艦隊これくしょん ~ナデシコの咲く丘で~   作:哀餓え男

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 例によって、作中に出てくるの英文はグーグル先生にお願いして翻訳してもらったものなので合ってるかどうかわかりません( ´∀`)


第四十三話 娘さんをください!

 

 

 米国第7艦隊は五隻の艦艇で構成されている。

 内三隻は護衛(対深海棲艦ではなく対人間用)のイージス艦で、残りの二隻は空母と補給艦よ。

 でも実際は、他の四隻はオマケで中核をなす原子力空母が第7艦隊そのものと言って良い。

 その理由は、空母に搭乗している艦娘。

 現在、横須賀鎮守府の沖合に停泊している空母に搭乗している3000人以上の乗組員の内、200人が艦娘なの。

 つまり第7艦隊は、見た目は空母一隻でも、その実態は駆逐艦から戦艦、空母まで揃った200隻以上の大艦隊と同義なのよ。

 ちなみに、日本が保有している艦娘の総数は250に届かない。

 

 「あんな国を相手に戦争してた昔の人には頭が下がるわね。物量が桁違いだわ。辰見さんの感想は?」

 「だいたい円満と同じよ。あの空母に乗ってる艦娘だけで、日本の全艦娘を相手に戦争できるなんて反則でしょ」

 

 と、第7艦隊を目の当たりにした愚痴に近い感想を言い合いながら、私と辰見さんは応接室に向かっている。

 向かってるんだけど……。行きたくないなぁ……。

 

 「ねえ、円満。なんでそんなに不機嫌そうなの?愛しの先生に会えるっていうのに」

 「いやその、それ自体は嬉しいんだけど、気が進まなくてさ……」

 

 理由は簡単。

 今現在、先生と大淀がつい数時間後前に来日したばかりのロリコン野郎とその秘書艦を、私達より一足先に応接室で接待してるんだけど、今も仲違い中の大淀とロリコン野郎が居るから行きたくないの。

 今だに気まずいのよねぇ。

 大淀は私と仲直りしたいのか、小まめに電話をかけたりしてくるんだけど、私は大人気なく塩対応を続けてる。

 だから、直接顔を合わせなければならない機会は出来るだけ減らしたいのよ。

 そして……。

 

 「ロリコン野郎がどう出てくるか読めない」

 「ロリコン?ケンドリック中将の事?」

 「ええ、どうも奴は、私の事を狙ってるっぽいのよ」

 

 出迎えをした時は大人しくしてたけど、チラチラと私にいやらしい視線を飛ばしてたのは気づいてた。

 あれは間違いなく私を狙ってるわ。油断してたら力尽くで手籠めにされかねない。

 

 「どうしてそれで彼がロリコンって事になるのかはわからないけど、彼って結構イケメンだったじゃない。スタイルだって良いし。例えるなら……。そう!トム・クルーズ!トップガンに出てた頃の!」

 「だから何よ。ハリウッド俳優みたいなイケメンに気に入られて光栄です。とでも言えば良いの?」

 「逆に聞くけど、嫌なの?」

 「嫌」

 

 私の好みは先生だもん。

 彫りの深い顔立ちや筋肉質なところは似てるけど若すぎる。最低でももう10歳ほど歳食って出直してこいってのよ。

 

 「贅沢な悩みねぇ。米軍のエリートでイケメンなんて出会う事すら難しい相手よ?」

 「先生の方が偉いしカッコいいもん……」

 

 なんて言ってふくれっ面をして見せたけど、辰見さんには先生の良さがわからないらしく「オジン趣味……」とか言って呆れてるわ。

 

 「着いちゃったけど……。どうする?」

 「どうするって……。行くしかないでしょ?一応はホストだし」

 

 入りたくないなぁ……。

 懇談会まではまだ時間があるから、それまで執務室に引き籠もってようかしら。 

 

 『ああ、ようやく来たようだ。どうしたんだ円満。早く入って来なさい』

 

 よし!逃げよう!

 と覚悟を決めた途端に、私達の気配に気付いた先生に声をかけられてしまった。諦めて入るしかなさそうね……。

 

 「円満?」

 「わ、わかってる。ちゃんと行くから心配しないで」

 「じゃあ、お先にどうぞ」

 「ふぅ~……。よし!」

 

 意を決して、応接室のドアを開けようとドアノブを握ると、私が回すより先に内側から回されてドアが開いた。

 開いたのは良いんだけど、ドアを押そうとしたタイミングと開かれるタイミングがドンピシャだったため、私は部屋の内側に倒れ込んでしまった。

 

 「ちょっ……!きゃっあ!?」

 

 そのまま床と熱いヴェーゼを交わすかと思ってたら、すんでのところでドアを開けた人が抱きとめてくれた。

 しかもお姫様だっこ。顔面から床に突っ込んでいたはずの私をどうやって仰向けに?

