第二次日本侵攻作戦。
超大国である神聖ブリタニア帝国が第一次上陸作戦の失敗を経て、作戦内容と戦力を強化して行った大規模侵攻作戦。
前回の失敗に対抗する策を持って出撃し、ブリタニア上層部はもう負ける事は無いと大船に乗ったつもりで結果を上機嫌で待っていた。
されど第一次同様に期待は大きく裏切られた。
まず東京方面に向かったコーネリア貴下の艦隊が、白虎が指揮する輸送艦隊に奇策を用いられ大損害を受けて撤退させられた。
この事実には驚きこそすれど上層部は決して慌てる事は無かった。なにせ東京方面の艦隊は首都東京に進軍することで注意を引く意図が大きく、侵攻軍の主力でもなかったからだ。
問題は新潟に向けて進む第三艦隊と確保した北海道に上陸しようとした主力の第一艦隊である。
第三艦隊は各港で補給しながらフィリピン海から東シナ海、日本海へ進んで行く予定だった。しかし、中華連邦で補給しようとすれば港はいろんな理由を付けて封鎖され、補給が出来ない状態で進軍する羽目に。至急物資を積んだ艦が出され、荷物を積み込んだが、砲弾や食料など到着までの荷物を積み込めば進軍速度は落ち、艦は大きく水面に沈み込んだ。
それでも意地で何とか突き進んだ。
日本海軍は第一次で壊滅しているので海上での抵抗は皆無だというのが上層部の見解だった。ゆえに荷物を大量に積んで、機動力が低下しても問題ないと踏んだのだ。
その見解は大当たりだった。
進軍中日本海軍の艦隊は目にすることは無かった。
日本海軍のは、だが…
新潟に近づいた辺りで大型タンカーが駆逐艦二隻に護衛されているのを目撃。大型タンカーや駆逐艦に掲げられている国旗は中華連邦のもの。日本領海内で見かけたことに不信感はあったものの、下手な対応をしてしまえば大国同士の戦争に発展しかねない。国を動かす大物なら兎も角、現場指揮官である彼らがそんな戦争のトリガーを切りたがるはずもなく、ブリタニア艦隊は無視を決め込もうとした。
日本の国旗を掲げた小型の輸送艦よりある積み荷が乗せられるまでは。
大型タンカーのクレーンにて積み込まれていたのは、神聖ブリタニア帝国の最新技術で創り出された新型陸戦兵器――ナイトメアフレーム【グラスゴー】。
さすがに軍事機密の塊を見逃すわけにもいかず、牽制射を加え検問という形で取り押さえる事を艦隊総司令は判断した。
命令を受けた駆逐艦達が先回りしながら牽制射を放った。勿論、大型タンカーには当てないようにだ。
しかし、発砲後に大型タンカー後部が爆発。燃料に引火したのか誘爆が発生して後部は瞬く間に火の海と化した。
ブリタニア艦隊所属の兵士達は驚いた事だろう。なにせ何の非もない中華連邦に対して攻撃を行ったのだから。
乗組員がタンカーより飛び降り、日本の輸送艦と中華連邦の駆逐艦達が救助に当たる。
当たってしまって焦り、艦隊司令はすかさず救助活動に参加して少しでも状況緩和を図ろうとしたが、まるで謀っていたかのように日本領海外で待機していた中華連邦艦隊が一気に雪崩れ込み、『ブリタニア軍が先に仕掛けて来た』『襲われた同胞を助け出せ』と大義を叫びながらブリタニア艦隊との戦闘に発展。
積み荷にて機動力を失っていた艦隊は数と機動力で勝った中華連邦艦隊の攻撃により多くの艦が行動不能に追いやられた。
これらすべて白虎の策である。
中華連邦としては今回の戦争は見守るつもりであったが、ブリタニア軍の最新技術の塊であるナイトメアが欲しくないかと問われれば欲しいと即答するレベルであり、ナイトメアをブリキの人形と呼称し、一騎分の装備一式を詰め込んだセットをおもちゃ箱と称して二セット分譲る事を約束したのだ。
だからと言ってブリタニアと戦う大義名分を持ち合わせない中華連邦は乗り気ではないとの事で、牽制射と同時にタンカーを爆破して大義名分を作ってしまう策を提案。それと戦闘で多く死に過ぎないように轟沈や積極的な戦闘は避けて追い払う事を主軸に動き、日本との戦争に苦戦している現状では中華連邦にまで手が回らない実情から交渉によっては良い条件を引き出せるだろうと話せば大宦官も乗ってくれた。
ついでに五年間のサクラダイト輸出量35%を約束する確約もつけたがね。
残るは主力の第一艦隊だったが、そちらは空軍のほうで対処してもらった。
第一次でも上陸部隊への対応においても戦力を温存して貰っていた空軍の全力戦闘。後でデータを見せて貰ったのだが凄かった。苛烈と言うか容赦がないと言うか…。
空軍にはケイオス爆雷を応用した対空ミサイルなどを提案したりしたのだが、誰が正面に左右上下に鋼ニードルを撒き散らすミサイルを想像できるか。せいぜいケイオス爆雷に誘導性能を持たせる程度だと思って試射会に行ったら唖然としたよ。
試作品を作り上げた空軍の技術者も「どうですか(ドヤ)」じゃねぇよ。想像以上過ぎるわ!
