第七水雷戦隊?
ああ、青木さんが言ってるのって『天号組』の事か。ええ、良く憶えてるわ。って言うか忘れようがない。
なんせ私が終戦まで所属し続けた隊だし、大和さんを始めとして矢矧さん、初霜、雪風、磯風、浜風、涼月、朝霜、そして私の九人は今でも定期的に『大和旅館』で同窓会じみた集まりを開いてるもの。
その面子が集まった経緯?
なんでも、奇兵隊の人たちがさり気なく誘導したらしいわ。
でも私の場合は少し違ってて、円満に満潮と叢雲の入渠準備をしておいてくれって言われたから、言われた通り準備して待ってたのね?
そしたらその三~四十分後にボロボロになった二人と雪風が戻って来て、そのすぐ後に円満も来て一緒に二人を入渠させたわ。
そして、無傷だったけど一応雪風も入渠させとく?って円満と話ながら雪風が待つ『工房』に戻ったら桜子さんが来てて、円満と何かの相談を始めた。
後に、アレが私たちを集める算段を相談してたんだって思い至ったわ。
ええ、私と雪風はそのまま、艤装を装備して『工房』で待機する事になった。
雪風と出撃でもさせる気なのかしら。みたいな話をしてたら円満から電話がかかってきて、命令を伝えようと雪風の元に戻ったら残りの面子が集まってたわ。
集まった直後はこの面子で何をさせる気なのかさっぱりわかんなかったけどね。
だってそうでしょう?
矢矧さんと雪風、磯風、浜風の四人はまだ良いとしても、私は所属が同じ呉ってだけで一緒に訓練した事もなかったし、初霜と涼月、朝霜なんて所属自体違ってたんだもの。そんな面子で連携もクソもないわ。
個々人の技量は高くても、あの時の私たちは単なる烏合の衆だったのよ。
そんな私たちが、敵機動部隊を殲滅できたのは間違いなく大和さんのおかげね。
そう、あの時艦隊の指揮を執ったのは矢矧さんではなく大和さん。
自画自賛と思ってくれて良いけど、彼女の指揮で、私たちは初めて艦隊を組んだとは思えないほど見事な連携で、敵機動部隊を殲滅したわ。
~戦後回想録~
元駆逐艦 霞へのインタビューより。
ーーーーーーーーーー
「不幸だ」
と、どっかのとある不幸男みたいなセリフを吐いたのは他ならぬ私。そう、矢矧よ。
でも、そう言いたくなるのも当然じゃない?
退院する磯風を浜風と一緒に迎えに行ったら、ついでに「猫の目に行ってみたい」って話になってそのまま磯風も合流して元々横須賀に所属してた私が案内がてら『猫の目』に連れ行こうとしたんだけど、気づいたら何故か『工房』に戻ってて、説明もされずに艤装を装備させられてかつて私にトラウマを植え付けた二式大艇に詰め込まれたんだもの。
しかも!
私が高所恐怖症になった一番の原因である大和と一緒に!
「霞さん……でしたか?どうして私たちは艤装を装備して飛行機に乗せられているんでしょうか」
「良い質問よ初霜。答えはわからない。私は円満……じゃないや。紫印提督に「工廠に集まっているメンバーに艤装を装着させ、二式大艇に乗せろ」としか言われてないの。まさか、私自身もそのメンバーの内だとは思ってなかったけどね」
と、額に青筋を浮かべた霞が説明してくれた。
説明はしてくれたけど、今この場にいるメンバーのほぼ全て(艤装が大きいせいで椅子に座れず、二式大艇の最後尾で正座して妙にニコニコしながら私たちを眺めている大和は除く)がこう思ってるはずよ。
「で?私たちは何をすれば良いの?」ってね。
まあ艤装を装備してるんだから出撃なのは間違いないんだけど、眼下に見える遠ざかる鎮守府は相変わらずお祭り状態だし、敵艦隊が迫ってるなんて報せも受けていない。
『あー、あー。霞、聞こえる?』
「聞こえてるわよ円満。取り敢えず文句言って良いかしら」
『文句なら後でいくらでも聞いてあげるわ。で、だいたい察しはついてると思うけど、貴女たちにこれから、ヲ級6隻を主軸とした敵機動部隊の足止めをしてもらう』
いや、察しなんてついてませんよ提督。
霞と同じく提督からの無線を聞いてるメンバー全員(やっぱり大和は除く)が「出撃どころか無茶ぶりして来やがった」って言いたそうな顔してるもの。
「大淀がいるんならともかく、この面子で一機の飛行機の援護も無しに機動部隊を足止めしろって正気で言ってんの!?」
『キツいのは承知してるわ。でも作戦の都合上、どうしてもそれ以上の編成は無理だったのよ』
作戦の都合上?
