霞の報告では、臨時編成された迎撃部隊は寄せ集めとは思えないほどの連携を見せたらしい。
大和の砲撃支援を受けて二水戦の四人が敵随伴艦隊に斬り込み、討ち漏らした敵は霞と朝霜が処理した。
敵の艦載機も初霜と涼月、更に大和が悉く撃ち落としてヲ級をほぼ置物に変えてしまった。
結局、対敵機動部隊用に編成した艦隊は無駄になっちゃちゃけど、霞からの報告は嬉しい誤算だった。
できればこのまま横須賀で囲い、正規の艦隊として訓練を積ませて来たる日に備えておきたい。
問題は所属がバラバラなことね。
まあそのあたりは、先生に相談すればどうとでもなるかしら。
また佐世保提督あたりが絡んで来そうと考えたら気が重たくなるなぁ。
~戦後回想録~
紫印円満中将の手記より抜粋。
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「うんうん♪みんな良く動けていますね。初めて艦隊を組んだとは思えない連携です♪」
『そんなお褒めの言葉は要らないからもっと撃ってくれない!?』
「足りませんか?」
『足りないわよ!コイツら機動部隊のくせに、前衛艦隊に戦艦入れてんのよ!?』
別に、機動部隊に戦艦を編成するのはおかしな事ではないですよ?かつての私も、最後の菊水作戦時の所属は第一航空戦隊でしたし。
(どうする大和。いっそ『覇道砲』で吹き飛ばすか?今なら
「どうにもならないような状況ならともかく、良い感じに拮抗している今の状況ではせっかくの機会が無駄になります」
(どんな機会だ。霞と朝霜の援護のおかげで前衛の四人が奮戦しているように見えるが、何かあれば即座に劣勢になるような状況だぞ?)
窮奇の言う通り、一見して私たちは数も性能も上回る敵艦隊相手に互角の戦いを繰り広げていますが、例えば誰か一人が戦闘不能になるだけで劣勢になる程の綱渡りをしています。
実弾を使った
『浜風!磯風の馬鹿を一旦下がらせなさい!雪風は浜風を援護!そのロ級は私が片づける!』
自身も敵と砲火を交えつつ、的確に指示を飛ばす矢矧を見ていたらしたくなくりました。
いえ、してはいけない気になったんです。
これは矢矧にとって成長するチャンス。そう思えたから、戦況を覆せる手段を持ちながらも使う気になれなくなったんです。
もっとも、矢矧にこれを言ったら怒られそうなので秘密ですが。
「とは言え、戦艦くらいは私が処理した方が良いでしょうね」
(ん?と言う事は私の出番か?)
「いいえ。貴女はそのまま対空に専念してください」
(どうやるつもりだ?お前に砲撃は……)
「こうやるんです」
窮奇の質問に言葉で答える代わりに、敵戦艦から飛んで来た砲弾を発射元に傘で弾き返すことで応えました。
結果至近弾で終わってしないましたが、
敵戦艦の砲撃がアイオワさん並に正確なら直撃させれただけに残念です。
(下手クソめ。もっと良く狙え)
「弾き返す際に私の『弾』を纏わせる関係上、少しタイムラグができるから仕方ないんです」
(だったらアイオワとの試合中にもっと練習しとけば良かったろうが)
「あのアイオワさんを相手にですか?冗談はやめてください」
あの試合を見た人には、恐らく私がアイオワさんの砲撃を悉く弾き、必殺の一撃を持って圧勝したように見えたでしょう。
ですが実際は違います。
正直言ってギリギリでした。
もし、アイオワさんの砲撃間隔がもう少し早ければ私は砲撃を処理しきれず、結果は真逆になっていたと思います。
当然、今みたいに発射元に弾き返すなどとてもとても。
「初霜、涼月。余裕はありますか?」
『余裕なんてありませんが……。私が落とさなければこの艦載機たちは鎮守府を襲うのでしょう?だったらやります。護って見せます!』
『数は多いですが処理しきれないほどではありません。大淀さんを相手に訓練するより余程マシですよ』
涼月の「大淀を相手にするよりは」と言うセリフが気にはなりますが良い答えです。
これで、矢矧たちの戦いを有利にする算段が八割方つきました。後は……。
「霞。艦載機の相手はしなくてかまいません。それよりも矢矧たちの援護を優先してください」
『でもそれじゃあ……!』
「言いたい事はわかります。ですが、初霜と涼月にはまだ余裕が有ります。二人に余裕が有るうちに敵前衛艦隊を始末するためには霞と朝霜の援護が必要不可欠なのです」
余裕なんてない。
とでも言いたそうに苦笑いを浮かべている初霜と涼月は気にしないとして、後は弾き返せそうな砲弾を敵戦艦に向けて返しつつ敵空母の発艦を邪魔しましょう。
「窮奇。『流星群』で敵空母の発艦を妨害してください」
(当てなくて良いのか?)
