不条理。
それが、鳳翔さんの戦闘を実際に見た時の私の感想よ。見てただけの私がそんなだったんだから、対戦相手だったイントレピットさんは余計でもそう思ったんじゃないかしら。
青木さんと漣だって、鳳翔さんが何をしているのかわからずにコメントできてなかったでしょ?
私だってそう。
鳳翔さんが弓を引いて矢を放ち、艦載機を発艦させてたのはわかったけど、逆に言えばそれしか理解できなかったわ。
鳳翔さんのアレに比べたら、各種脚技やお姉ちゃんの砲撃術なんて児戯に等しいんじゃないかって考える事が今でもあるくらいよ。
ただ矢を射る。
それだけを極めた鳳翔さんの在り方は合理の極みであり、究極の不合理だったんじゃないかって、今でもそう思うわ。
~戦後回想録~
元駆逐艦 満潮へのインタビューより。
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「ねえ澪、先生は大淀の所?」
「所用ができたとか言ってたからそうじゃないかな。一時間ほど戻るのが遅れるって言ってたよ?」
なんで疑問形?
しかも妙にニヤニヤしてるけど、先生と大淀が真っ昼間から盛ってるとか思ってるんじゃないわよね?しかも病室で。
それと同じ事を想像して私がヤキモキする様を楽しみにしてるんでしょうけど、生憎と何とも思ってないわ。
ヤリたきゃヤリたいだけ好きにヤレって感じよ。
「へぇ、あのオジサンへの想いは完全に断ち切れたんだ。偉い偉い♪」
「ちょっとばかし私より恋愛経験が豊富だからって姉面しないで。それよりアンタ、あの日の事をヘンケンに謝ったの?」
「あの日?どの日?」
「子日……じゃないや。歓迎会の時の事よ。酔っ払ったアンタが辰見さんと一緒にヘンケンにセクハラした日」
「そんな事したっけ?」
スッカリ忘れてやがる。
アンタと辰見さんのセクハラのせいで、ヘンケンったら質の悪いトラウマ抱えちゃったのよ?
今だってあの日の事がフラッシュバックしてるのか、私の隣で頭を抱えていガタガタと震えながら「SAMURAI Sword怖い……。なんなんだあの膨張率と黒さは」なんて言ってる。いや、コレはお風呂での出来事を思い出してるのかな?
「まあ済んだ事は良いじゃん。それより円満、なんで鳳翔さんの試合なんて組んだの?」
「なんでって言われても、桜子さんが見たかったらしいわよ?」
「ふぅん……」
「何か想うところでもあるの?」
「想うところと言うか……勝負になるのかなって」
なる。と、断言できないのが辛いところね。
鳳翔さんが戦うところは何度か見たことあるし、その度に空母ってスゲーってなってたけど、それでもイントレピットとの性能差を覆せるほどじゃない。
鳳翔さんが脚技とか大淀の砲撃術みたいな特殊な技術を持ってるって言うんなら話は別なんだけど……。
「そう言えば、風呂でMr.Crazyが気になる事を言っていたな」
「先生が?なんて?」
「Mr.佐世保やMr.大湊も意味がわかっていなかったんだが、彼はMs.鳳翔の試合が
「意外ね。鳳翔さんに横須賀鎮守府の護りを任せたのは先生なのに……」
先生は、鳳翔さんの事を言う程信頼していないの?
それとも、いくら鳳翔さんでも圧倒的な性能差は覆せないと考えたのかしら。
「いや、恐らく逆だよ」
「逆?何が逆なの?」
「彼はこうも言っていた。「展開がわかり切っている試合ほど、見てつまらないものはない」とな」
「それは、鳳翔さんが勝つって事?」
「そうだと思う。彼はIntrepidをcatalog Specでしか識らないはずだ。ならば当然、彼が言ったつまらない結果とはMs.鳳翔の勝利のはずだ」
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大正解でした。
あのオジサンが勝つと言ったのは鳳翔さんで間違いないです。
そして、円満は気付いてくれませんでしたが、私が勝負になるのかと疑問に思ったのもあのオジサンと似たような理由からです。
たしかに鳳翔さんは脚技なんて使えませんし、大淀みたいに特殊な攻撃方法を持っていたわけでもありません。
彼女にできたのは弓を引き、矢を射るだけ。ただそれだけでした。
実際、それしかしなかったでしょ?
