艦隊これくしょん ~ナデシコの咲く丘で~   作:哀餓え男

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最近地震が多いですね。
今出張で四国に来ているのですが、南海トラフ怖いです(つд`)


第三十三話 死んでも帰って来なさい。

 

 

 お姉ちゃんに半殺しにされて入渠してから何日経ったっけ。

 一週間?二週間?もっと経ってるかな?

 高速修復材のおかげで傷跡も後遺症も残らなくて済んだけど、代わりに、とんでもない程の退屈に耐えることになってしまった。

 いや?そこまで退屈しなかったかな?

 毎日のように、朝潮たち八駆のメンバーが日替わりで病室に居座ってたし、円満さんも仕事終わりに毎日お見舞いに来てくれた。

 また週末毎に来るようになったお姉ちゃんも来てくれたわ。良いって言っても謝り続けるから、私の方が逆に謝りたくなったわよ。

 それと、九駆の四人と辰見さんと叢雲さん、それに長門さんも来てくれたかな。

 あとは……。

 そうそう、四駆の三人が、新人の舞風を連れて一度来てくれたっけ。私が動けないのを良い事に、嵐は以前私にコテンパンにされた仕返しとか言ってイタズラするし、萩風は病院食にダメ出ししてたわ。

 舞風と野分は「ライブが近いから」とか言ってダンスの練習をしてたっけ。何のライブよ。なんて無粋なツッコミはしなかったわ。この鎮守府でライブって言ったら那珂ちゃんさんしかいないし。

 うん、思い返すと、見舞客は毎日のように来てた。

 私って、意外と人望があったのね。

 で、退院を明日に控えた今日、お見舞いに来てくれたのは誰かと言うと……。

 

 「で!私はこう言ってやったんです!『貴女が嫌いです』って!」

 

 と、お姉ちゃんとの戦闘の顛末をジョジョ立ち……だっけ?をしながら語る大和と、その飼い主の朝潮。

 自分の先代を飼い犬が嫌ってると聞いて、朝潮は申し訳なさそうな顔して俯いちゃってるわ。

 

 「自慢気に語るのは良いけど、朝潮のメンタルがゴリゴリ削れてるからその辺でやめなさい」

 「そ、そんな事はありません!大和さんが嬉しそうにしているだけで私も嬉しくなりますから!」

 

 今にも泣きそうなほど瞳を潤ませといて何言ってんだか。

 大和はご主人様のそんな様子にようやく気付いたのか、「ど、どうしよう」って感じでオロオロし始めたわ。

 

 「だ、大丈夫です!私が嫌いなのはあくまでハレンチメガネです!朝潮ちゃんの事は大好きですから!」

 

 そ言われても、朝潮は力ない笑顔を浮かべるだけで気分は晴れてないみたい。

 って言うかハレンチメガネって何よ。お姉ちゃんの事?

 確かにお姉ちゃんはハレンチと言われても仕方のないスカート穿いてるけど、お姉ちゃんより際どい制服を着てる艦娘は沢山いるわよ?

 だいたい、アンタのスカートだってお姉ちゃんと同じくらいハレンチじゃない。

 

 「先輩はハレンチなのですか?」

 「ええ、ハレンチです。局部以外はほぼ隠していないようなTバックでした」

 「へ、へぇ……。先輩ってそんな凄いのを……。私も穿いた方が良いのでしょうか」

 

 穿くな。

 アンタにTバックは10年早い。仮に穿いたとしても、食い込むのが気になって仕方ないとか言うのが落ちよ。

 たぶんだけど、お姉ちゃんも似たような文句を言いながらの穿いてるんじゃないかしら。あの人って、元帥さんの好みならバニーガール姿ででも仕事しそうだし。

 

 「ん?なんでバニーガールなんだろ……」

 「え?バニーガールの方が似合いますか?」

 「なんでもないから気にしないで」

 

 うっかり口に出しちゃったせいで朝潮に聞かれちゃった。

 まあ、問題ないか。アンタはそのまま、「バニーガールはさすがに恥ずかしいです」とか言いながら赤面してなさい。

 それよりも、バドガールやカウガール等々、コスプレは他にいくらでもあるのに、何で私はバニーガールだけ思い浮かべたんだろ?

 似合いそうだからかな? 

