と、言う訳で二章開始です。
説明セリフが多いので読むのが面倒かもしれません(´・ω・`)
第十三話 ウザいのよ
私は円満さんを司令官としても『満潮』の先輩としても尊敬してるし、プライベートでは姉のように接してくれる事に感謝もしてるし慕ってもいる。
だけど不満もあるわ。
円満さんって特定の日を除いて朝早く起きれないし、料理が全くできないから朝昼晩の三食を私に任せっきりなの。まあこれは部屋に住まわしてくれてる宿代代わりと思って我慢してるわ。私の着替えを見る度に悔し泣きするのはいい加減勘弁してほしいけど……。
「聞いてない」
「あの…すみません……」
それ以上に我慢ならないのは、伝えるべき事を言った気になって言い忘れる悪癖ね。
昨日、今私の目の前でデカい図体を縮こまらせてる戦艦 大和の嚮導役を引き受けて、取り合えず『脚』の使い方を教えようと艤装を装着させて浜まで来て「じゃあ『脚』の使い方から教えるわね」と言ったら「『脚』って何ですか?」と言う始末。
よくよく聞いてみたら、艦娘が養成所で習う基本的な知識がまるでない。もっと突っ込んで聞いてみたら、大和は元々不法侵入者で正規の手順で艦娘になったんじゃないと来た。
浮けないとは聞いてたけど、基礎知識まで無いとは聞かされてないわよ!
「本っ当ぉぉぉぉに!何も知らないのね?」
「はい…本当に何も知りません……」
はぁ……。どうしようこれ……。
私だって養成所で習った内容を全て暗記してる訳じゃないのよ?まあ、詳細を覚えてないだけで大雑把には覚えてるんだけど。
「予定を変更するしかないか……。しょうがない、説明してあげるから良く聞きなさい」
「は、はい!よろしくお願いします満潮教官!」
ふむ…教官と呼ばれるのは悪い気はしないわね。大和が背中に背負ってる艤装にアイツの核が使われてなければ素直に喜べるのに……。
「まずは『艤装』について説明するわね」
正式名称はたしか『対深海凄艦用装着型海上自由航行兵装』。
アホみたいに長い名前ね。暇人がそれっぽい単語をそれっぽく並べたような感じさえするわ。
通称『艤装』と呼ばれているこれは、大きく『機関』『兵装』『主機』の三つに分けられる。
この内、背中に背負う『機関』と呼ばれる部分が『艤装』のメインユニット。本体と言ってもいいかな。ここから『兵装』と『主機』に力場と呼ばれているエネルギーの様な物が供給されるわ。
艦種によって違うけど、私の場合を例にすると背中に背負ったランドセルの様な物が『機関』。
今日は『機関』しか背負って来てないけど、普段は両手に持ってる連装砲と両腿に着けてる魚雷発射管が『兵装』ね。他にも機銃とか色々あるんだけど今回は割愛するわ。
この『兵装』は艦娘が使った場合。
もっと言うと『機関』から力場を供給して使った場合は
例えば、私が普段使ってる『12.7cm連装砲C型改二』の見た目は名前負けと言って良いほど小さい。だって、華奢な私が片手で持てる程度の大きさだもの。
だけど、さっき言ったように『機関』から力場を供給して使用した場合は名称通りの威力になる。
深海棲艦が何十倍、何百倍も大きい艦船を沈める事ができるのも同じ理由よ。見た目は玩具みたいでも威力は軍艦並ってわけ。
そして足に履いてる靴のような物が『主機』。朝潮型の『主機』は靴みたいな外見だけど、実艦を模した形など艦種、艦型によって様々な形があるわ。
「繋がってるように見えないですけど、全部を合わせて『艤装』なんですか?」
「そうよ。確かに見た目は繋がってないけど、
艦娘と通常兵器の最大の違い。それは力場を扱えるかどうか。
『機関』のところでも少し説明したけど、艦娘は力場を『兵装』や『主機』に通す事でモデルとなった実艦とほぼ同じ事が出来るようになる。
この力場には『弾』『装甲』『脚』の三種類あって、『弾』は兵装を名称通りの性能にし、『装甲』に干渉して中和、無効化する干渉力場でもある。
この『弾』は艦種によって異なるけど距離に応じて減衰して行き、有効射程外になると相手の『装甲』に干渉する力をほぼ失ってしまう。
駆逐艦は夜戦で力を発揮すると言われるのはこれが理由よ。
いや、夜戦で力を発揮すると言うよりは、敵に接近
次に『装甲』。
