百八話も投稿しましたので、よろしければご覧ください(゜Д゜;≡;゜Д゜)
お姉ちゃんと阿賀野さんの差?
う~ん……性能的な差は多少有ったけど、実力的な差はほとんど無かったんじゃないかな。
たしかに、お姉ちゃんに出来て阿賀野さんに出来ないことやその逆は有ったわよ?有ったけど、そういうのをひっくるめても実力的な差は無かったと思う。
それでもあえて差が有るとすれば胸の大きさくらいのものね。
いや、比べるのも馬鹿らしいくらい阿賀野さんって大きかったじゃない?それに比べてお姉ちゃんは細やかなもんだし。
あ、もう一つあった。
あんな形で決着はしたけど、お姉ちゃんが阿賀野さんよりも有利な点が一つだけあったわ。
何か気になる?
それはね……。
~戦後回想録~
元駆逐艦満潮へのインタビューより。
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私は呉に所属している艦娘の中では古参の部類に入る。
それなのに、私は新米の駆逐艦にすら『だらし姉ぇ』と蔑まれ、私の下についてくれる子は一人もいない。
でもそれは、私がしてきた事を考えると仕方のない事だと納得はしてる。なんせ、6年も引き籠もっちゃったからね。
「そんな阿賀野がこんな大舞台で戦う……か。しかも相手は」
私の視線の先800mほど前で、米粒程度の大きさにしか見えない対戦相手の名は大淀。
大本営付きの軽巡洋艦で『一人艦隊』と謳われる正真正銘の化け物。そんな彼女に私が勝てるなんて思ってる子は、呉では霞くらいのものでしょうね。
『それでは本日の第一試合!大淀 対 阿賀野の試合を開始しまーす!』
無線を通じて聞こえる司会の浮かれたような声が勘に障る。
彼女を相手に戦うんだから、今の時点ではあまりイライラしたくないんだけどなぁ。
『始め!』
試合開始の合図と共に大淀が挨拶代わりの砲撃。当然、私も応射する。
戦闘記録で見た以上にえげつない撃ち方をするわね。
私の回避先の選択肢を減らして残りの回避先、そこからさらに次の回避予測地点に的確に撃ち込んでくるわ。
でも、それは私も同じ。
大淀の砲撃の仕方や好みの回避先なんかは全部分析して覚え、しかもそれらを含めた対応策を練りに練って挑んでるんだから。
「阿賀野の砲撃の方が多く当たる」
とは言っても、私も多少は被弾するし、今くらい距離が離れていれば彼女は直撃弾を
この後、彼女が取る行動は二通りに別れるわ。
「『稲妻』を使い始めた。砲弾を回避しつつ肉薄する気ね。だったら、プランAだ」
一部の駆逐艦が『脚技』と総称する『脚』の応用技術、その一つである『稲妻』を使う彼女を初めて見た時は鳥肌が立ったのを覚えてる。
その以前から、霞と霰が『トビウオ』を使うのは何度か見たことがあったんだけど、咄嗟の回避や落ちた速度を補うのには良いなと思ったものの、跳躍中の無防備さと融通の利かなさが気になって覚える気になれなかった。
でも『稲妻』を、正確には霞との演習で『稲妻』を使って海上を駆ける彼女を見てその考えを改めた。
駆逐艦はここまでするのか。
駆逐艦は被弾即死のリスクも、肉体的なデメリットすらも無視して戦うのかと。
いえ、そんな小難しい理由は後付けね。
私は単に、
『歓迎しますよ。ようこそ私の
彼女と私の距離は約300m。
そこまで私の砲撃を時に回避し、時に撃ち落としながら高速で一直線に向かって来た彼女が6機の偵察機を発艦させ始めた。
わざわざ技名を言ってから仕掛けてくるなんて舐めてる?
