛容そうな事を言っていた気がするのだが、どうしてこう原作と違ってしまったかなぁ。

 それだけ強く愛されていると思えば悪い気はしないがね。

 知っているだけに違和感は残る。

 

 「英雄色を好むって知ってるか」

 「知りませんね。私の辞書にそのような言葉は記載されておりませんので。もしや誰かほかの女性と?」

 「俺は童貞なんだが」

 「女性と違って殿方は確かめようがないではないですか」

 「確かに――ってかその情報どっから拾ってきたよ」

 「知識は宝ですからね」

 「いらん知識まで拾ってそうだなぁ」

 

 別の問題が発生したが、本人は気にしていないようだし良いか。 

 

 「では、用件を伺いましょうか?」

 「おんやぁ~、俺は神楽耶に会いに来たって言ったのに信じて貰えないのかなぁ」

 「信じてますよ。でもそれだけではないでしょう」

 「以心伝心と喜べばいいのか、俺の思考が読まれやすいと警戒すれば良いのか、どっちが良いと思う?」

 「心が通じ合っていると喜ぶべきかと」

 「ちなみに今俺が神楽耶に向けている気持ちは?」

 「――愛している」

 「正解だ」

 

 照れもせず、さも当然のように口にされた解答に思わず笑ってしまった。

 違ってはいないがこうも真正面から堂々と言われると、嬉しいとかではなく清々しい気持ちが一番に出てくる。

 

 「後一年もすればすべてが整う」

 「長かったですね」

 「あぁ、長かったさ」

 

 すでに白虎の計画は全てが順調に実りつつある。

 ルルーシュ(ゼロ)によるユーロピアでの工作は、想定以上のおまけ付き(レイラやwZERO部隊)で進行中。

 日本艦隊の主力を担う秘匿呼称“八八”計画は90%まで進み、搭載予定の特殊兵装もロイドやラクシャータの協力にて作るだけ。

 ナイトメアフレームに至っては順調を通り越して進み過ぎた。

 ロイドとラクシャータという世界屈指の技術者を得て、日本国が存在することで研究場所にも資金にも困らない。

 おかげで月下の生産の目途が今から立っている。ただ全軍に行き渡る事は不可能だが、それでも一部だけでも配備できるのは大きい。さらにランスロットはスザク専用に調整中で、紅蓮弐式は輻射波動機構の取り付けが完成したのでゼロの下に送るだけ。残る神虎はこれからだが何とかなるだろう。

 そして一番嬉しい誤算は、セシルのフロートシステムが初期段階とはいえ完成した事だ。

 原作中盤以降に登場したのが原作一年前に完成するとか、上手くいけば原作開始の一年後にはエナジーウィングとかできちゃうのではと淡い期待を浮かべてしまう。

 なんにしても、これでナイトメアの空戦能力を得たばかりか、展開速度も進行速度も高められた。

 

 ……これで“箱舟”の目途も立ったしな……。

 

 「神楽耶には“八八”を任せようと思ってる」

 「宜しいのですか?あれは――」

 「神楽耶だから任せられる」

 

 ニカっと笑みを浮かべると、白虎は上半身を起こして伸びをする。

 肩の辺りがコキコキと音を立てる。

 

 「さてさて、愛しの神楽耶の顔も拝めたし、帰って根回しに勤しむとしますか」

 「ふふふ、軍神が護りから攻めに転ずるのですわね」

 「ったりめぇだ。俺の大事な奴らに手を出した落とし前は付けて貰う」

 「怖い怖い。……で、何を成さるつもりで?」

 「そりゃあ勿論――――」

 

 神楽耶の問いに白虎はニコリと笑う。

 楽し気に怒りを込め、表情に影を落としながら口を開いた。

 

 「ブリタニアとの同盟の締結さ」


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