鳳翔さんはあのオジサンに「私でも、彼女が射った矢を避けるのは無理だろう」って言わせるくらい、弓道を極めていたんです。
いや、アレはもう弓道にカテゴリーして良い代物じゃありませんね。
強いて言うなら、アレは『鳳翔』ですよ。
~戦後回想録~
横須賀鎮守府提督補佐。大城戸 澪中佐へのインタビューより。
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私はお世辞にも強いとは言えません。
空母なのに装備スロットは三つしかありませんし、搭載数も対戦相手であるイントレピットさんの三分の一ほど。航行速度も遅いですし、装甲も駆逐艦以下の紙装甲です。
そんな私が今の戦場について行ける訳もなく、今では日々安穏とした暮らしを強いられています。
いつか、戦場に返り咲ける日が訪れる事を夢想しながら。
『それでは第三試合!鳳翔 対 イントレピット!始め!』
その私に、不意に訪れた戦闘の機会。
どうして桜子さんが私と彼女の試合を組もうと思ったのかはわかりませんが、大方退屈しているであろう私に鬱憤晴らしの機会を与えようとかそんな感じで組んだのでしょう。
『Hay!鳳翔!私が勝ったら、店の
「あらあら、それは恐ろしいですね」
艦載機も発艦させていないのにもう勝った気でいるのかしら。でも、右に針路を取った様子を見るに油断はしていません。風上を押さえる気ですね。
でも……。
『Intrepid航空隊各隊、発艦はじ……what!?いつの間に……!」
「遅いですよ」
イントレピットさんは風上を取り、ダズル迷彩を施された小銃を構えたところで、ようやく私が放った艦載機に気付いたようです。
ですが、彼女が私の艦載機発艦に気付けなかったのも無理からぬ事。何故なら、私が艦載機発艦に要する時間は僅か0.12秒。人間の反射神経の限界に迫る数値なのですから。
「さて、タダ飲みされては敵いませんので、適度に苦戦を演じて勝つとしましょう」
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あれは私でも桜子でも捉えきれない。
鳳翔さんが艦載機を発艦させたのを見てそう思ったわ。実際、私が見ることが叶ったのは鳳翔さんが艦載機を発艦させた後、射法八節で言うところの『残心』の姿勢を取った姿だけだった。
カメラが移動しなきゃ、艦載機を発艦させた事にすら気づかなかったかもしれないわ。
そしてそれは観覧席に居たゲスト達や提督、その秘書艦達も同じだった。
日本の艦載機運用の解説をしてもらうために呼んだ赤城と加賀でさえ絶句してたわ。
唯一理解できた事と言えば、それは試合が鳳翔さんの勝ちで終わるということだけだった。
だって、イントレピットは発艦すらできていなかったのに、鳳翔さんが一瞬で放った42機の艦載機が無慈悲にイントレピットへと群がっていたんだもの。
~戦後回想録~
横須賀鎮守府提督補佐。辰見天奈大佐へのインタビューより。
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空母最大の弱点。
それは、艦載機を発艦させなければほぼ何もできない事です。今のように発艦を妨害し、発艦させられても発艦直後ならば、九六式艦戦という旧式の艦載機でも空母を置物に変えられます。
『Sit!これじゃあ航空隊の発艦が……!ああぁぁっ!も、もう!」
更に爆撃と雷撃を加えれば回避以外に打つ手無し。旧式の九九艦爆と九七式艦攻でも、米国の正規空母を一方的に嬲れます。
『卑怯よ鳳翔!こんな艦載機をまともに発艦させないようなたたか……もう! Damage control!』
「卑怯?あらあら、米国艦は随分と温いことを仰るのですね」
敵に先んじて攻撃し、何もさせないまま沈めるのは戦場において理想です。
それとも貴女は撃ちつ撃たれつ、例えば長門さんとネルソンさんの試合のような互角の戦いを望んでいたのですか? だとしたら甘い。いえ、戦場を、戦争を舐めすぎています。
演習とは言え、正々堂々とした互角の戦いを望むなど傲慢の極み。相手を圧倒できるほどの性能を有しているが故の驕りです。
「気が変わりました。貴女には完全敗北して頂きます」
私は残弾が残っているにもかかわらず、全ての艦載機を呼び戻しました。
さあ、艦載機を放ちなさい。
まだ中破にも届いていないのですから、艦載機の発艦は十分に可能でしょう?
