あれは嘘でしたぁぁぁぁぁ!サーセン!
一週間近く遅れましたが、五章前半の四話。投稿開始します!
第四十話 ただで済むと思うなよ。
戦艦とはなんぞや。
それは巨大な艦砲と堅牢な装甲を備えた、海上決戦の主力たるべき艦種。つまり艦隊の主役です!主人公です!その中でも、大和型一番艦である私は正にメインヒロインと言っても過言ではないのです!
「それなのに出番が少なすぎだと思いませんか!?」
「いきなり何を言ってるんだ大和。ついに頭が噴いたか?」
と、私の悲痛な訴えに心底面倒臭そうに反応したのは、朝早くから姿見の前で身嗜みを整えている武蔵さん。
いつもの休日は丈が短い、と言うよりはサイズが合っていないジャージで過ごしているのに、今日はブラウスに吊りベルト付きのパンツスタイルの私服でバッチリ決めていますし、普段はけも耳みたいに立っている髪も撫でつけています。
あ、ちなみに私は、武蔵さんより早く起きて身仕度は終わっています。もうすぐご主人さまがお迎えに来てくださいますからね。
制服の私と違って私服ですが、着換えていると言う事は武蔵さんもどこかにお出かけなのでしょうか。いや、武蔵さんの行き先など今はどうでも良いのです!
「違います!武蔵さんに不満はないのですか?毎日毎日、訓練訓練また訓練!着任して一ヶ月ほど経ちましたが、私は哨戒以外で出撃した事がないんです!」
「良い事じゃないか。私たちが出撃しないと言う事は平和な証拠だぞ?世間的にも、鎮守府の財政的にも」
「いー!やー!でー!すー!出撃したい出撃したい出撃したーい!」
「デカい図体して暴れるんじゃない!いい歳してみっともないと思わないのか!」
「デカくなんてありません!」
確かに私の身長は平均的な女性の身長より高いです。
ええ、それは認めましょう。ですが、デカいと言われるほどではありません。
人より少し、いえ多少、いえいえ微妙に高いのは、田舎で伸び伸びと育った結果です!
つまり!
「田舎で暮らせば誰でもこれ位に育ちます!」
「そんな話聞いた事がねぇよ。だいたいだな。私たちの場合、一日洋上で訓練するだけで水雷戦隊が全力出撃出来るだけの燃料と弾薬を消費するんだぞ?それなのに、提督は毎日のように洋上訓練の許可を出してくれてるんだ。感謝こそすれ、文句を言うなど言語道断!」
「武蔵さんって、そんなに燃費が悪いんですか?」
「お・ま・え・もだよ!満潮からそれ関係の説明を受けてないのか!?」
「痛い痛い痛い!頭頂部をグリグリしないでください!ハゲるぅぅぅぅ!」
言われてみれば、そのような説明をされた記憶が朧気ながらあります。
あれはたしか、訓練が終わって艤装を工廠に預けた後、今から何をするんだろうと、ふと気になって振り向いたんです。そしたら、10個近いドラム缶が運ばれて来て補給を始めました。
そしたら何とビックリ!
ドラム缶10個分の何かが、全て艤装に入っちゃったんです!質量的に、明らかに容量オーバーなのにも関わらずです!
その時に、呆気にとられていた私に教官が説明してくれた、’鎮守府が扱っている『資源』と総称される燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトの四つは、ドラム缶に詰められた液体状の物だったと記憶していますが……。
「でもアレって、四つに分けられてますけど同じ物ですよね?」
「基本的にはな。だが、艤装に入れるとなぜか分かれるらしい」
武蔵さんの説明によると、ドラム缶に詰められた謎の液体が艤装に注入されると内部で燃料、弾薬、ボーキサイトの三つに精製されるそうです。
これらは一度精製されると元の液体には戻らず。例えば、弾薬が無くなったからと言って燃料を弾薬に再精製、とは出来ないそうです。
「鋼材はどこで使われるんですか?」
「艤装の修理や開発だよ。実際に見たことはないが、妖精に液体を与えると必要な資源に精製して使用するそうだ」
「じゃあ、艤装にも妖精さんが居て、精製して分けてるって事ですか?」
「私に聞かれても知らんよ。提督なり満潮なりに聞いてみろ」
そう言って、武蔵さんは説明を切り上げて身仕度を再会しました。普段はけも耳になっている部分を妙に気にしているようですが、私の事も少しは気にしてください。
だって、私は貴女の姉妹艦なのですよ?
しかも一番艦。つまり、貴女のお姉ちゃんです。それなのにこの扱いは納得出来ません。
いや、ちょっと待ってください。
以前、朝潮ちゃんに私の先代はいないとお聴きしました。と、言う事はですよ?