おかげで対戦闘機・対ミサイルに対して有効な兵器が完成したから良いけどさ。驚いたよ。敵艦載機と艦隊の第一射のミサイル群を数で劣るミサイルでほとんど撃ち落としたんだから。編隊を組んでいた戦闘機部隊も一機二機ではなく五機六機で落としていくし。
それとどれだけの訓練と鍛錬を積んだのか分からないが、現行の戦闘機で海面ギリギリを飛行して最新鋭の魚雷を撃つか?あと上空から艦に対してほぼ90度で降下してぶつからない様に途中で軌道を変える様は人間技に見えない。
原作なのかこの世界独特なのか海軍や陸軍に比べて空軍があまり優遇されていない。
剣や弓矢で戦っていた頃から存在する【陸軍】に、木造船が戦いに使用され始めた事で生まれた【海軍】。大昔から存在する二つに比べたら近代になって生まれた空軍は歴史が浅い。だからなのかは分からないが見下されることが多々見受けられる。
いつか見返してやろうとやる気満々の所にその機会と資金持って行ったら化け物が出来るんだね。怖くて近づけねぇよ。
まぁ、おかげで空軍と陸軍(主に白虎と)が仲良くなった訳だが、逆に海軍がご立腹なんだよねぇ…。
知っての通り第一次で艦隊のほとんどが海の藻屑に消えてしまった海軍に対して陸軍に見下していた空軍が大戦果を叩き出した。面白くないと感じるのは当然のことだ。プラスで俺が対ブリタニアを想定して作った新兵器の予算は海軍の予算を親父が回したもの。それに陸軍が艦隊を所持したら余計に怒らせ、火に油どころか航空燃料を投下したレベルでキレている。
少しでも怒りを緩和させるために艦隊再建を手伝わせてもらっている。中華連邦や反ブリタニア勢力より中古だが艦船を手配したり、観光会社や輸送会社が持っている大型船やフェリーを改修して軽空母にする話し合いや手筈を整えたりと。
話が逸れたが空軍の想定外過ぎる活躍のおかげでブリタニア第一艦隊は大きく乱され、大慌てしたクロヴィスは速攻で撤退して行って第二次侵攻阻止作戦は終了した。
こうしてブリタニアの第二陣を押し返した白虎は久しぶりの休暇を楽しむのであった。
舞鶴軍港にほど近い温泉旅館に白虎一行は訪れていた。
最初はふらりと行こうとしたのだがメンバーの中に神楽耶が居た事で貸し切りにする必要があったので時間が多少掛かってしまった。なにせ神楽耶の皇家はコードギアスで日本の象徴的な家柄。警備も無しにほいほい行くわけにもいかない。
俺の見立てでは軍の再編もあるが責任問題の追及なんかもあるから三週間はブリタニアは攻めてこないと判断しているので、一週間ほど久々の休みを取る事にしているので、別段時間が掛かろうと問題なかった。三日ほど京都観光して入った旅館は中々風情があり、何度かテレビで拝見した歴史あるところだった。
どうやって三日で貸し切りにしたんだろうか?確か三か月先まで予約で埋まっていたような………あまり考えないでおこうか。資金も俺の懐じゃなく親父持ちだし。
考えるのを止めて目の前の事に集中する。
シャンプーにトリートメント、ボディソープにボディミルク、肌触りときめ細やかな泡立ちで選んだボディタオルにシャンプーハット、ブラシなどすべて持ってきている事を確認してシャンプーハットを手に取る。
勿論だが俺が被るものじゃない。そもそもこれらはスザク用のセットで、自分のは安物のボディタオルに最悪固形石鹸一つで事足りるし。
「もうしろにい、おれこれいらないって」
「でも目に入るの嫌だろう?」
「だ、だけどさぁ…むぅ」
納得していない様だが諦めたのか大人しく前を向いて椅子に腰かける。
まずブラシで髪をすいて埃を落とし、ぬるま湯ですすぐ。汚れや埃を軽く落としたところでシャンプーハットを被せ、シャンプーで頭皮を指の腹で揉むように洗い、終えたらトリートメントで仕上げていく。