これは読んで字の如くね。艦娘や深海棲艦が攻撃から身を守るために、艤装を装着してる間は常時展開している半球状のバリアの事よ。
この『装甲』は陸に上がると半減どころか、駆逐艦だと軽自動車とどっこいくらいの強度にまで減衰するけど、それでも『弾』を纏わせてない攻撃をほぼ無効化する性質を持っている。
実際、艦娘が実戦配備される前は、陸軍の人達がこの方法で上陸しようとする深海棲艦を水際で食い止めていたらしいわ。
そして『装甲』は、先に説明した『弾』の干渉を受けるとその出力に応じて減衰する。
当たる角度や『装甲』の張り方によって変わるんだけど、そういうのを考えず単純に、例えば火力値50の艦娘が撃った『弾』が装甲値100の『装甲』に当たった場合、撃たれた相手の『装甲』は50削られるって感じね。
もちろん『装甲』を抜かれてないから、贔屓目に言って着弾の衝撃くらいのダメージしかないわ。所謂カスダメってやつよ。
だけど、相手との距離が近ければ近いほどダメージは数字以上になる。それは干渉力の減衰が少なくなるからよ。
拳銃でも近づけば近づくほど威力の減衰が少なくなって、相対的に威力が上がるでしょ?それと同じ。
例え火力値が50でも、極端に言うとゼロ距離なら装甲値が100の装甲でも貫けるの。
だから駆逐艦は接近したがるのよ。
非力な駆逐艦でも、接近すれば戦艦の『装甲』だって貫けるんだから。
「その火力値とか装甲値とかはどうやって確認するんですか?」
「自分の?それとも敵の?」
「え~と…自分の?」
「なんで疑問形なのよ……。まあいいわ。工廠に行けば整備員さんが教えてくれるし、今私が持ってるタブレットでも確認できるわ。え~と、アンタの火力は……。うわ、何この頭悪そうな火力…96?いや、これ基本火力か。ちゃんと主砲を装備したらもっと上がるって事?」
「え?主砲ならついてますけど……」
「見た目はね。だけどそれ、『兵装ユニット』は装備されてない状態なのよ」
「兵装ユニット?」
あ~……。説明しないとダメかぁ……。脱線しちゃうけど仕方ないわね。
『兵装ユニット』とは、簡単に言うと砲とか魚雷などの性能を向上させる強化パーツの事よ。
私の場合で例えるわね。
私は普段、連装砲を二門と魚雷発射管を二基装着してるんだけど、見た目通りの装備をしてる訳じゃないの。
場合によって装備は変えるけど、よくやるのは『12.7cm連装砲C型改二』を二つと電探かな。見た目上は魚雷を装備してるように見えるけどユニット的には装備してないってわけ。
あ、誤解しないでね?あくまで魚雷のユニットを装備してないだけ。艤装として装着している魚雷発射管からはちゃんと魚雷を発射できるし、素のステータス相当の威力もあるわ。
全部は言わないけど、私の素のステータスは火力68雷装89。これに『12.7cm連装砲C型改二』のユニットを二つ装備すると火力は74になる。
この数字が、『装甲』の説明で触れた『弾』の干渉力とイコールになるの。
夜戦になると、接近して砲も魚雷も撃ちまくるから合計して142ね。駆逐艦や軽巡、それに重巡はこれを夜戦火力って呼んでるわ。
まあ、夜戦だからって全弾命中とは中々いかないから、火力分だけどか雷装分だけの干渉力しか出ない事の方が多いんだけどね。
逆に、撃った砲撃や魚雷が当たりまくれば数字も威力も相応に上がるわ。
「なるほど。つまり私の場合だと、ちゃんと装備を整えれば装甲値が100の敵でも容易に貫けると言う事ですね?」
「当たればね。当たらなきゃ、アンタのバ火力でも意味ないわ。至近弾でもそれなりに削れそうだけど、大抵の場合はカスダメでしょうよ?」
更に補足すると増設、もしくは換装しなければならないタイプの兵装ユニットもある。
例えば機銃や、連装砲から三連装砲などに換装する場合ね。
それに、装備出来る数にも限界がある。例外もあるし大規模改装を受けてるか受けてないかでも変わるんだけど、大規模改装を受けてる前提で言うと軽巡以下は三つ。それ以上は四つね。
「大規模改装って何ですか?」
「ある一定の練度を超えたら可能になるリミッター解除の事よ」
勿論、これも艦種によって解除が可能になる練度は違うんだけど、大半の艦娘は練度20で一度目の大規模改装を受けることが出来るわ。
