十三章開始はいつになるかな~。今月中には投稿したいな~って感じです(遠い目)
円満さんに話しても信じてもらえないのですが、私と主人はよく喧嘩します。
たいていは『どちらがより相手を愛しているか』が発端のくだらない喧嘩ですが、稀に本気で喧嘩……いえ、本気で叱る事があります。
今回のコレは喧嘩とは言えませんが、阿賀野さんとの試合が終わり、捷一号作戦時以上の無茶をした私は病院で治療を受け、次いで運び込まれた病室(奇兵隊による護衛付き)でベッドの上に正座し、同じくベッドに正座した主人にお説教を受けています。
「私が君に無茶をさせていることも、君がそれに応えようとしてくれていることもわかっている。だが今回のアレはやり過ぎだ。アレはぶっつけ本番で使うには危険すぎる」
「申し訳ありません……」
主人が言っている
あの技の詳細を、お見舞いに来てくださった主人に話したらお説教が始まったと言う訳です。
「今回は命まで失う羽目にならなかったからこれくらいにしておくが、次からはもう少し自分の身を労ってくれ。君にもしもの事があったら私は……。いや、なんでもない」
この人は、私に自分の身を労れと言いながらも、単騎で連合艦隊規模の敵に突っ込めと命じたり、もしもの事があったらと心配しながらも、必要とあらば迷わず出撃を命じます。
そんな、自分が言っている事が矛盾だらけである事にこの人は苦しんでいる。
その苦しみが、私を兵器として鍛え上げ、道具として扱う自分への罰だと思っているんです。
もっとも私からすれば、この人に頼られ、信じて使ってもらえる事は至上の喜びです。
だから悩む必要も、苦しむ必要もないと言って差し上げたいのですが……。
この人が苦しむことを望んでいる以上、私からそれを言うことはありません。
ありませんが……。
「妙にニヤけているな。怒られ足りないか?」
「い、いえその!そういうわけではないのですが……。私が何を言っても、貴方には嘘ってすぐわかっちゃいますよ……ね?」
「ああ。君は考えていることが顔にこれでもかと出るからな」
ですよね。
私が考えていることは貴方に筒抜け。私が貴方を想って、貴方の苦しみは必要のないモノだとおしえないようにしているのも気付いているのでしょう。
今、貴方が私を想ってしてくれているお説教を、心の底から嬉しいと感じているのに気付いているように。
「お説教されて嬉しいと感じるなんて、やっぱりおかしい……ですか?」
「まあ、説教されて嬉しいと思う奴は稀だろうな」
「ふふ♪でも私は、朝潮だった頃から貴方に叱られるのを夢見ていたんですよ?」
「それはまた物好きな……」
主人は照れ臭かったのか、帽子を目深に被って顔を隠してしまいました。
でも、私が貴方に叱られたかったのは本当です。
だって、私が朝潮として横須賀に居た間、貴方は一度も私を叱ってはくれませんでした。
私がどんなに無茶をしても、貴方は今みたいに叱ってはくれませんでした。
きっと、私が桜子さんのようにイタズラをしても、貴方は苦笑いをするだけで叱ってはくれなかったでしょう。
「ずっと、桜子さんが羨ましかった……。私は、貴方に叱ってもらえる桜子さんが羨ましくて仕方ありませんでした。妬んでいたと言っても良いほどに」
「君とアイツは違う。君はアイツのように、私を困らせるようなことはしなかったじゃないか」
「それでも……」
叱って欲しかった。
貴方に叱ってもらうためにイタズラしようと考えたこともありますし、桜子さんのように一日中、執務室のソファーで寝てみようかなと思った事もあります。
結局行動に移すことはありませんでしたが、当時の私は、叱ってもらう事で貴方との心の距離が縮まると本気で考えていたんです。
「実際、その通りでしたし」
「俺ぁ叱るんは苦手なんじゃがのぉ」
「あら、そう言う割に慣れてらっしゃいますよ?お尻を叩くのも上手ですし」
「君の尻を叩いたこたぁないじゃろうが!変な誤解を生むようなことを言うんはやめぇ!」
「誤解もなにも事実じゃないですか。最後に叩かれたのはたしか……」
「わかった!それ以上言うな!外には護衛の兵がおるんぞ!?」
護衛の人たちが居るのはわかってますが、士官服姿の時に貴方が素に戻るのは稀なので、ここでやめるのは少し惜しい気がします。
なのでもうちょっと……。
「もうちょっとからかおう。とか考えちょらんか?」
「はい♪例えば、今の私は病院着姿ですが、どうです?」
「どうです?とは?」
「ムラムラしません?弱っているプラス、この病院着一枚しか身に着けていない私にムラムラしちゃいません?」
