艦隊これくしょん ~ナデシコの咲く丘で~   作:哀餓え男

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第四話 幕間 澪と円満

 

 

 対深海棲艦用装着型海上自由航行兵装。通称『艤装』との適合可能条件は大まかに三つあります。

 一つ。

 女性である事。

 まあ艦『娘』ですからね。男性が艤装と適合したと言う報告は、運用開始から14年間で一度もありません。もちろん日本だけでなく、艦娘を運用している他の国でも同様です。

 二つ。

 艤装のモデルとなった艦と何かしらの縁がある事。

 名前が同じ、と言うだけでは縁にはなり得ません。

 私の例を挙げると、私のご先祖様は『駆逐艦 大潮』の乗組員だったそうです。

 そして三つ目。

 これは例外と言っても良い条件です。

 正化30年に、前横須賀提督が説いた仮説を元に艦娘になるための条件が調査されました。

 先の二つ、特に二つ目の条件はこの調査の結果明らかになったのですが、調査が行われるよりも前に艦娘となった子の中に一人だけ、二つ目の条件に合致しない子がいたんです。

 だったら二つ目の条件が間違ってるんじゃないか、と言う話になりますが、数百件のサンプル中例外はその一件だけ。流石に間違いで済ませられる数字ではありません。

 そこで説かれた仮説が、後に行われたある実験で半ば確定となった『先代適合者と縁があり、かつ先代適合者が望んだ者』です。

 話が逸れるので詳細は割愛しますが、これを聞いた時は『あの二人なら有り得る』って納得しちゃいました。

 

 「けど、彼女は違う…一つ目以外当てはまらない。円満(えま)はどう思う?」

 『澪と同意見よ。こっちでも調べてみたけど、彼女とあの戦艦に縁と呼べるようなモノはなかったわ』

 

 襲撃の翌日。

 予定通り矢矧と、予定外の大和 撫子(やまとなでしこ)を送り出した私は、その日の夜に二人の配属先である横須賀鎮守府で提督を務める元姉妹艦、紫印 円満(しいんえま)に連絡をとっていました。

 当然ですが、雑談が目的ではありません。

 話題の中心は、4年間適合者が居なかったあの艤装に適合して敵艦隊を葬った彼女、女性である事以外の条件に当てはまらない大和 撫子についてです。

 

 『そうなると、アイツが原因…って事になるけど……。そんな事有り得るの?過去の事例を洗ってる最中だけど、艤装の核となった深海棲艦の影響を受けたなんて例は今のところ無いわ。勿論、深海棲艦の意識が残っていたなんて例もね』

 「私もそう思いたいけど、それ以外考えられないのよ……」

 

 砲撃の直前に通信を通して聞こえて来たあの声、あの言い回し。そして、恍惚に歪んだあの表情。

 どうしてもアイツを思い出してしまう。

 4年近く前の正化29年末に行われた大規模作戦『ハワイ島攻略戦』の最中に、総旗艦となった艦娘運用母艦『ワダツミ』の背後を強襲して来た戦艦水鬼を。

 

 「倒した…よね?間違いなく」

 『倒したのはあの子(・・・)だから私は倒す瞬間を見てないけど、アイツの核をワダツミに持ち帰ったのは澪じゃない』

 「そう…だよね……。アレが使われてあの艤装が建造されたんだから、間違いなくアイツは倒してる……。死んでるはず……」

 『そう、アイツは間違いなく死んでる。でも間接的にだけど、その大和 撫子って子は三つ目の条件に当てはまりそうな事件に遭遇してるわ』

 「三つ目?あの艤装に先代適合者は居ないでしょ?」

 『正化29年の3月3日、深海棲艦に襲われた横浜発フェリーの救援に行ったの覚えてる?』

 

 そんな事もあったような……。

 近年は稀だけど、私が艦娘だった頃は有り触れた事だったから似たような出撃は何度もした。何度もしたから、どれの事かパッと思い浮かばないなぁ……。

 

 『私達(・・)が最強と呼ばれた唯一の時期の出撃よ?忘れちゃったの?』

 「ごめん…覚えがないや……」

 

 余談になりますが、私がかつて所属していた第八駆逐隊は、円満が艦娘を辞めるまでの一か月ほどですが全駆逐隊最強と言われた時期がありました。

 あの頃は負ける気がしませんでしたねぇ……。

 一人一人が特殊技能持ちでしたし、今は大本営にいるあの子(・・・)は、単独で戦艦を撃破するくらい強かったんです。私自身、駆逐棲姫を一人で倒せる程度には強かったんですよ?

