艦隊これくしょん ~ナデシコの咲く丘で~   作:哀餓え男

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第三話 彼女に捧げるラブソング

 

 

 

 終わった後になって、あの時のあれが切っ掛けになったんじゃないかって思う事ない?

 え?ない?そう……。

 けど、私にはあったの。

 彼女の誕生…いえ復活が、あの戦争を終らせる切っ掛けになったんじゃないかって、全てが終わった後で思ったわ。

 だって彼女が居なければ、きっと今も戦争は継続中だし、私だってここでインタビューに答えてる暇なんてなかったかもしれないんだから。

 危ないと思わなかったのかって?

 そりゃあ思ったわよ。

 佐世保や大湊の提督は彼女を解体すべきだって言ってたし、私自身、彼女が生きていると確信した時は解体してやろうかと思ったわ。

 けど、結果として彼女は戦争を終わらせた。

 自らを犠牲にして、彼女はあの戦争を終わらせたの。

 今でも本当は認めたくないけど、あの時の……。あの場に集った全ての艦娘達を率いて戦場に向かって行く彼女は、まるで女神のように光り輝いていたわ。

 

 

 ~戦後回想録~

 横須賀鎮守府司令長官。紫印 円満(しいんえま)中将へのインタビューより抜粋。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 「貴女も懲りない人ね。あまり教官の手を煩わせないでくれない?」

 「だって…艦娘になりたいんですもの……」

 

 大城戸さんに怒られた後、私は矢矧さんに連れられて、問題を起こした候補生が放り込まれる独居房に入れられました。

 移動中もずっと手錠をかけられていたせいで手首が痛いです。痣が残ったら、責任を取って艦娘にしてもらいましょう。

 

 「その顔、まだ諦めてないようね」

 「当たり前です!私は艦娘になりたいんですから!」

 

 独居房のドア越しでも聞こえるくらい、矢矧さんの盛大なため息が聞こえました。

 そこまで呆れなくてもいいじゃないですか。貴女にだって私の気持ちはわかるでしょう?先月、こうやってドア越しに会話した時、貴女だって早く艦娘になりたいって言ってたじゃないですか。

 

 「明日、何時にここを発つんですか?」

 「11時に迎えが到着予定だから、遅くても12時には出ると思うわ」

 「配属先は横須賀…でしたよね?」

 「ええ、貴女の相手をするのもこれで最後と思うと……」

 「寂しい…ですか?」

 「いいえ全く。気分爽快よ」

 「薄情過ぎませんか!?私たち友達でしょう!?」

 

 直接会うのは月に一度だけでしたけど、ラインで毎日お話してたじゃないですか!21時以降は、何回メッセージを送っても既読すらつきませんでしたけど……。

 でも私は我慢したんです!それなのに気分爽快だなんて酷すぎます!訴えられても文句言えませんよ!

 

 「気分爽快は冗談だけど、これからも後輩達が貴女の被害に遭い続けると思うと不憫で……」

 「私って、そんなに迷惑かけてました?」

 「自覚無し!?嘘でしょ!?」

 

