艦隊これくしょん ~ナデシコの咲く丘で~   作:哀餓え男

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第十一章 邂逅と確執の助奏《オブリガート》
第百話 やっと、見つけました


 

 

 

 艦種別国際艦娘大会。対戦表。

 

 一日目。

 

 第一試合:神風 対 磯風

 

 第二試合:伊58 対 U-511

 

 第三試合:長門 対 Nelson

 

 二日目。

 

 第一試合:大淀 対 阿賀野

 

 第二試合:足柄 対 Prinz Eugen

 

 第三試合:鳳翔 対 Intrepid

 

 三日目。

 

 第一試合:雪風 対 Jervis

 

 第二試合:那智 対 Pola

 

 第三試合:大和 対 Iowa

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 「これ……全部書くんですか?」

 「いや、書くんですか?って、書き終わったんじゃないの?」

 「え?はい、対戦表は書きあがったんですが……」 

 

 対戦表の清書を頼んだ大和は「うわぁ~」とでも言いたそうに顔を歪めている。

 もしかして自分の名前があるから?しかもアイオワと対戦することになってるからかしら。

 

 「私とアイオワさんが試合とは言え戦う……か」

 「何か想うところでもあるの?」

 「無い。と言えば嘘になりますね。私と彼女はよく比べられてるようですから」

 

 こちらの世界では、って但し書きが付きそうね。

 改竄されなかった歴史ではどうなのか知りようがないけど、この世界では戦後、大和とアイオワが戦った場合はどちらが勝つか。という議論は枚挙に暇がない。

 それこそ大和の圧勝説やその逆。条件次第では大和、もしくはアイオワが有利などなど探せば切りが無いほど出てくるわ。

 でも個人的には、大和の対抗馬としてアイオワを挙げるのはナンセンスだと思ってる。

 同時代の戦艦の最高峰として大和とアイオワが挙げられてるんだと思うけど、そもそもアイオワは対大和型と言うよりは対金剛型。

 大和の対抗馬として挙げるなら、次級のモンタナ級が妥当だと思うわ。建造されてたら、だけどね。

 

 「やっぱり憎いとかって気持ちはあるの?当時の人どころか戦艦の気持ちなんて想像もつかないけど、彼女を敵として認識してたのよね?」

 「窮奇は彼女を敵だと言って嫌ってますが、私は憎いと思った事はありません。撃ち合いたかった。とは思いますが」

 

 大和は照れ臭いのか頬をポリポリと掻いてるけどさすがは戦艦、と褒めれば良いのかしら。

 大和の手元で遊んでる妖精さんたちも「お?」って感じの顔して見上げてるし、大和がハッキリと戦いたいって言うだけである程度の信頼は取り戻せそうね。

 

 「ちなみに、今のアンタ達がやり合ったらどうなる?」

 「そうですねぇ……。行われる試合のルールでは戦場が限定されていますから射程の有利不利はほぼありません。と言うよりは、性能の差が勝敗を分かつ事にはなり辛いです。ならば……」

 「勝敗を分かつのは艦娘としての練度。それに個人の力量ってとこかしら?」

 「そうなります。アイオワさんが戦うところを見たことはありませんが、どうなんです?彼女は」

 「強いわよ。正に米国最強は伊達じゃないって感じね」

 

 捷一号作戦時のアイオワの戦いを記録で見たけど、彼女戦い方は良く言えば無駄が無い。悪く言えば機械的。

 索敵から発砲までのプロセスを無駄なく、それこそライン作業のように淡々と熟してるって印象を受けたわ。

 故に隙が無い。

 艦娘だとは思えないほど、人間的な隙も死角もない彼女は正に戦闘マシーン。相手をするのが窮奇ならともかく、今の大和じゃ勝ち目はゼロね。

 

 「戦闘マシーン……ですか。不思議と彼女らしいと思ってしまいました」

 「試合には窮奇に出てもらう?」

 「窮奇は彼女を沈めるなんて言ってますよ?それは提督的にもマズいのでは?」

 「あ~、そりゃマズいわね」

 

 実艦だった頃の大和とアイオワに直接的な因縁でもあったのかしら。それとも単に、かつての敵国に所属していた艦娘だから?