「ふむ、確かに病院着一枚でベッドの上に正座している君は普段とは違う魅力がある。病的な美しさと言えば良いのか、儚さと所々に巻いてある包帯が良いアクセントになって嗜虐心をそそられる。もし俺がもう20若ければ我慢できず襲っ……って、何を言わせる!まさか誘っちょるんか!?」
誘っているかそうでないかと言われれば誘っています。
いえ、私は桜子さんと違って年がら年中発情している訳ではありませんが、今は戦闘を、しかも全力を尽くした戦闘を終えたばかりで昂ぶった身体が冷めていません。
しかもここ一ヶ月は、主人が多忙だったために夫婦の営みを満足にする事が出来なかったのでちょっと、いや少し、いいえそれなりにムラムラしているだけなのです。
「そう言えば君と結婚して1年以上になるが、新婚の割に淡泊な生活をしていたな。すまん……」
「謝らないでください。貴方が多忙なのは朝潮だった頃から存じていましたし、それを承知で私は貴方との入籍を望んだんです。だから、今の生活に不満はありません」
少し嘘をつきました。
今言ったように生活に不満はありませんが、
私達の場合は主人の仕事の都合上、どうしてもそう言った営みが可能になるのは深夜になります。
ですが私は21時には強制的に眠りに堕ちてしまいます。お昼寝をすれば多少は夜更かしできるのですが、秘書艦を務めている都合上、主人だけ働かせて私だけ呑気に寝るわけにもいきません。
故に、私達は夫婦でありながら、他人様からしたらとても夫婦には見えないような暮らしをしているのです。
『それではこれより、本日の第二試合を開始しまーす!』
「おっと、もうそんな時間か」
「行って……しまわれるのですか?」
青葉さんによる第二試合開始のアナウンスを聞いて、主人はベッドから降りて身嗜みを軽く整えました。
これから主人は観覧席に戻り、円満さんたちと一緒に海外からのゲスト達と試合を見なければならない。それが、この人の今日のお仕事。
そんな事はわかっているに、昂ぶった身体と怪我のせいで弱った心がそれを邪魔しようとしています。
いえ、邪魔したい。
行ってほしくない。一緒に居てほしい。もっと貴方とお話ししたい。手を握っててほしい。抱きしめてほしい。いや、抱いてほしい。
そんな、人と言うより生物の本能とでも言うべきモノが、私の心も身体も支配しています。
「無理を言って抜けてきたからな。私が居なくても円満たちが上手くやるだろうが、あまり長く席を立っている訳にもいかん」
「そう……ですよね」
この人は海軍の顔。
その主人がゲスト達をほったらかしに出来ない事は百も承知ですし、ここにも無理をして来てくれた事もわかっています。
いつもの私なら、顔には出ているでしょうが引き留めるような事は言いません。
でも今日は……。
「わ、私は今怪我をしています凄く痛いです!」
「それはわかっているが……」
この人は私が何を言いたいのかわかってる。怪我が大して痛くないことにもきっと気付いています。
でも、軍人として振る舞っている時の貴方が何を考えているのかはわかりませんが、それ以外の時の貴方が何を考えているのかはわかります。本当は私と一緒に居たいのに、責任感がそれを邪魔している。
今の貴方は、珍しい私の我が儘を聞いて元帥としてこの場を去るか、夫としてこの場に残るかで悩んでいます。
ならば、私は……。
「あ、あの!」
「ん?どうした?」
「その……。ふしだらだと思われるかもしれませんが……えっと」
言葉が思い浮かばない。
ストレートに「抱いてください」って言えば良いのかしら。それともちょっとお茶目に「セ〇クスしよ♪」って……いやいや、これは私のキャラじゃありませんね。
だったら「オッパイ揉む?」とかはどうでしょう。
自慢できるほど大きくはありませんが、少なくとも円満さんよりは確実に有るのでそれなりに揉めます……いや、やっぱりこれも私のキャラじゃありませんね。
それなら無言で服を脱ぐのはどうでしょう。
主人は脱がれるより脱がす方がお好きなので多少趣味から外れますが、逆に言えば普段とは違うシチュエーションに興奮してくださるかもしれません。
よし、これで行きましょう。
病室のベッドの上で、病院着を恥じらいながら脱ぐ怪我で弱った私と言う、いつもでは有り得ないシチュエーションは新鮮かつ背徳感満載。
いくらお堅い主人でも、それならお猿さんのように私を求めてくれるかもしれません。
あ、でもその前に
「排除してきます」
「いや、何をだ?もしかして護衛の兵達か?」
その通りです。
主人から聞いただけなので自覚はありませんが、私は
さすがにそれは恥ずかしいので物理的に排除しようと思ったのですが……。
「少し待てるか?」
