艦隊これくしょん ~ナデシコの咲く丘で~   作:哀餓え男

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 二章ラストです。

 現在出張中で環境が変わっているため、執筆スピードが激しく落ちてます。
 ので、三章の投稿開始は早くとも来週末、遅ければ今月末になる予定です。

ガチで!


第二十一話 幕間 横須賀女子会

 

 

 突然だけど女子会って知ってる?

 簡単に言うと、女性だけで飲食店などで集会を開いて話をする宴会のことよ。

 男性諸氏が女子会にどういうイメージを抱いてるのか知らないけど、実際の女子会は女性がキャッキャウフフと世間話をするようなモノじゃないわ。少なくとも私が知る女子会はね。

 私が知ってる場合だと、最初の内こそ「最近どう?」とか「この前行ったお店が云々」とかとりとめのない話から始まるけど、数分もしない内に旦那や彼氏の愚痴、下ネタが飛び交い始めるわ。

 さらに、男性の目がない個室でとなると体裁も無くなるわね。

 胡坐をかくのは当たり前だし、ゲップやオナラも笑いの種になる。下着とかも丸見えが当たり前ね。酷い時は鼻クソとかほじってるわ。

 もし、男性が女子会を見たら女性への幻想が一発で崩壊する事間違いなしよ。

 

 「でさ!うちの旦那ったら「この子もいつか桜子さんみたいに……」とか言うのよ!桜のオムツ換えながら!」

 「それって…やっぱりアンダーヘア?」

 「逆に聞くけどさ辰見。他に何がある!?オムツ換えてる最中に言うのよ!?」

 

 先生と明日以降の予定のすり合わせをした後、私たちは執務室でお茶でもって話になったから移動して、最初の内こそ午後のティータイムを楽しんでたんだけど、いつの間にか女子会みたいになっちゃった。

 先生も最初の内は居たんだけど、桜子さんがストレートに「お父さんは出てけ」と言ったもんだからすごすごと退室して行ったわ。隣に座れたから一緒に居たかったんだけどなぁ……。

 

 「桜子さんは処理してないんですか?」

 「一応してるわよ?パ○パンにはしてないけど」

 「パイ…なんです?何かの暗号ですか?」

 

 暗号でもなんでもないわよ大淀。要はアンダーヘアを全剃りしてる状態。もっと簡単に言うと毛が一本もないツルッツルな状態ね。

 

 「やはり男性は無い方が好みなのでしょうか」

 「そんなの人それぞれでしょ。お父さんに聞いてみなさいよ。お父さんは無い方が好みの可能性大よ」

 

 それはロリコンだから?

 大淀にベタ惚れな先生をロリコンと呼ぶのは少々無理がある気が……。

 いや、先生と大淀の歳の差って30近いわよね?だったらロリコンと言えなくもないか……。

 いやいや、ロリコンの対象は少女や幼女。大淀の歳を考えると少女にカテゴライズできそうだけど、結婚もしてるし法的にもOKだから問題はないはず。

 ちなみに、意外と知られてないんだけど、日本の性的同意年齢は13歳以上。

 つまり、同意さえあれば13歳の子と夜戦(意味深)をしても刑法的には問題ないの。(ここ、テストに出ません)

 児童福祉法や淫行条例、社会倫理的にはアウトだけどね。

 ただし、同意があっても真摯な関係と認められなければ罪に問われるから注意しなさい。

 それと、言わなくてもわかると思うけど13歳未満の子との行為は問答無用で強姦罪に問われるから、そういう性癖の人は自分を戒めるのを怠らず、YesロリータNoタッチを心懸けなさい。

 

 「そうだ!気になってたんだけど、大淀って夜戦はどうしてるの?」

 「どうと言われましても……。ここ数年は夜戦をしなければならないような出撃もありませんし」

 「何をカマトトぶってるのよ。そっちの夜戦じゃなくて意味深の方よ!」 

 「ああ、そっちですか。週に二回すれば多い方でしょうか。主人は帰りが遅いですし、私は21時以降は寝てしまいますので」

 

 親の夜の性活を聞き出そうとする桜子さんを窘めるべきか、それとも先生が欲求不満になってると思われる情報が聞けたことに感謝するべきか……。

 どちらにしても、誰か止めてくれないかなぁ……。いくらなんでもぶっちゃけ過ぎでしょ。

 青葉にでも聞かれたら間違いなく記事にされるわよ?