いや、舐めてる訳じゃない。
今まで、そうして技を出し損なった事が無いから事前に技名を教えるデメリットを知らないんだ。
『なっ!?』
「そんな文字通りのテレフォンパンチ、阿賀野には通じない」
私は照準を彼女の予測針路、及び予測回避先から発艦直後の偵察機に変更。結果、彼女は円形劇場の体が整う前に偵察機を全て失った。
大城戸さんの言ってた通りだ。
彼女は天才な分、人から見れば簡単に考えすぎ、短絡思考と呆れられる事でも実現できるだけの力と才能が有る。
でも、実現出来なかった経験が無いのが彼女の弱点の一つ。
簡単に言えば、彼女は慢心してるのよ。
彼女はその強さのせいで、自分に出来る事を全て駆使して挑めば決して負けないと思い込んでしまっている。
「瑞雲!」
彼女が偵察機を落とされて驚愕してる一瞬の隙を突いて、私は左足の飛行甲板から水上爆撃機の瑞雲を二機発艦させた。
本当は一気に6機全部出したかったけど、飛行甲板が装備された足を振り上げて発艦させる阿賀野型の構造上、彼女の一瞬の隙を突いて発艦させるのは二機が限界だったわ。
『高が水上爆撃機二機、私には……!』
「通用しないとでも?ざ~んねん♪通用するのよね~♪」
私は持てる砲全てで彼女への砲撃を再開し、回避と迎撃で手一杯にして瑞雲を撃ち落とす暇を奪い去った。
あとは砲撃の手を緩めず、瑞雲による爆撃でジワジワと削るだけ。
これがプランA。
1対1での戦闘で、急接近からの戦舞台や円形劇場で相手をハメ殺す戦法を好む彼女を逆にハメ殺すために考えた戦法よ。
『ひゃっ!やっ、やられた!』
今がチャンスね。
「瑞雲全機、発艦!」
私はさらに、砲撃の手をわざと緩め、それを隙だと思ってくれた彼女が頭上の瑞雲を撃墜しようと右手の砲を挙げた隙に残り4機の瑞雲を発艦させた。
ふふふ♪
冗談かと思ってたけど、彼女って本当に考えてる事が顔に出るのね。「なんでまだ4機も!?」って考えてるのが丸わかりだわ。
「あぁ、いいじゃないの~」
私はやれてる。
あの大淀を相手にして互角に、いえ互角以上に戦えてる。
彼女の戦闘記録を入手し、彼女をよく知る人からの助言や手解きを受けて事前に研究し尽くした事に若干の罪悪感は感じるけど、最強を相手に私は負けてない。
「ねえ、一つ聞いても良い?貴女、どうしてこの試合を受けたの?」
『おかしな事を聞きますね。私が戦うのは元帥閣下のため。彼の命令を遂行するためです!』
「へぇ……。命令されたから出場したんだ」
なんて羨ましい。
この人は自分の提督に命令して貰えたんだ。だから、私みたいな無名の艦娘が相手の試合でも嫌な顔一つしないんだ。
『くっ……!貴女もそうなのではないのですか!?』
「阿賀野?阿賀野は違うよ」
あの人は私に命令なんてしない。
してくれた事なんて一度しかない。この試合にだって「出ろ」ではなくて「出てもらいたい」なんて言いやがった。私と大淀に差があるとするなら、それは命令してもらえたか否かね。
「ずっと命令して欲しかった……。命令さえしてくれたら阿賀野は……」
必ずやり遂げた。その自信と覚悟があった。
自分の才能を持て余し、開戦時の混乱が治まり出しても暴力に訴える以外に自分の生き方を見いだせなかった私がやっと見つけた艦娘という生き方。
今考えると、弱い者から搾取する事にしか自分の才能を生かせなかった私が英雄に憧れたのが間違いだったのかもしれない。
でも艦娘になると決めた日から、清算しきれない過去をそれなりに清算して艦娘になった。
そして努力した。
訓練だって当時の神通に負けない位したし、自分はもちろん、当時の駆逐艦たちにも厳しく接した。
当時の私を能代や矢矧に見せてあげたいよ。
もう、あの頃の私を知ってる駆逐艦は霞と霰くらいしか残ってないけど、私だって駆逐艦たちからそれなりに慕われてたんだから。
「それでも、あの人は私を使ってくれなかった。命令してくれなかった」
そして、私は引き籠もった。霞と霰のように我慢する事なく、私は自分の殻に閉じ籠もった。
今思うと、そうすれば呆れたあの人が少しは気にかけてくれるなんて甘い妄想をしてたのかもね。
「命令、されたかったんだぁ……」
いや、少し違うか。
私はあの人から必要とされたかった。
別にあの人の事が好きなわけじゃない。
でも、着任して「駆逐艦を嚮導しろ」と命令された時に、私は必要とされてるって思えた。命令されることで初めて、人から必要とされる喜びを知った。
それなのに、あの人はその一回しか命令してくれなかった。私はただ……。
「命令されたかっただけなのに!」
『……よく、わかりました』
このまま今の戦法を続ければ勝てる。そんな考えが頭をよぎった時に信じられない事が起こった。
私は砲撃の手を緩めていない。彼女は私の砲撃を躱すのに精一杯で、瑞雲に対しては牽制程度の砲撃しか出来ていなかった。
それなのに、なんで瑞雲が全て撃墜された?
「何を……したの?」
『大淀式砲撃術その三。流れ星』
信じられない光景を見て砲撃を止めてしまった私に、彼女は静かにそう答えた。
流れ星って何?砲撃術?