 お姉ちゃんってスラっとしたスレンダーな体形だし、それを栄えさせる魅惑の脚線美の持ち主だからバニースーツとの相性は高いはず。

 さらに、黒髪ロングによる肌との色の対比。真面目で温厚な委員長気質のお姉ちゃんが扇情的なコスチュームに身を包むというギャップ。普段通りの眼鏡スタイルから来る愛らしさを残した表情も手伝って、ギャップとミスマッチによる波状攻撃でその魅力が一気に跳ね上がるでしょうね。

 

 「略すならバニ淀かな」

 「何を言ってるんですか?教官。頭も打ってたんですか?」

 「うっさい。ただの独り言よ」

 

 コイツに頭の心配をされるなんて屈辱だわ。リハビリ代わりに2~3発ぶん殴ってやろうかしら。

 

 「ところでアンタ、営倉にぶち込まれたりしなかったの?円満さんの命令を無視したんでしょ?」

 「教官、本当に頭大丈夫ですか?悪い事などしていないのですから、営倉入りになるわけないじゃないですか」

 

 いやいや、アンタは悪い事をした自覚がないかもしれないけど命令違反してるからね?

 鎮守府って空気は緩いけど軍隊だから。そんでアンタは兵隊。円満さんはアンタの上官で、この鎮守府の最高責任者なの。

 その円満さんの命令を無視したのよ?営倉にぶち込まれるくらいは当然でしょうが。

 

 「特に罰は受けませんでしたよね?翌々日から、神風さん達と訓練したり哨戒に出たりしてましたし」

 「神風たちと?しかも哨戒に出た?」

 「はい。軽巡の矢矧さんと大和さんが親しいそうなので、満潮さんが退院するまで一緒に行動するようにと、円満さんに言われたそうです」

 

 ふぅん。

 朝潮が不満そうなのと、大和がゲンナリしてるのは一先ず置いといて、円満さんが神風達と大和を組ませたのは私を大和の嚮導役にした理由と同じね。

 一人一人の戦闘力が並の駆逐艦を凌ぎ、五人でなら私や叢雲さん以上の戦闘力を誇るカミレンジャーを、大和が暴走した時のストッパーにしたんだ。

 

 「おかげで、朝潮ちゃんとの時間がほとんど取れませんでした」

 「どうして?訓練中と任務中は仕方ないにしても、それ以外の時間は空いてるはずでしょ?」

 「それはですね……。その、これに関しては私の自業自得と言えなくもないのですが、やはぎん…矢矧に寝てる時以外は付きまとわれるようになってしまって……」

 

 付きまとわれるとな?

 矢矧さんと直接話した事はないけど、神風達と一緒に居るのは何度か見た事がある。遠目から見た印象ではあるけど、誰かに付きまとうような人には見えなかったけどなぁ。

 

 「そう!矢矧さんたら酷いんですよ!05:00と18:00は私と大和さんのお散歩タイムなのに邪魔するんです!「大和は私のだから帰って?」とか言って!今日ようやく、久しぶりにお散歩出来たんです!」

 「わーかった。わかったからそんなに興奮しないで。うるさいから」

 

 なるほど、つまり矢矧さんは大和に惚れてる訳だ。

 どうして急に付きまとうほど惚れたのかも、大和の「自業自得と言えなくもない」と言うセリフで察しが着いたわ。

 

 「大和。アンタ、矢矧さんを犯したでしょ」

 「な、なんの事でしょうか……」

 「とぼけても無駄よ。なんなら、アンタが何故そうしたのかを言い当ててあげましょうか?」

 

 原因は恐らく、円満さんが命じた『矢矧と一緒に行動しろ』という命令。

 矢矧さんは大和と親しいそうだから、大和の面倒臭い面も知っているはず。例えば、見聞きした情報を拡大解釈して結論のみを口にする癖とかね。

 その事を理解してない人からしたら、大和は人の話を聞かず、急に変な事を言い出す頭のおかしい奴でしかないもの。

 きっと矢矧さんにとっても、大和は話を聞かずに変な事を口走る、一緒に居ても気の休まらない友人だったんだと思う。

 だから、一緒に行動しろという命令を断ろうとした。

 寄りにも寄って、大和の目の前で。

 

 「アンタは、命令を断ろうとする矢矧さんを止めるために、拷問に近い快楽を与えて阻止しようとした。違う?」

 「……」

 