「はい、当てちゃダメです」
窮奇の砲撃法の一つである『流星群』。
これは上空へ向けて撃った砲弾を頭上から敵に当てる牽制に近い砲撃方法です。
用途的には大淀が試合で瑞雲を撃墜した技と似たようなモノですが、艦載機を撃ち落とすのが精々な大淀の技と違って、窮奇のコレは装弾する弾の種類で効果が激変します。
例えば、通常弾や徹甲弾なら敵に直接当てれば軽巡以下なら撃沈を狙えますし、三式弾なら広範囲の敵艦載機を撃墜する鉄の雨となります。
今回の場合は後者ですね
(第一主砲、三式弾装填。同時に測距、測的開始……完了。敵艦隊の未来位置を確定。全主砲、発射用意)
仰角は75度と言ったところでしょうか。
3基の主砲が砲身を指のようにワキワキと波打たせながら上を向き、固定されました。
水平線上に敵の姿が見えないと言うことは最低でも5km以上離れているのに、窮奇はレーダーだけで敵艦隊の未来位置を予測してその頭上に三式弾の雨を降らせようとしている窮奇の砲撃技術には舌を巻いてしまいますね。
『大和!本命の艦隊はまだ来ないの!?このままじゃ弾が保たない!』
「どれくらいなら保ちますか?」
『駆逐艦と軽巡くらいならなんとかできる程度よ!でもそれ以外は無理!戦艦と空母が残る!』
「では駆逐艦と軽巡を確実に沈めてください。霞と朝霜は矢矧に合流。指示を仰ぎなさい」
さて、後は戦艦と空母を沈めるタイミングを考えるだけですね。
あまり早すぎてもダメですし、遅すぎても本命の艦隊が到着して手柄を持って行かれてしまいます。
それは一番最悪なパターン。
私たちの『空母機動部隊を撃滅した』という初戦果を横取りされてなるものですか。
「窮奇、もう一つの
(通常の主砲と同じ。と言いたいところだが、力場の減衰を最小限で抑え、最大威力を叩き込むとなると1kmだな)
「わかりました。いつでも撃てるよう準備しておいてください」
(撃っていいのか?さっき撃つなと……)
「それはさっきの話です。今は状況が変わっています」
私がそう言うと、窮奇は文句を言いながらも「撃てるならまあ良い」と言って準備に入りました。
では私も突撃を開始するとしましょう。
この戦場を破壊して、私たちの初勝利を創り出すために。
「初霜、涼月、私を援護してください。敵空母へ突撃を開始します」
「こ、こんな艦載機が飛び交ってる中を突撃ですか!?」
「はい。初霜は反対なのですか?」
「そんなの当然じゃないですか!涼月さんも説得してください!このままじゃ……」
「正直言って行きたくはありませんが……。この状況を打破するには妥当な判断だと思います。大淀さんもよく「敵が多いなら旗艦を潰せばどうにかなります」と言っていましたし」
旗艦を潰す?
フッ……。大淀はその程度ですか。
まあ、おかげで涼月は死んだ魚のような目をしつつも突撃する気になってくれたようなので良しとしますが、私は旗艦を潰すだけでは済ましません。
敵艦隊を、海ごと消し炭にしてやります。
「二人とも、良く憶えておきなさい。死中に活有り。それが大和戦法です!」
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そう言って大和さんは、私が止める間もなく最大船速で突撃を開始しました。
ええ、気が気じゃありませんでした。
って言うか、敵艦載機を必死に撃ち落としながら頭の中で遺言を呟いていましたよ。それはたぶん、死んだ魚のような目をしてブツブツ言っていた涼月さんも同じだったはずです。
だって艦載機からの爆撃だけならともかく、私たちの突撃に気付いた敵前衛艦隊砲撃まで飛んで来たんですよ!?
そのおかげで矢矧さんたちが背後から敵前衛を突く形になっ沈めることができたから良かったものの、生きてる心地がまったくしませんでしたよ!
え?その後ですか?