まさかとは思うけど、頭上への砲撃は苦し紛れに撃っていたわけじゃなく、放物線を描いて落ちてくる砲弾で瑞雲を
『軽巡阿賀野を私の持てる全戦力、全戦技を駆使して迎え撃つべき相手だと判断しました。これより、軽巡大淀は全力戦闘を開始します』
戦闘中だと言うのに彼女が停止した。
それまでとは別人みたいな彼女の気配に気圧されて、私も思わず航行をやめてしまった。
今までは本気じゃなかった?
いや、彼女の動きは捷一号作戦時の動きと遜色がなかった。だから本気だったのは間違いない。
じゃあ何が変わるの?本気だったけど全力じゃなかったってこと?
そうか、そういう事か。
彼女は全部出していない。まだ、さっきの流れ星のように手札を隠し持ってるんだ。
私の事を、捷一号作戦時にすら使わなかった手札をも使って戦わなくてはならない相手だと認めてくれたんだ。
『構えなさい阿賀野!お仕置きの時間です!』
心臓が早鐘のように鳴っている。私の本能が逃げろと警告している。
でも、ワクワクしてる私もいる。
これから先はシミュレーションできていない。
今から姿を現すのは誰も、それこそ元帥くらいしか知ってる人がいない本当の彼女。
今から私は、本当の彼女と戦えるんだ。
だったら、私も!
「上等よ!阿賀野の本気、見せちゃうんだから!」
それを合図にして私は右、彼女は向かって左にトビウオで跳躍した。
私がトビウオを使ったことに若干驚いてたけど、彼女はすかさず滑空中の私に砲撃してきたわ。当然、私もね。
その結果は双方被弾。
装備スロット全てに瑞雲じゃなくて、一枠くらいは砲を装備しておくべきだったと若干後悔したわ。
『貴女がトビウオを習得しているとは思いもしませんでした』
「そう?だったらも~っとビックリさせちゃうんだから!」
私は着水と同事に『水切り』で反転し、同じく反転して稲妻で加速した彼女の予想着水地点へ魚雷を二発放った。
このタイミングなら『稲妻』でも進路変更は不可能。つまり直撃する。と、思った私の予想を裏切り、彼女がランダーキックのような格好で右足を海面に触れさせるのと同時に海がめくれ上がって魚雷を誤爆させた。
「うえっ!?何よそれ!」
『とある戦艦が考えた『畳み返し』と言う技の応用です』
戦艦があんな技を考えた?
だとしたら明らかに対魚雷、もしくは戦舞台並みの超近接戦を仕掛けてくる相手を想定したモノね。
彼女の「使いたくなかったなぁ……」って考えてそうな表情が気になるけど……。
『大淀式砲撃術その4。
そう言って彼女は、左手を大きく袈裟斬りでもするように振り降ろしながら砲撃した。
あの撃ち方に何の意味が?
アレじゃあ、当たっても三連装砲の真ん中、第二砲門分くらいのもの……って!そういう事!?
「ったく!とんでもないこと考えるわね!」
トビウオで右方に緊急回避した私の左舷装甲を、表面だけとは言え
そう、斬撃よ。
彼女は扇状に放った3発の砲弾を『弾』で繋ぎ、刃物のように鋭くする事で砲撃を斬撃に変えたのよ。
『まさか、初見で躱されるとは思っていませんでした』
「躱さなきゃ死んじゃうでしょ!」
彼女は要所要所で『脚技』を使い、私の砲撃を躱しながら鎌鼬を繰り出して、『脚技』で回避するしか術がない私の『装甲』を削ってくる。
このままじゃマズいわ。
砲撃による点での攻撃ではなく、斬撃による線での攻撃がここまで厄介だとは知らなかった。
この状況が続けば、彼女よりも先に私の方が体力的にも燃料的にもガス欠になる。
だったら、砲撃が斬撃に変わる距離よりさらに内側、それこそ戦舞台並みの距離まで踏み込むしかない!