 大和は無言、無表情で私を見つめたまま。

 どうやら、当たらずも遠からずってとこみたいね。開き直ってるように見えなくもないけど。

 

 「ち、違います!大和さんはそんな事しません!」

 「その通りです朝潮ちゃん。私はそんな事はしていません。今のは全て、満潮教官の妄想です」

 

 コイツ、開き直るどころかしらばっくれやがった。

 しかも、小馬鹿にしたような視線を私に向けたまま、朝潮に「きっと頭までは治らなかったんですよ」なんて言ってるわ。

 だったら、徹底的に追い詰めてやろうじゃない。

 

 「朝潮、矢矧さんは大和にベッタリじゃなかった?それこそ、体を擦り付けんばかりに」

 「た、確かにそうですけど……」

 「さらにこんな事を言ってたんじゃない?「次はいつしてくれるの?」って」

 「言ってました!確かに言って、ましたが……」

 

 朝潮がハッとしてる。どうやら当たりらしいわ。

 これで、私の中では大和の容疑は固まった。何故なら、矢矧さんの行動は、引退したとある駆逐艦の被害者とよく似てるからよ。

 

 「アンタ達は知らないだろうけど、ほんの数年前まで、ここ横須賀鎮守府には、艦種を問わず手籠めにする駆逐艦が居たの」

 

 その名は松風。

 今の松風の先代に当たる人で、現在は奇兵隊の一員として『猫の目』の裏にある兵舎で暮らしてるわ。

 別名『横須賀のドン・ファン』。

 彼女は気に入った艦娘を時に紳士的に、時に乱暴に口説き、口説き落とせない子は無理矢理抱いた。

 彼女のテクニックの前では艦種の差など意味を成さず、戦艦だろうと空母だろうと籠絡したらしいわ。

 余談だけど『横須賀所属の艦娘の八割は、松風が人生初の壁ドン相手』なんて言われた時期すらあったそうよ。

 

 「そ、その人が、大和さんがやった事と何か関係があるんですか?」

 「ええ、その被害者と、矢矧さんの行動が似てるの」

 

 先代松風に犯された人は、あまりにも卓越したテクニックに見も心も屈して彼女無しじゃ生きられない体にされた。

 実際私も、『アレを経験したら男じゃ満足出来ない』って話してる上位艦種を何人か見た事があるわ。

 今の子の名誉のために艦名は伏せるけど。

 

 「しょ、証拠がありません。私がやはぎんをお風呂場で犯したという証拠がありません!」

 「語るに落ちたわね。大和。私はお風呂場(・・・・)で、なんて一言も言ってない」

 

 自ら墓穴を掘った大和の頬を一筋の汗が流れた。

 証拠が云々と言われて一瞬焦ったわ。だって証明しようないもの。けど、まさか自分で証言するなんてね。

 アンタがバカで助かったわ。

 

 「う、嘘です!大和さんは無実です!」

 「やめなさい朝潮。庇うのは大和のためにならない」

 「いいえ!大和さんを躾けたのは私です!だから、大和さんがしでかした不始末は飼い主である私の責任です!」

 

 クソ真面目な顔して、ペットプレイをひけらかすこの子の頭はどうなってるんだろう。

 バカだバカだとは思ってたけど、本当にバカだッたのね……。

 お姉ちゃんにしてもそうだけど、初代朝潮も同じくらいバカだったのかしら。

 

 「もう、いいです。朝潮ちゃん」

 「でも!」

 「いいんです。ご主人様を困らせるなんて雌犬失格でですから」

 

 Oh……。ついに雌犬宣言しちゃったよコイツ。

 意味分かってて言ってるのかしら。それとも、意味もわからず、ペットプレイの犬役で性別が女ってだけで雌犬宣言したのかな?

