日本国にて政治と軍事が枢木 白虎のクーデターにより掌握されて十日後。
上海沖にて今までに類を見ないほどの大規模艦隊同士の海戦が開かれた。
元帥の地位に就いた枢木 白虎はブリタニア一国に対する戦争ではなく、世界の争いを無くす戦いへ赴くと世界に宣言を行った。行うと同時に、国のトップを操り、汚職に塗れ、私腹を肥やすためには民草も国も食い物にして使い捨てる中華連邦上層部を正すと中華連邦に宣戦布告。
確実にブリタニアとの戦争を行うとばかり誰もが思っていただけに、この動きには国内も国外も大きく驚いただろう。
特に驚いたのは友好関係を築けていたと思っていた中華連邦だ。
いきなりの宣戦布告に続いて各軍港で待機していた艦艇が東シナ海に集結。
万全の対策を練る時間を与える間もなく、日本中華連邦侵攻艦隊は侵攻作戦を開始したのだ。
超弩級戦艦八隻、戦艦四隻、航空母艦系八隻、対潜特化型駆逐艦四隻、戦域護衛戦闘艦一隻、限定海域護衛艦八隻、ミサイル巡洋艦八隻、ミサイル駆逐艦十二隻、揚陸艦多数の総合計七十隻もの大艦隊。
対して時間も無かったが、近隣より掻き集めた艦艇百隻を超える中華連邦艦隊と、近くの航空基地より発進した戦闘機隊が侵攻作戦阻止のために出撃。
こうして両軍は闇夜が支配する深夜に戦闘を開始したのである。
最初は制空権の奪い合いから始まり、艦隊による砲撃戦に移行した。
というのも制空権を数で勝る中華連邦空軍が得られなかったことが大きい。
天岩戸を中心として秋月方八隻で構成された戦闘領域対空迎撃管制システム“アマテラスシステム”と、対艦ではなく対戦闘機戦のみに重点を置いた、空母から発進した戦闘機隊によって拒まれたのだ。
そしてミサイル系の兵器はアマテラスシステムの前にほとんどが迎撃されるので砲撃戦となり、弩級戦艦の大型主砲がその絶大な火力を発揮する。が、弩級戦艦は八隻で中華連邦軍艦隊には小さい砲塔だとしても百隻の艦艇がある。
威力よりも数で押される結果となり、先頭を進んでいた二隻の弩級戦艦を含んだ前衛艦隊がかなりの被害を被っていた。
中華連邦軍侵攻艦隊総司令官に任命され、艦隊の旗艦である大和型超弩級特務戦艦一番艦“大和”に搭乗している
今回白虎より告げられた作戦は五段階に渡る。
現在行われているのは敵艦隊の誘い込み。
味方の被害報告が次々に挙がるがそれを聞きながらも決して撤退はせず、誘い込みがバレない程度に攻撃とゆるやかな後退の指示だけを行う。
「重巡洋艦天龍轟沈。ならびに龍田航行不能!」
「駆逐艦深雪が魚雷の攻撃にて撃沈されました。白雪が十八艦隊の支援を要請しています」
「霰を向かわせろ。龍田乗組員には退艦許可を出せ」
すでに前衛艦隊の二割がやられ、弩級戦艦二隻が炎上している。
しかしながらこの事に対して藤堂は何ら焦るようなことは無かった。
なにせこの弩級戦艦は時間を稼ぐためだけの艦隊の囮であるのだから。
木造超弩級設計試作戦艦“長門”と“陸奥”。
超弩級戦艦である大和型を建造するにあたって、力学バランスや設計の確認やテストを行う際に組み立てられた木造艦。
それに薄い鉄板を張りつけ、遠目で見れば大和型に見えるようにした張りぼてなのだ。
大和型の武装も見られるがそれも見掛け倒しで、副砲と数機の対空砲のみで戦闘能力はかなり低い。
ただし、その面積のほとんどが木造の為に砲撃が直撃しようと貫通するだけで航行不能になるダメージを負う事はほとんどない。
白虎がこれを使う様に指示したのには、弩級戦艦に搭載されたゲフィオンディスターバーによる索敵システム無効化のエネルギーの使用を控える目的があったからだ。