つまり、私たちがこれから行う迎撃自体が作戦ではなく、これを踏まえた上で別の作戦が進行してるって事よね?
深海棲艦の迎撃以上の作戦っていったい……。
「提督、一つお聞きしたいのですがよろしいですか?」
『その声は……大和?アンタも二式大艇に放り込まれたの?』
「はい。補給もそこそこに乗せられました」
なんだろう。なんか提督の言葉に違和感を感じる。
どうして提督は、大和が乗っているのを今知った風なの?もしかして提督は、今二式大艇に乗ってるメンバーが誰なのか知らないんじゃない?
「その様子では、今集っているメンバーに誰がいるのか把握してないようですね」
『ええ、メンバーの選定、及び工廠への誘導は奇兵隊にお願いしたから私は知らない。でも、対空戦闘が得意そうな子を選んだとは聞いてるわ』
やっぱりか。
私たち三人が『猫の目』に向かおうとしたら、何故か奇兵隊の人たちがやたらと通行を邪魔して気づいたら『工房』に逆戻りしてた。
つまり、この場に居るメンバーは試合が終わって艤装を預けに来た大和を含め、奇兵隊がある程度選別したとは言えランダムに集められたメンバーってこと。
そしてそれこそが、大和が提督にしたかった質問であり、気味が悪いくらいニコニコしてる理由なんでしょう。
「ふふふ♪やはりこれは運命ですね。これで冬月が居れば完璧だっただけに、そこだけは残念ですが嬉しく思いますよ」
『冬月が居れば完璧?ちょ、ちょっと待って!じゃあそこに居るメンバーって……!』
大和の言葉で提督がこれでもかと狼狽えた。
冬月って誰だろ?
どっかのネルフ的な組織の副司令官かしら。それとも、例えば不思議そうに大和を眺めながら「お冬さん?お冬さんなら大本営でお留守番……」とか言ってる涼月の姉妹艦?
「ええ、提督が想像している通りのメンバーです。『坊ノ岬沖』、と言えばおわかりでしょう?」
坊ノ岬沖ってどこ?たぶん日本近海のどこかだとは思うんだけど……。
あ、初霜が「坊ノ岬沖?あの辺の海域と私たちに何の関係が?」とか言って頭を傾けてるって事は、『坊ノ岬沖』自体は知ってるってことかしら。
『嫌な偶然ね。不吉と言ってもいい組合せだわ』
「そうですか?私は嬉しくて仕方ありませんけど」
『それは……リベンジができる的な意味で?』
「それも無くは無いですが、私は単純に、この面子で再び戦う機会が訪れたことが嬉しいんです」
お願いしますから、私たちにもわかるように説明してください。
なんか話だけ聞いてたら、ここにいるメンバーで昔、坊野岬沖で戦闘したことがあるみたいじゃないですか。
しかも、不吉とかリベンジとかって単語がでるって事はたぶん負けたんですよね?
