日本国をエリア11とは呼ばせない   作:チェリオ

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第32話 「殺し屋と捨て猫を」

 久しぶりのデートだ。

 日本と違って、中華連邦ではそこまで顔を一般的に知られてないので気軽に出歩ける。

 必要だったためとは言え、肩書が重荷でとても面倒。

 諸々から解放されて、心身ともに清々しい気持ちで歩いていた。

 突如周りが停止するまでは…。

 

 視界内の者が停止した。

 まるで時が止まったように。

 神楽耶は笑ったまま硬直しているし、動きと同時に声も消失したが、それは近場だけで、遠くからは音は聞こえてくる。

 おかしい…。

 そう思っている中、一人の少年が堂々と眼前へと歩み、銃口を向けて来る。

 癖毛のショート。

 幼さが強く残る少年。

 コードギアスR2より登場したキャラクター。

 

 ……そんな事はどうでも良いか…。

 

 「テメェ何してくれてんだ?」

 「―――ッ!?」

 

 解っている。

 時間が止まったように見えるのは、範囲内の生態時間を停止させるギアスを使用した事が原因で、この餓鬼は俺の暗殺をしに来たのだろう。

 だが、すでにC.C.よりコードを受け取っている俺には無意味。

 動くとは思っていなかった相手に驚いてギアスが解除される。

 よく驚いた時に心臓が飛び出るかと思ったっていうけど、こいつの場合が心臓が動いた…だな。

 

 暗殺者として多くの者を屠って殺しの経験は詰んでいても、相手が動かないという生易しい状況下での殺しでは、戦闘の経験は身に付かなかったようだ。

 銃の射程を活かさずに、人の間合いに命中率重視で接近しているのだから。

 仕方がないと言えば仕方がない…。

 

 焦りながらもトリガーを引こうとする前に、銃を左手で上へと向けさせる。 

 しっかりと銃を捻って、トリガーガードに指を引っ掻けて抜け出さないようにする。折れないようにはしたが、限界ギリギリまで捻られた指の痛みに顔を歪ませて力が籠り、入った力はトリガーを引いて銃声を響かす。

 周囲の人間が驚き声を挙げこちらを視認する。

 右手で胸倉を掴むと左手を銃から手首に持ち替え、持ち上げながら背を向けて少年の重心を腰に乗せる。

 あとはそのまま怒りを露わにしながら前へと叩きつけるのみ。

 

 「久しぶりのデートの邪魔してんじゃぁあねぇええよ!!」

 

 そのままぐるんと背負い投げの形で地面に叩きつけ、伸び切った糞餓鬼を睨みつける。

 一応後頭部を打たないように、掴んでいた腕を引っ張って激突はさせなかったから大丈夫だろうけど、腰の方は相当痛むだろうな。デートの邪魔したにしては軽く済ませた方だがな。

 パチパチと拍手を送ってくる神楽耶に申し訳なさそうな表情を浮かべて振り返る。

 

 「お見事でした」

 「あぁ…悪いけどデートはまた今度だな」

 「そうですね。まずは悪戯小僧に折檻しませんと」

 「悪戯で済むのかこれ?」

 

 周囲の者が唖然とする中、白虎は幼い暗殺者を引き摺りながら、神楽耶と共に朱禁城に戻るのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 昔からボクは命令を聞くだけの人形だった…。

 母親も父親も居たのだろうが、物心ついた頃にはギアス響団に所属していた。

 ギアス響団はギアスを研究する皇帝直属の極秘機関であり、研究の為の被験体(モルモット)として孤児を拾い、売られた子を買ったりしており、そのどちらかだったのだろう。今となっては知る術も調べる気も無いが。

 言われるがままギアスを与えられ、モルモットとして研究材料として扱われ、範囲内の体感時間を止めるというギアスは暗殺に向いているという事で暗殺者として命を受けてきた。

 今回もいつもと変わらない暗殺依頼。

 例え相手が大物議員だろうと屈強な戦士だろうと、ギアスを使えば身動きすることも出来ずに一方的に殺せる。

 だから相手が日本国を名実ともに掌握し、ブリタニアの脅威として認定されている者だとしても同じだ。

 いや、同じはずだった…。

 

 まさかギアスが通用しないどころか捕らえられるとは…。

 

