艦隊これくしょん ~ナデシコの咲く丘で~   作:哀餓え男

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 昨日は予想外の残業で投稿出来ませんでした。
 サーセン!


第四十四話 私、綺麗?

 

 

 エマのどこに惹かれたか。かい?

 そうだな……。

 まずはルックスだ。

 触れれば壊れてしまいそうなほど細く繊細な体。子供のような愛らしさと大人のような美しさを兼ね備えた顔。初めて彼女を写真で見た時、俺の体中を稲妻が駆け抜けたよ。

 だが、同時に憤りも感じた。

 なぜエマのような美少女が独り者なんだ!とね。

 まあ、ライバルは少ないに越したことはないんだが、彼女の魅力に気づけない日本の男共の見る目のなさとヘタレっぷりには、今でも呆れて言葉が出ないよ。

 

 もちろんルックスだけに惹かれたわけじゃない。

 彼女を初めて抱いた時……。ああ、勘違いしないでくれよ?性的な意味での抱くではなく、お姫様抱っこ的な意味だ。

 本格的に惹かれた。いや、俺が彼女の虜になったのはその時だ。

 エマは、羽根のように軽いこの体でどれ程の重さに堪えているんだろう。小動物のように潤んだその瞳で、どれだけの地獄を見続けるつもりなのだろう。

 そう思ったら、エマの事がたまらなく愛しくなった。是が非でもでも手に入れたいと思えた。

 だからその場でDOGEZAしたよ。

 Ms.辰見の助言に従った形になったが、Mr .MarshalにDOGEZAする事でエマを伴侶に出来るのなら安いものだと思えたからね。

 

 

 ~戦後回想録~

 

 バーガーショップ マクダニエル日本支店店長。

 ヘンリー・ケンドリック退役大将へのインタビューより。

 

ーーーーーー

 

 

 「で?お父さんの反応は?」

 「お父さんじゃないもん……」

 

 長倉提督と大鳳さんの案内を終えて、部屋で軽めの夕食と円満さんの着替えの準備をしてたら「助けてミチえもん!」なんて、アホなことを口走りながら円満さんが帰って来た。

 殴ったら少しだけ正気に戻ったけど、その時の円満さんには私が未来から来た青色のタヌキに見えてみたいよ。で、今は応接室での出来事を聞かされてるってわけ。

 

 「告白、交際、プロポーズを全部すっ飛ばして親に挨拶とはねぇ。米国だとそれが普通なの?」

 「知らないわよそんな事。それより、先生は親じゃない!」

 

 親みたいなもんでしょうが。

 実際、二人が並んでる光景は贔屓目に見れば親子だし、元帥さんは円満さんの後見人でもある。さらに、円満さんが二十歳になるまでの保護者でもあるわ。

 今さらだけど、妻帯者であり、親代わりでもある元帥さんにゾッコンなんて、円満さんの恋愛観に倫理観は皆無ね。

 

 「はいはい。わかったからさっさとこれ食べて」

 「食べたくない……」

 「我が儘言わない!どうせ今日はつまみとお酒くらいしか摂らないんだから、体に悪いからこれくらい食べといて!」

 

 なんか変ね。

 私が今出したマカロニサラダは円満さんの好物の一つなのに食べたがらない。しかも、妙に落ち込んでる。

 ケンドリック提督の事をヘンケンって呼ぶのが嫌なのかしら。う~ん……。違う気がする。

 だって、この世の終わりみたいな顔してるもの。私の人生終わった。って考えてるようにも見えるわ。

 

 「先生がね。「俺より弱い奴に娘はやらん!」って言ったの……」

 「あ~……」

 

 言いそうだ。

 きっとケンドリック提督に「娘さんをください!」って言われて父親モードになっちゃったんだわ。

 以前、海坊主さんに聞いた事があるんだけど、本当に円満さんが言ったのと同じセリフを言われてそのまま決闘したそうよ。

 

 「それを聞いてね?私、女に見られて……ないんだなっ…って」

 「ちょっ……!それは考えすぎよ!元帥さんだってその場のノリで言っただけだと思うし……。だから泣かないで?ね?」

 「無理よ!だって私……。私……!」

 