 はて?私がした事と言えば……。

 半年前、初めてここに来た時は普通に門から入りました。多少暴れましたけど、そこまで迷惑はかけてないと思います。

 二度目はフェンスを…クリッパーって言う名前でしたっけ?あの工具。それを使ってフェンスを破って中に入りました。

 これもまあ、良くあるイタズラレベルですね。

 三度目は、門の前で仁王立ちして拡声器を使い、抗議デモみたいな事をしました。朝から夕方まで。

 そんな長時間、声を張り上げ続けた事を褒めて頂きたいです。

 四度目は少し迷惑かけたかしら。

 守衛さんが何度お願いしてみ中に入れてくれないから、レンタカーを借りて門を強行突破しました。

 レンタカーと遮断機の修理代を請求されたせいで、家に帰ってから親にこっぴどく叱られました。

 家が割と裕福だったから怒られるだけで済みましたけど、お小遣いから修理代を出せと言われたら絶望してましたね。

 あら?でもこれは、私が迷惑を被ってないかしら。

 五度目は座り込みを敢行しました。

 冬場だったので、防寒対策をちゃんとして門の前でバーベキューをしてやりました。

 一人でバーベキューは少し寂しかったですけど、外で食べるお肉の美味しさに満足してその日は帰っちゃいました。テヘペロ♪。

 そして六度目。

 今回は趣向を変えて、候補生達が陸に上がった時間を見計らって海から侵入しました。

 私がスクール水着を着用しているのはそのためです。

 もっとも、春とは言え海水の冷たさには勝てず、陸に上がった途端に体が震えてまともに動けなくなってしまいました。そこを捕まえられた訳です。

 次は過去六度の反省を生かして空からですね!

 

 「次は空から。とか考えてるんじゃないでしょうね?」

 「ど、どうしてわかったんですか!?まさか、矢矧さんはエスパー!?」

 「天井見上げてニヤリとしてれば馬鹿でもわかるわ!って言うか、全然反省してないじゃない!凍死しかけたばかりでしょう!?」

 「だからこそ空なんです!空なら凍死の心配はありません!」

 「墜落死の心配は!?パラシュートを着け忘れるとか普通にしそうじゃない!」

 

 なるほど。

 矢矧さんはなんだかんだと言いながら、結局は私の心配をしてくれるんですね。さすがは私の友人。アホほど登録できる私のスマホに、家族以外で唯一名を連ねているのは伊達ではありません。

 いえ、これはもう友人なんてレベルじゃありませんね。親友、いや!心友です!

 

 「おお!心の友よ!」

 「どこのジャイアン!?今の会話から何をどうしたらそんなセリフが出て来るのよ!」

 「そうだ!あだ名を決めましょう!心友同士なのにさん付けなんておかしいですから!」

 「おかしいのは貴女の思考回路よ!あだ名なんか決めなくていいから!」

 

 さて、矢矧さんのあだ名は何が良いかしら。

 やっちゃん?やーさん?やーさんは無いですね。さん付けですし、何だか筋者みたいですもの。だったら……。

 

 「やはぎん なんてどうでしょう!可愛らしくて素敵だと思いませんか?」

 「思わないわよ!何だかポンコツっぽいもん!ポンコツな矢矧の蔑称みたいだもん!」

 「やはぎん…そんなに興奮すると血圧が上がりますよ?」

 「貴女のせいよ!貴女のせいで私の血圧はうなぎ上りよ!って言うか やはぎんって呼ぶな!」

 「うなぎの旬は8月から12月です!時季外れでしょう!」

 「うなぎの話なんてしてないけど!?」

 

 まったく。こんな僻地に居るせいで、やはぎんは一般常識に疎いようですね。

 ちなみにですが、うなぎと言えば土用の丑の日が思い浮かびますね。ですがこの日は、うなぎが一番美味しい時期とは少しズレてるんです。

 諸説ありますが、夏場にうなぎが売れなくて困っていた鰻屋さんに相談された平賀源内さんが「そんじゃお前ぇ、『本日丑の日』と書いた張り紙を店先に貼ってみな」と勧めたところ、なんとその鰻屋さんは大繁盛!

 そしたら他の鰻屋さんも真似し始めて、土用の丑の日にうなぎを食べる風習が定着したと言う説が割と有名なのではないでしょうか。頭に『う』が付く食べ物なら何でもいいなんて話もありますね。

 

 「わかりましたか?」

 「わっかんないわよ!貴女が何を思ってそんなセリフを言ったのか欠片も理解できない!」

 「やはぎん…話聞いてました?」

 「お前が聞け!お願いだから私の話を少しは聞いて!」

 

 ふむ……。

 話を聞けと言う事は、やはぎん も私のあだ名を決めてくれたようですね。どんなあだ名を付けてくれるんでしょう。

 山ちゃん?なんだか芸人さんぽいから却下ですね。

 では なっちゃん?いやいやジュースか!確かに美味しいですけど、ジュースっぽいあだ名は無しですね。

 だって考えてもみてください。

 そんなあだ名を付けられたら「なっちゃ~ん。ちょっとなっちゃん買って来て~」とか言われてからかわれるのが目に見えてます!