 

 「意外と少ないのね。暇さえあれば執務室でヤってるんだと思ってたわ」

 「あ、辰見もそう思ってたの?」

 「そりゃあねぇ。大淀の格好ってただでさえセックスアピール強いじゃない?しかも個室で二人っきり。これでムラムラするなって方が無理でしょ」

 

 確かに。

 大淀の格好、特にスカートは痴女と言われても言い訳ができないほどスリットが開いてるし丈も短い。しかも、男がグっと来る制服トップ5に入るセーラー服。さらに仕事中は秘書でもある。

 執務室でスケベスカートに魔改造されたセーラー服姿の秘書とオフィスプレイ。か……。それ何てAV?

 

 「仕事中にそんな事はしません!まあ…暇になった時にスリットに手を突っ込もうとする事はありますが……」

 「そういう時、大淀はどうするの?」

 「ダメですよ。って言いながら叩いたり抓ったりします。手を突っ込むよりそっちの方を望んでるっぽいので」

 「セクハラしようとして注意されるシチュエーションを楽しんでるって事?」

 「はい。辰見さんの仰るとおりです」 

 

 なるほどねぇ。

 先生ってそういうのが好みなんだ。今度、二人きりの時に手を突っ込みたくなるような格好してみようかしら。胸元がバーン!と開いてるようなや……。いや、やっぱり何でもない。

 

 「けど、週に二回かぁ。お父さんは兎も角、大淀はそれで満足なの?」

 「と、言いますと?」

 「そりゃあ夜戦の回数よ。16~7で覚えたてならヤりたい盛りでしょ?」

 「別にそこまででも……。本音を言えばもう少し相手をしてほしいですが、私達の場合は仕事や体質の問題もありますし……」

 

 女性のヤりたい盛りって30~40歳くらいじゃなかったっけ?

 でも、桜子さんが言う通り覚えたてってヤりたいものなのかしら。最初の内は痛いって聞いてるけど……。

 

 「そう言う桜子は?子供が居るとヤりにくいんじゃない?」

 「そんな事ないわよ?桜って寝るの早いし、一度寝ると朝まで起きないからね」

 「あ、その言い方だと今も定期的にヤってんだ」

 「週に5~6回かなぁ。辰見は?貴女だっていい歳なんだから彼氏の一人や二人居るんでしょ?」

 

 へぇ~、桜子さんはほぼ毎日ヤってるのかぁ。お盛んだなぁ。それとも二人目を建造中ですか?って、それはもういいや。それよりも、今気になるのは辰見さんの男性関係。

 辰見さんって美人のクセに、誰かと付き合ってるとかいった噂が全くないのよ。

 そのせいで、秘書艦で同じ部屋に住んでる叢雲と百合の関係なんじゃないかって噂が立ってるくらいよ。

 私も人のこと言えないけど……。

 

 「私を尻軽みたいに言わないでくれない?前に言わなかったっけ?婚約者がいるって」

 「それって…私の結婚式の前日に四人で呑んだ時の話?でも、会った事無いって言ってなかった?」

 「あれから何年経ってると思ってるのよ……。今は月一で会うくらいはしてるわ」

 「その日にヤりまくるの?」

 

 男と女が会ったらそれしかないと思ってるのかこの赤髪は。

 私と先生みたいに、呑んで喋って終わりってパターンもあるでしょ?まあ、私達の場合は私がヘタレなだけなんだけど……。

 

 「してない」

 「本当にぃ?」

 「本当よ。万が一妊娠したら困るもの。だから、婚前交渉はしないって二人で決めたの」

 「なんで困るのよ。貴女はともかく、婚約者の方はしたいかもよ?」

 「その婚約者の方から言い出したのよ。戦争が終わるまでは。ってね」

 

 戦争が終わるまで…か。

 その婚約者が何を思ってそう言いだしたのかはわからないけど、いつ終わるかもわからない戦争が終わるまでだなんて余程の覚悟がないと言えないわ。

 辰見さんの表情を見る限りではその人に好印象を抱いてるみたいだけど、いったいどんな人なんだろ?