 完璧に失恋しちゃったんだから。って、言おうとしたのかな。

 言い切れずに泣き崩れちゃったから、本当のところはわかんないけどたぶん合ってると思う。

 その場のノリとは言え、娘扱いされたのは元帥さんの事を男性として好きな円満さんにとってはフラれたのと同じだもの。

 

 「遅かれ早かれ、傷つくのはわかってたでしょ?」

 「わかってたわよ!わかってたけどぉぉぉぉ!」

 

 そうよね。頭でわかってても、そう簡単に気持ちは割り切れないもんね。

 でも、普通の恋愛ならここまで傷つく事はなかったかもしれない。

 円満さんの不幸は、元帥さんとお姉ちゃんの結婚前後で諦められたはずなのに、周りが諦させてくれなかったこと。

 みんな円満さんの心の葛藤なんて考えもせず、身勝手に円満さんと元帥さんの仲を応援した。

 私も、含めてね……。

 

 「円満さんは、元帥さんを好きになったのを後悔してる?」

 「して、ない……!」

 「そうだよね。後悔なんてしてないよね。だって、元帥さんの事を考えてるときの円満さんは凄く幸せそうだったもの」

 

 デートの前の日は年相応にソワソワして、時折自分の妄想に赤面したりもしてた。

 今日は前より話せたとか、今日は褒めて貰えた。頭を撫でて貰えた。「お前は俺の自慢だ」って言われたときは嬉しすぎて泣きそうになったと、はにかみながら話してくれた。

 だから、私も不倫なんてやめた方が良いと思いながらも円満さんの背中を押してしまった。

 いや、言い訳はやめよう。

 私が円満さんを傷つけたんだ。私が円満さんを泣かせたんだ。その事から、私は逃げちゃダメだ。

 

 「懇談会、出るのやめよう?元帥さんだって無理に出ろとは言わないわよ」

 「……」

 「円満さん?」

 

 私の提案には答えず。円満さんは涙を拭いながら、お風呂場の方へフラフラと歩いて行った。

 懇談会には出る。ってことなのかな。

 でも、今の円満さんが元帥さんに会うなんて、傷口に塩どころか辛子を塗り込むようなものよ?

 ホストとしての義務感から出席しようとしてるんだと思うけど、私としてはやめてほしい。いや、やめさせなきゃ。

 

 「円満さん!やっぱり今回は……!」

 「満潮……」

 

 脱衣所に入ると、ちょうど下着姿になった円満さんと鉢合わせしてしまった。

 円満さんの裸なんて見飽きてるはずなのに、今日はさっきまで泣いていたせいか、愁いを帯びた瞳が良い意味でアクセントになっていつも以上に綺麗だわ。

 エルフが実際にいたらこんな感じなんじゃないかと思っちゃうくらいに。

 

 「丁度良かったわ。着替えを用意しといてくれない?」

 「でも今日は……」

 「大丈夫よ。だから心配しないで。ね?」

 

 そう言って、円満さんは下着を脱いで浴場に入った。

 泣いたからスッキリした?

 ううん、そんなはずないわ。

 デートで何も出来なかっただけで一晩泣き明かす円満さんが、たった十数分泣いただけで失恋の痛みから回復できるはずがない。

 やっぱり義務感から出席しようとしてるんだ。

 仕事と割り切ることで、止めどなく溢れてくる悲しみを抑え込もうとしてるんだわ。

 

 「だったらせめて、サポートくらいはしてあげなきゃ」

 

 いつもの士官服が無難、かつ適切だけど、せっかくの機会だしお洒落させてあげたい。気分転換にもなるだろうしね。

 だって、円満さんったらいつも士官服なんだもの。

 普段、それ以外で円満さんが着るのなんてジャージとパジャマくらい。元帥さんとのデートでさえ、表向きは仕事ということになってるからスーツか士官服よ。

 

 「でも、今日の懇談会は歓迎会も兼ねてる。それなら……」

 

 極端な話、ドレスでも良いはず。

 だって、ケンドリック提督は円満さんの事が好きみたいなんだもの。ケンドリック提督に気持ち良く協力してもらうためって名目でも立てれば海軍的にも問題ないわ。

 よし!これでいこう!

 円満さんにお洒落させれて、ケンドリック提督の機嫌も取れる。まさに一石二鳥よ!