「計算通りです」
私が被弾覚悟で距離を詰めようと『稲妻』で跳んだその時、見計らっていたように彼女も『稲妻』で跳んで無線無しで声が聞こえる距離まで急接近して来た。
して来たんだけど……。
「大淀式砲撃術その5。
距離が詰まると同事に、彼女は三連装砲を装備した両腕を真っ直ぐ前に突き出し、次いで太極図を描くように腕を振りながら砲撃してきた。
私はと言うと、砲撃音と共に現れた
ええ、なんとか転倒だけは免れたものの頭はパニック状態。
意識も一瞬飛んだ。
でも一瞬とは言え意識が飛んだことで、今の砲撃を分析する事ができた。
「円を描くように発射した砲弾を『弾』で繋ぎ、さらに円の内側に力場による膜を張った打撃……ってとこかしら」
「正解です。もっとも、吹き飛ばすのが精々ですが」
それでも相手が人型、もっと言うなら艦娘なら有効ね。体勢を崩すだけでなく、上手く決まれば意識まで刈り取れるんだから。
「降参、しますか?」
降参……かぁ。
今の私は海面に片膝を突いた状態。対して大淀は、10mほど距離を開けて私に狙いを定めている。
ここまでやったんだから良いかな。
使用してるのが模擬弾とは言え私も彼女も中破以上で制服までボロボロ、所々血まで滲んでるわ。
彼女をそんな姿にするまで追い込んだんだから、ここで降参しても……。
『負けるな』
「え……?」
『負けるな阿賀野。これは命令だ』
私が「降参」と口に出そうとした時、無線からあの人の声が聞こえてきた。
「負けるな」って、命令してくれた。
「あ、あぁ……。やっと、やっと……」
6年待った。
いや、初めての命令から引き籠もるまでの期間を足せばゆうに8年。8年待ってようやく、あの人が私に命令してくれた。
涙と一緒に力が湧いてくる。
私はまだやれる。まだ戦える。あの人の命令を遂行、いや完遂するんだ。
目の前の大淀を倒して、あの人の命令を完遂する!
だから……!
「降参なんて絶対にしないんだから!」
その宣誓と同事に大淀にではなく下方斜め45度の海面へと砲撃。
反動で吹き飛ばされたけど、その代償に私と大淀の間に水柱による壁を作り出した。
これで彼女に、発動の瞬間を見られる事はない。
これから発動するのは私の奥の手であり、私が再スタートするための烽火。そうそう真似されてたまるもんか。
「『機関』への燃料過剰投入開始。回せ、回せ、回せ!ぶん回せ!」
私の奥の手とは『機関』に燃料を過剰投入し、3分という短時間ながら性能を3倍に跳ね上げる艤装の裏技。
普通なら、そんな事をすれば過剰投入した瞬間に艤装が煙を噴いて壊れちゃうんだけど、私は何度も実践し、『夢物語』で問題点を洗い出し続ける内に、3分間だけ制御し続けることに成功した。
その名も……。
「
ボー!と音を立てて『機関』の煙突から黒い煙が上がり、それが治まるにつれて蒼い炎に変わっていく。
蒼い炎に変わりきり、艤装が蒼い光りに包み込まれれば制御完了。
大和型をも上回る火力と装甲、さらに軽巡洋艦の機動力と駆逐艦以上の速力を合わせ持つ今の私に『脚技』などの小手先の技は不要。と言うか『機関』の制御で手一杯で使えない。
それでも圧倒的な性能と、軽巡として培ってきた基本技術で私は最強を打倒する!
「阿賀野の本領、発揮するからね!」
私は着水と同事に高らかに、今だ水柱の向こう側にいる最強に向けて宣言して駆け出した。
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阿賀野姉の試合が行われている間の、呉所属の駆逐艦達の反応は面白かったわ。
最初こそ「あの人が大淀さんの相手になるの?」とか「何分保つか賭けへん?」「何秒の間違いじゃろ」なんて小馬鹿にしてたのが、時間が経つに連れて「あれ、誰?」とか「嘘でしょ?あの人ってあんなに強かったの?」と、信じられないモノを見たような表情に変わっていった。
私だってそうだったわ。
普段オムツ姿で寝てるだけの阿賀野姉が、あの大淀さん相手に善戦どころか追い詰めるなんて考えられる?
そんな私たちが、形勢が逆転した頃には応援するようになっていた。
阿賀野姉が砲撃する度に「惜しい!」とか「なんであそこで魚雷撃たんのじゃ!」とか「アホ!あんなタイミングで撃ったら体勢が崩れるやろ!」なんて言いながら、試合が映し出されたモニターに釘付けになってたわ。
そして阿賀野姉が回向返照を、そう、あの超ヤサイ人ブルーみたいになるヤツを発動した頃には、みんな出せる限りの声を出して「頑張れ!」って叫んでたわ。中には泣いてる子までいたっけ。
そんな中に一人だけ、何も言わず無表情でモニターを見てるだけの子がいたの。
普段から無表情で何考えてるかわかんない子ではあったんだけど、あの時だけは無表情でも嬉しいんだろうなってくらいはわかったわ。
その子、霰が口を開いたのは試合が終わった後だった。
みんなで阿賀野姉を迎えに行こうってなって駆け出した時になって、ようやく霰が一言だけ呟いたの。「ありがとう」って。
誰に対して言ったのかはわかんないわ。
でもその一言と、うっすらと微笑んでるあの子の横顔が、あの試合並みに印象的だったのだけは覚えてるわね。
~戦後回想録~
元軽巡洋艦 矢矧へのインタビューより。
主要キャラ人気投票
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朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
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神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
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大和(影が薄い三部主役)
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紫印 円満(実質三部の主役?)