敵のレーダーに引っ掛からず、自動砲撃から逃れられるシステムは、自動に慣れた現代戦闘においてはかなりの優位性を発揮するが、それを使用する為のエネルギーは有限で消費が激しい。
ゆえに木造戦艦を囮として使用する時間をギリギリまで抑えるのだという。
おかげで未だに弩級戦艦はそのシステムをまだ使わずにいた。
長門と陸奥には煙幕発生装置と火災が発生しているように見せるライトと噴出機が所々に設置されて、中華連邦軍はブリタニアが手も足も出なかった戦艦を自分達はあそこまで被害を与えたぞと喜んでいる事だろう。
まぁ、被害状況からそろそろ二隻とも限界だろうが、もう暫し耐えて貰いたい。
そうすれば我々は次の段階へ移行することが出来るのだから。
願いながら待ち続けていた藤堂の耳に通信兵より報告が舞い込む。
「中華連邦艦隊目標地点に到達!」
「赤城と加賀に出撃させるように伝えよ」
八八艦隊で建造されたのは戦艦ばかりではなく、戦艦八隻に空母八隻が八八艦隊の建造計画なのだ。
藤堂が名前を出した赤城と加賀は、その八八計画で建造された八隻の空母の内の二隻。
一般的な航空母艦である空母“翔鶴”、“瑞鶴”、“蒼龍”、“飛龍”の四隻で、残りの四隻は白虎の建造計画によって新たに生み出された種類の空母となっている。
航空母艦の機能を持ちつつも戦闘艦としての役割を持たせる為、戦艦後部よりVの字に甲板を伸ばした戦闘航空母艦と名付けられた“大鳳”と“伊吹”。
そして今回の作戦の目玉となる人型自在戦闘装甲騎専用海上母艦“加賀”と“赤城”。
この二隻は名称の通りにナイトメアフレーム専用の母艦となっている。
すでにブリタニアでは海中航行を可能とするポートマン、日本では海上走行可能なホバー型無頼など海での使用を想定したナイトメアが存在する。そのうえに飛行可能なナイトメアをも想定していた白虎が、海上展開に視点を置いて設計させた。
内部格納庫にはナイトメアを格納する。
甲板上にはリニアカタパルトが六つ並べれており、三機で一個小隊のナイトメア隊を二個小隊同時に展開可能。さらにリニアカタパルトはそれぞれが甲板ごとに角度を調整でき、リニアカタパルトで得た加速と飛ばす距離を変更できるために、比較的広い範囲に射出出来る仕様になっている。
リニアカタパルトレール発艦台に足をセットしたホバー型無頼が加速を付けて、引き寄せられた中華連邦艦隊上空へと飛翔。
驚いて迎撃が遅れた艦隊上空に、無頼に取り付けられた追加バックパックよりフレアとチャフが撒かれて、敵の対空迎撃が多少なりとも緩和される。
水面に近づくと自動でバックパックのスラスターとホバーが起動し、急激なGを味わうものの海面に叩きつけられて撃破されることを阻止する。
こうして無事に着水した無頼達は密集している中華連邦艦隊に白兵戦を仕掛け、艦隊に混乱と大規模な被害を与えてゆく。
絶え間なく加賀と赤城が搭載しているホバー式無頼が発艦させる中、藤堂は次の指示を飛ばす。
「上陸艦隊前進!金剛型は盾を展開させ上陸艦護衛を務めよ!!」
上陸艇ではなく上陸艦。
歩兵を積むのではなく戦車を運ぶための艦で、中には最新鋭量産機である人型自在戦闘装甲騎“月下”を搭載してある。
無頼と異なった丸っこいフォルムをした月下は受ける空気抵抗を受け流すだけでなく、角度によってはナイトメアの銃撃を逸らすように計算させて設計されたラクシャータの作成したナイトメアだ。
性能はランスロットや紅蓮弐式には及ばないものの、ブリタニアのグロースターを超える性能を持ち、搭乗しているのは日本軍の精鋭部隊の一つである、藤堂が鍛え上げた人型自在戦闘装甲騎大隊なのである。