 

 「そうなると問題は……」

 

 服ね。

 円満さんが昔集めてたゴスロリ服は私が持ってるけど、今の円満さんが着るのはちょっとキツい。

 サイズは平気だけど見た目的にね。可愛いとは思うしよく似合うでしょうけど、さすがにゴスロリファッションで懇談会はダメでしょ。

 

 「誰かにドレスでも借りるか……」

 

 これまた難しい。

 上位艦種なら誰かしら持ってそうだけど、丈や腰回りは問題なくても胸が大問題。何故なら、円満さんより胸が小さい上位艦種が今の横須賀には居ないの。

 比較的小振りな阿武隈さんでさえ円満さんよりはあるわ。

 

 「そうだ着物なら……。って!誰よこんな時に!」

 

 胸が小さい方が美しく着こなせる着物に思い至り、どうやって調達しようかと考え始めたのを、ドアをノックする音に邪魔された。

 ったく!あと二時間もすれば懇談会だから焦ってるのに!

 

 「誰?今忙しいんだけど……。って、辰見さんじゃない。それに長倉提督まで」

 「ごめんごめん。元帥からこれを渡してくれって頼まれてさ。円満はもう着換えちゃった?」

 「まだお風呂に入ってますけど……。それ、何です?」

 

 辰見さんが持っているのは紺色の風呂敷包まれた何か。重そうには見えないから服かな?

 でも、風呂敷で包んで運びそうな服なんて……。あ、もしかして。

 

 「それ、着物?」

 「大正解!元帥が今日の懇談会で円満に着させようとして用意したんだってさ」

 「ナイスタイミング!丁度欲しいと思ってたのよ!」

 

 私はとりあえず、二人を部屋に招き入れて座ってもらった。

 お茶も出した方が良いよね。円満さんがお風呂から上がるまでもうちょっとかかるだろうし。

 

 「大したおもてなしが出来なくてすみません。もう少ししたら、円満さんも上がってくると思いますので」

 「気にしないで満潮ちゃん。時間的にそうなんじゃないかなぁ~とは思ってたの。それなのに天奈が急かすから」

 「あ、私のせいにしやがった。良子だって、個人的に円満と話したいことがあるから~って、準備してた私を無理矢理連れ出したじゃない」

 「そうだったっけ?」

 「そうよ」

 

 仲良いわねこの二人。まさに旧知。いや、竹馬の友と言っても良い雰囲気だわ。

 元軽巡同士だから?それとも、一緒に艦隊を組んだことがあるのかしら。

 

 「どうしたの?満潮。私達の顔に何かついてる?」

 「え?いえその……。仲良いなぁって思って」

 「あ~、良子とは同期なのよ。艦娘のね。だから、鎮守府が呉にしかなかった頃に一緒だったの」

 「じゃあ長倉提督は……」

 「そう、良子は初代長良。歴代の長良がスポ根気質なのはコイツのせいね」

 「『長良』には会ったことないから知らないけど、スポ根気質なの?」

 「そうなの?良子」

 

 おいおい。

 辰見さんが言ったのに長倉提督に答えを丸投げるとはなんと無責任な。

 でも、長倉提督は予想してたのか「はぁ……」と溜息を突いて「だいたい合ってるけど語弊ある」と答えてこう続けた。

 

 「長良になった子がみんなスポーツ好きなのは私の影響を受けてるんだろうけど、ガチな体育会系からサークル活動的なノリの子まで色んなタイプが居たわ。好きなスポーツだってバラバラなんだから。天奈だって、今の天龍と会ったら自分となんか違うって思うはずよ」

 「え~っと、今の天龍ってたしか……」

 「知らないの?龍田と一緒に、大湊で海防艦達と対潜哨戒の毎日だそうよ」

 「ふぅん。大湊にいるんだ」

 

 興味なさそうだなぁ。

 辰見さんは自分の後輩がどこで何をしてるか気にならないのかしら。

 円満さんの場合は、着任したての私を自分の部屋、つまりこの部屋に住まわせようとしたし、やたらと付きまとって来たりしたのになぁ。

 あ、そうだ。円満さんと言えば……。

 

 「ねえ辰見さん。どうして円満さんにケンドリック提督を嗾けたりしたの?」

 「……円満、泣いちゃった?」

 「うん。たぶん、今もお風呂で……」

 「そう……。ちょっと、急ぎすぎちゃったかな」

 

 急ぎすぎた?辰見さんは何を急いだ?