『……わかった。ならば大和、その艦隊の旗艦に貴女を任命するわ』
「はぁ!?ちょ、提督、本気ですか!?」
『その声は矢矧ね。ええ本気よ。それに伴い、暫定的に大和旗下の貴女たちを『第7水雷戦隊』と呼称します。良いわね』
いや、良くないです。
大和が艦隊指揮の経験があるのなら下につくのに不満はないんですが、私が知る限りないですよね?
そんな大和に旗艦を任せるくらいなら……。
『最初は経験豊富な霞か、今現在二水戦の旗艦をしている貴女に任せようと思った。でも、大和の言葉を聞いて気が変わったの』
「どう、変わったんですか?」
『今の貴女たちをまとめられるのは大和だけだと思えたのよ。反対意見が有れば
それは聞くだけで考慮するつもりはないって事ですよね?
他のメンバーも提督の言葉をそう受け取ったのか、呆れと諦めが入り混じった表情を浮かべるだけで表立って異を唱えるつもりはないみたい。
『無いみたいね。ならもう一度言うわ。旗下に第7水雷戦隊加えた臨時迎撃部隊の旗艦に大和を任命します』
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反対する気は湧かなかったわ。
って言うか、円満が所属がバラバラな私たちに命令した時点で無駄だってわかったからね。
それは何故か?
艦娘への命令権は、基本的にその艦娘が所属する鎮守府ないし、泊地の提督にしかないのは青木さんだって元艦娘なんだから知ってるでしょ?
にも関わらず、円満が私たちに命令したって事は、唯一所属の枠組みを超えて命令できる海軍元帥がケツ持ちをしてたって証拠なの。
だから反対しようにも出来なかったのよ。
もし旗艦をしろと言われたら断ったか?
ええ、全力で矢矧さんに押し付けたでしょうね。
確かに私は礼号作戦で旗艦をしたことがあるけど、あれは私以外に旗艦が出来そうな艦娘が居なかったし、メンバー全員の戦い方を把握する時間があったから引き受けたの。
でもあの時は違う。
だって大和さんが旗艦に任命された時点で、戦域に到達するまで20分を切ってたんだもの。
そんな短時間でメンバー全員の戦い方を把握し、かつ効果的に指示を出せとか無茶ぶり通り越して無理ゲーよ。
でも大和さんは、そんな状況なのに旗艦を引き受けた。
簡単な自己紹介と得意な戦法を聞いただけで、私たちをほぼ完璧に使いこなして見せたの。
ええ、戦域到達まで10分少々しかなかったってのに、私たちは呑気に自己紹介をし合ってたわ。
~戦後回想録~
元駆逐艦 霞へのインタビューより。
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「自己紹介?こんな時に!?」
「こんな時だからこそですよ矢矧。私は矢矧の性感帯まで知る尽くしてはいますが、他のメンバーの事は名前くらいしか知らないのですから当然でしょう?」
おいこら。
どうして私の性感帯を知ってるとかこの場で言うの?
いや、貴女が言った通り貴女に私の性感帯は知り尽くされてるわよ?でもここの場で言うべき事じゃない。
貴女気づいてるの?
今のセリフで、私と貴女がそういう関係だったってこの場にいるみんなに知られちゃったじゃない。
「できれば得意な戦い方も聞いておきたいですね。では時計回りに行きましょうか。はい、初霜から」
「わ、私からですか?え~っと……」
んん?その子って初霜って名前なの?
あ、そう言えば霞が初霜って呼んでた気がする。
でも私が知らないって事は少なくとも横須賀と呉に所属してる駆逐艦じゃないし、捷一号作戦にも参加してなかったはずだから大和とあの子は初対面。
それなのに、どうして大和はあの子が初霜だって知ってるの?霞がそう呼んでたから?