 

 「ふぅ~ん。じゃあ、辰見もまだ処女なんだ。よかったわね円満。仲間が増えたわよ?」

 

 別に嬉しくない。

 桜子さんは忘れてるみたいだけど、鎮守府に所属してる女性の処女率ってかなり高いんだからね?ただの女性職員は兎も角、艦娘、特に大半を占める駆逐艦はほぼ処女と言っても良いわ。たぶん。

 

 「どうしてそうなるのかわかんないけど、私は処女じゃないわよ?」

 「そうなの!?でも、会うだけでしてないって言ったじゃない」

 「その人とはね。私の初体験ってずぅ~っと前だもん」

 「艦娘だった頃?あんな、オレとか言って剣を振り回してた貴女が?」

 「それより前よ。だって私、艦娘になるまで普通に学生してたのよ?言い寄って来る男も多かったんだから」

 

 ふむ。確かに、辰見さんの容姿なら引く手数多でしょうね。

 話を聞いた感じだと、艦娘になるの一人称は『オレ』じゃなかったみたいだし、天龍だった頃の容姿に今みたいな喋り方だったら間違いなくモテるわ。眼帯は外した方が良いと思うけど。

 

 「信じられない…辰見が爛れた学生生活を送ってただなんて……」

 「別に爛れてないから」

 「でもヤる事はヤってたんでしょ?」

 「ノーコメント」

 「なんでよ!」

 「人の性事情を根掘り葉掘り聞き出そうとすんじゃない。デリカシーとかないの?」

 「そういう概念があるって噂は聞いた事がある」

 

 ふんぞり返ってそう言った桜子に辰見さんは盛大に溜息を吐いた。

 え~と、デリカシーの意味はたしか、気配り ・心配り・感情の繊細さだっけ?うん、桜子さんには無縁だ。だって自分が良ければ他はどうでも良いって平気でのたまう人だもん。

 

 「ところで、さっきから円満が一言も喋ってないんだけど?」

 「どうやって会話に入れってのよ。未経験の私にはハードルが高すぎるじゃない」

 「だからさっさとヤっとけって言ったでしょ?なんなら、奇兵隊(うち)の隊員を何人か貸そうか?」

 「絶対に嫌!だいたい何人か(・・・)って何よ何人か(・・・)って!初体験が筋肉ダルマの集団だなんて絶対にお断りよ!私にトラウマ植え付けたいの!?」

 

 なんか「売れそうだけどなぁ」とか言ってるけど撮影までする気?それどころか、筋肉ダルマの集団に無理矢理薄い本的な事をされる私を撮影した物を売る気?悪魔かこの女は!

 

 「桜子、それは流石に鬼畜過ぎるでしょ」

 「でもさぁ。このままじゃ、円満は一生男を知らずに人生を終えかねないわよ?」

 「知らずに人生を終えた人なんていくらでも居るわよ。それに、円満は今それどころじゃないんだから」

 

 ごめんなさい辰見さん。フォローしてくれるのは凄くありがたいんだけど、常日頃から私の頭はどうやって先生と添い遂げるかばかり考えてるわ。もっと具体的に言うと、どうやったら先生に抱いてもらえるか!

 

 「それどころじゃないってどういう事?もしかして、鉄底海峡(アイアンボトムサウンド)を攻める準備で忙しいから?」

 「それ、誰から聞いた…って聞くまでもないか。いくら身内とは言え口が軽すぎでしょ」

 「うん、辰見が察してる通りお父さんから聞いた。その様子じゃ、辰見は詳細を知ってそうね」

 「知ってる事は知ってるけど……」

 

 辰見さんが視線で「良いの?」と聞いてきた。

 良いも悪いも、今さらって感じだけどね。先生が何処まで話したかはわからないけど。

 