 円満さんとケンドリック提督をくっつけようとした事?今日会ったばかりで人柄もわかってないのに?

 いや、違う気がする。

 辰見さんがケンドリック提督を嗾けたのは円満さんとくっつけるためじゃない気がする。

 

 「満潮、着替えが出てないんだけど……って、辰見さん。それに長倉さんまで」

 「ちょっ!円満さん前!前!せめてタオルで隠しなさいよ!」

 「え?ああ……。忘れてた」

 

 辰見さんの思惑を私なりに推し量ろうとしていたら、頭にタオルを巻いた以外はスッポンポンの円満さんが、私達が居る居間に入って来た。

 私も忘れてた。

 円満さんって、風呂上りはいつもこうなのよ。私が脱衣所に着替えを用意してあげなきゃ、今みたいにスッポンポンのままタンスまで着替えを取りに行くの。

 しかも今日は、二人に気付いても手で隠そうとすらしないじゃない。いくら女同士でもさすがに失礼過ぎるから、取り敢えず何か着させなきゃ。

 

 「待って満潮。裸の方が都合が良いわ。そのままこっち来て円満。着付けてあげるから」

 「着付け?着物でも着せようって言うの?」

 「その通りよ。ほらコレ。元帥が選んだにしては中々良い趣味だと思わない?」

 

 タンスに向かおうとした私を止めて、辰見さんが広げて見せたのは俗に言う振袖。清楚な印象を与える真っ白な表地に、シックな裾色。やわらかく描かれた青とオレンジの薔薇の花々が上品な趣を感じさせるわ。

 

 「コレを、先生が?」

 「そうよ。こうも言ってたわ。『これが私の、円満への気持ちだ』ともね」

 「そう……。相変わらず、顔に似合わないことするんだから」

 「意味が、わかるの?」

 「ええ、辰見さんが変な気を回さなくても、先生は私を袖にするつもりだったみたいよ」

 「振袖だけに?」

 「うん。だから、振袖を贈ってくれたのよ」

 

 そう説明した円満さんの顔は歪んでいる。泣くのを我慢してる。割り切れない気持を、頭で必死に納得させようとしてる。

 納得するしかない。納得しなきゃいけない。って、考えているように見えるわ。

 元帥さんが用意した振袖に、今の円満さんを納得させられるだけのメッセージが込められているの?

 

 「青い薔薇が一本。そして、オレンジの薔薇が四本か……。かなり無理矢理だけど、先生はこう言いたいんだと思う。『俺はお前の気持ちには応えられない。だが、奇跡を起こせるのはお前だけだと信じ続ける』って」

 「花言葉……か。確かに、顔に似合わずキザな事をするわね」

 

 なるほど、元帥さんは振袖と、それに描かれている五本の薔薇に、円満さんへの気持ちを込めたのね。

 たしか薔薇は色や状態、部位にも意味が込められているし、本数にも意味がある。

 だから円満さんは、一本の青い薔薇と四本のオレンジの薔薇から、さっきの元帥さんの気持ちを読み取ったんだわ。

 

 「じゃあ私、余計な事しちゃったかな」

 「ううん。アレくらいの荒療治でもしなきゃ、未練たらしい私はズルズルと先生の事を想い続けたわ」

 「気付いて……たんだ」

 「気付いたのはついさっきよ。お風呂に浸かってる間、なんで辰見さんはあんな事をしたんだろって考えてたら思い至ったの」

 

 円満さんの瞳がまた潤み始めた。

 そっか、辰見さんのケンドリック提督を嗾けた真意がようやくわかったわ。

 要は、円満さんを失恋させたかったの。だから辰見さんは、ケンドリック提督を嗾けたのよ。

 その結果、辰見さんの思惑通りにケンドリック提督は元帥さんに『娘さんをください』なんて口走り、元帥さんはそれを聞いて父親モードになって円満さんを娘呼ばわりした。

 そして、娘としか想われてないことに気付かされた円満さんは失恋した。自分じゃ、元帥さんの隣に女として立てないと思い知らされて。

 