その後は、残った敵戦艦が空母たちの盾になるように立ちはだかったんですが、大和さんの砲撃で空母たち諸共消えました。
そう、消えたんです。
大和さんの九門の砲身から放たれた、『ハドウ砲』と言う名の虹色の光に包まれて。
~戦後回想録~
元駆逐艦 初霜へのインタビューより。
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二式大艇でみんなの自己紹介を聴いている最中にされた説明によりますと、窮奇の『ハドウ砲』は二種類有ります。
一つはアイオワさんとの試合で使った、九つの砲弾を力場で繋ぎ、一つの巨大な砲弾に形成して撃ち込む対艦隊用の『覇道砲』。
そしてもう一つは……。
(鎮守府への帰投用燃料を残して他全てを機関へ投入、力場精製開始)
燃料を触媒として機関内で精製される力場と仮称されているエネルギーは、大淀が試合で見せた技の数々のように応用の幅が広く、更に物理的な影響力を持ちます。
例えば、今しがた磯風が「エクス!カリバァァァァ!」などと叫びながら駆逐艦を真っ二つにしたような事もできますし、私たちが海に浮くための浮力と進むための推力も生み出せます。
そうなると砲弾なんか必要ないのでは?と、なりますがそうは問屋が卸しません。
艦娘は基本的に、弾薬と仮称されている資材を元に艤装内で作られる砲弾(魚雷等も)がないと、敵『装甲』への干渉力場である『弾』を扱うことができないのです。
磯風がやっている事は、船に例えるならウィリーして船底で押し潰しているのと同じですね。威力は有るようですが、身体にも悪いですし効率もよろしくないです。
では、全艦娘中最大の力場出力を持つ私が、過剰投入と言えるほどの量の燃料で力場を精製し、更に九門の砲身に限界まで溜め込んでから砲弾に纏わせて撃ち出すとどうなると思います?
(全主砲、三式弾装填。力場チャージ120%。いつでも撃てるぞ。大和)
「わかりました。全艦、私の射線軸から退避してください」
ここで三式弾についてもご説明しておきましょう。
三式弾、または
どでかい時限式の散弾とでも言えばわかりやすいでしょうか。
そこで二つ目の『ハドウ砲』。
私は便宜上『波動砲』と呼んでいるのですが、通常は対空戦闘に用いられる三式弾を仰角はつけずに正面へと発射し、都合8964発にもなる弾子全てを力場で繋いで、簡単に言えば極太のビームに変える広域殲滅用の砲撃法です。
ただしこの砲撃法は、投入した燃料の量に応じて威力は上がるのですが、それでも一撃に使う燃料が多く、先に窮奇が口にしていたように燃料のほぼ全てを使わなければ現実的な威力になりません。
当然、撃った後は戦闘続行が困難です。
「さあ奏でましょう。新たな私の行進曲を」
それでも私は右手の人差し指で正面に円を描き、ターゲットスコープを形成。そして展開しました。
スコープ内には、敵艦隊7隻を示す光点が三次元的に投影されています。
「魅せましょう。全てを滅ぼす破壊の光を」
目標、敵艦隊。
輪形陣を組んでいるようですが、そんな狭い範囲に固まっているなど、私からすればまとめて消してくれと言っているようなもの。
良いでしょう。
そんなに消えたいのなら、私が貴女たちをまとめて消し炭して差し上げます。
「そして歌いましょう。世界を震わす
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聞き覚えのあるそのセリフを合図に『波動砲』は撃たれたわ。
ええ、みんな驚きすぎて、二次被害の水蒸気爆発が生んだキノコ雲を呆然と眺めるしかできなかった。
だって敵艦隊ごと海が吹っ飛んだのよ?
本当よ!
空間を引き裂いてるんじゃなかって思えるような甲高い音を立てながら着弾した『波動砲』は、敵艦隊を蒸発させて着弾点に軽く半径1kmは有ろうかってクレーターを作ったの。もちろん海上によ。
でもね。
青木さんにあの時のことを話してる内に、あの一発は大和なりの宣戦布告だったんじゃないかって思うようになったわ。
誰に対しての宣戦布告かって?
そんなの決まってるじゃない。世界へよ。
あの時の、終わりの始まりを告げた『波動砲』の音色は、大和が言うところの偽りのこの世界に対する宣戦布告だったの。
だって大和は、私が知る限りこの世界で唯一の『
~戦後回想録~
元軽巡洋艦 矢矧へのインタビューより。
主要キャラ人気投票
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朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
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神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
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大和(影が薄い三部主役)
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紫印 円満(実質三部の主役?)