 まあ、どちらにしても、人前では言わない方が良いと思うよ?アンタだけなら兎も角、朝潮までそういう目で見られちゃうから。

 

 「私がヤりました。ええ、徹底的にヤりましたよ。やはぎんの体が、意志とは関係なくビクンビクンと跳ねるまで」

 「ど、どうしてそんな酷い事したんですか!」

 「仕方……なかったんです。教官が仰ったとおり、やはぎんは断ろうとしました。私のお守り役は嫌だと言ったんです。心友なのに!」

 

 あ、なんかヒートアップしてきた。

 これはアレだ。探偵物でよくある、犯人の独白シーンだ。殺人じゃなくて強姦なのが救い……じゃないか。強姦は立派な犯罪よ。特に、女にとっては。

 あれ?女同士、しかも相手がメロメロになった場合も強姦罪って成立するのかしら。

 少なくとも、先代松風に手籠めにされた艦娘は誰一人として被害届を出してないし、鎮守府でも特に問題になった事はない。

 まあ、この鎮守府が異常なだけって可能性もあるけど。

 

 「だからヤりました……。ヤったんですよ!全力で!その結果がアレなんですよ!矢矧に跨がって、弄くりまくって矢矧を目覚めさせてしまいました!これ以上なにをどうしろって言うんですか!?もう一回、矢矧を満足させればいいんですか!?」

 

 と、両手で顔を覆って泣き崩れた強姦魔が申しております。

 正直、『知るかバカ』とバッサリ切り捨ててやりたいけど、さすがにそれはなぁ……。ほら、私の半分は優しさでできてるからさ。

 ご主人様の朝潮はと言うと、泣き崩れた大和を見下ろ……せてないわね。椅子に座ってるせいもあるんだろうけど、朝潮の頭と大和の頭が同じくらいの位置にあるわ。

 

 「自首、しましょう。自首して罪を償いましょう。大丈夫です。私もついていきますから」

 「朝潮ちゃん……」

 「大和さん……」

 「「ひしっ!」」

 

 ひしっ!とか口で言って抱き合ってんじゃねぇよバカ共。だいたい何処に自首する気?

 憲兵さんの所?それとも円満さん?別に止めるつもりはないし心底どうでもいいけど、自首したところで罪は償えないからね?

 だって、艦娘同士のガールズラブに対する罰則がないもの。あまり風紀を乱さないようにって注意されて終わりよ、きっと。

 

 「満潮さんも混ざります?」

 「混ざるわけないでしょ。それより、女同士が抱き合ってる光景なんて見てても暑っ苦しいだけだからやめてくれない?」

 「大和さんの胸、柔らかくて気持ち良いですよ?」

 「聞いてない」

 「弾力が凄いです。押すと跳ね返されます。ほら、ボヨ~ン!って」

 「だから聞いてない。ケンカ売ってるの?」

 

 私の苦情など一切聞く耳持たず、朝潮は大和の胸で遊びだした。軽く体当たりしては跳ね返されを繰り返してるわ。しかも「な、なんという弾力」とか「大和型のおっぱいは化け物ですか!」って言いながら。

 体当たりされてる大和も満更でもないみたいね。

 「もっと強く!」とか「大和型のおっぱいは伊達じゃありません!」とか言って軽く赤面してるわ。

 二人とも、そのままアクシズに突っ込めば良いのに。

 

 「そう言えばさ、大和。アンタ、哨戒に出たんでしょ?」

 「え?あ、はい。やはぎんと神風型の子達と一緒に」

 「訓練場以外の場所を航行した感想はどうだった?」

 

 大和は口元に人差し指を添え、「そうですねぇ……」と少し悩んだ後、意外なセリフを口にした。

 あ、その前に鎮守府、と言うか艦娘は、訓練や演習を行う訓練場を『内海』それより外を『外海』って呼んでるんだけど、その外海に初めて出た艦娘の感想は大きく分けて二つあるわ。

 一つ目は楽しかった。

 艦娘は人の身でありながら、船と同等の速度で海上を移動することが出来る。主機と『脚』を通してではあるけど、自分の足で海上を滑る感覚はかなり楽しい。

 広大な外海を航行するなら尚更ね。

 稀にだけど、テンションが上がりすぎて帰りたくないと駄々をこねる子がでるわ。

 そして二つ目は怖かった。

 最初の内こそ緊張などで気にする余裕はないんだけど、ある程度慣れてきたら、足元に広がる底の見えない海に不安を掻き立てられて怖くなるの。

 私の場合は引きずり込まれそう。って思ったっけ。

 足元から化け物が浮上してきて食べられるなんて妄想をする子もいたわ。

 いや?後者に関してはあながち間違ってもいないかしら。

 南方の暖かい地域では、艦娘が鮫に襲われたなんて話も聞いたことがあるし。

 もっとも、人間サイズとは言え艦娘は軍艦並の戦力を有しているから、襲われたところで撃退しちゃうんだけどね。

 で、大和がなんて言ったかに戻るけど……。

 

 「帰りたい。って思いました」

 「鎮守府に?」

 「いえ、違います。たぶんですけど、海の底に」

 「それは……」

 

 死にたいって事?