身体は全身隈なく洗っていたら前に恥ずかしいと断られたので背中のみ。洗ったらスザクも洗ってくれるので洗いっこと言うやつだ。
いつも洗っている訳ではない。
軍属になって家を空ける事も増え、戦争が始まっては指揮所に泊り込んだり、下準備でいろんな所へ出張したりと帰れることが少なくなりすぎる。ゆえに軍属になったあたりで家に帰れるときはたまに風呂を一緒に入って洗ってやったり、どこかに連れて行ったりと普段構えない分なるべく構うようにしている。
洗い終えたらゆっくりと湯船に浸かっていく。
最近は司令部や前線に詰めていたりもあってシャワーか濡れタオルで済ませていたから肩まで湯に浸かれるというありがたみが良く分かる。骨身まで染み入るようで心地よい。
「あ~、生き返る」
「……なんかじいさんっぽい」
「爺!?」
まさかお爺さん判定入れられるとは思っておらず、身体は癒されつつ心に大ダメージを負ってしまった。寧ろダメージのほうがデカすぎる。
そんな白虎に気をかけることなく、貸し切り状態という現状に興奮しているスザクは大浴場で大いに泳ぎまくる。
マナー的に大問題だけど男湯を使用するのは俺とスザクのみ。ならまぁ良いかと肩まで浸かり息をつく。
バシャバシャと泳ぐ水音以外には静かなこの状況に胸を撫でおろす。
実感する。
俺の行ってきたことは無駄ではなかった。
こうしてスザクと一緒にのんびりできるのだから………。
ボーとしながらゆっくりしていた白虎はふと気が付いた。
さっきまでバシャバシャと響いていた水音が消えた事に。
慌てて辺りを見渡すと顔真っ赤にしてのぼせ始めて、大人しくなったスザクの姿があった。
「ってオイ!のぼせそうならそう言えよ」
「ふぁ~、しろにいがふたりいるぅ」
「完璧のぼせてんじゃねぇかよ!?」
ふにゃと今にも湯船に頭を浸けそうなスザクを抱え脱衣所へ。タオルで水を拭き取り、旅館貸し出しの浴衣を着せて自動販売機で買ったスポーツドリンクを渡して部屋まで急ぐ。
本来なら牛乳瓶を買うところなんだけどそうは言っていられない。部屋に着くと風通しの良い窓際に転ばせてゆっくりと休ませる。
「大丈夫か?」
「らいじょうぶ」
「おもっくそ駄目じゃねぇか。まぁ、ゆっくり休めよ」
「……ん」
「?――あぁ」
手を差し出してこちらを見つめる。
なんだろうと小首をかしげたかすぐに理解して手を握ってやる。ニコっと笑うスザクを見下ろしながら空いている片手で頭を撫でてやる。
すると扉がガラリと開き、誰かが入って来た。
一応護身用に銃を携帯しており、手を伸ばそうとするが誰が入って来たのか分かったので手を止める。
「先に戻っていたのね。あれ?スザクが倒れてるのじゃ」
「どうせお風呂ではしゃいでたんでしょ」
「うるさいよ」
「のぼせたのですか?水分補給を――」
「紅月さん…その段は缶ビールしか入ってなかったよ。ジュースは一つ下」
部屋に入って来たのは皇 神楽耶に紅月親子である。
義勇兵に入って現在俺の下で働いている紅月 ナオトとは色々な話をしており、家の話も多少聞いている。彼の家庭は母子家庭で母親が女手一つで子供二人を育ててきたのだと。ナオトはもう一人立ちできるほど大きくなったが、まだ幼い妹のカレンが居り、今でも忙しく仕事と家事を両立させようと頑張っているそうだ。
だったらと住み込みの女中として家で働いてもらっているのだ。女中は一名雇っているのだが世話をするどころか世話される側の人間だからなC.C.は…。
―――と、表向きはそういう理由で雇ったが実際は違う。
原作の黒の騎士団最強のパイロット、紅月 カレンを手元に置いておきたいというのが本当の理由だ。
此度の戦いは上手く行っても引き分け、やや負け越しといった形で終止符を打つ形になるだろう。いや、そうしなければならないのだが。その際に日本が日本として進むことになるが、そうなったらカレンは日本軍に志願するだろうか?