一度目と言ったのは、当然二度目三度目があるから。
三度目以上の改装が受けられるのは稀だから今日は割愛するけど、今から説明する二度目の改装、通称『改二改装』も全ての艦種、艦型が受けれるわけじゃない。
例えば私と同じ朝潮型で説明すると、1番艦から4番艦、飛んで9番艦と10番艦は受けることが出来るけど、5~8番艦は受けることが出来ないの。
「どうしてですか?」
「改二改装が可能になるかどうかは妖精さんが決めるからよ」
私達はこれを『妖精の気まぐれ』と呼んでいる。
だって気まぐれって言って良いほど突然決まるんだもん。
私の改二改装だって、円満さんが『満潮』を辞めた途端に可能になったし、呉に居る9番艦の霰さんの改二改装なんてつい最近可能になったわ。
他にも、今まで造れなかった艤装や装備が急に造れたたり、ステータスが上方修正されたりするのも『気まぐれ』に含まれる。
各鎮守府の提督が直接妖精さんから聞かされたり、妖精さんから話を聞いた大本営の広報係が、海軍専用のツイッター的な物で教えてくれたりするわ。
「へぇ、妖精さんって本当に居るんですね」
「何よ。その疑いの眼差しは、別に私の頭がおかしくなったわけじゃないわよ?本当の本当に、妖精さんは居るんだから」
余談だけど、この妖精さんが見える事が提督になれる最低条件になっている。
艦娘でも艦載機が扱える艦種は『パイロット妖精さん』を見ることが出来るし指示も出来るんだけど、その他の妖精さん、艤装に宿る妖精さんや工廠で働く妖精さんを見ることは出来ないの。
「艤装にも妖精さんが居るんですか?」
「そうよ。大半の人は見ることも指示する事も出来ないけどね」
ついでに説明しとくと、官民問わず妖精さんが見える人の進路は大きく二つに分けられるわ。
一つは軍属として提督、もしくは提督補佐。艦隊指揮に向かない人は工廠の整備員。声まで聞こえる人はだいたい提督か提督補佐になってるわね。勿論、艦娘にもそういう人は居る。
円満さんが良い例かな。
円満さんは艦娘時代に妖精さんが見えるようになり、前横須賀提督に乞われて提督になったわ。
別に、妖精さんが見えるからって艦娘を辞めなきゃいけないって規則はないけどね。
二つ目は、それまでと同じ生活を継続していく。
これは軍人でも民間人でも同じよ。まあ、軍人の場合はお給料も階級も跳ね上がるから断る人は稀だけど。
「満潮教官は見えないんですか?」
「それは今関係ないでしょ。そろそろ今日の本題の『脚』を説明するわよ」
ぶっちゃけて言えば見えるし声も聞こえる。
別に秘密にする必要はないんだけど、教える必要もないから教えてあげない。
「艦娘はどうやって海面に立ってると思う?」
「どうやって…ですか?そうですね……。足の裏に浮力を発生させてる…とかですか?」
「うん。だいたい合ってる」
正確には、海面下に浮力を生じさせる足場のような物を力場で形成しているの。
この足場的な物が『脚』。船首喫水やら船尾喫水など部位によって名称が分かれてるけど、まとめて『脚』と呼ぶのが一般的ね。
例によって『脚』の大きさ、形は艦種や艦型によって違いがある。
大雑把な数字だけど、私の場合は私を中心として縦1m横幅50cm。深さは40cm無い位よ。
「なるほど、それに乗って海面を移動する訳ですか」
「乗ってるのとは少し違う気がするけど…まあ、だいたいそんな感じね」
主機から発生させてるからジャンプなんて出来ないし、片足で立つなんて事も基本的に出来ない。『脚』の面積内で足の位置を変える位は出来るけどね。
だって足の裏にくっついた縦1m横幅50cmの力場が沈んでる状態だもの。
不可視の力場とは言え、浮力を発生させてると言う事は物理的な影響を受けてるんだから当然ね。
水に足を沈めた状態じゃまともにジャンプできないでしょ?あれと似たような物よ。
「先ほど、深さが40cm位と仰いましたよね?もしかして、それが魚雷の当たり判定になるのですか?」
「正解。話が早くて助かるわ」
先に言ったけど、『脚』は艦種や艦型によって大きさと形が異なる。まあ、形は似たような物ではあるけどね。ほら、船を上から見た時の形って似たり寄ったりでしょ?
