日本国をエリア11とは呼ばせない   作:チェリオ

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 明けましておめでとうございます。
 本年もどうぞよろしくお願い致します。


第34話 「混沌極まるユーロピア」

 ユーロピア共和国連合。

 アニメ一期ではシャルル皇帝が演説時に名前を出したり、二期ではスザクが暴れまわったり、連合に入っていた国々が合集国に加入していたなどのシーンしかなくて、大々的に描かれなかったブリタニアや中華連邦に並ぶ勢力。

 外伝である“亡国のアキト”では連合国の政治家は国民の受けだけを気にし、将や軍人は差別意識が高かったり、責任の押し付けを先に視野に入れて行動しながら、戦局によっては調子に乗って無謀な進撃をする。

 白虎であるならばこう言うだろう。

 コードギアスにおける“日本国並みに上層部に無能が巣食っている国”だと。

 

 ユーロピア共和国連合とユーロ・ブリタニアとの勢力圏が重なっている激戦区。

 

 有利な戦況に浮かれた軍上層部が迂闊にも侵攻した結果、起こってしまった戦闘。

 有人機も無人機も敵も味方も入り混じった戦場を、数機のナイトメア部隊が駆け抜けていく。

 機体こそブリタニア製ナイトメアフレームのグロースターであったが、紫と黒のカラーリングが赤と白へと変更され、所々装飾されていて、一見すると別機に見間違うカスタムされた“グロースター・ソードマン”。

 それら七機を連れて先頭を行くのは全身真っ赤なグロースター・ソードマン。ユーロ・ブリタニア四大騎士団の一つ、ミハエル騎士団所属のアシュラ隊隊長アシュレイ・アシュラの機体だ。

 少数なれど侮る事なかれ。

 彼ら一騎一騎が強者で、無人機程度であるならば無双するだけの技量を携えている。

 

 共和国連合軍の脆弱な防衛網を突破し、敵司令部にアシュレイが迫る。

 司令部防衛部隊が慌てて迎撃するも呆気なく切り裂かれた。

 あっと言う間の出来事に本部の上層部は抵抗どころか逃げる事も叶わず、振り上げられた一振りにて消し飛んだ。

 

 「こんなもんかよゼロってやつは!」

 

 本陣を落したアシュレイは思ったより軽い手ごたえに苛立ちさえ覚える。

 もう少し楽しめると思っていただけに、バトルジャンキーのアシュレイにとっては不完全燃焼以外の何者でもない。

 

 『アシュレイ様!!』

 

 部下であるヨハネの鬼気迫る声に眉を顰める。

 この状況下で何に焦っているというのか。

 疑問を口にする前に高熱源体がレーダーを覆い、桜色の閃光が周囲を包んだ。

 モニターが閃光に包まれる中、背後より衝撃を受けてアシュレイ機は転がる。

 何が起きたかなんて突然の混乱で分かる筈もなく、閃光が消え去ったモニターを睨んで周囲を確認する。

 

 「ヨハネ!アラン!ルネ!」

 

 爆発に巻き込まれた部下の名を叫ぶが返事が返ってくることはなかった。

 何とか立ち上がらせようと操作するも、撃破されてないだけでかなりのダメージを負い、右手は火花を散らすばかりで動かない。

 

 『ご無事ですかアシュレイさ――』

 

 無事だったクザン機が近づこうとした瞬間、上半身が撃ち抜かれて機体が弾け飛んだ。

 何処に伏していたのかアレクサンダ・ドローン数十機が銃口を向け、容赦のない攻撃を仕掛けて来ていた。

 全ては罠だった。

 舌打ちしようと後悔しようと泣き喚こうと、散った部下たちは戻らない。

 

 せめて一矢報いてやろうと満身創痍の機体で駆ける。

 満足な回避行動も出来ぬまま、アシュレイ機は荒れ狂う銃撃の中に消えていくのであった。

 

 

 

                                                          

         

 アシュラ隊壊滅の報告は、ミハエル騎士団長であるミケーレ・マンフレディに衝撃を与えた。

 団長として彼らの実力は重々承知してしたし、強敵と認識されていた相手は全部抑えていた。

 誰もアシュラ隊を阻む者など居ないと思っていた自身の判断ミスと、義弟シン・ヒュウガ・シャイングの直属の部下を死なせてしまったという後悔の念が大きい。

 が、そればかりを悩んでいる余裕がないのも事実。

 “三剣豪”と呼ばれる自身の優秀な騎士が指揮する分隊各隊からも、被害報告が報告され始めた。

 先ほどまで圧倒的優勢だったのに、本部を落してから一気に形勢が逆転された。

 

 「さすがと言うべきか」

 