俺はしないと思う。
日本がそのまま残るという事は兄ナオトが反ブリタニア組織を作る事もなく、母親がリフレインに手を出すこともない。元々仲の良い家族で平和な日々を謳歌するだろう。何かしら原因が無ければ軍に志願することもない。
それでは困るのだ。日本が日本であれた場合、準備に準備を重ねて手を打ちに行く。その際にはルルーシュは勿論カレンの力も必要となる。
もしもここで関係性を生んでなければ勧誘も難しい。関係性があれば何かしら誘えるかも知れない。
正直可能性が一から二になる程度の話だが、打てる手は打っておきたい。
我ながら冷たい人間だとは思うよ。スザクの為とは言え誰かを利用しようと考えて行動するんだから。
「今なら何でも出来るよね?」
「よね?じゃない。なにマウントポジション取ろうとしてんだ」
動けない事をいいことにニタリと笑みを浮かべたカレンの首根っこを掴んで止める。
嬉しい誤算なのかな?スザクとカレンは正直仲が良い。と言うのもカレンが女の子らしい遊びよりも男の子のように元気に遊びまくるのでお互いに遊ぶ内容が合致するのだ。今では神楽耶よりもカレンと遊んでいる事の方が多いらしい。
出会ったばかりはスザクがカレンの事を「おとこおんな」と言ったりして喧嘩ばかりで、ある日を境に喧嘩をしなくなったとか。
―――ゆっくりピザを食べれないという理由から二人が池に放り込まれてからだったか…。
それから喧嘩すること自体が減って、普通に遊ぶことが多くなり、今では二人とも加減無しの全力で遊ぶ仲に……逆にそれはそれで心配なんだが…。
「気心の知れた仲ってのは良いんだがな」
「シロさんもお兄ちゃんと仲いいでしょ?」
「良いけどよ。スザクがナオ兄つって懐いているのがちょっと」
「それって嫉妬?」
「いんや、ヤキモチ」
「何が違うの?」
「印象」
「ふーん」
スザクの近くからカレンを離して下ろすとC.C.に咲世子さんも入って来た。
篠崎 咲世子。
原作では元々アッシュフォード家に雇われ、ルルーシュ&ナナリーに仕えていたメイドで、本職はSPという篠崎流37代目。
俺の認識では忍者なのだが本人に言うと毎回否定される……解せぬ。
彼女も紅月さんと同時期に雇わせてもらった。
枢木家別邸にスザクもナナリーも良く居るのだが、電子機器の防犯設備以外に頼れる者が居ない事に今更ながら気が付いて、原作の彼女を思い出して雇ったのだ。護衛としてもメイドとしても優秀な彼女の存在は本当にありがたい。紅月さんは少し抜けているところがあるし、C.C.は女中の肩書を持っているだけの自宅警備員と化しているし…。
紅月さんはアニメでも花瓶を割ったり、脚立を倒して壊してしまったりとドジと言うか何と言うか、そのような場面があった。あの頃は色々な心労が重なってリフレインという薬物に手を出してしまったが為の副作用だと思っていたが、素であんな感じだと咲世子さんより連絡を貰った。
タバスコと間違えてコチュジャンを渡すか?
かけて食べた時のC.C.の様子を生で見てみたかったな…。
「おい、ピザの注文を頼む」
「旅館でピザを頼むかフツー…」
「すでに注文は済ませておりますよ」
「あ、コーラならありますよ」
「咲世子さん、仕事が早いのは凄いんだけどその注文は取り下げて。夕食は旅館の方で出されるから。それと紅月さん、今持っている瓶はコーラじゃなくて黒ビール。ラベルよく見て…」
「し~ろ~!!」
「おおぉ!?」
後ろから抱き着かれて驚き振り返ると、頬を膨らませてジト目で睨んでくる神楽耶がご立腹の御様子。
お風呂上りというのもあって神楽耶の体温がいつもよりほんのり温かく、湯船に浸かっているのとは違う心地よさがある。
「何か言う事ないの?」
「んぁ?………あ、あー」
何を言わんとしているのか分からずキョトンとしたが、彼女達も温泉上がりで旅館が用意した浴衣を着ている事に気付いてしまったなぁと頭を掻く。
身体ごと振り返って軽く持ち上げた神楽耶を胡坐を掻いている真ん中にポスンと降ろす。逆にキョトンとした表情をする神楽耶を優しく抱きしめて耳元で囁く。
「凄く似合ってるよ」
「―――ッ!?ふ、フフン、そうでしょ!」
さっきまでの表情は満面の笑みへと変わり、若干頬や耳が赤くなっている。
………C.C.さん、ぼそっとロリコンって言うの止めてくれない。意味を分かってないスザクやカレンに言われそうなんで。そう言えば余計に言うんだろうから口には出さないけどさぁ。
徐々に騒がしくなる一室を眺め、白虎は心より願う。
こんな日々がずっと続けばいいのにと…。
その後、夕食でも騒がしさが絶えない状況に心身ともに戦場以上に疲れた白虎であった。