 潜水艦なら兎も角、艦娘の潜水能力なんて普通の人間と同じよ?それなのに海の底に帰りたいだなんて、それは死にたいと言ってるのと同じだ。

 いや待って。

 もしかして、窮奇がそう思ったのかしら。それを大和は、自分の感想と誤認した?

 そうだったら話はわかる気がする。

 窮奇はもちろん、深海棲艦はその名の通り深海に棲む。と、開戦初期は思われていた。

 それは何故か。

 これには諸説あるんだけど、初めて深海棲艦と遭遇した人の証言と、その当時は棲地が確認できていなかった事が主な理由よ。

 特に開戦より前、初めて深海棲艦の発生が確認されや真珠湾、ソロモン諸島、デンマーク海峡の三つの場所で深海棲艦の発生を見て被害に遭った生き残り達は、場所が全然違うのにも関わらずみんな同じ事を言ったそうよ。

 曰く、「地獄の釜の蓋が開いたような光景だった」と。

 とまあ、深海棲艦が海から溢れ出すような発生の仕方をしたのと、棲地が確認できていなかった事が合わさって、海の底にでも棲んでるんだろうって結論になり、仮称として名付けられた『深海棲艦』という名称が今もそのまま使われてるって訳。

 だから、もし窮奇が帰りたいって思ったのなら、不思議と納得出来ちゃうんだ。棲んでるからだとかじゃなく、故郷に帰りたい的な意味でね。

 

 「教官?どうかしましたか?」

 「なんでもないわ。でもね、大和。アンタは帰っちゃダメよ。帰りたいって思ったのかもしれないけど、アンタは海の底になんかに帰っちゃダメ」

 「当たり前じゃないですか。どうして、そんなわかり切った事を?」

 「いいから聞きなさい」

 

 大和はキョトンとしている。

 そりゃそうよね。いくら帰りたいと感じたって、本当に海の底に帰るほど大和は馬鹿じゃない。

 馬鹿じゃ、ないよね?馬鹿だったらどうしよう……。

 いやいや!例え馬鹿でも言っておかないと!

 

 「アンタが帰る場所は横須賀鎮守府(ここ)よ。何処に居ても、怪我をしててもアンタはここに帰ってくるの」

 「ここに、ですか?」

 「そうよ。死んでも(・・・・)帰って来なさい。終わる時はここで終わりなさい」

 

 三年前に行われたハワイ島攻略戦。

 その出陣式で、当時ここの提督をしていた元帥さんが言ったという言葉を私なりにアレンジして大和に言い聞かせた。

 円満さんからの又聞きでしかないけど、元帥さんはこう言ったそうよ。

 『死んでも良い。だが死んでも帰ってこい』と。

 最初は、死に物狂いで生還しろって意味だと思った。

 けど、円満さんは違うと言った。

 元帥さんは皆の生還を祈りながらも、相手を道連れにしてでも復讐を果たそうとする者を止めなかった。

 名誉のため、仲間のため、祖国に残る守りたい者達のために命を散らすのを止めなかった。

 立場が、それらを許さなかった。 

 だからせめて、異国の地で終わるなと言った。例え死体になったとしても、お前達が骨を埋め、本当の意味で人生の幕を下ろすのは異国の地ではなく、祖国の地だと。要は、死んだら仲間に、遺体となった自分を連れて帰ってもらえって感じよ。

 と、当時のことを振り返りながら円満さんが語ってくれた事がある。

 だから大和、今は意味がわからなくてもいいから、この言いつけを心の片隅にでも留めて置いてちょうだい。

 

 「ちゃんと守れたら、そうね……。『おかえりなさい』くらいは言ってあげるわ」

 

 理解したかどうかは、その表情からは計ることが出来なかったけど、大和は「はい」と言って肯いてくれた。

 とても晴れやかで、同時に凛々しさも感じさせる表情で。






怖いので水とトイレットペーパーとコロッケ買って宿に帰りました。
コロッケ美味し(´・ω・`)

主要キャラ人気投票

  • 朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
  • 神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
  • 大和(影が薄い三部主役)
  • 紫印 円満(実質三部の主役?)
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