『馬鹿にして……!Intrepid squadron, attack!』
「別に、馬鹿にしている訳ではありません」
これは貴女が望んだ正々堂々とした果たし合い。
しかも私は貴女が小銃を構え、艦載機に転じる弾丸を撃ち出すのを確認してから発艦作業に入りました。
日本式、いえ鳳翔式艦載機運用法と名付けられているコレは、弓道における射法八節に準じた一連の動作が基本になっています。
弓と矢を左右各手に持ち足を踏み開いた『足踏み』。
左手に弓矢を持ち基礎体形をとる『胴造り』。
右手を弦に取りかけ、左手を整えて的を定める『弓構え』。
左右両拳を頭上正面に上げる『打起し』。
左右の手で弓を押し、弦を引く『引分け 』。
発射直前の状態をとる『会』。
矢を放つ『離れ』。
そして最後が『残心』。
この一連の動作を淀みなく、日常生活のワンシーンのように自然な風景になる事を目指して、私は弓を引き続けました。
その結果、前提督に「ここまで合理を詰めると、それはもう不合理だな」とお褒めの言葉を頂きました。
『なっ!また!?いつ撃ったの!?』
私が放った矢は、彼女の銃弾が艦載機に転じるよりも早く九六式艦戦へと転じ、艦載機に転じ始めた彼女の銃弾を撃ち落としました。
『
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十分に発達した科学は魔法と区別がつかない。
たしか、クラークの三法則の一つだったか。
その言葉を、何故かMs.鳳翔とIntrepid の試合中に思い出したのを憶えているよ。
ああ、エマも言っていたが、Ms.鳳翔のアレは魔法と言っても過言ではなかった。
何せあの場に居た誰一人、Ms.鳳翔が何をしているのか理解できなかったんだからな。
そう、クラークの言葉を借りるなら『極められた技は魔法と区別がつかない』と言った感じになるのかな。
Ms.神風とMrs.大淀もそうだったが、日本の艦娘は……いや、日本人は我々欧米人では思いもしない事を平気でやってのけた。
そこにシビれたし、憧れたのを今でも憶えているよ。
~戦後回想録~
バーガーショップ マクダニエル日本支店店長。
ヘンリー・ケンドリック退役大将へのインタビューより。
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私は英語が話せませんので、彼女が何を言っているのかわかりませんでしたが構わず二射目を放ちました。
但し、今回は一射目で放った艦戦達に、彼女の発艦作業は一切邪魔させていません。ちゃんと撃たせ、しかも艦載機に転じきってから撃ち落とすよう命じています。
『どう……して?私の艦載機の方が数も性能も上のはずなのに、どうして勝てないの?』
当たり前です。
たしかに真っ当にやり合えば、いくら私の艦載機達の熟練度が高くても貴女の艦載機には勝てないでしょう。
そう、
私は貴女の銃弾が艦載機に転じきってから撃ち落とさせていますが、転じた直後で速度も完全に乗り切っておらず、ポジショニングも甘い艦載機を落とすなど朝飯前です。
もっとも、貴女はそんな簡単な事にも気付けないほど動揺しているようですが。
「終わり。ですね」
私は全ての艦載機を戻しました。
だって彼女は中破し、搭載していた100以上の艦載機を全て失ったのですから必要ありませんもの。
「何よ。降参でもしろって言うつもり?」
「まさか。私は神風ちゃんや大淀ちゃんほど優しくはありません」
ゆっくりと、それこそ歩く程度の速度で、私は彼女の真正面まで移動しました。
一応、装甲は維持しているようですね。
攻撃手段を失って意気消沈し、装甲まで維持できていないようなら言葉を交わさずに沈めていました。
「教えて……。いえ、教えてください。どうして私は負けたんですか?」
あら、思っていたより殊勝な方なんですね。
艦娘としてはるかに格下な私に完膚なきまでに敗れたというのに腐らず、言い訳せず、事実を認めて自分の敗因を知ろうとしている。
そこだけは評価に値します。
ですが、生憎と聞いた相手が悪い。
私は桜子さんように問題点を懇切丁寧に解説なんてしませんし、長門さんのように互いの健闘を讃え合うようなスポーツマンシップも持ち合わせてはいません。
故に、私はこう答えましょう。
「貴女が弱いからです」と。
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意地が悪い。とは思わなかったわ。
セリフだけなら、彼女は私を蔑んだように聞こえるでしょうけど、彼女の表情に私を蔑んでいるような色は全くなかった。
むしろ、イタズラした子を叱り終わった母親のように暖かな微笑みを浮かべていたわ。
ええ、彼女はそれ以上何も言わなかった。
でも、自分の敗北を認めるには十分すぎる一言だったわ。
私は弱かったからあの人に負けた。
私はFleet girlとしては彼女より格上だったけど、人間としてはるかに格下だった。
だから私は彼女に、心身共に完全敗北したの。
降参した後?
降参した後は、哨戒艇に回収されて工廠に……。
Oh,Sorry。その後の私の行動じゃなくてMs.鳳翔のreactionの方ね。
私が降参した途端に、彼女はいつもの彼女に戻ったわ。ええ、『居酒屋 鳳翔』の女将にね。
私が今bartenderをしているのは、あの時の彼女に憧れたからかもしれないわ。
ああそうだ。
今晩から出そうと思ってるオリジナルカクテルがあるんだけど、良かったら試してみてくれない?
ええ、あの時の彼女をイメージして作ったカクテルよ。
名前はそう……『
~戦後回想録~
元Essex級 5番艦 正規空母 Intrepid
現 Jazz BAR『Sky mama』マスターへのインタビューより。
主要キャラ人気投票
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朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
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神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
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大和(影が薄い三部主役)
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紫印 円満(実質三部の主役?)