「佐世保の二十一駆に所属してる初春型四番艦、初霜です。得意な戦い方は……」
「どうかしましたか?」
「いえその。実は私、対空戦闘は得意なんですが対艦戦闘は苦手……と言うより、深海棲艦を撃つことができなくて……それで……」
「ふむふむ」
申し訳なさそうに縮こまっちゃってるとこ悪いけど、それでどうして艦娘を続けてる?って聞きたいわね。
いくら対空戦闘が得意でも、敵艦を撃てない艦娘なんてお荷物でしかない気がする。
「もしかして、佐世保の『昼行灯』とはお前の事か?」
「ええ、たぶん私の事だと思います。そう言う貴女はたしか……」
「順番的にも私だしついでに自己紹介しよう。呉の二水戦、第十七駆逐隊所属の磯風だ」
「じゃあ、貴女が『聖剣』って呼ばれてる呉No.2の駆逐艦ですか。たしかこの度の大会にも出てたとか」
「ああ……うん。そんな感じだ」
あれ?
いつもなら雪風に張り合って「私がNo.1だ!」とか言うのに、今は頬を掻きながらバツが悪そうにしてるわね。神風との試合を経験して、磯風なりに思うところでもできたのかしら。
「どうしたんですか磯風。まさか、馬鹿にしていた神風型に自慢の『聖剣』をへし折られて凹んでるんですか?」
「そ、そんな事はないぞマシュ風。ただその……」
「おい。今マシュ風って言いましたか?ぶっ飛ばしますよ?」
気持ちはわからなくもないけど、次は貴女の番だから青筋立ててないで自己紹介しなさいマシュか……浜風。
秋津洲さんによる機内アナウンスによると戦域まであと十分くらいしかないんだから。
「磯風と同じく二水戦、十七駆所属の浜風です。得意な戦い方は磯風の逆ですね。試合で見た大和さんに近いです」
「つまり、力場で形成した盾のような物で砲弾を弾きつつ砲撃する。と言った感じですか?」
「弾けるのは精々軽巡洋艦の砲撃までです。それ以上になると射線をズラすのが限界ですね。簡単に言うなら貴女の下位互換です」
浜風が得意とする戦法はさっき大和が言ったので間違いないし、その盾自体を鈍器代わりにして近接戦も熟す。まあ、そのせいでマシュ風とか呼ばれるんだけどね。
でも、浜風は少し拗ねたような顔で卑下して言ったけど十分凄いわ。単純な突破力だけなら二水戦トップの磯風とセットで突っ込ませれば正に鬼に金棒だもの。
「朝霜、次はアンタみたいよ」
「ん?あたいかい?霞」
「そうよ。だからさっさと終わらせなさい。後が支えてるんだから」
ふと思ったんだけど、朝潮型の子って基本的に真面目よね。
私が面識ある朝潮型は八駆の四人と呉の霞と霰くらいなんだけど、みんな個性はあっても真面目な点が共通してるの。
例えば無駄にハイテンションな大潮ちゃん。
あの子は空気も読まずにアゲアゲとか言ってるイメージしかないけど、じ~っと見てれば仕事も訓練も真面目に熟してるのがわかる。
今の霞にしてもそうね。
霞は呉で金剛さんと交代で秘書艦をする子であり、呉の駆逐艦のまとめ役でもある。大和の空気を読まない自己紹介要求にも、順番を守って律儀に従おうとしてるもの。
「え~っと、あたいは舞鶴の三十一駆に所属してる朝霜で、得意な戦い方は……えっと」
「私を見るんじゃないったら。自分が得意な戦法くらい把握しときなさいよ」
「いやぁ~あたいって頭使うのが苦手でさぁ。戦う時だって、基本的に考える前に体が動くって感じだし。それくらい、あたいより霞の方がわかってんだろ?」
はて?どうして所属が違う霞が朝霜の戦い方を把握してるんだろう。もしかして、以前同じ艦隊にいたことがあったとか?