 効かなかった事に動揺したとはいえ、こうも呆気なく捕まるとは思わなかった。

 しかも相手は殺そうとした相手だというのに手枷も足枷もせずに、護衛もつけずに一室にて目もくれずに食事をとっている。

 油断しているというよりも舐め切っているとしか思えない事に対して想うところあるも、こうもあからさまだと逆に罠だと思い、一歩も動けない。

 ……と言っても別の理由で一歩も動けないのだが。

 

 「ネブロス(・・・・)っつったっけか。食わねぇのか?」

 

 一人椅子に腰かけ、わざわざ朱禁城の料理長に作らせたかつ丼を掻き込みながら、枢木 白虎は机の上に置いてあるもう一つの丼を指差す。

 逃げるにしても、再び殺そうとするにも体力を回復させねばならない。

 毒を盛られている可能性も過るが、殺そうとするならばもっと楽な手段はあった筈。

 だから食べる事に関しては何ら躊躇いはないのだけど、気絶していた間に着替えさせられた服装のせいで一歩も動けない。

 

 現在ネブロスは下着も含めて衣類は全部取り上げられ、一着のセーターを着せられていた。

 背中と側面がぽっかりと空き、後ろから側面は首元と腰回り以外は開けたセーターという、ギリギリ服と呼べる品物。

 露出と下着もない事から部屋の隅に蹲り、セーターの裾を引っ張って見えないようにするので羞恥心から動けない。

 唯一救いなのが、露出により寒い筈だが部屋の中は温かくされてあったことか。

 

 「刑事もんで捕まった相手にはかつ丼だけど実際ないらしいんだよなぁ。どう思うよ…」

 「ボクが思っているのは貴方がド変態と言う事ですよ」

 「文句は俺に言うなよ。神楽耶がこれ着させたら面白いと渡して来たんだから」

 「だからって着させますか!?」

 「男を縛って喜ぶ趣味はないからな。ほらよ」

 

 腰掛にしていた日本軍の制服を投げ渡して来たので、受け取って袖を通す。 

 ロングコート状の制服である事と、白虎と身長さがあった為に全身が隠せて、もはや裾を引っ張って隠す必要はなくなった。

 部屋の片隅から立ち上がって席に付き、手が付けられていなかった丼に手を付ける。

 睨みながら黙々と食べていると、頬付きをつきながら眺めて来る。

 値踏みしているようでも警戒しているようでもない視線に違和感を覚える。

 

 「……なんですか」

 「別に」

 

 なにか言いたげながらも口を噤んだという事は、言うべきではない。または言う事ではなかったという事だろうか。

 考えてもこの変人を理解することは難しいだろう。

 ただ黙ってスプーンを動かして腹を満たす。

 かつ丼を粗方食い切ってお茶に口を付けた時、閉じていた口を白虎が開いた。 

 

 「で、お前さんこれからどうすんだ?」

 

 唐突な問いではあるが、意味は何と無しに察せれた。

 暗殺に失敗して素顔や素性を知られた暗殺者の末路など、容易に想像できる。

 さらに今回の暗殺内容を聞いた時の感じから、V.V.の私怨も混じって居るようだった事から余計にだ。

 戻ったところで殺される可能性が高い。なら暗殺を遂げるかと思うも、ギアスの利かない相手に挑んでも結果は見えているし、今回の件で警戒と対策もするだろうから、単独で事を成すのは不可能となるだろう。三つ目の選択肢としては逃げるというものもあるが、逃げ出した者がどうなったかなどは良く知っている。

 結局待っているものは一緒…。

 

 「さぁ、どうしましょうかね」

 

 出てきた返答はそれだけだった。

 我が身を捨ててでも任務を熟すだけの忠節は抱いておらず、かと言って他にしたい事ややるべき事が有るかと言えばない。考え付かないだけかも知れないが、それならないも一緒だろう。

 軽く生返事した白虎は、だったらと言葉を続ける。

 

 「俺んとこで働くか?」

 「……自分が言っている意味理解してますか?」

 「解らず言ってると思うのか?」

 

 微笑を浮かべて言葉を投げかける様子から冗談とも取れるが、この変態の言う事だから本気で言ってそうだ。

 ならば余計に質が悪い。

 自分を殺そうとした相手と無防備に同室にいるだけでも問題しかないというのに、自分の手元に置こうとしているのだから正気とは思えない。

 呆れにも似た感情を抱かれていることなぞ、手を取る様に理解しながら、白虎は気にすることなく続きを話す。

 