 

 『まあ良いわ。その、私たちが救助したフェリーに彼女が乗船していたことが分かったの。これは私の仮説だけど、あの子(・・・)との邂逅が奴との縁になったんじゃないかしら』

 「先代適合者とじゃなくて、アイツとの縁が元で適合できたって事?それ笑えないよ。だったら私や円満だって、あの艤装と適合できた事になるんだよ?彼女以上にアイツとは縁……いや、因縁があったんだから」

 『考えただけで反吐が出そうね。だけど澪。アンタ、三つ目の条件が二つの条件で成り立ってるのを忘れてるわ』

 「わかってるよ。考えたくなかっただけ……」

 

 彼女が、アイツの望んだ相手だなんて考えたくなかったのよ。

 あの子(・・・)の例に当てはめるなら、大和 撫子はアイツと同じようにあの子(・・・)を偏愛してる事に成り兼ねない。

 彼女が駆逐艦に成りたがってたのは知ってるけど、それはあの子(・・・)に救助された事で憧れたからだと思いたいよ。だって、もし円満が言う通りなら、彼女はいずれあの子(・・・)に牙を剥くかもしれないんだから。

 選りにも選って戦艦。しかも、大和型の艤装と適合した彼女とあの子(・・・)が戦うなんて想像しただけでゾッとしてしまいますね……。

 

 『それと、長門と陸奥、それと武蔵に確認してみたけど、九つの砲身それぞれで狙いをつけ、しかも正確に撃ち抜くなんて芸当は彼女達でも出来ないそうよ。武蔵は範囲レベルで吹き飛ばす事なら出来るって言ってたけど』

 「武蔵さんとは真逆だね。でも、性能的には同じ事も出来るはず……敵に回ったら厄介どころの騒ぎじゃないね」

 『同感ね。まあ、最悪の場合は満潮と叢雲、それに長門をぶつけるわ。彼女達ならどうにか出来ると思うから』

 「神風達は?あの子達も、今じゃ横須賀でトップレベルの駆逐艦でしょ?」

 『あの子達は矢矧につけようと思ってるの。アンタの戦い方、矢矧に見せちゃったんでしょ?』

 

 なるほど。私と似たような戦い方を駆逐艦全てがすると矢矧が勘違いしてる可能性を忘れてましたね。

 そうなると、矢矧の旗下に加えられる駆逐艦は限られてきます。

 私と円満を含む前第八駆逐隊のメンバーが総がかりで鍛え上げた満潮と、横須賀鎮守府提督補佐を務める辰見 天奈(たつみあまな)大佐が指導した叢雲を除けば、私と似たような戦い方が出来るのは円満が満潮とは別に指導した神風型の5人くらいしかいない。

 しかも、神風型5人の連携は駆逐隊の理想とまで言われる程完成度が高いし性格も温厚。新米の矢矧を任せるには持って来いですね。

 

 「カミレンジャーにシルバーが加入。ってとこ?」

 『やめてよそれ……。毎日うるさくて迷惑してるんだから……』

 「可愛い教え子でしょ?大目に見てあげなよ」

 『朝の五時から騒ぎ出すのよ!?おかげで毎日寝不足よ!』

 

 嘘つけ、どうせ起きないでしょ?円満って艦娘だった頃はそうじゃなかったけど、辞めた途端に低血圧になって朝が苦手になったじゃない。私が辞める前も、毎日満潮に起こさせてたし。

 

 「そうだ。迷惑と言えば……」

 『何?何かあるの?』

 「そっちに送った彼女さ、人の話聞かないから。殺意を覚えるレベルで」

 『その辺は長門が上手くやるわよ。たぶん』

 「あとさ、基礎知識もまるで無いから」

 『はぁ!?基礎知識が無いってどういう事!?浮く事も出来ないんじゃないでしょうね!?』

 「浮く以前の問題だと思うよ?だって、元々不法侵入者だし」

 

 だから、艦娘が知っておくべき知識がまるっきり無い。本当に一から教えなきゃならないの。

 でも、円満は横須賀鎮守府の提督なんだから『はぁ~~……』って盛大な溜息つおてないで頑張ってね♪間違っても、こっちに送り返したりしないように。絶対に!