 いやいや、それよりもコイツは……!

 

 「Are you okay? (大丈夫かい?)Lovely My Angel (ラブリーマイエンジェル)Emmatan(円満たん)

 「はぁ!?いきなり何を……!」

 

 私を抱えたまま立ち上がり、部屋の中央付近まで運んでくれたのは、辰見さんの言った通り若い頃のトム・クルーズに良く似た顔立ちに黒い軍服。そして身を委ね続けたくなるほど逞しい肉体の、出迎えをした時に見た人だった。

 いや、それは今は良い。それよりもコイツ、なんて言った?ラブリーマイエンジェルとかなんとか言ってたわね。って事は、予想通り私を狙ってたってこじゃない。

 だったらヤバい!今すぐ離れなきゃ!

 

 「ってぇ!それよりも離して!お~ろ~し~て~!」

 「Oh, sorry. FeathersのようにlightだったからHuggingしてるのをforgetしていたよ」

 

 ルー語で話しながらニヒルな顔でそう言ったロリコン野郎ことヘンリー・ケンドリックは、身を強張らせている私をゆっくりと降ろしてくれた。

 くっそう……。こんな奴にお姫様抱っこされるなんて……。

 

 「怪我はないか?円満」

 「だ、大丈夫!です……」

 

 私を心配してくれたのか、席を立って近づいて来てくれた先生にそう答えたものの、何故かバツが悪くなって顔を伏せてしまった。

 べつに、私と先生は恋人同士って訳じゃないんだから申し訳なく思うことないんだけど、不可抗力とは言え好きな人の前で他の男に体を預けるのは後ろめたい。それに、無性に言い訳したい。浮気がバレたときって、こんな感じの気分なのかな……。

 ん?浮気と言えば、大淀の姿が見えないわね。先生と一緒に居るはずなのに……。

 って、居た。大淀も私と顔を合わせ辛いのか、はたまた私が居辛くないよう気を使ったつもりなのかカーテンの内側に隠れてるわ。上半身しか隠れてないけどね。

 

 「Mr .Marshal 改めてSelf-introductionしてもOkかな?」

 「せるふ……?ああ、自己紹介か。円満、構わないな?」

 

 そのまま簀巻きになってろとカーテン(大淀)に視線を飛ばしていたら、私の位置からは背が高すぎて見上げないと顔が見えないロリコン野郎がそう提案した。

 ロリコン野郎の申し出を受け容れるかどうかは私次第って事?自己紹介自体は出迎え時に軽く済ませたけど、ロリコン野郎は今言った通り、改めて私に自己紹介したいらしく今か今かと私の返事を待ち望んでるわ。

 出来ればしたくないけど、先生が目線で「やりなさい」って促してるからやるしかないかぁ……。

 

 「はい……」

 「Thank you.(ありがとう。)I am the US Navy Seventh Fleet Commander . (俺が米国海軍第7艦隊司令) It's Henry Kendrick. (ヘンリー・ケンドリックだ。)Let's know your place later.(以後お見知りおきを。) And she…….(そして彼女が……。)

 

 彼が自己紹介を終え、次いで視線で促すと、金髪ロングでもぎりたくなるくらいの巨乳というステレオタイプのアメリカンガールが歩み寄って来た。

 灰色の瞳の中に星が浮かんでるわね。そういうカラコンでも入れてるのかしら。

 

 「Hi! MeがIowa級戦艦、Iowaよ。YouがこのGuardian OfficeのAdmiralなの? いいじゃない!私たちのこともよろしく!」

 「こ、これがアメリ艦……」

 

 改めて間近で見るとなんというボリューム。

 巨乳に目が行きがちだけど、タイトスカートから伸びるムチムチとした太ももも性的魅力に溢れている。

 こんなの見ちゃったら、自分が彼女と同じ女性とは思えないわ……。何を食べたらこんな風に育つんだろ。やっぱりBBQがキモ?それともピザ?