 「俺はお前が生きて行くのに問題ない環境を提供しよう。そうだなぁ…秘書官か直属のナイトメアパイロットのどちらかで働いて貰うとして、偽造の身分証明書を用意しないと給料を振り込めないから、まずそっちからか。神楽耶に分家の戸籍でも…いや、うち(枢木)の潰えた分家があった筈だから、それで良いか。食事も出るし給料もしっかり払うし、暗殺なんてこそこそした内職はやらせる気はない。こんな感じでどうだ?」

 「どうだって言われてもボクは…」

 「そして首輪を外してやる」

 

 首輪を外す…。

 何を示した言葉なのかと考えれば、思い当たる節は一つしかない。

 

 「まさか貴方はギアス響団を!?」

 「お前さんは追手の無い自由な身に。俺はブラコンのショタジジイを蹴落とす。どちらにも都合がいいだろ?」

 

 驚きの余り、開いた口がパクパクと金魚のように開閉を繰り返す。

 

 「勝算はあるんでしょうね?」

 「愚問だな」

 

 自信に満ち、狂気を孕んだ笑みに電流が走ったような感覚に陥らされる。

 手が僅かながら震え、産まれた感情に戸惑う。

 これは恐怖?いや、違う。これは高揚…ボクは奴の言葉に高ぶっているというのか。

 余計に戸惑うが、そんな事はお構い無しに言葉は続く。

 

 「っと、そうだ。名前無いんだろ?」

 「あったのかも知れませんが知りませんね」

 「コードネーム“ネブロス”っうのは呼び辛くてな。今日からロロ(・・)で宜しく」

 「はい?」

 

 もうこの短い時間に何度驚かされた事か。

 脳内がパンクしそうなほど思考を働かせていたが、ポンっと優しく頭を撫でられた事で停止する。

 

 「ハッピーバースデイ、ロロ」

 

 初めて掛けられた言葉にトクンと胸が高鳴る。

 優しい音色の言葉に耳と心を捕らえられ、戸惑ってわたわたとテンパり始めた。

 その様子を笑った白虎は立ち上がり、出入り口へと向かって歩き出して振り返る。

 

 「新しい門出だ。付いて来いロロ」

 「何処に行く気ですか?」

 「決まってんだろ。お前さんの誕生祝に飯でも食いに行くんだよ」

 

 信じても良いのだろうか…。

 ネブロス改めロロは不安ながらも淡い期待を胸に、自分の意志で白虎に付いて行く。

 ………羽織っているとは言え、どのような服装を着ていたかも忘れて…。

 

 

 

 

 

 

 朱禁城の門付近に一人の青年が立っていた。

 サングラス付きのヘッドホンで目から耳まで覆い、長身ゆえに遠くからでも目立つ。

 ラフな格好で天子様の居城前に立っていては、門番が気にするのは当然だろう。

 

 「そこで何をしている?」

 「ちょっと中に居る人に用があってね。通してくれないかな?」

 「何を馬鹿なことを」

 

 断られるなら断れば良いさ。

 ボクのギアスは相手の思考を読む。

 どんな人間だってばらされたくない秘密は存在する。

 それを明るみに晒されるぐらいならと、大抵は大人しく言う事を聞いてくれるんだ。

 もっともボクのギアスは暴走状態にあって、いつも発動している。

 人の心の声が五月蠅いので、録音していたC.C.の声を流しているヘッドホンの音量を下げれば、すぐに相手の心は覗ける。

 ヘッドホンに触れて音量を下げようとした矢先、門番は思い出して追い払おうとしたのを止めた。

 

 「名前を聞いても良いか?それと会いたい相手と言うのも」

 「……そんなの聞いてどうするのさ」

 

 おかしいと判断して思考を読み取るも、悪意の類は聞き取れなかった。

 寧ろ“マオ”という男性ならば案内して欲しいと言われているらしい。

 疑うよりも、まずC.C.が話を通しておいてくれたのかと喜びが溢れる。

 

 「マオ。ボクはC.C.に会いに来たのさ」

 「あぁ、やっぱりそうか。少し待っていてくれ。連絡を入れて来る」

 