 「包囲殲滅戦のプランは聞いたわ。けどその後、本命(・・)のプランの意味がわからない。勿論お父さんもね」

 「まあそうよね。私だって、最初聞いた時は事態を重く見過ぎって思ったもの」

 

 先生は本命のプランまで話してたか。

 きっと、どうして私がそこまで悲観的な作戦を立てたのか理由がわからなくて桜子さんに相談でもしたんでしょう。

 大和が使えるかどうか判断出来たら、大筋を改めて説明する気だったんだけどなぁ。

 

 「教えて円満。どうして貴女は、前線基地とした三基地が陥落するのが前提の作戦を立てたの?正直、今の南方の戦況じゃそんな事起こり得ないわよね?」

 「起こり得ない(・・・・・・)から起こり得る。と考えてるからよ」

 「いや、なぞなぞに付き合う気はないんだけど?」

 「別になぞなぞじゃないわ。桜子さんは正化27年のソロモン海戦以降、南方の深海棲艦が大人しい事を不思議に思った事ない?」

 「それは……。ソロモン海戦で敵の戦力の大半を削れたからじゃない?」

 

 違う。

 たしかに、ソロモン海戦時に100近い敵を屠る事に成功はしたけど、南方に出現する深海凄艦の数はそれ以降も減ってない。これは各泊地の戦果報告で間違いじゃないとわかっている。さらに……。

 

 「ここ数年。もっと言うなら正化30年からこっち、南方の敵の動きが明らかに変わったわ」

 「どう変わったの?」

 「桜子さんも、深海棲艦の襲撃目標に戦術的、戦略的な目的のない手当たり次第の襲撃って事は知ってるわよね?」

 「うん、知ってる」

 「じゃあ、ここ数年で深海棲艦が出没する場所が固定されて来たって事は?」

 「それは初めて聞いたわ。そうなの?」

 「ええ。具体的に言うと、シーレーン上に限定されて来てる。タウイタウイより南の海域ではほぼ出没しなくなってるわ」

 「単にそっちに回すほど手駒が無いってだけじゃないの?」

 「うん、最初は私もそう思った」

 

 けど違う。違和感を感じる。

 だって、ソロモン海からアラフラ海、バンダ海、フローレス海、ジャワ海の各海域で全く深海棲艦が出なくなったんだもの。

 代わりに増えたのは、先に言ったホルムズ海峡、マラッカ海峡、南シナ海、バシー海峡を抜けるシーレーン上。戦果報告を見て、まるでシーレーンより南から目を逸らそうとしてるみたいに感じたわ。

 

 「深海棲艦が戦略的に動いてる。って言いたいの?」

 「そうよ。でも根拠はそれだけじゃない。去年の元帥が立ち寄った泊地への深海棲艦の襲撃。さらに今回の養成所襲撃。もっと遡れば、舞鶴と横須賀。これら全ては、情報提供者からの情報を元に襲撃を指示した個体が居ると私は考えてる」

 「ちょっと待って。じゃあ貴女、包囲殲滅戦の計画が敵にバレてる前提で本命の作戦を立てたって事?」

 「それは可能性レベルね。そんな情報がなくたって、今の南方の状況を見てれば包囲しようとしてる事くらい簡単に予想できるわ」

 

 実際、補給物資や人員の移送などを大々的に行ってるしね。相手が人間だったら確実にバレてるわ。

 

 「それ、直接指示をしたお父さんを馬鹿にしてない?」

 「してない。今の南方の状況じゃ、他の提督でも同じようにすると思うし」

 「なら、どうして貴女は三基地が陥落すると考えたの?」

 「逆に聞くけど、そんな状況で三基地が陥落するなんて考える?」

 

 考えないでしょ?