だけど、大きさはそうは行かない。
実艦を思い浮かべてみてくれると解りやすいかな?例えば、駆逐艦と戦艦とじゃ大きさが全然違うでしょ?これは艦娘にも当て嵌まるの。胸の大きさが?とか思った人は心が汚れてるから猛省しなさい。
長門さんが確か…縦2mで横幅は70cm、深さは90cm位だったかしら。
実艦の大和は長門型戦艦より大きかったらしいから、当然艦娘の大和の『脚』も長門さんより大きいはずよ。
「思ってたより動きにくそうですね……。もっとこう…アイススケートのような感じだと思ってました」
「そんな動きは駆逐艦でも無理よ。旋回半径がついて回るからね」
この旋回半径のせいで、艦娘は人型の割に下半身の動きに融通が利かない。駆逐艦でだいたい1m位。戦艦になると4~5mは軽く必要だわ。
この旋回半径を0、もしくは0に近くしようとした人が過去に居て、その人が創作した『脚技』と総称される技術はあるんだけど……。
『脚』の形成に5~6秒かかる戦艦に説明しても無意味だから黙っとこう。
「何か隠してません?」
「何も隠してないわ。それより、早速実地に入るわよ」
「いきなりですか!?まだ使い方の説明を受けていませんよ!?」
「わかってるわよ。それは今から教えるわ」
と言っても、使い方を理論立てて説明するのって難しいのよねぇ……。
一応は海軍がそれっぽく
特に、全ての砲が『機関』と一繋ぎになってる大和みたいなタイプの艤装は、恐らくだけど砲撃すらイメージに頼る事になるわ。だって引き金なんてないもの。
『脚』だって同じ。
使う個人が、使う事を思い浮かべなけりゃ形成すらできないわ。さて、これをどうやって説明するか……。
「そうね…まずは目を瞑りなさい」
「目をですか?」
「そう。瞑ったら、ゆっくりで良いから背中の『機関』に意識を集中してみて。そうすると、光る丸い球みたいな物が見えるはずよ」
稀に、そんな事をしなくてもいきなり『脚』を形成したりできる子が居るけど、大和の場合は難しいかもしれない。だけど、大和は頭が悪い訳じゃない。今まで私がしてきた説明も、彼女なりに理解してるはず……。理解してるよね?もう一度同じ説明なんてしたくないから理解しててよ?
「見えた?」
「はい……。紅い…紅い球が見えます……。凄く綺麗な…血のように紅い球が……」
「それが艤装の核と呼ばれている物。艦娘が扱う力場の発生源よ。そこから…そうね……。主機にホースを繋げるイメージをしてみて、それができたら……」
あれ?この感じ……。背中がゾワゾワする。
ここまで強く感じるのは初めてだけど、この感じには覚えがある。殺気だ。深海棲艦共が問答無用で浴びせて来る殺気、それを何倍、いえ何十倍も濃くした感じだわ!
「アンタ…何を!」
「え?何か間違ってましたか?」
私が大和に声をかけた途端、さっきまで私を包み込んでいた殺気が霧散した。今のは何?いや、殺気だというのはわかってる。問題は誰があれ程の殺気を発したかよ。
強すぎて距離は曖昧だけど、方向的には間違いなく大和。だけど、当の大和はキョトンとして私を見ている。もしかして、艤装に使われているアイツが殺気を飛ばして来たの?艤装に意識を集中させたから表に出て来た?
「あ!満潮教官!何か感じます!足の裏に何かあります!」
「そ、そう……。だったらそのまま海に出てみなさい」
海に向かって歩く大和に敵意は感じない。
兵装もちゃんと持って来るべきだったわね。まさか、あんな簡単に暴走の兆しを見せるなんて思ってもみなかった。私としたことが慢心してたわ……。
「やった!やりましたよ教官!ちゃんと浮けました!」
「浮けただけではしゃがない。今度は前に進むイメージをしてみなさい」
パッと見た感じ、『脚』の形はほぼまん丸。とても船とは呼べないわ。
まあ、航行訓練を続ける内に自然と船の形になっていくはずだけど。
「進めました!」
「だったらそのまま前進して。500mほど先にブイが浮いてるから、そこまで行ったらまた戻って来なさい」
「はい!」
人の気も知らずに呑気にはしゃいじゃって……。
よくよく考えたら、暴走した場合は私を教官と呼んでくれる彼女を殺さなきゃいけないのよね……。
いやいや、簡単に考え過ぎよ。彼女を殺さず、艤装だけ破壊する事だって私なら出来る。そうすれば、たぶん彼女の命は助かるわ。
「教官なんて呼ばせるんじゃなかったな……」
たった数時間で、私の仇敵を背負って遠ざかって行く大和に情が湧いてしまった。昨日は暴走する事を願ったけど、今は暴走しないでとも思ってるわ。
ホント…ころころと考えを帰るなんて情けないったらないわね。
「…ったく。ウザいのよ」
私は、誰にともなくそう呟いた。
友の仇を討ちたい衝動と、初めての教え子の身を案じる想いの葛藤に嫌気をさしながら。
主要キャラ人気投票
-
朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
-
神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
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大和(影が薄い三部主役)
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紫印 円満(実質三部の主役?)