 さすがユーロ・ブリタニアを苦しめているゼロだ。

 この状況は自身の見立ての甘さが招いた結果。

 義弟であるシンは、ユーロピアのナイトメアに性能差かパイロットの腕か分からないが押されている。

 一度の見誤りにしてはツケが大きすぎる。

 すでに戦況を打開しようと身ずからG-1ベースより出撃したが、巻き返すよりも相手がチェックを掛ける方が早いだろうな。

 そう思って戦況を維持しようと指示を出そうとした時、けたたましく接近警報が鳴り響く。

 何事かと振り返れば、周囲を固めていたサザーランドやグロースターが迎撃しておおり、何時まで経っても銃撃が止む気配がない。

 その敵機がモニターに映り込むのにそう時間は掛からなかった。

 

 「突破しただと!?」

 『アンタが指揮官か!!』

 

 真紅のナイトメア―――紅蓮弐式が周囲に展開していたナイトメアを跳び越えて接近してきた。

 確かに戦場で指揮官を狙うのは上策だ。

 だがこうも正面から突破されるというのは癪に障る。

 ミケーレは後退しながら鞘に収まっていたヒートソードを抜き、グロースター・ソードマン(・・・・・・・・・・・・)を前進させる。

 現在はユーロ・ブリタニアで騎士団長をやっているが、元々は神聖ブリタニア帝国に所属し、皇帝直属の十二騎士ナイトオブラウンズのナイトオブツー。

 ナイトメア操縦技量にはかなりの自信があった。

 相手がゼロ直属のエースであろうと負ける筈は無いと。

 

 着地を狙って剣を振るえば体勢を捻るだけで躱され、白銀の巨腕が迫る。

 すでに紅蓮の情報は幾らかユーロ・ブリタニアでも共有されており、この腕が何をしているのかは理解出来ていなくとも、捕まれば敗北が決する兵器であることは知っている。

 またも退くと同時に剣で斬り落とそうと振るうが、鋭い爪で弾かれた。

 こうも容易く攻撃を防がれた事と、見事に対応した相手の反応速度に驚く。

 

 「まさかラウンズ並みの腕前か!?」

 『さすが強い…』

 

 これは全力で挑まねば負ける。

 そう理解したミケーレはヒートソードの二刀を持って斬り込む。

 一撃一撃が必殺となる剛剣を振るい、猛攻と誇りを持って紅蓮をねじ伏せようと前へと踏み込む。

 いつもは穏やかな微笑みを浮かべていた優し気な雰囲気は消え失せ、悪鬼羅刹を思わせる気迫を纏う。

 周囲のサザーランドやグロースターは援護しようと銃口を向けるが、二機の攻撃が激し過ぎて手が出せず呆然と見守るばかり。

 

 そしてミケーレは悟った。

 このまま行けば自身が負けると。

 剣を結べば相手の技量や機体の凡そのスペックは把握できる。

 相手のパイロットの技量は自身と同格またはそれ以上。

 腕が上なだけで戦場の素人なら幾らでも手はあるが、場数を踏んでいるだけあって中々手強い。

 さらに機体性能は段違いに高い。

 技量、経験、機体とどれをとっても同等以上の相手に勝利を収めるなど、藁の山から針を探す程に難しい。

 しかし負ける訳にはいかない。

 

 「ウオオオオオオオ!!」

 

 腹の底から咆哮を挙げ、渾身の力を持って斬りかかる。

 紅蓮を切断するかのような力強く大振りな一振り。

 隙の大きい一撃をカレンが見逃す訳もなく、右手ごと輻射波動機構を内蔵した右手で捉える。

 機体の手が水膨れにでもなったかの無数に膨れ上がり膨張し、それは秒で剣へ肩へと浸食を始める。

 それを待っていた。

 すぐさまに右腕をパージする操作を行い勢いよく外れた腕から煙が発生した。

 全体を覆う程に多くは無いが、一瞬だけでも目暗ましにはなる。

 優れたパイロットというのは、反射神経もそうだが目が良い者が多い。

 奴も同じくそうであろう。

 ならば、この煙にいち早く気付いて注意が私から煙に移る。

 そここそが狙う好機。

 距離を取る事もせずに左手のヒートソードが紅蓮の腹部へと伸びる。

 

 『――ごめん』

 

 ぼそりと謝罪の言葉を耳にしたかと思いきや、紅蓮に突き刺さる筈のヒートソードが砕け折れ、コクピットを大きく揺らす衝撃が襲う。

 混乱しながらもミケーレはなぜそうなったのかを知る。

 突き出した先には紅蓮が呂号乙型特斬刀(特殊鍛造合金製ナイフ)を構えており、腕力とナイフの硬度や威力に対して、炎を纏う機構を内蔵していたヒートソードが負けたのだ。

 

 「何と言うナイトメアか。いや、違ったな。それを操るパイロットが優れているのだな」

 

 苦笑いを浮かべつつ、先の衝撃の原因で今も尚前部のコクピットブロックを掴んでいる右手から脱しようとランドスピナーを最大で後退しようとするも、ビクともしない。

 

 『アンタ…強かったよ』

 

 脳裏に妹や母上、義弟、そして聖ラファエル騎士団総帥の友人との何気ない日常が脳裏を通り過ぎた。

 最後に何かを残す事も出来ず、ミケーレは輻射波動の一撃を受けると、愛機の爆発にその身は消えた。

 