 

 「ほら円満、貴女も自己紹介しなきゃ」

 「え?あ、ああ、そうね」

 

 私がIowaのムチムチボディーに圧倒されていた間に自己紹介を終えた辰見さんが、肘でツンツンしながら私にも自己紹介しろと促してきた。

 見るからにウキウキしてるコイツに自己紹介するのはちょっと嫌だけど……。先生の手前、しないわけにはいかないわよね。

 

 「横須賀鎮守府司令長官。紫印 円満です。よろしくお願いします」

 「Emma Scene?日本人にしては変わった名前だね」

 「紫印 円満です。米国風に呼ぶのは出来ればご遠慮して頂きたい」

 「Ok、そっちの方が俺的にも嬉しいよ。では……エマと呼んでも?」

 

 む、いきなり下の名前で呼び捨てか。

 私に惚れてるっぽいから、距離を縮めるためにまずは名前からって魂胆なんでしょうけど馴れ馴れしすぎじゃない?ああでも、フルネーム、または苗字で呼ばれるよりマシかしら。うん、マシだと思うことにしよう。

 

 「それで構いませんよヘンドリック中将。それより、日本語お上手だったんですね」

 「grandmaが日本人でね。日本語は幼い頃に習ったんだ」

 「では、なぜ最初はルー語を?」

 「ルー語?ああ、あれか。あの方が外国人ぽいと思ってね」

 

 ふぅん。ただのリップサービスだったってわけね。

 これからコイツと話す度に、面倒くさいルー語を聞かされるんじゃないかと思って心配してたから少しホッとしたわ。

 

 「では俺の事も、Last nameではなくFirst nameで呼んでもらいたいな」

 「いや、それは……」

 

 嫌だ。

 先生の事すら名前で呼んだことがないのに、初対面の外国人を名前、しかもFirst nameで呼べですって?

 そんな事したら、噂好きの艦娘達に何を言われるかわかったもんじゃないわ。

 

 「申し訳ないですが……」

 「いきなりFirst nameで呼べ。は、円満にとってハードルが高いわ」

 

 ふぉ?

 私が言おうとした事を、ロリコン野郎を観察していた辰見さんが私を遮るように言ってくれた。

 言いにくかったから助かったわ。ありがとう。辰見さん。

 

 「Ms.辰見。それはどういう事だい?」

 「円満は男性と親しくした経験がありません。恋人はもちろん、男友達の類もいないんです」

 

 待って待って、私だって男性と親しくした経験くらいあるのよ?まあ、先生だけだけどね。

 それに工廠の整備員さん達や憲兵さんとも雑談くらいするわ。友達か?と聞かれたらNoと答えざるをえないけど……。

 

 「つまり、男性に対して免疫がない。ということかな?」

 「exactly.(そのとおり)メンヘル処女である円満には無理よ」

 「ちょぉ!」

 

 え?辰見さんって助け船を出してくれてたんじゃないの?それなのに、なんで私が処女だってバラしたの?

 だいたいメンヘル処女って何よ。メンタルヘルスケアが必要なレベルの処女って事?

 確かにメンタル面に問題が、と言うかヘタレだから今だに処女なんだろうけど、コイツの前で言う事ないんじゃない!?

 

 「だから、まずはあだ名からにしましょう」

 「adana?ああ、Nicknameの事かな?」

 「そう!ニックネーム!幸いなことに貴方の名前なら、円満の相手にピッタリ、かつ日本人のほとんどが一発で覚えられるニックネームが可能よ!」

 「ほう!それは興味深い!是非教えてくれ!」

 

 激しく嫌な予感がする。

 私の相手にピッタリ?しかも日本人のほとんどが一発で覚えられる?

 ほとんどは言い過ぎだと思うけど、知ってる人なら私の、と言うよりエマの相手として真っ先に思い浮かべるでしょうね。

 先生も思い至ったのか、「あ~なるほど」なんて言って変に感心してるわ。

 

 「ヘンリー・ケンドリックを縮めてヘンケン。なんてどうでしょう」

 「素晴らしい!覚えやすく、俺の名前を一度でも聞いていれば容易にfull nameを思い出すことが出来るいいNicknameじゃないか!」

 

 いやいやいやいや。

 エマに対してヘンケンなんて悪意しか感じないあだ名じゃない。エマの相手はヘンケン以外不可って偏見にも満ちてるわ。

 

 「エマ!今から俺のことはヘンケンと呼んでくれ!」

 「絶対に嫌!」

 「Why?何故だ?Ms.辰見は君にピッタリだと言ったぞ?」

 「ピッタリ過ぎるから嫌なの!」

 

 ベッケナーの方のヘンケンは好みだけどアンタは論外!だって、若くてイケメンで、オマケに背が高いガチムキのロリコンなんだもん!