 

 「だから、なっちゃんは絶対に拒否します!」

 「もう嫌だ……。宇宙人の方がまだ会話が成立しそうな気がする……」

 「この養成所には宇宙人が!?」

 「居ねぇよ!ここに居るのは宇宙人より話が通じない馬鹿女だけだ!」

 「やはぎん…自分を卑下しちゃダメ。貴女は馬鹿なんかじゃないわ。私が保証します!」

 「自覚ねぇのかよ!こんなに嬉しくない保証は初めてだわ!いや、もうこれは侮辱よ!ぶっ殺してやる!」

 

 なんとはしたない。

 やはぎんが罵詈雑言を吐きながらドアをガンガン!と蹴り始めました。

 ドアの格子窓が小さくて謎の怒りに燃えている顔しか見えませんが、そんなに派手にドアを蹴ったらスカートの中身が見えちゃいますよ?貴女のスカートはただでさえ短いんですから。

 

 それにしても、艦娘になった やはぎんと会うのは今日が初めてですけど、艦娘ってあんなに露出度が高い服装をしなくてはいけないんでしょうか。

 少なくとも、私が知っている彼女(・・)はそんなコスプレイヤーみたいな格好はしていませんでした。

 ちなみに、やはぎんの格好はセーラー服に紅色のスカート、それに白い長手袋と片足ニーソ。

 こう言えば普通に聞こえますが、セーラー服は肩とお腹を隠していませんし、スカートはちょっと動くだけで中が見えてしまいそうなくらい短いです。

 街中をあんな恰好で歩いていたら速攻でお巡りさんに止められそうですし、『女の子がお腹を冷やしてはいけません!』とお母さん的な人に注意されかねません。

 

 『ビー!ビー!ビー!非常事態発生!非常事態発生!現在、深海棲艦と思われる艦隊が当施設に急速接近中!全候補生は指定の避難場所に至急避難せよ!これは訓練ではない!繰り返す!これは訓練ではない!』

 「敵艦隊!?こんな時間に!?」

 

 まったくです。いくら敵とは言え、訊ねて来るなら時間は考えるべきだと私も思います。急ぎの用でもあるのでしょうか……。

 それはそうと、『これは訓練ではない!』って本当に言うんですね。テレビや映画の中だけの事かと思っていました。

 

 「は、はい!矢矧です!はい…はい……。りょ、了解しました!整備場にて待機いたします!」

 

 ん?誰と会話していたのでしょう。相手の声は聞こえませんでしたから電話だとは思うのですけど……。

 いや、やはぎんの事です。独り言という可能性も捨てきれません。

 

 「やはぎん?独り言ですか?」

 「そんな訳ないでしょう!出撃命令です!」

 「出撃?今からですか?もう夜も遅いのに……」

 「いや……!はぁ…もういいわ……。鍵は開けたから、貴女は避難して……」

 「やはぎんは?」

 「だぁかぁらぁ!私は準備が済んだら迎撃のために出撃するの!さっきの放送聞いてなかったの!?」

 

 聞きましたけど、それと やはぎん が出撃するのに何の関係が?

 あっ!わかりました!お出迎えですね!あれ?でもおかしくないですか?こちらに向かっているのは深海棲艦ですよね?深海棲艦は敵ですよ?それをお出迎えすると言う事は……。

 

 「やはぎんは深海棲艦!?」

 「もういい!貴女はさっさと避難しろ!ほら!早く出て!」

 「ちょっ!痛い!痛いですよ やはぎん!髪を引っ張らないで!」

 

 ドアを乱暴に開けて入って来た やはぎんは、私のポニーテールを引っ張って無理矢理私を独居房から連れ出しました。

 同じポニーテール仲間なのにポニーテールを引っ張るなんて酷すぎます!ポニーテールに謝ってください!