 爆散する前に機体より手を離した紅蓮に対し、周囲の聖ミカエル騎士団の機体が仇討ちをしようとするも、ジェレミア率いる別動隊からの攻撃を受け体勢を崩す。

 急遽立て直しが必要な状態で総帥を失った聖ミカエル騎士団は、副官を務めるミケーレの義弟のシンより撤退命令を受けて渋々この戦域より離脱し、また新たな勝ち星がゼロ率いる黒の騎士団に追加されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ゼロの仮面を被り、指揮を執っていたルルーシュは満足気にほくそ笑む。

 騎士団総帥を討ち取り、厄介な部隊であるアシュラ隊を葬り、シン・ヒュウガ・シャイングを取り逃がした(・・・・・・)

 何もかもが上手くいった。

 共和国連合本部でなく、仮拠点として配置させたトレーラー内で椅子の背もたれに凭れる。

 

 「―――宜しいのですか?」

 

 愉悦感に浸っていたルルーシュに、険しい表情を浮かべたレイラ・マルカルが問うてくる。

 見えない筈の仮面で隠れている瞳を見つめるように、問うてきた。

 

 「構わない。これ以上追撃すれば、こちらの被害も相当なものになるしな」

 「本当にそれだけでしょうか?」

 

 彼女は優秀だ。

 白虎がユーロピアで名を挙げ、自ら見た彼女への評価。

 多少甘さがあるものの、指揮官として有能。

 作戦立案も見事なもので、部下の生存率を挙げる為だったら自らの出撃もいとわない。

 そんな彼女が疑っている。

 否、確信を持って問うているのだろう。

 何を成すかではなく、何か別の目的の為に何かを仕込んだのだと。

 ゆえにルルーシュは…。

 

 「無論含むところはある。が、今説明することは出来ない」

 

 嘘を語るのではなく濁す選択肢を取る。

 あと少ない期間とは言え、それまでは彼女を手元に置いておかなければ盤上が乱れる恐れがある。下手をすれば水の泡になることだって。

 

 現在ユーロピア共和国連合は死に体と化していた。

 一向に戦果を挙げられない共和国連合に国民は不満感を向け、唯一戦果を謳う様に挙げるゼロの黒の騎士団。

 支持を一身に背負うのは傍から見ても明らかだ。

 そして全戦全勝負け知らずの黒の騎士団は、ユーロ・ブリタニアに大打撃を与えた。

 ミケーレ指揮下の聖ミカエル騎士団の半壊に、聖ガブリエル騎士団の壊滅。

 すでに四大騎士団の半数が敗れ、ユーロ・ブリタニアは戦線の維持すら難しい状態へと陥っている。

 恥じ入りながらもブリタニア本国に救援要請を出すも、ブリタニア自体の余力が無さ過ぎて十分なサポートは出来ない。

 ユーロピア国民は共和国連合が勝利を収めるのも間近と騒いだがそうは問屋が……ルルーシュと白虎が許さなかった。

 

 正直に、連合の体裁を保っている共和国連合は、この先の計画上邪魔なだけ。

 だからギアスで支配下に置いた、独裁政権を企てていたジィーン・スマイラス将軍を動かして共和国連合を分断した。

分断さえ出来れば用済みなので都合の良い踏み台として黒の騎士団の糧となって頂いたがね。

 おかげで共和国連合は独裁派と民主派に分かれて疑心暗鬼に陥っている。中には共和国連合より離脱して新たな連合を生み出そうと動く国すらあるほどに。

 

 ここまでやればユーロ・ブリタニアが攻めて来る可能性があるが、それはないと知り得た情報から断言しよう。

 間違いなくユーロ・ブリタニアは荒れるに荒れる。

 日向 アキト少佐から聞いたシン・ヒュウガ・シャイングという聖ミカエル騎士団副官の事を。

 白虎からおよその目的を耳にしている。

 義兄を失った彼はどう動く。

 ユーロ・ブリタニアも荒れる。

 絶対に荒れる。

 

 仮面の内側で微笑み姿勢を正す。

 

 「納得は出来ないか。今はそれでいい」

 

 白虎曰く、ユーロピアの勝利は端から分かりきっていた。

 ルルーシュ同等か超える様な指揮官や軍師はレイラ以外には見当たらず、“亡国のアキト”開始前だからヴェルキンゲトリクスは存在せず、紅蓮弐式やラクシャータが合流した事で性能で圧倒出来た。

 知略でも技術でも勝っている。

 手加減をしないルルーシュにとってこれほど有利な状況は存在しない。

 

 「さぁ、行くぞ副官殿。彼ら(・・)を待たせる訳にはいかないからな」

 

 誰にも見えない事を理解した上で、歪んだ満身の笑みを浮かべる。

 見世物も佳境。

 クライマックスが見えてきた。

 

 嗤う。

 ようやく出し物は終焉を迎え、新たな世界を進める事を思い描いて…。

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