技能でも性能でも中華連邦のナイトメア隊を圧倒する彼らが上陸すれば、たちまち沿岸部の防衛網は陥落するだろう。
が、上陸部隊を陸にあげまいと、沿岸部には巨大なピラミッド状の陸上戦艦“竜胆”を中心に複数大隊規模の鋼髏が並んでいる。
上陸艦でも護衛艦を付けたとしても集中砲火により上陸どころか近づくのも困難。
その問題を解決したのが白虎とロイドが作り上げた金剛型と呼ばれる戦艦である。
以前のパレードでは通常の装備を乗せて参加したが、今回は正式な装備を取り付けてある。
搭載兵器は対艦用レールガンが前後で二基と対空砲が数基のみ。
正直白虎やロイドからすれば、それすらも無駄なのではと最初は無しにしようとしていた艦――艦隊護衛戦闘艦金剛型。
役割は艦内の大部分を発生しているエネルギーを使った大規模なブレイズルミナスを用いた艦隊防衛にあった。
金剛型はSFでいうバリアを展開して後方や側面に居る艦艇を護りながら前進する。
なんでも“ヤマト”を思い出して建造の案を出して貰ったとか言っていたが、その頃はまだ大和も設計前の筈なんだが…。
疑問を浮かべながらも、巨大なブレイズルミナスで沿岸部や艦隊の砲撃を受ける金剛型の活躍もあって上陸艦は沿岸部に接近。
上陸作戦で重要なのは上陸部隊を如何に護るかと、上陸阻止してくる敵軍の兵器をどれだけ無力化するに掛かっている。
金剛型は見事に役割を果たした。
後はステルス潜水艦隊による敵部隊の無力化が肝となる。
千葉から指揮を受け継いだ仙波大佐のステルス潜水艦隊が沿岸部近くまで接近し浮上。
垂直発射管より新型ミサイル“天の勾玉”を全弾発射すると急速潜航して離脱。
勿論迎撃の命令は下るだろうが、ゲフィオンディスターバーを利用したステルス潜水艦により迎撃可能範囲内に潜り込まれての至近距離でのミサイルは、迎撃システムが完璧に作動するには時間が短すぎる。
鋼髏部隊の上空へと発射されたミサイル群は下に落ちる事無く空中で飛散し、小型の円盤状の機械を振りまいた。
それこそ勾玉と称される落下時の耐久性を高めた小型化されたゲフィオンディスターバーであり、サクラダイトに干渉する事から範囲内の鋼髏の動きを制止させた。
ラクシャータ曰く、効果範囲も持続時間も短い未完成品らしいが、短時間の作戦で数さえ揃えれれば範囲の問題をカバー出来る事から神楽耶が提案した新兵器。
元はラクシャータのゲフィオンディスターバーと白虎考案のZ弾から得たそうだ。
何しろ上陸してからの迎撃が格段に減らされ、多くの月下が無事に上陸を果たした。
「上陸艦が沿岸部に到着!人型自在戦闘装甲騎隊上陸を開始!一番乗りは朝比奈 省吾少佐です!」
「無茶をしなければいいがな…。全機に通達――作戦は最終段階に入った。我らの任務は中華連邦沿岸部の勢力の排除であり、中華連邦領土の制圧が目的ではない。その点を留意しつつ作戦成功に最後まで気を抜かず努めよ」
朝比奈の月下を先頭にゲフィオンディスターバー対策を施された月下を主軸とした人型自在戦闘装甲騎大隊が沿岸部を駆け、次々と残存戦力へと襲い掛かる。
超火力を誇る竜胆も接近されてはその火力を生かすことなく、抵抗虚しく爆炎を上げ始めた。
これで中華連邦侵攻の大部分が終了した。
藤堂は小さくため息を漏らして苦笑いを浮かべた。
もはや侵攻作戦は終了したも同じであろう。
侵攻作戦と言うよりは中華連邦に対して行われる作戦のほとんどが…だがな。