 

 「貴女が人の話を聞かないのは身に染みてわかってるけどあえて言うわ。よく聞きなさい。避難場所は、養成所の南側にある山道を登った先よ。間違っても北側、海の方へ行ってはダメ。山を目指すの」

 「え?でも……」

 「でもじゃない!敵が来てるの!死にたくなければ早く避難しなさい!」

 

 やはぎんって人の話を聞かない人だなぁ。登山道具も無しに夜の山に登るのは危ないって言おうと思っただけなのに……。

 

 「ほらほら!さっさと行く!」 

 「きゃぁ!ちょっと!お尻を蹴らないで!痛い!痛いからぁ!」

 

 うう……。門に着くまでひたすらお尻を蹴られました……。

 私は水着の上から毛布を羽織ってるだけなんですよ?お尻の装甲は無いに等しんです。それなのに蹴られまくったもんだから、きっと私のお尻は腫れ上がってますよ。

 

 「終わったらラインするわ。だから…貴女は避難場所で待っていて……」

 「やはぎん……」

 

 どうして、そんなに思いつめた顔をしているの?終わったらラインすると言ってるけど、貴女の顔を見ていると、まるで今生の別れのようにも思えてしまうわ。

 

 「じゃあ…私行くから……貴女も早く行って」

 「あ……」

 

 待って。と言う間もなく、やはぎんに追い立てられて私は養成所の門を出ました。

 もう!少しは私の話を聞きなさい!

 私は今スマホを持っていないんです!恰好を見ればわかるでしょう?それなのに、私の返事は一切聞かずに行ってしまうんだもの。一言文句言ってやろう。

 確か……整備場で待機するとか言ってましたね。

 

 「ええと…整備場は確か……」

 

 あれ?どこでしたっけ?門がここで…北側が海。東に戻ったら玄関があるから……。東かな?東ですね!きっとそうです!

 

 「あ、あれ?ここどこ?」

 

 東に真っ直ぐ進んだはずなのに、私は何故か食堂と思われる場所に居ました。玄関から中に入ったのが失敗だったのかしら。整備場って施設内に無いの?

 

 (……チダ…)

 

 ん?今、誰かに呼ばれたような……。

 養成所で私の知り合いと言えば大城戸さんと やはぎんのみ。用事が終わってもラインの返事がないから、 やはぎんが私を探してるのかしらのかしら。

 

 「あ、綺麗ですね……。花火かしら」

 

 声に導かれるように施設から外に出ると、養成所の北に広がる水平線がピカピカと光っていました。遅れて音が聞こえますから、花火はかなり遠くで上がってるんですね。

 30分近く迷ったおかげで眼福です。時期外れですけど良い物が見れました。

 

 (…ツ……ケタ……)

 「誰?」

 

 整備場と思われる建物の入り口が見える位置まで来た時、また誰かの声が聞こえました。だけど、周りには誰も居ません。

 気のせい?ですが、確かに聞こえました。

 聞こえたと言うより、頭の中に直接声が響いた感じでしたけど……。

 

 (コッ…ダ……)

 

 呼んでる。誰かが私を呼んでる。

 暗い水底から響いて来るような声で私を呼んでる。

 

 (ソウダ…コッチダ……)

 

 整備場に一歩近づく度に、声がハッキリと聞こえるようになっていく。

 中から?整備場の中で、誰かが私を呼んでいる。いいえ、待っている。

 

 (ヤット…ミツケタ)

 

 整備場の中には誰も居ない。

 代わりに在ったのは、巨大な砲を備えた艤装……。

 艤装…ですよね?大城戸さんは適合者が居ない艤装は無いと言っていましたけど……。

 

 (会イタイカ?)