 一応逃げ出せるように周囲を警戒しつつ、連絡を付けた男の思考を読み取る。

 他の雑音も入るが、朱禁城前と言う事もあって雑音は街中よりは少ない。五月蠅い事には違いないが…。

 どうやら自分が来たら通すように言われていたらしくが、それ以上のことは知らされていない様だ。

 連絡を終えて戻ってきた男は、面倒臭そうに思いながら愛想笑いを浮かべている。

 心が読めるゆえに気持ちが悪い…。

 

 「上からの連絡で…」

 「良いよそんな説明。早く連れて行ってもらえるかな」

 

 こちらも面倒なので、催促してさっさと連れて行けと促す。

 嫌な顔をしないように繕っているがどうでも良い。

 ボクはC.C.にさえ会えればいいのだから。

 道中思考を拾って罠ではないかを確認しながら進む。

 正直ここも雑音塗れで聞きたくなかったが、万が一のことを考えて警戒しておくべきだろう。

 そう思いながら先導されたマオだが警戒は杞憂であり、罠など一切なく、無事に目的地である部屋まで送られたのである。

 何もなかったことに安堵する一方で、それならばヘッドホンの音を上げておけばよかったと舌打ちをする。

 ここまで案内した門番は愛想笑いを浮かべ、この部屋だと示すとさっさと去って行った。

 待っていろという事かと、雑音のしない室内に入ろうと扉を開けた。

 開けるなりマオは驚愕した。

 中からは誰の思念も聞こえはしなかったからこそ、用心することなく足を踏み入れた。だというのに一人の青年がソファに腰かけて、お茶を楽しみながらそこに居た。

 

 「…何故……」

 「どうぞおかけください」

 

 カップを置き、対面のソファに促されるが、マオは一歩も動けなかった。

 目を見開いて驚きを露わにしつつ、慌ててヘッドホンを取って思考を読むことに集中する。

 しかしながら周囲からの雑音は聞こえても、正面の男からは何も聞こえはしない。

 一体どういうことなのだ!?

 

 「どうし――」

 「どうしてお前の考えが読めないんだ?」

 

 言おうとしたことが先に言われた。

 もしや同じ思考を読むタイプのギアス使い!?

 

 「ボクの――」

 「考えが読めるのか?」 

 

 クスリと笑って首を横に振る。

 

 「読んでないし、読めませんよ」

 「ならお前はどうして考えている事が分かった!」

 「まぁまぁ、立ち話もなんですからどうぞ」

 

 空いていたカップにお茶を注ぎ、用意されていたお茶菓子の横に置かれる。

 急く気持ちをグッと堪えてドカリと荒々しくソファに腰かけ、男を忌々しく睨みつける。

 

 「遠路遥々よくお越しくださいました。私は枢木 白虎。C.C.さんとは現在行動を共にしている者です」

 

 知っている者が見ればこいつは誰だと目を疑う白虎の態度に、マオは一切反応を示さなかったが、行動を共にしている点にだけは強い反応を示した。

 しかしながら思考の読めない相手にいつもの手口は使えず、力付くで聞き出そうとも相手は軍人。対人能力なんてギアス依存して先読みできたのならまだしも、ギアスの効かない現役軍人に対人戦を挑むほど馬鹿ではない。

 

 「ボクが聞きたいのはC.C.の居場所。それとどうしてボクのギアスが効かないのかという二点だけだ」

 

 嫌悪と苛立ちを露わにしたまま問う。

 嫌だったのだ。

 ギアスが効くか効かないかではなく、自分が寂しい想いをしていた間にC.C.と共に行動していた白虎に嫉妬して、怒りや嫌悪が積もる。

 対して白虎は原作でマオのことは知っており、集団生活などをせずに一人生活してきた事から、見た目は青年でも中身は餓鬼だと理解しているので、今日に限って、今回に限っては大人しく対応し、先の問いの返しを口にする。

 

 「問いの答えですが私がC.C.のコードを継承したからですよ」

 「コード?継承?」

 

 白虎が説明し始めた事柄にマオは戸惑う。

 不老不死だったことは知っていたが、そのコードを継承して死にたいために、自身をギアスユーザーにした事。

 暴走状態に陥ったが、己の意志で制御する見込みがない事。

 それらを鑑みて、願いを叶えてくれそうにないから捨てたのだとか…。

 信じない。

 信じたくない。

 そもそもこいつが本当の事を言っているのかさえ分からない。

 いや、嘘の筈だ。

 そうであってくれ。

 