四聖剣を除いた本作戦に参加した兵士達は知らされていないが、我々は大規模な―――――囮なのだ。
準備を整えた白虎からの宣戦布告を受け、一日も経たない内に侵攻作戦を開始した事で対応で大宦官は大慌て。
確実に対応に必至だろうから、周囲の軍を集めて日本軍と対峙している隙に中華連邦の同志が朱禁城にて象徴たる天子様を保護したまま各地で蜂起。
同時に日本企業が集まる区画にて紅月 ナオトが率いる部隊が防衛ラインを形成する。
白虎曰く「優秀な奴らでは無いから対応仕切れない」との事だが、間髪入れずの宣戦布告からの侵攻作戦という奇襲を仕掛けられた上に、内部で武装蜂起が起きたら、さすがに優秀だからとか関係なしに対応できないと思うのだが…。
なんにしてもこれで侵攻艦隊の役割は終了した。
残るは白虎に委ねるだけ。
後のことは任せ、藤堂は目の前の仕事を片付けるべく最後まで油断することなく指示を出すのであった。
首都洛陽に位置する天子の居城であり、大宦官共が居城としている朱禁城は、内乱勃発と同時にほぼ無血で制圧された。
中華連邦のトップに君臨する“天子”の居城と言う事で警備は万全を尽くされていたが、内乱の首謀者である黎 星刻の一派が長年をかけて警備の者を自分達の同志で固めていた結果、朱禁城に残っていた大宦官以外はあっさりと星刻側に入り、朱禁城の制圧は驚くほど短期間で済んだ。
ほぼ無血と言ったのは、天子を私利私欲で利用してきた大宦官を粛正した為で、味方・一般の警備隊双方で戦闘があったわけではない。
現在は朱禁城を中心に防衛線を展開。
準備していた通信網を用いて大宦官の不正を公表し、各地で待機していた同志諸君の先導で大宦官に対する暴動の指揮が行われている。
首謀者である黎星刻は天子様を信頼のおける補佐官の
ナイトメアフレーム“
日本の枢木 白虎がラクシャータ・チャウラーに作らせた異常なナイトメアフレーム。
基本性能はグロースターどころかランスロットや紅蓮弐式を凌駕しており、その恐るべきスペックは並みの乗り手では絶対に扱いきれないものとなっている。
武装は両腕部に取り付けられたフーチ型スラッシュハーケンと巨大中国刀のみ。
基本ナイトメア同士の戦いは銃撃戦であり、対して神虎の武装は接近戦を想定したものばかり。
だが、星刻は確信していた。
火力と銃撃戦に優れた鋼髏を相手にしても、この神虎ならば問題ないと。
「洪古。大宦官は天子様奪還を目論んでいる。別動隊の索敵を怠るなよ」
防衛線の指揮を執っている
指示を出して敵の陣形を確認する。
レーダーや索敵班からの報告を地図と照らし合わせ、予想通りに事が進んでいる事を把握した。
この戦いは圧倒的に星刻側が有利になるようになっている。
大宦官は早期の内乱の解消を目論んでいる。
そうなれば一番手っ取り早いのは、星刻側が旗印にしている天子の奪還が最優先。
しかしながら朱禁城は、星刻側のナイトメアを含んだ部隊で制圧。
朱禁城付近は街が形成されているので鋼髏大軍での行軍は不可能で、歩兵部隊で侵攻してもナイトメア相手には難しい。
天子の存在を考えると、空爆の手段は事態の悪化を招くのは火を見るより明らか。と、なると鋼髏を小分けにして別々のルートで進むしかない。
その事を解らない星刻ではない。
目標が朱禁城であるならルートは自ずと絞られ、すでに予想侵攻ルートには対ナイトメア用のトラップや奇襲伏兵目的の歩兵、鋼髏による防衛線を形成済み。
朱禁城の制圧を目論むのなら、最善策は包囲しての持久戦などが考えられるが、内乱に加えて日本軍の侵攻が行われている以上時間をかける訳にはいかない。