 

 会いたい?誰に?

 私が会いたいのは彼女だけです。そのために艦娘になりたいんです。

 

 (会イタイノダロウ?)

 

 ええ、私は彼女に会いたい。

 忘れもしない、4年前の正化30年3月3日。

 家族と一緒に乗っていたフェリーを救ってくれた名前も知らない彼女を、私は生涯けっして忘れない。

 黒髪を靡かせ、白い衣を纏い、化け物の群れを踊るように葬った彼女の姿を忘れる事なんて出来ない。

 

 (ナラバ…私ヲ連レテイケ)

 

 何処に?いや、聞くまでもない。そんなの……。

 

 (決マッテイル……)

 

 「(私たちが愛する(憎む)、彼女の元へ)」

 

 私の声と彼女の声が重なった時、私は彼女に手を添えていた。

 いつの間に私は彼女の傍に来ていたの?歩いた覚えなんて無いのに、近づいた覚えなんて無いのに、私は彼女の傍に居た。

 

 「ああ……。この感覚は久しぶりだ……」

 

 私の声で、彼女がそう口にした途端に視界が遠くなった気がする。

 それだけじゃありません。私の体は私の意志とは関係なく動き、背中に艤装を装着しました。

 

 「ふむ、この格好は少々はしたないな」

 

 視界が動き、整備場の中を見回して何かを探しています。何を探しているのでしょうか。

 

 「これで良いか……。今よりはマシだろう」

 

 そう言って手にしたのは黒い布。恐らく暗幕でしょう。それを適度な大きさに引き裂いて腰に巻き付けました。

 パレオ…よりは大きいですね。ロングスカートと言っても過言ではないほどの丈があります。

 元々着ていたスクール水着の色と相まって、今の私は黒いノースリーブのロングドレスを着ているように見えるのではないでしょうか。

 

 「懐かしい…全てが懐かしい……」

 

 私は大仰に両手を星空へと掲げ、流れるような優雅さで海に向かって歩いています。

 私の言葉に嘘は無い。本当に、心の底から世界を懐かしんでいる。

 そうだ…私は帰ってきたかった……。

 暗い闇の底に押し込められ、この世界に戻ってくるのを何年も待ちわびた!狂おしい程愛する彼女に会うために、私は今帰ってきた!

 

 「さあ奏でましょう……」

 

 膝まで海に浸かった私は、目の前の空間を右手の甲で撫でるように薙ぐと同時にレーダー波を照射。

 すると、向こう側が微かに透ける程度に濃い緑色のレーダー画面が目の前の空間に直接投影されました。

 

 「恐怖と悲哀の幻想曲を」

 

 友軍識別信号を確認。

 敵を示す紅い光点が九つ。友軍を示す蒼い光点が二つ。

 

 「愛でましょう。屍肉と業火の花束を」

 

 各砲身(・・)、全敵艦をマルチロック。

 紅い光点が端から順に、ピッ!と言う音と共に[〇](こんな)感じでロックオンされて行く。

 的はたった九つ。しかも動きが鈍い。私なら簡単に貫ける。私に貫けなかったのは彼女だけなのだから。

 

 「そして歌いましょう……。彼女に捧げる恋歌(ラブソング)を……」

 

 ズドン!と轟音を世界に響かせて、九つの砲身が同時に火を噴きました。

 これは私の復活を知らせる鐘の音。私の誕生を彼女に知らせる福音。私たちが愛する(憎む)彼女に捧げる愛の歌。

 

 「待っていて…今度こそ貴女を……」

 

 私がその続きを口にする事はありませんでした。

 恐らく、先程の砲撃のせいでしょう。体中に激痛が走り、私は膝から海面に崩れ落ちました。

 けど、気持ち良い……。

 この痛みが、生きていることを実感させてくれる。この世に私が存在していることを教えてくれる。

 

 そう思った時、私は満足して瞳を閉じました。

 彼女と再会する妄想に、頬を歪ませながら。

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