 

 『満潮に頼むかぁ……。嫌がるだろうなぁ……』

 「長門さんじゃダメなの?」

 『彼女の事知ってるでしょ?考えるな!感じろ!を素で実践するほどの脳筋よ?』

 「あ~……そういやそうだったね……」

 

 武蔵さんの訓練もそうだったっけ……。『そうじゃない!こうだ!』とか『こう、キュピーンと感じてシュバ!って感じだ』みたいな事を言ってたのを見た事があります。

 何の訓練かって?

 すみません。思い出したくありません。ただ、駆逐艦の後ろを図体のデカイ二人がコソコソとつけ回していたのは覚えています。

 

 「あ、満潮は元気?寂しがってない?」

 『アンタと恵が辞めた時はだいぶ塞ぎ込んでたわね。今はまあ…普通じゃないかな?』

 「ふぅん。憧れのお姉ちゃんが辞めた時はそうでもなかったの?」

 『あの子はしょっちゅう来るもの。孫の顔を見に週一で……。元帥の秘書艦って暇なのかしら……』

 

 そんな頻度で……。確かに暇を疑われても仕方ないですね。

 あ、ついでに説明しておきますが、恵とは元駆逐艦荒潮の荒木 恵(あらきめぐみ)の事です。今は元艦娘を対象とした心理カウンセラーをしています。

 今も艦娘として元帥秘書艦を務めてる元姉妹艦がもう一人居るんですが……。円満が言った通り、週一で大本営から横須賀鎮守府に通っているようです。車で片道二時間はかかるはずなんですが……。

 

 「円満が空いてる日にでも集まる?私と恵は割とスケジュールに融通が利くから」

 『良いわねそれ。満潮も喜ぶと思うわ。ストレス溜め込んでるみたいだから気晴らしにもなると思うし』

 「今は四駆に所属してるんだっけ?」

 『先週までね。舞風が着任したから、今は八駆に戻して他の三人の面倒を見てもらってるわ。ただ……』

 「練度の低さにイライラしてるって感じ?」

 『イライラしてるとまでは言わないけど……。まあ、実力の差が激しいから、どうしても満潮が他の三人に合わせなきゃいけないのよ……。それがストレスになってるんだと思う』

 

 え~っと。満潮が艦娘になって3年くらいでしょ?今の大潮と荒潮が……2年経ってないくらいで、朝潮が1年くらいだったっけ。

 私達が直接鍛えた満潮と他の三人じゃ実力に差があって当然ですね……。真っ当に訓練しただけじゃ、私達の域に達する事は出来ないし。

 

 「ちょっと鍛えすぎちゃったね。どう?元二代目満潮から見て三代目は」

 『強いわね。たぶん、かつての私やアンタより強いんじゃないかしら』

 「そりゃ相当だね。名実共に横須賀No.1の駆逐艦な訳だ」

 『私はそう思ってるけど、周りは叢雲がNo.1だと思ってるわ。満潮は目立った戦果を何も上げてないから」

 「どうして?」

 『あの子が目立つのを嫌うってのもあるけど、私が面倒な役回りばかりさせてるのが一番の理由かな。単独で姫級と渡り合える駆逐艦は使い勝手が良いのよ』

 

 なるほどね。

 小規模にしても大規模にしても、作戦中に予想外の事態は付き物だもの。そういう場合に満潮を使ってるのね。つまり、あの子一人に作戦の屋台骨を支えさせてる訳だ。

 

 「無理させすぎじゃない?満潮が潰れちゃうよ」

 『一番あの子を泣かせてた奴が何言ってんのよ。あの子が「やめて!もう無理!」って言っても「無理って言える内はまだ大丈夫」とか言って訓練をやめなかったじゃない。それに、ちゃんとあの子で対処出来る程度の事しかさせてないわ』

 