武蔵さんは私が着任するまで、長い間一人ぼっちだったと言う事です。
「普段の行いを見る限り、お友達がいるようには思えませんし……」
「少なくともお前よりはいるぞ。と言うかケンカ売ってるのか?」
「はいはい、そういう事にしておいてあげます」
「あぁん?」
だとすると照れ臭くて。もしくは、ようやく出来た姉にどう接して良いかわからないから、お座なりと言いますか、面倒臭そうと言いますか、兎に角そういった態度しか取れないんだと思います。
ならばここは、姉として私の方から歩み寄った方が良いでしょう。
「さあ!お姉ちゃんの胸に飛び込んでおい……でぇぇぇっふ!」
両手をいっぱいに広げた途端に、胸というよりは腹部に武蔵さんは飛び込んで来たのですが、タックルと言わんばかりの勢いだったせいで変な声を出してしまいました。
本当に飛び込んでくれたのは嬉しいんですけど、もうちょっと手加減して欲しかったです。肺の空気が全部出ちゃいましたよ。って、あれ?どうして両手を腰に回して踏ん張っているのですか?
まさかとは思いますが……。
「ふぅんぬ!」
「ちょっ!武、武っさぁぁぁぁぁぁ!?」
やはりバックドロップ!
しかもこれはマズい!このままでは、私は顔から床にダイブすることになってしまいます!それどころか腰まで痛めてしまいかねない!
「ぐうぅぅぅ!」
私は両手を床に突き出しました。
さすがに勢いは殺しきれず、腰が曲がってはいけない方向に曲がってゴキゴキッ!っと音を鳴らしましたが、なんとか顔面着地する事態は避けました。
「チッ!両手ごと抱え込めばよかった」
「殺す気ですか!?じゃれ合うにも限度があるでしょ!」
解放されて、腰をさすりながら起き上がったらとんでもないことを武蔵さんが口にしました。
そんな事をされたら、床に突き刺さるかシャチホコ状態になるのは確実でしょう。
「お前がバカな事ばかり言うからだ。ったく、また髪が乱れてしまったではないか」
「いつもの髪型に戻っただけでしょう?それでいいじゃないですか」
「ダメだ。久々に外出するのに、寝癖だらけの頭で行けるか」
「え?あのけも耳って寝癖だったんですか?」
何と言う衝撃の事実。
武蔵さんのけも耳セットは寝癖だった!どんな寝方をしたらあんな寝癖がつくのでしょうか。私、非常に気になります!
今晩あたりカメラで撮影してみようかしら……。って、誰か来たようですね。ドアの前に人の気配がします。
朝潮ちゃんでしょうか。
いや、朝潮ちゃんにしては早すぎます。彼女は6時ピッタリに来ますから。
だとすると、今現在ドアの前でうろうろしている人は武蔵さんのお相手?なぜうろうろしているのでしょう。
「ふと気になったのですが、どなたかとデートですか?」
「デ、デート!?そんな訳ないだろ!」
「怪しい~。ホントはデートなんじゃないんですかぁ?」
と、探りを入れてみたら、武蔵さんはドアを背にして狼狽え始めました。顔なんて真っ赤です。
普段はクールな武蔵さんが赤面して恥ずかしがる様は新鮮ですね。ギャップに思わずキュン!ってなっちゃいました。
「きょきょきょ今日はアレだ!そ、そう買い物!買い物だ!いやぁ、本当はのんびりするつもりだったんだが、駆逐艦にせがまれてしょうがなくな!」
「えぇ~?ホントですかぁ~?」
武蔵さんは否定していますが、武蔵さんのお相手と思われる人。駆逐艦と、武蔵さんは仰いましたね。がドアの前で固まって身動きとらなくなったので嘘なのは確実。武蔵さんの服装も、今日のお出かけがデートだということを物語っています。
面白そうだからもう少しからかってみましょう。
「なるほど。せがまれたのなら仕方ありませんね。せがまれたのなら」
「お、おい大和。なぜ『せがまれた』の部分だけ声を大きくするんだ?まさかとは思うが……」
お?気づきましたか?
そうです。私はドアの向こう側にいる駆逐艦に聞こえるよう、わざと『せがまれた』の部分を大きな声で言ったのです。
「ああ!可哀想な武蔵!せっかくの休日なのに、駆逐艦の買い物に付き合わなくてはならないなんて!」
と、一度両手を大仰に挙げ、後に胸の前組んで、悔やむように私はそう言いました。
もっとも、口調と態度とは裏腹に顔はニヤけていますけど。さて、武蔵さんの反応や如何に?
「おいやめろ!」
そうですよね。やめさせたいですよね。
武蔵さんのその反応は予想通りですが言い方が良くありません。乱暴な口調は戒めないと。姉として!