 南方、特にソロモン海周辺は小規模な戦闘が発生してるとは言え普段と大差ない。三基地を陥落させられるような艦隊が確認されたわけでもない。それに対し、こちらには物資的にも人員的にも余裕がある。

 例えハワイ島の時と同規模の敵と相対しても、米軍の協力なしでも有利に戦える。

 包囲が完成すれば、と言う但し書きが付くけどね。

 

 「円満は、南方中枢付近にハワイ島と同規模の艦隊が隠れている。もしくは、中枢が生み出せると考えてるのよ」

 「んな馬鹿な。だったらなんで攻めて来ないのよ。ソロモン海戦の時なんか戦力の逐次投入なんて馬鹿をやらかした奴等よ?戦力が整ってるなら攻めてくるはずでしょ」

 「それも根拠の一つらしいわ。どうして、当時の深海棲艦は戦力を小出しになんてしたのか。それを円満は、生み出した端から戦場に投入してたんじゃないかって考えたのよ」

 

 今、辰見さんが説明してくれた通り、ソロモン開戦時の敵の用兵も根拠の一つ。

 当時と同じペースで、南方の中枢が深海棲艦を生み出し続けているとしたら一年で200隻以上。あれから約6年だから、単純計算で1200隻ほどになるわね。

 これから、南方全域の戦果報告に記されていた6年分の撃沈数を引けば約半分。600隻くらいは余ってる計算になる。つまり、南方には確認されていない600隻余りの艦隊が潜んでいる。もしくは生み出せるだけのキャパが中枢にはある。

 と、辰見さんから説明を引き継いで桜子さんに伝えた。

 

 「そんな数…どこに隠すって言うのよ」

 「余裕でしょ?艦隊とは言ってもサイズは人間と大差ないんだもの。島にでも潜ませておけば発見はほぼ不可能よ。敵の勢力圏のど真ん中に上陸して調査できないんだから」

 「だったら、悠長な事言ってないで今すぐ攻めるべきでしょ?どうしてしないのよ」

 「しないんじゃなくて出来ないの。資源の備蓄状況や艦娘の練度、それに南方各国との交渉とか色々と調整しなきゃならない事が山積みなの」

 「資源や練度はまあわかるけど……。なんで南方の国と交渉が必要なのよ」

 

 マジで言ってる?あ、マジだわこれ。

 南方の各泊地には日本海軍が駐留してるけど、これは日本の国土だからそうしてる訳じゃない。艦娘が居ない南方の国々を深海棲艦の脅威から守る役目を委託されてるという名目で土地を借りてるの。

 当然、大規模な作戦を展開しようとすれば各国の許可が要るわ。自分の家の庭で勝手にドンパチやられたらたまんないでしょ?

 私が先に説明した交渉とは、簡単に言うと「ドンパチやりますから許可をください。ついでに自国民の避難指示等もよろしく」ってお願いするものよ。

 日本近海なら問題ないんだけど、通商路の防衛以外の作戦となるとさすがに渋る。

 未確認の艦隊が居るかも知れないから大規模な艦隊を派遣させてくれなんて言っても断られるわ。

 実際、去年先生が各国のお偉方と会って直接交渉したみたいだけど、あまり色よい返事はもらえてないらしい。準備は防衛力の強化を名目にして進めてるけどね。

 

 「へぇ、そんな面倒なルールがあったんだ」

 「末端である艦娘は知らなくて良い事だからね。艦娘が気にする事でもないし」

 「じゃあ、円満は準備が整う前に敵が先手を打ってくると踏んで、あの作戦を考えたのね?」

 「そうよ。正直言うと、ラバウル、ブイン、ショートランドに集めてる艦娘をトラックまで後退させるべきだと思ってるけど、現在の包囲網形成はそのまま防衛ラインの構築になるからしないの」

 「陥落するって予想してるのに?」

 「ええ、彼女たちには犠牲になってもらう」

 

 痛いなぁ……。

 無文字通り胸が張り裂けそうなくらい痛い。でも、これくらいで音を上げちゃダメ。今も南方で戦ってる子達は、敵の侵攻を遅らせて時間を稼ぐのと引き換えに命を失う事になるんだから。

 

 「……円満が予想してる敵の侵攻時期は?」

 「恐らく夏。7月から8月頃と予想してる」

 「何故、そう思うの?」

 「包囲網がその位に完成するからよ」

 「完成する前じゃなくて?」

 「ええ、その時点で主攻以外の戦力は打ち止めだからね」

 