 そんな事もあったなぁ……。

 今思うと満潮を指導した日々が、それまでフワッとしか考えていなかった私に養成所の教官になる決心をつけさせたのかも……。

 流石に満潮にやったほどのスパルタ教育はしてないけど。

 

 『そう言えば、呉からの救援は誰が来たの?霞?』

 「ううん、二水戦が来たよ。しばらくは留まってくれるみたいだから安心だよ」

 『なら良かったわ。旗艦は神通?』

 「うん、神通だった。でもあの子、私達が知ってる神通じゃないよね?」

 『たしか…満潮が着任したのと同じ時期に代替わりしてなかったかしら』

 「って事は三代目?いや、四代目だっけ……?」

 

 艦娘は、同じ艦名でも代替わりして別人になってる事が良くあります。

 代替わりする理由はだいたい二つ。

 私が艦娘だった頃に一番多かった理由は戦死ですね。特に駆逐艦は、数日前に会った子と会ったと思ったら別の子だったなんて事が良くありました。

 次は任期の満了。

 艦娘は、艦娘になると同時に最低4年の任期が課せられ、それを満了した子が艦娘を辞める選択をした場合は艤装との同調を切られる、通称『解体』が行われます。

 解体によって適合者が居なくなった艤装は、各養成所を周りながら適合試験を繰り返し、同調できる子が現れると再び艦娘として各鎮守府、もしくは泊地のいずれかに配属されます。

 私が、今の神通が何代目かわからなかったのは神通と交流が無かったのもありますが、先に言った二つの理由が主な原因です。他の艦娘がいつ代替わりしたかなんて、親しい者以外興味ないですから。

 

 『三代目くらいじゃない?私も詳しくは……。あ、ちょっと待って、噂をすれば満潮だわ』

 「はいは~い」

 

 それを言うなら噂をすれば影でしょ。とはツッコまないけど、そろそろ19時か矢矧達は今どの辺だろう。適当に一泊して明日の10時くらいに着くようにするって言ってたから名古屋辺りかな?

 

 『ちょっとそれどういう事!?出撃の許可なんて出してないわよ!?』

 

 うわっ!ビックリした!いったい何事!?鼓膜が破れるかと思ったじゃない!

 

 「何かあったの?」

 『ごめん!ちょっと出て来る!満潮と適当に話でもしてて!』

 「あ、ちょっと!円満!」

 

 行っちゃったかな?

 別に後からかけ直すなりしてくれたら良かったのに……。

 聞いた感じだと、誰かが無断出撃しようとしてるみたいだったけど、今の横須賀でそんな事をしそうな艦娘なんて居たっけ?

 

 『もしもし、澪姉さん?』

 「ああ満潮?久しぶりだね。何かあったの?」

 『私も詳しくはわからないんだけど、さっき哨戒から帰ってくる途中に奇兵隊が出撃準備をしてるのが海上から見えたの。それを円満さんに伝えたらあの通りって訳』

 

 居た。

 艦娘じゃないけど、無断で出撃しようとする人が一人だけ居た。

 あ、一応説明しておきます。

 横須賀鎮守府には、前提督が私兵として抱えていた『奇兵隊』と呼ばれる特殊部隊が今もそのままあるんです。

 その奇兵隊は艦娘が実戦投入される前から深海棲艦と戦ってた人達で、一人一人が文字通り一騎当千の兵隊達です。

 しかし、名目上は海軍の一部隊となっているものの、その実態は私設武装組織に近く、運用資金も自前で調達しているみたいなんです。

 奇兵隊も横須賀鎮守府内に兵舎を構えてるので、出撃の際には提督である円満の許可が必要なんですが……。

 無断出撃をしそうな人、二代目総隊長は『許可ぁ?そんなの事後承諾で良いじゃない!』って平気で宣うような人なんです。

 

 「あの人も相変わらずみたいだね……」

 『子供が産まれてしばらくは大人しかったんだけどね。それに今日は、ブレーキかける旦那が出てるから』

 「それでか。けど、出撃して何をする気なんだろ?テロでも起きた?」

 『そんな話は聞いてないわ。って、円満さんが戻って来たから代わるね』

 「うん」

 