 

 「円満。その物言いはヘンケン提督に失礼ではないか?」

 「でも先生……。って!なんで早速ヘンケンなんて呼んでるの?」

 「ん?しっくりくるからだが……。ほら、彼の実家はハンバーガー屋だそうだし」

 「だから何!?」

 

 ハンバーガー屋が実家だとしっくりくるの?どうして?

 ロリコンはロリコンで「近くにお越しの際は、是非バーガーショップマクダニエルへ」とか言ってるし、Iowaは行ったことがあるのか「very very美味しいデース」とか言ってるわ。

 

 「わかった。円満は順序を大切にしたいのね?」

 「いや、順序とかじゃなくて……」

 「良いのよ言わなくて!円満みたいに、少女漫画であるみたいな出会いが実際にあると思ってる子からすれば、あだ名で呼ぶのは付き合ってからよね!」

 「ねえ辰見さん。もしかして馬鹿にしてる?馬鹿にしてるよね?」

 

 いつもは桜子さんの加減を知らないイジりから守ってくれるのに、今日は何故か率先してイジってくる。

 この人、いったい何を考えてるの?

 

 「ヘンケン提督。ちょっとお耳を」

 「耳?ああ、耳打ちだね?」

 

 とか言って、二人はゴニョゴニョと本当に耳打ちし始めた。こうやって並ぶと、ロリコン野郎の高身長ぷりが際立つわね。だって170cm近い身長の辰見さんより更に高いもの。下手したら190に届いてるんじゃない?

 

 「Really!?だがそれは……」

 「しー!円満に聞こえます!」

 

 いや、聞こえてます。

 耳打ちの内容までは聞こえないけど、ロリコン野郎が尻込みするような事を吹き込んでるのはわかるわ。

 

 「わかった。エマと添い遂げられるのなら君の言う通りにしよう」

 「日本の諺にこう言うものがあります。曰く『将を射んとせばまずは馬を射よ』と。だから大丈夫です」

 

 辰見さんが言ったのは、武将を仕留めるなら、まずは馬を射とめるのがよい。転じて、目的を果たすには、その周囲にあるものから手をつけていけって意味の諺なんだけど、何故このタイミングでその諺が出てくる?

 ロリコン野郎の目的は私よね?

 その私を仕留める。つまり落とすには、私と親しい人と仲良くなり、後押ししてもらう事が肝要。

 私に家族でもいれば家族に取り入るって手もあったんでしょうけど、生憎と私は孤児。家族と呼べる人は居ないわ。

 で、話を戻すけど、今この場に居る人でロリコン野郎が取り入ろうとするなら誰?

 考えるまでもないわね。それは一人しか居ないわ。

 そう、先生よ。

 先生は私の上司であり師でもある。さらに、親が居ない私の後見人でもあるわ。

 だから、辰見さんが媚び売っとけ的なアドバイスをしたのなら、その相手は間違いなく先生。

 先生に取り入り、あわよくば私との事を応援させるつもりなんだわ。

 

 「Mr. Marshal. 貴方に言わなければならないことがある」

 「なんだね?」

 

 ほら見たことか。

 案の定、ロリコン野郎は先生に取り入る気だわ。でもお生憎様。

 今の先生は私の気持ちを知っている。

 それなのに、私との交際を認めてくれなんて言っても、先生は私を厄介払い、もしくは他人に押しつけるような気分になって色よい返事は出来ないはずよ。

 と、私がした予想を、ロリコン野郎はとんでもない一言で覆した。

 いくら私でもこの一言は予想できなかったわ。

 だって、私と先生はそんな関係じゃないもの。いや、そんな関係になりたくないって方が正しいかな。

 でも、不覚にも私は、立場もわきまえず。いえ、省みず、初対面の相手に土下座する彼に好感を抱いてしまった。キュン!としちゃったって言っても良いくらいね。

 彼は、ヘンリー・ケンドリックは、周りの目など気にせず、先生の前で土下座してこう言ったわ。

 

 「娘さんをください!」と。

 

 







 実は、後半の話は書き終わっているのですが四十五話の落ちがつかなくて書き上がっていません。
 いっそボツにするかどうか三日ほど悩ませててください!

主要キャラ人気投票

  • 朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
  • 神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
  • 大和(影が薄い三部主役)
  • 紫印 円満(実質三部の主役?)

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