 故に、敵はその時期に攻めに転じる。

 包囲網が完成次第、即座に殲滅戦に移行できれば問題は小さくて済むけど、包囲網の形成完了から本隊であるワダツミ旗下の艦隊が戦線に加わるのは早くて数週間後。

 敵が戦略的に動くとしたら間違いなくこの瞬間よ。なにせ、一時とは言えこちらの戦力の上限がわかる瞬間なんだから。

 

 「この話、各泊地の司令には?」

 「タウイタウイとトラックの司令には近い内にするつもりよ。信じてもらえるかは微妙だけど」

 「前線の三基地の司令にはしないの?」

 「しないと言うよりできない。迂闊に話して、先走って攻められたら時期が早まる恐れがあるもの」

 「つまり、艦娘だけじゃなく基地ごと切り捨てるって事ね」

 

 言いにくい事をハッキリ言ってくれるわね。まあ、その通りだから否定はしないけど。

 先走ってハチの巣をつつくような事態になるのは避けたいもの。予定が早まっちゃうから。

 

 「一つ気になったのですが、円満さんは敵の司令塔に見当がついているのですか?」

 「司令塔?それは中枢じゃないの?」

 

 それまで黙って話を聞いていた大淀が、何かを思い出したように突然そう言いだし、桜子さんが脊髄反射したかのように問い返した。

 ええ、見当はついてるわ。

 それは中枢じゃない。ハワイ島攻略戦で中枢が桜子さんに討たれた後も、東側で米軍と戦っていた敵主力艦隊の統率は大して乱れなていなかったという話を先生から聞いて、指揮を執っている個体が別にいると私は判断した。

 

 「桜子さんはハワイ島で中枢を直接見たのでしょう?その時、指揮を執っているように見えましたか?」

 「……言われみれば…見えなかったわね」

 「これは主人から聞いたのですが、当時東側の主力艦隊は中枢が討たれた後も統率が取れていたそうです」

 

 ただし、ある時点から統率は乱れ始めた。それは、敵主力艦隊の旗艦と思われていた個体が姿を消してから。

 

 「じゃあ、主力艦隊の指揮を執っていた奴が……」

 「そう、確認されていた四凶の一角。南方棲戦姫、個体識別名『渾沌』が実質的な指揮艦よ。そしてそいつは、あの戦闘の最中に逃れている」

 

 私は大淀から話を引き継ぐようにその名を口にした。

 ハワイ島攻略戦の最中、勝てないと悟ったのか、艦隊を見捨てて島を縦断してまで逃げた敵の指揮艦の名を。

 それだけじゃない。

 アクアリウムの指導者である野風からこちらの情報を入手し、舞鶴、横須賀、養成所、さらに南方を巡っていた元帥への襲撃を指示したのも恐らくコイツよ。それは横須賀襲撃に窮奇が関わっていた事で半ば確信した。

 

 「円満、貴女…耐えれるの?」

 「耐える?耐える気なんてないわ。作戦が終われば必ず泣く。涙が枯れるまでね」

 

 桜子さんの問いに、私はそう答えた。

 また満潮に迷惑かけちゃうなぁ。なんて、頭の片隅で考えながら。

 だって無理だもん。私の命令で艦娘が死ぬと考えただけで胸が張り裂けそうになる。助けようと思えば助けられる子達を、作戦のために、いや、自分の目的のために切り捨てようとしてる自分に腹が立つ。殴りたくなる。殺したくなる。

 それでも、私は歩みを止めない。

 これは始まりに過ぎない。南方攻略は、私にとってはただの前哨戦。

 この戦争を終わらせるための第一歩でしかないんだから。




次章予告。

 大淀です。

 鎮守府の皆さんが注目する中、大和さんと叢雲さんの演習が開始されました。
 満潮ちゃんは大和さんが暴走しないか心配で仕方がないみたいです。
 はたして、大和さんは暴走しちゃうのでしょうか。

次章、艦隊これくしょん『失意と憧れの変奏曲(パルティータ)
お楽しみに

主要キャラ人気投票

  • 朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
  • 神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
  • 大和(影が薄い三部主役)
  • 紫印 円満(実質三部の主役?)
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