 「C.C.に会わせろ!」

 「別に良いですけど会いたいですか?本当に?本当の本当に?」

 

 ニタリと嗤いながら問うてくる白虎に、怒りよりも恐怖を覚えた。

 落ち着かせようと用意されたお茶を含むが味など楽しむ余裕はなく、寧ろカップが揺れている事から、自分が震えている事を再認識して余計に心が騒めく。 

 

 「貴方が今会えば、確実にC.C.の考えが聞こえるでしょう。彼女が貴方に対してどう思っているのか。貴方に関さない思いもすべて…。

  もう一度問いますよ。会いたいですか?」

 

 言葉が出なかった。

 会いたい気持ちはあるが、それ以上に怖くて仕方が無かった。

 再びソファに腰かけて頭を抱え込む。

 会いたいけど会えない。

 すぐ側まで来ている筈なのに…。

 

 「ボクはどうすれば…」

 「簡単ですよ。貴方がギアスの制御を出来れば良いんです」

 

 ポツリと心情を零すと、今度はにこやかな笑みを浮かべて返して来た。

 どういう意味かは解らない。

 けれどC.C.と会えるのであればと喰いつくように聞き入る。

 

 「制御すればC.C.と出会っても怖い事なんてないですし、C.C.から私が受け継いだコードを貴方が継承することだって可能です。まぁ、それこそが貴方に求めていたものなんですし、出来たら思考を読む事もない上に、良くできたねマオってな感じに褒められるんじゃないですか?」

 「それこそが…」

 

 想いが弾む。

 C.C.が望んでいたボクになれば褒めてくれる…。

 脳内で慈愛に満ちた眼差しで優しい言葉をかけてくれる姿を想像して、頬が緩み赤らむ。

 

 「欲しくないですか?永遠に貴方を縛り付けるC.C.との(コード)は」

 

 甘く囁かれる言葉に、マオはもはや疑うという存在せずに二つ返事で答え、指示に従う事を条件に制御する為の支援を受けることになったのだ。

 時たまC.C.からのメッセージを届けるよと言われ、マオは警戒対象ではなく信じれる人として、認識してはいけない人物をしてしまったのだった…。

 

 

 

 

 

 枢木 白虎はギアスユーザーと言う稀有な存在が手駒――コホン、仲間になった事に、喜びよりも悩みの種として頭を痛めていた。

 ギアス響団への対処は元々予定していたけども、中華連邦が落ち着いてからと思っていた分、ロロが来たことは予定外のイレギュラーでしかない。 

 逆にマオは誘き寄せた。

 奴の場合は後に回した方が厄介な気がしたので、新政権を開く黎星刻と日本軍が協力関係だと公表する際に、一緒にC.C.を映らせたのだ。腹ペコの肉食獣に新鮮な獲物をぶら下げるのと同じで、マオなら絶対に喰らい付いてくると断言出来た。

 少なからず期待していたとは言え、何の備えも無しに朱禁城に訪れるとは思わなかったがな。

 両者とも飢えた餓鬼だとアニメや漫画で知っているから、繋ぎとめる事は案外と楽だ。

 まぁ、ロロは与えすぎると爆弾化するので注意が必要であるがな。

 問題はギアス響団の指示で俺の暗殺に来ている事実。

 大事な大事な弟を殺されたV.V.はさぞやお怒りだろう。

 ゆえに差し向けられた暗殺者。

 結果はどうなったかと急いているだろうと予想し、ロロより報告を受けた定時連絡の時間の間隔から確信した。

 今はロロが誤魔化しているが、時間が掛かれば掛かるほど、焦って二の矢を放ってくるに違いない。

 原作登場キャラのギアスユーザーなら対処可能だが、原作に登場していない上に俺を対象にしないギアスであったなら対処不可能となる。

 それにいつロロの偽りが露見するかもわからない。

 

 「さっさと片付けるか」

 

 忌々しく呟く。

 しかし、ギアスユーザーが巣食っているギアス響団に通常装備で挑めば、少なくとも死者が出る。

 短い時間で最大限の準備を行わないといけない。

 頭痛の為に、思わず溜め息を漏らして机を叩いて八つ当たりする。

 こうなるのであれば、大和型も浮遊できるようにして46cm砲で砲撃出来る計画を組んでおくんだったと、今更思っても仕方がないと想いながら白虎は計画を練る。

 ここをしくじればすべてが水の泡と消えるのだから…。


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