 奇兵隊がどの程度の規模で出撃しようとしてるかはわからないけど、市街地でドンパチしようものなら横須賀が廃墟になるわね。

 円満がハゲなきゃいいけど……。

 

 『ごめんごめん、満潮から何か聞いた?』

 「聞かなかった事にした方が良いならそうするよ?」

 『別に良いわ。本当に奇兵隊が出撃準備をしてるみたいなの。私もすぐにもう一度出るわ』

 「テロリストの襲撃?」

 『そうと言えばそうなんだけど……。襲われてるのは鎮守府じゃなくて、矢矧達なのよ』

 「矢矧達が!?どうして…あ!」

 『そう、狙いはたぶん彼女。深海棲艦を信奉してる奴らからしたら恨み骨髄でしょうから』

 

 疫病神かあの女は!

 あの女が来た日に深海棲艦の襲撃を受け、今度は移動中にテロリストから襲撃された。

 それで奇兵隊が出撃しようとしてるんだわ。

 だって、矢矧を迎えに来た二人は奇兵隊員だもの。しかも、その内の一人は奇兵隊副長、あの人の旦那だ。

 

 「矢矧は無事なの?無事なんだよね!?」

 『今のところ無事みたい……。って、何この音…二式大艇!?あの女、二式大艇まで出しやがった!』

 「ちょ…それ大丈夫?最悪、円満の首が飛ぶんじゃ……」

 『私の首が飛ぶくらいなら別に良いわよ!いや、良くないけど!え?なに満潮……花組が乗り込んだのを神風が見たって?嘘でしょ!?戦争始める気かあの女!』

 

 うわぁ…うわぁぁ……。なんだか大事になってる……。円満のストレスがマックスだわきっと。

 『花組』って単語は初めて聞いたけど、たぶん奇兵隊傘下の部隊の名前かなんかでしょ。

 

 『満潮!鎮守府全体に第一種警戒態勢を発令!何かあったらすぐ行動出来るようにさせといて!』

 「え、円満?」

 『ごめん!落ち着いたらかけ直す!』

 「あ!ちょっ……。切れちゃった……」

 

 どの辺りで襲撃を受けたんだろ。時間的に大阪を過ぎた辺り?車が無事ならそのまま横須賀まで逃げそうだけど、そうじゃなかったらどうするんだろ。

 

 「まあ、命の心配はない……」

 

 はずです……。

 迎えに来た二人は共に手練れだし、たぶんだけど、奇兵隊は四人を救助するために出撃した。うん、大丈夫。矢矧たちは救助されるはずだわ。横須賀市街かもっと手前の地域が廃墟になる可能性と引き換えに……。

 

 「あれ?矢矧から着信入ってたんだ」

 

 しかも留守電にメッセージが……。

 聞いた方が良いのかしら。聞いた方が良いよね……。嫌な予感しかしないけど……。

 

 「聞かなきゃよかった……」

 

 留守電には、聞いた事もないほど泣き叫ぶ教え子の悲痛な嘆きが録音されていました。教え子の叫びの他には銃声と爆発音。その合間に、迎えに来た二人の雑談と無邪気にはしゃぐ疫病神の笑い声。

 何故その状況で雑談が出来る。何故戦闘中としか思えない状況ではしゃげる。

 必死に『助けてぇぇぇ!教官助けてぇぇぇぇ!私こんな所で死にたくないぃぃぃぃ!』と泣き喚く矢矧が逆に異常じゃないですか!

 

 「矢矧…どうか無事で……」

 

 教え子の無事を願うことしか出来ない私は、矢矧にラインで『グッドラック!』と送ったあと、冷蔵庫からビールを取り出して昨日見損ねたドラマの続きを見始めました。

 命の心配はない。精々トラウマを負うだけで済むはずだと信じて。

 




次章予告。

皆さん初めまして。大淀です。
横須賀鎮守府に向かう大和撫子と矢矧。
テロリストに襲われたりスカイダイビングをする羽目になったりと大変です。
着いたら着いたで唐突にフードファイトが始まったり戦隊ヒーローの追加メンバーにされたりと訳がわかりません。

次章、艦隊これくしょん『出会いと決意の嬉遊曲(ディヴェルティメント)
お楽しみに。
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