後は鋼髏部隊を囮として天子様奪還目的の少数精鋭の潜入部隊だろうが、そちらは周香凛と洪古に任せておけば大丈夫だろう。
問題は広場に集結するであろう部隊の存在だ。
空爆は風向きや威力や燃料を考えると天子に危害を与える可能性が高い。
逆に兵器と場所さえ選べれば朱禁城に攻撃は出来る。
最重要人物である天子はまず安全な場所に置かれるのは明白。
潜入部隊への目暗ましと到達した鋼髏が突入する事、そして天子が絶対に居ないであろう場所。
朱禁城外壁部分の破壊ならば容易に出来る。
地形を把握した上で、そう言った限られた攻撃手段が最適な地点が数か所点在する。
高い戦闘能力と機動力を有する星刻が搭乗した神虎は、その地点に展開する部隊の排除の為に出撃したのである。
目標地点近くまで差し掛かると大きく跳び、目標地点を見下ろす。
予想通り、迫撃砲を運び込んだ部隊と護衛の鋼髏二個小隊がそこにいた。
跳んだ神虎に鋼髏の銃撃が集中するも、左腕に取り付けられたフーチ型スラッシュハーケンを回転させ、弾丸を弾き飛ばしながら近づいて行く。
着地と同時に右腕のフーチ型スラッシュハーケンを射出して敵機の内の一騎に突き刺すと、片腕の力のみで引っ張って盾にする。神虎を撃ち抜こうとしていた弾丸が鋼髏を蜂の巣にし、慌てて射撃を停止させるも重大なダメージを負った鋼髏は爆散。周囲に黒煙を撒いて視界を遮る。
何処からくるかと周囲を計画する鋼髏部隊をあざ笑うかのように神虎は黒煙の中を突っ切って迫って来た。
混乱しながらも銃口を向けるも神虎の機動力の方が早く、距離を詰められると同時に巨大中国刀で切り伏せた。
短時間で二騎を仕留められ、残りの四騎は自身の身を護るべく味方に構わず発砲を開始。
が、高過ぎる機動力と常人離れした技量により弾丸は掠りもしない。
まるで陽炎や幻影を相手にしているようにすべての攻撃は意味はなく、いつの間にか巨大中国刀かフーチ型スラッシュハーケンで機体は大破炎上…。
六機の鋼髏は一分もかからぬうちに一騎のナイトメアによって壊滅したのだ。
残骸となった鋼髏に囲まれる形で立ち尽くす神虎。
コクピット内の星刻は驚愕していた。
片腕で軽々と鋼髏を振り回せる腕力。
既存の兵器――否、既存のナイトメアですら凌駕するであろう機動力。
問題点を挙げるとすれば、性能が良すぎて下手なパイロットは殺してしまう事ぐらいか。
「これで
設置中だった迫撃砲を破壊すると神虎はその場を離れ、次の地点へと向かう。
あの男を味方に付けて良かったと思いながら。
東シナ海に集結した日本軍の中華連邦侵攻艦隊より離れ、黄海へと侵出している艦隊が存在していた。
大鳳や伊吹同様に建造させた護衛空母“鳳翔”と、大和型超弩級特務戦艦三番艦“信濃”と四番艦“紀伊”の三隻だ。
地形的にも大きさ的にも確実にレーダー網に引っ掛かりそうな艦隊ではあるものの、大和型に搭載されたゲフィオンディスターバーを用いたジャミング機能によりレーダー網を騙し、夜闇に紛れれたので目視での発見を逃れていた。
鳳翔の艦橋の艦長席の横に設けられた一席に腰かけていた枢木 白虎元帥は、眠気覚ましにハッカ味のドロップを放り込み苦悶の表情を浮かべていた。
「眠たいんだったら子守唄でも歌ってやろうか?」
「ピザ食いながら歌う気か?勘弁してくれ…」
「私の様な美女にされるのだから本望だろう」
「……確かにな」
「寝惚けてますか?」
いつものように背凭れに凭れながら冗談交じりに話してきたC.C.に眠気で思考が鈍っていた白虎はぼんやりと返事を返し、隣の艦長席に座る神楽耶の笑ってない笑みを向けられる。