「やめろ?」
「い、いや……。やめてください。お願いします……」
ジロリと人睨みしたら、武蔵さんは今現在、どちらの立場が上なのか理解できたのか言葉を改めました。
ですが、ちょっと顔が怖いです。再び逆立ったけも耳は鬼の角のようですし、額に浮いた血管が今にも弾けそうです。
後が怖そうですから、これくらいでやめてあげてもいいんですけど……。
いや、この機にお姉ちゃんと呼ばせましょう。この機会を逃せば、武蔵さんにお姉ちゃんと呼ばれる事は一生ないでしょうし。
「お姉ちゃん」
「は?」
「は?ではありません。お姉ちゃんと呼んでくれたらやめてあげます」
「どうしてそうなる!?私の方が年上だぞ!?」
「でも大和型的には私の方が姉です。ああ、べつに呼びたくないなら呼ばなくても結構ですよ?外で聞き耳を立ててる子に、武蔵さんが本当はどう思ってるかを、教えてあげるだけですから」
我ながらなんという見事な悪女っぷり。
あまりにも見事すぎて。武蔵さんも「お前、友達居ないだろ」と言うのが精一杯のようです。
「さあ!どうするのです!?さあさあさあさあっ!」
「……こうする」
と言って、武蔵さんは部屋のドアを開けました。
そこに立っていたのは、膝まである内側が深青色になっており不思議な髪質をした銀色の髪を上下に分け、耳より上の髪はお団子にし、下の髪は一枚の黄色のリボンで後ろで二房に別れるようにくくった髪型に、水玉模様のワンピースを着た駆逐艦でした。
なんだか申し訳なさそうな顔をしていますね。アホ毛もショボンとしています。
「あ、あの、武蔵さん……」
「どうしたんだ清霜。元気がないじゃないか」
「だってその……。私の買い物に付き合ってくれるせいで武蔵さんのお休みが潰れちゃうって……」
おうふ……。
武蔵さんに清霜と呼ばれた駆逐艦が涙ぐむ様を見て、私の罪悪感が一気にMAXになってしまいました。
なるほど、これが武蔵さんの逆転の一手ですか。
私が有ること無いこと口にする前に合流して私の口を封殺、及びさっきまでの事を弁解しようという考えなのでしょう。
ですが、武蔵さんはどうやって清霜ちゃんに弁解するつもりなのでしょうか。
「ああ、確かに休みは潰れるな。でもな、清霜」
「な、何?」
「私の休みを潰して良いのはお前だけだ。清霜にしか
、私の休みは潰させない」
「む、武蔵さん……!」
イっケメ~ン。
穏やかな瞳で清霜ちゃんを見つめる武蔵さんと、口元を抑えて感極まった様子の清霜ちゃんの周りに薔薇の花、いや百合の花が咲き乱れています。
「では行こうか。買い物の前に動物園だったな?」
「うん!清霜ね?ホッキョクグマさんにお魚あげるの!」
「そうかそうか。だが清霜。間違ってお前が餌になるんじゃないぞ?」
「大丈夫だよ!清霜強いもん!」
微笑ましいなぁ。
嬉しそうにはしゃぐ清霜ちゃんと、それを愛おしそうに見つめる武蔵さんはまるで姉妹。いえ、親子みたいです。
「では行こうか。電車に乗る前に喫茶店で朝食を摂ろう」
「うん!」
あ、このまま私を置いて行く気ですね?私の存在をなかった事にして出掛けるつもりですね?
べつにいいですよ?ええ、いいですとも。
私だって、もう十数分後には朝潮ちゃんとお散歩に出掛けるんですから。
「ああそうだ。大和」
「なんですか?」
清霜ちゃんを少し先に行かせた武蔵さんが、振り向かきもせずに私に声をかけて来ました。
もしかして一緒に出掛けようと誘う気なのかしら。
ダメですよ?私はもうちょっしたら朝潮ちゃんとお散歩するんです。だから気持ちは嬉しいですがお断りします。
ああでも、可愛げはないですが武蔵さんは私の妹です。その妹のお願いを断るのは少し気が引けますね……。
そうだわ!
「みんなで一緒にお散歩しましょう!」
うん、これで解決だわ。我ながらナイスアイディアです!これなら私も日課を熟せますし、武蔵さんと一緒にお出掛けもできます!
「帰ったら、ただで済むと思うなよ」
「へ?」
私の提案には答えず。
血走った瞳で私を一睨みした武蔵さんは、ドアを乱暴に閉めて行ってしまいました。
まったく、あんなに乱暴にドアを閉めたらドアが壊れちゃうでしょ!それに、まだ総員起こし前です。近所迷惑じゃないですか!
「帰って来たらお仕置きですね!武蔵さんこそ、ただで済むと思わないでください!」
と、言いながら、私はドアの前でご主人様である朝潮ちゃんが来るのを正座して待ち続けました。
武蔵さんの奸計によって、私が一人で出かけたと思いこまされた朝潮ちゃんが来ない事など知らずに、何時間も……。
待ちくたびれた私は、朝潮ちゃんを探すために部屋を出たのですが、偶々会った提督に呼び止められて執務室に招かれました。
招かれたのですが……。
気付いたら、私は執務室の中ではなく外に立っていました。
何を言ってるのかわからないでしょう?私自身何を言ってるのかわかりません。
わかるのはただ一つ。
執務室に入ってから外に出るまでの十数分間の記憶がないことです。
私はいったい、提督と何をしていたのでしょうか……。
主要キャラ人気投票
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朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
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神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
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大和(影が薄い三部主役)
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紫印 円満(実質三部の主役?)