「え?はい、少しだけなら……」
私の答えを聞くと、主人は士官服の内ポケットからスマホを取りだしました。誰かに電話でもかけるおつもりなのでしょうか。
「澪か?私だ。円満は今……。そうか、なら君から円満に「所用が出来たから一時間ほど戻るのが遅れる」と伝えてくれ」
それだけ言って、主人は通話を切りました。
私の我が儘を叶えるために、一時間も貴重な時間を作ってくれたことに感動しすぎて今すぐ抱きつきたい衝動に駆られていますが、主人は右手で私を制して「もう少しだけ待ってくれ」と言って病室から出て行きました。
護衛の方たちを遠ざけるのでしょうか、それとも耳栓でもしてろと命じに行ったのでしょうか。
「待たせたな……。っと、待ちきれなかったか」
「はい、私はもう限界です」
私は恥も外聞もなく、病室に戻ってきた主人に抱きつきました。
私から脱いで迫るつもりだったのですが、せっかく立てたプランも実行できないほど私は昂ぶっていたようです。でも、これだけは言っておかないと。
「ごめんなさい、あなた。私は我が儘な妻です」
「謝らんでくれ……。むしろ君の我が儘が聞けて嬉しいくらいじゃ」
「でもお仕事が……」
「俺を見くびるなよ?女房が弱っちょる時に傍に居てやるくらいの甲斐性はあるつもりぞ?それに、今日は君の誕生日だしな」
そこから先は言葉など不要でした。
唇を重ね合い、主人に身を任せて、私は戦闘の時以上に全身全霊を賭けて、愛するこの人を受け止めました。
軽巡洋艦大淀ではなく、この人の妻として。
彼を愛する、一人の女として。
ーーーーーーーーーーー
大淀の妊娠が発覚したのはその次の年だったんだけどさ。普通に計算すれば、私の弟を大淀が身篭もったのは大会の最中かその前後なのよ。
で、気になった私は大淀に直接聞いてみたわけ。
うん、ストレートに「いつヤった?」って聞いたわ。
もちろん大淀は素直に答えなかったんだけど、あの日、大淀が入院した日に、護衛につけていた奇兵隊員がお父さんから妙な命令をされたと私に報告したのを思い出したの。
どんな命令か?
簡単に言うと、大淀の病室があったフロアへ誰も近寄らせず、護衛の隊員にも耳栓をしろって命じたらしいわ。
ここまで言えばわかるでしょ?
あのクソ親父、寄りも寄って病室で大淀に種付けしたのよ。
まあ、弟が出来たのは素直に嬉しかったし、二人とも幸せそうだったから「病室でナニしてんだ」とか「いくら艦娘だからって、子供まで工廠で建造しなくてもいいんじゃない?」なんて無粋な事は言わなかったわ。
って言うか、言えなかった。
お父さんも大淀も子供を望んでたし、それ以上に、大淀が身篭もったと聞いた時のお父さんが心底安心してるように見えたんだもの。
たぶんお父さんは、大淀を自分の復讐を成就させるための剣として鍛えながらも、出撃させなくても済む口実をずっと欲しがってたんじゃないかな。
まあ残念ながら、その口実が通用する期間中に戦争は終わらなかったんだけどね。
~戦後回想録~
奇兵隊総隊長。神藤桜子大佐へのインタビューより。
次章予告。
満潮よ。
今回はお姉ちゃんの代わりに私が予告するわ。
大会も後半に突入し、日本艦娘の出鱈目さに呆れながら感心する海外艦達。
でもガングートさんだけは、何故か懐かんしんでいるように見えるわね。日本艦に知り合いでもいるのかしら。
でもやっぱり予定通りに進行しないのが横須賀流。
飲み比べは始まるしジャービスは壊れちゃうし、終いには哨戒に出ていた駆逐隊から入った敵艦隊発見の報を聞いて、円満さんがたまたま工廠にいたメンバーを出撃させちゃうわ。
そのメンバーが、後の決戦で大きな役割を果たすメンバーになるとは思いもせずに。
次回、艦隊これくしょん『
私、なんで予告なんてさせられたのかしら……。
主要キャラ人気投票
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朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
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神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
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大和(影が薄い三部主役)
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紫印 円満(実質三部の主役?)