怒気を含んだ雰囲気に眠気は吹き飛び、助けを求めるように視線を動かすが、逆隣りに座るナナリーも通信席に腰かけるセシル、そしてスザクもさっと顔を逸らす。
白虎大隊副官の井上とクロヴィスは雰囲気を感じ取った瞬間には顔を合わせないようにそっぽを向き、ロイドに至っては視線が合っても「なにかな?」と言わんばかりに首を傾げ、咲世子は微笑み返してきた…。
C.C.は……多分ニヤニヤと嗤っているだろうから振り向かないでおこう。
空気を変えようとコホンと咳き込み話題を振る。
「せ、戦況はどうなってんの?」
「藤堂少将率いる艦隊は中華連邦の上陸阻止部隊を壊滅させたそうです。それと北京を始めとした各地で武装蜂起が行われ、多くの中華連邦人民による暴動も多発して、すでに中華連邦は大混乱に陥ってます」
「ナオトの方は?」
「中華連邦に進出していた企業関係者の保護を継続中。防衛ラインにて多少の戦闘はあったものの問題はないとの事です」
「おめでとお~、これで作戦通り動けますね」
「予定変更なしにランスロットのデータが取れるからって嬉しそうだねぇ」
巻き込まないでと言わんばかりに事務的に返事を返すセシルに対して、空気をまったく読んで居ないロイドの発言にホッと胸を撫でおろす。
隣でムッとした表情を浮かべている神楽耶は小さくため息を漏らし、多少怒気を緩めてくれた。
これは後で失言の埋め合わせをしないと大変なことになるなと頭に留め置き、ロイドが作り出した緩んだ空気に乗る事にする。
「さぁて、ロリータ救済に行くか」
「しろ兄…発言に問題があると思いますが」
「作戦行動中だからって硬いぞ。もっと気楽に行こうや」
と言っても真面目なスザクの事だから、そういう訳にはいかないんだろうな。
なにせこの後の作戦で斬り込み役を務め、スザクがしくじれば部隊が壊滅する可能性もあるので責任も重大。
そんな状態で余裕をかませれるほど不良軍人ではない。
弟自慢の兄貴としては嬉しい話ではあるが、作戦開始までまだ時間があるのだから少しは気を休めないと持たない。
頃合いを見てスザクの自室で待機しているユフィの下に行かせるとしようか。
「閣下が立場もあるんですから言動には気を付けた方が宜しいかと」
スザクに劣らず真面目なセシルの一言に頭を悩ませる。
確かに今までのように振舞うには立場が大きくなり過ぎた。
出来れば気楽に振舞えて、権力を持ちたかったがその両立はさすがに厳しかったからなぁ…。
とりあえず注意もされたので言葉遣いには注意しようと思う。
「ふぅむ…良し。天子様と黎 星刻の仲を進展させに向かいますか―――で正しいか?」
「賛成です。天子様もさぞ喜ぶでしょう」
「お前ら目的を忘れてないか?」
先の雰囲気から一転して喰いついた神楽耶と俺に、C.C.を始めとした冷たい視線が降り注がれる。
けれどもこの視線には白虎は一切動じずに「当然だろ」と言い返す。
「忘れてねぇよ。けどな俺がここにいる全員を信用してんだ。何の問題も無く達成できる自信しかねぇよ。失敗なんて百億%あり得ねぇよ」
この時、井上はズルいと白虎をジト目で睨んでいた。
どんなに世間的に求められる英雄を演じても中身はいい加減でふざけた性格の悪い人物だが、忘れかけたころにこう言った人の心を引き付ける発言を叩きつけてくるのだ。
それも無意識に…。
どうせ次の作戦では大変な目に合うのだろうなと解っていても、付いて行きたくなるではないですか。
期待や呆れ、羨望が混じったような視線を受けながら、白虎は悪い笑みを浮かべる。
「さぁ、大宦官の豚共のケツを蹴っ飛ばして