あ、ジト目で朝霜を睨みながら「しょうがないわねぇ」とか言ってるから説明する気みたい。
「朝霜が得意なのは簡単に言うと敵の牽制ね。この子、頭使うのが苦手とか言ってる割に、敵の注意を逸らしたり体勢を崩したりして味方を援護するのが得意なのよ」
最後に霞は「浜風とは違うタイプの盾役かしら」と言って締め括った。
なるほど、朝霜は浜風が力場で形成した盾で直接護るのとは違って間接的に味方を護るタイプなのね。
艦隊戦でなら、むしろ浜風より護れる範囲が大きい朝霜の方が重宝しそうだわ。
「ついでに言うと、私は呉所属、第十八駆逐隊の霞よ。大和さんの嚮導をした満潮の姉妹艦になるわ。得意な戦法はそうね……。今は改二乙の状態だから対空値はそれなりに高いかしら。あ、それと脚技も多少使えるわ」
へえ、霞もコンバート改装できる艦娘だったんだ。
コンバート改装とはたしか、いくつかの艦に実装されている特殊な改装で、霞を例に挙げると改二の状態と改二乙の状態を任意(工廠での改装が必要)で行き来できるんだとか。
大和のご主人さまである朝潮ちゃんもそのタイプの艦娘だって聞いた事があるわね。
「先ほどの提督の話を聞いた限りですが、霞はもしかして艦隊指揮の経験が有るんですか?」
「ええ、一応ね。ここに居る朝霜と、今は武蔵になってる清霜、それに大淀と足柄を加えた五人で棲地を攻略したことがあるわ」
霞は「自慢するほど大した作戦じゃなかったけどね」とか言ってるけど十分凄いことじゃない?
たった五人で棲地を攻略したのも凄いけど、それより凄いのはあの大淀さんと艦隊を組んでしかも旗艦を務めたこと。
他のメンバーについてはよくわからないけど、霞の疲れ切ったような表情と、朝霜の「あんときゃ楽しかったよな~♪」とはしゃぐ様を見るに濃い面子だったのは確実だもの。
「私は大本営所属の防空駆逐艦、涼月です。艦種の通り対空戦闘が得意です。一応ですが、大淀さんから戦闘の手解きを受けているので並の相手なら臆さない程度の胆力はあるつもりです」
見慣れない艤装を装備してると思ってたけど、やっぱり大本営付きの艦娘だったか。
これから機動部隊相手にドンパチするって時に妙に落ち着いてるのもそのせい?いや、この子大淀さんに戦闘の手解きを受けているとか言ったわね。
と言う事は、
「次は私の番ですが……。呉鎮守府、第十六駆逐隊所属の雪風です。得意な戦法は……何と説明したらいいでしょう?」
って、雪風が困ったような顔して隣に座る私を見てるけど困る。これってもしかしなくても私から説明してってことよね?
無理無理無理無理!
雪風の戦い方って良い意味で特長がないのよ。
砲撃にしても雷撃にしても回避運動にしても、基本に忠実で特筆すべき点がない。
だから、私が雪風の戦い方を説明するにしても、雪風は基本に忠実で粗がなく、どんな戦況にも順応できるだけの経験と技量があるとしか言えない。
にも関わらず、雪風は二水戦どころか呉No.1駆逐艦の名を欲しいままにしているから説明に困っちゃうのよねぇ……。
「じゃあ次。矢矧の自己紹介をお願いします」
「いや、良いのかよ!雪風が得意な戦い方が知りたいんじゃないの!?」
「全てではありませんが、試合を見ていたので雪風がどの程度の実力者なのかは把握できてるから問題ありません」
あっそ。
私と雪風が無駄に悩んだのは無駄だったってことね。
でもそれなら、貴女は私が矢矧になる前から私を知ってるんだから聞く必要なんてないんじゃない?
「矢矧、心して答えてください。この艦隊が艦隊の体を成すかどうかは貴女の
「それはどういう……」
意味?と聞き返そうとした私を、大和の真剣な眼差しが押し止めた。
それはどうして?
いや、答えを自分以外に求めるんじゃなくて考えろ。
大和は今なんて言った?