 まあどちらにしても、ガチの殺し合いに発展する可能性がある以上、窮奇は試合に出せない……か。

 あれ?でもたしか……。

 

 「入れ替わりの主導権は窮奇にあるのよね?」

 「え、ええまあ……。私の意思で入れ替われた事は一度もありません」

 「しようとしたことは?」

 「それは当然……あれ?」

 「返せと言ったことはある。でも、その様子だと取り返そうとした事はないみたいね」

 

 よくよく考えればおかしな話よね。

 身体の普段の使用権は大和にあるし、窮奇は長くて数十分しか表に出ていられない。にも関わらず、現状入れ替わりは窮奇の意志に左右されている。

 それは単に、入れ替わりに大和の意思が介在してないだけであり……。

 

 「本気で取り返そうとすれば出来るんじゃない?」

 「出来るん……ですかね?」

 「私に聞き返されても困る。今度乗っ取られた時に試してみたら?」

 「そうしてみ……え?なに?」

 「どうかした?」

 「いえそのぉ……窮奇が「試すなよ?絶対に試すなよ!」って喚いてるんです」

 「いや、それってさ……」

 

 取り返すことが可能だってことでしょ。ならば同時に、その逆も出来る可能性が高い。

 だから窮奇は慌ててるんだわ。 

 もし、入れ替わりの主導権が実は大和に有ると気付かれたら困った事になるものね。主に大淀と会った時に。

 でも、これは私的にはチャンス。

 コレをネタにして説得すれば、対アイオワ戦で窮奇がアイオワを沈めない程度に力をセーブしてくれるかもしれないんだから。

 

 「ねえ大和。さっき、今のアンタたちがやり合ったらどうなるって聞いたわよね。その時、窮奇は何か言ってた?」

 「余裕だ。と言っていました。今の奴は艦娘として未完成だとも」

 「艦娘として未完成?それはどういうこと?」

 「さあ?私にも意味は……。え?代われ?ちょっと待っ……!」

 

 窮奇が出て来たわね。

 それは大和のリアクションと、さっきまで遊んでいた妖精たちさんが大和の前に整列した事ですぐにわかった。

 大和では説明出来ないから、自分から直接説明する気なのかしら。

 

 「あまり、大和に余計なこと吹き込まないでくれると助かるんだがな」

 「あら、そっちの話をしに出て来たの?」

 「そっちも込みだ。今のコイツにはまだ早いんでな」

 

 まだ早い?

 何が早いのかはわからないけど、少なくとも自分の自由が損なわれるのを恐れて言ってるんじゃないみたいね。ん?PCにメールが……。

 送り主は秘書艦席のノートPCになってるわね。

 つまりメールを書いたのは……。

 

 「窮奇?」

 「ところでさっきの話だが」

 「え?ああ、アイオワが艦娘として未完成って話ね」

 

 窮奇は私の目を見ながらノートPCを閉じた。いったいどんな内容が書いてあるのかしら……って!

 

 「これって!」

 「()()()()()()()。お前なら、後は言わなくてもわかるだろう?」

 「で、でもPCで書いたなら……」

 

 大和も書くところを見たんじゃない?と続けようとしたら、窮奇は明後日の方向を見ながらキーを打つ仕草をして見せた。

 なるほど、ブラインドタッチで書いたから大和は見ていない。って事ね。まったく、いつの間にそんな芸当を覚えたのやら……。

 いやそれよりも、こんなとんでもない情報を急に教えないでよ。また悩みが増えちゃったじゃない。

 

 「話を戻すが、お前はアイオワが戦闘マシーンのようだと言ったな?」

 「ええ、それが艦娘として未完成って事と繋がるの?」

 「ああ、だがその前に、奴も大和と同じ存在だということを教えておかないとならない」

 「大和と同じ?ちょっとそれって、アイオワも戦艦アイオワが人として転生した者ってこと!?」

 「そうだ。他にもいるのかもしれんが、私が知る限り本当の意味での艦娘は大和とアイオワだけだ」

 

 本当の意味での艦娘……。

 元艦娘の身としては複雑なことこの上ないわね。

 だって、大和やアイオワのように艦の舟魂の生まれ変わりじゃない艦娘は偽物って言われたようなものなんだもの。

 

 「勘違いするなよ?べつに艤装となった艦と同調出来た者が偽物と言いたいわけじゃない」

 「艤装となった艦?じゃあ艤装もある意味では艦の生まれ変わりって事?」

 「ん?妖精はそこまで教えてくれなかったのか?お前達が使っている艤装は、失われた歴史で沈んだ艦の無念、未練、怨念などが元となった深海棲艦を妖精が浄化した物だ」

 「じゃあ、他の艤装の内にもアンタみたいなのがいるってこと?」

 「表に出れるほどの自我があるか知らんが、居るのは間違いない」

 

 へぇ、それは本当に知らなかった。

 じゃあ、満潮が姫堕ち発動時に力を貸してと交渉しているのは、かつての駆逐艦満潮の魂そのものって事になるわね。

 

 「それでアイオワだが、奴の場合は私と大和の場合とは異なる」

 「どういう風に?」

 「簡単に言うと一つになっている。奴の艤装の内に居たであろう、深海棲艦となっていたアイオワとな」

 「それが、アンタがアイオワに勝つのは余裕だ。と言った理由?」

 「ああ、奴は一つとなったことで人間としての弱さを捨て、艦としての強さを取り戻した。だが私から言わせれば、奴がした事は艦娘としての強さを捨てたのと同義だ」

 

 艦娘としての強さって何?

 アイオワの戦いぶりは無駄がなく正確で、深海棲艦への容赦など微塵もなかった。

 正直怖いとすら思ったけど強いのは間違いない。

 にも関わらず、アイオワは艦娘としての強さを捨てたと窮奇は言った。

 実艦そのものみたいな戦い方をするアイオワと、例えば私の違いは何だろう。

 私は艦娘時代、トビウオと水切り、そして艦体指揮を駆使して戦った。しいて違いを挙げるならそれくらいだわ。

 いや、それが窮奇が言う艦娘としての強さ?

 実艦には出来ず、艦娘だから、人間だからこそ出来る事こそが艦娘としての強さって事?

 

 「大和は面白い()()をいっぱい持っているのにそれを生かそうとせん。それさえ出来れば、何者にも負けぬ無敵の戦艦に成れるというのにな」

 「アンタがそれを教えてあげればいいんじゃない?」

 「私の言う事に素直に耳を傾けるならそうするさ。だが、コイツは私の事を毛嫌いしているから聞く耳を持たん」

 

 ふぅん。

 大和が何を持っていて、それをどう戦闘に生かせるのかはわからないけど、呆れたような窮奇の顔を見る限り本当に勿体ないモノを持ってるのね。

 そして、それは窮奇では扱いきれない。

 人として育った大和だからこそ扱え、真価を発揮するモノなんだと思う。

 

 「ん?そうだ。それで良い。ようやく理解したか馬鹿者め」

 「大和が何か言ってるの?」

 「ああ、やっと自分の使い方がわかったらしい」

 

 窮奇が口にした『自分の使い方』。

 それが何なのか、何を意味するのかはまだわからない。窮奇もそこまで言う気は無さそうだしね。

 でも窮奇と入れ替わるなり、大和は憑き物がとれたような顔をしてこう言ったわ。

 

 「やっと、見つけました」って。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 大和が何を見つけたのか?

 簡単言うと戦闘スタイルね。

 

 ほら、艦娘って大なり小なり癖というか、好みの戦闘法があるじゃない?

 それは砲撃のタイミングや照準の仕方だったり、派手なので言うと各種脚技や磯風の聖剣ね。

 

 そう、大和が対アイオワ戦で見せたあの戦い方が正にそうなのよ。

 

 大和は戦艦としての戦い方に、幼少期から仕込まれていたアレを組み込んだ。

 

 今思うと、あの日にネームド戦艦『大和太夫』が誕生したと言えなくもないわね。

 

 

 ~戦後回想録~

 横須賀鎮守府司令長官 紫印円満中将へのインタビューより。

 

 

主要キャラ人気投票

  • 朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
  • 神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
  • 大和(影が薄い三部主役)
  • 紫印 円満(実質三部の主役?)
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