大和は「この艦隊が艦隊の体を成すかどうかは貴女の応え次第」って言ったわよね?でも、この艦隊の旗艦は大和であって私じゃない。
寄せ集めの私たちが艦隊として機能するには私はどうしたら良い?いや、一見ランダムに集められたように見える私たちは完全に寄せ集めな訳じゃない。大きく三つのグループに分けられる。
一つは私、雪風、磯風、浜風の二水戦グループ。
二つ目は霞と朝霜のかつての僚艦同士のグループ。
そして三つ目。大和、初霜、涼月の初対面グループよ。
そこから考えられるのは、大和が艦隊を二つ、もしくは三つに、もっと言えば前衛、中衛、後衛で分けようとしているということ。
その前衛艦隊を私に任せる気なんだわ。
恐らくメンバーは私を筆頭にした一つ目のグループ。そして中衛に霞、朝霜のグループ。
三つ目の後衛は初対面同士で連携も何もないでしょうけど、大和は私たちより長い射程を生かして遠距離射撃と対空戦闘に徹し、他の対空戦闘が得意と言った二人には艦載機の相手を任意でやらせるつもりなんだと予想する。
これなら、初霜と涼月の対空援護と大和の砲撃支援を受けながら前衛が敵艦隊に突撃し、中衛が私たちの取りこぼし、及び援護に専念するという体が整う。
ならば私が返すべき答えは……。
「呉で二水戦の旗艦を努めてさせてもらってる矢矧よ。他はともかく、雪風たち三人の戦い方は熟知してるから前衛は任せてちょうだい」
ーーーーーーーーーーー
私がそう返すと、大和は満面笑みを浮かべて「さすが私の心友ですね♪」と言ってくれたわ。
それはイコール、私たち二水戦の四人が前衛として突っ込まされるいう予想が当たったと言う事と同じだった。
ええ少し、いえかなり後悔したわ。
でもさ、あの嬉しそうな大和の顔を見てたら、後悔よりも「やってやろう」って気持ちの方が大きくなっていったの。
大和の自己紹介はどんな感じだったのか?
う~ん、それがね?
大和が自己紹介しようと口を開きかけたタイミングで、二式大艇を操縦してた秋津洲さんが機内放送で『敵機接近中かも!これより本機は後部ハッチを開きつつ海面スレスレを飛行するから抜錨してほしいかも!』って言ったのね?
そのせいで、次が大和の番だって考えは吹っ飛んだわ。だって飛行中なのに本当に後部ハッチを開くんだもの。
そんな状況で抜錨した経験がない私たちは「どうやって!?」って感じの表情を浮かべたまま固まっちゃったわ。
ただ一人、大和を除いてね。
~戦後回想録~
元軽巡洋艦 矢矧へのインタビューより。
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後部ハッチから流れ込んでくる風が冷たくて心地良い。矢矧が私の考えを察してくれたことで嬉しくなり、今すぐ飛び出したくなっていた私の心と体を落ち着けてくれます。
(やり方はわかるのか?)
「なんとなく。ダイビングで言うところのジャイアントストライドエントリーの後ろ向きバージョンをすればいのでしょう?」
(そんな感じだが……転けるなよ?)
転ける?そんな間抜けな真似はしません。
いえ、できません。
何故ならこれは新たな門出。かつて目的を果たせずに沈んだ私たちが、新たな世界で新たな身体を得て再スタートする瞬間なのですから。
「それでは行きましょう。みんな、私についてきてください」
私は若干動揺している面々にそう言い放ち、飛ぶと言うよりは身体の力を抜く感じで海面へと飛び出しました。
ああそう言えば、私はみんなに自己紹介をしろと言っておいて自分はしていませんでした。
ならば、これを自己紹介代わりにしましょう。
私が艦娘の大和として、再び戦場に舞い戻ったことを世界に知らしめる意味も込めて。
「戦艦大和、推して参ります!」と。
主要キャラ人気投票
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朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
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神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
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大和(影が薄い三部主役)
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紫印 円満(実質三部の主役?)