 「辰見さん。着付け、してもらっても良い?」

 「もちろんよ。元帥が後悔するくらい、綺麗に着飾ってあげる」

 

 二人は少しはにかみ合いながら、奥の寝室の方に消えていった。

 仲違いするんじゃないかと少し心配になったけど、それは杞憂だったみたいね。蚊帳の外だった長倉提督も、心なしか安心したような顔してるわ。

 

 「良い先輩と後輩じゃない。少し妬けちゃうな。私」

 「私もですよ。本当なら、私が辰見さんの役をしなきゃいけなかったのに」

 「役割分担だと思って割り切った方がいいよ?満潮ちゃんは甘やかす役。天奈は厳しくする役って感じでね」

 「私、そんなに甘やかしてます?」

 

 躾は厳しくしてるつもりなのになぁ。

 服を脱ぎ散らかすな!とか、好き嫌いするな!とかって感じで。まあ、今だに言わないとちゃんとしてくれないけど。

 

 「貴女たちの普段の生活を知らないから想像でしかないわ。でも、円満ちゃんは貴女に叱られたいんだなぁとは、お風呂から上がってきた円満ちゃんへの貴女の対応でわかったよ」

 「円満さんが実はマゾって事がですか?」

 「そうなの?」 

 「いや……今のは忘れてください」

 

 円満さんはどっちかと言うとSかな。

 その割に、普段は桜子さんの良いようにイジられてるし、私生活では私にボロクソに言われてるからぱっと見はMと思われても仕方ないかもしれないわね。

 

 「そう言えば、円満さんに話があったんじゃないんですか?」

 「着付けが終わってからにするわ。最悪、明日の会議の前でもいいし」

 「会議に関係あることなんです?」

 「ええ。元帥閣下から、会議の場で円満ちゃんの味方になってやってくれと頼まれてるんだけど、円満ちゃんがそんな事を求めているのかが知りたかったんだ」

 「そりゃあ、味方は多いに越したことはないんじゃ……」

 「私もそう思うよ。あくまで念のために聞いておきたいだけ」

 

 念のため……か。

 口ではそう言ってるのに、長倉提督には何か確信があるみたいだわ。まだ、作戦の概要すら知らないはずなのに。

 

 「お待たせ。終わったわよ」

 「おお~。良く似合ってるじゃない。綺麗よ。円満ちゃん」

 

 辰見さんが襖を開くと、その後ろから振袖に身を包んだ円満さんがゆっくりと出てきた。

 本当に綺麗だわ。辰見さんがそうしろと言ったのか、今日はいつもより念入りにお化粧してるし、円満さんの明るい髪色が良いアクセントになって振袖と円満さん自身の両方を際だたせてる。

 今の円満さんは、まるで花嫁みたいだわ。

 

 「どう?満潮。私、綺麗?」

 「どっかの都市伝説みたいなセリフね。でも……本当に綺麗だわ。お嫁に出すのが惜しくなっちゃう」

 「まだ嫁に行く気はないわ。相手もいないしね」

 

 若干影は残ってるけど、普段は出来ないお洒落が出来たことが嬉しいのか、円満さんの顔に笑顔が戻ってる。冗談を言う余裕も出てきたみたいだわ。

 

 「じゃあ、私と良子も着替えに戻るわね」

 「うん。ありがとう。辰見さん」

 「これくらいお安いご用よ。満潮、円満のエスコートは頼んだわよ?」

 

 と言付けて、辰見さんは「え~!士官服でいいじゃない!」と文句を言ってる長倉提督を連れて出て行った。長倉提督は円満さんに話があるのに良いのかしら?

 

 「満潮。お願いがあるの」

 「お願い?」

 「うん。今日の懇談会で何が起きても、私のことを信じて欲しいの」

 「今更何を……。私はいつだって円満さんの事を信じてるよ?」

 「それでもよ。私が何をしても、何を言っても慌てないで。怒らないで」

 「それは……」

 

 私が慌てたり怒ったりするような事をするつもりって事?だから、円満さんの事を信じて口を出すなって言いたいの?

 理由を説明して。って言っても、今は何も話してくれないんでしょうね。だって円満さん瞳からは『絶対にやる』って決意を感じるもの。

 だったら、私の答えは決まってるわ。

 

 「わかった。円満さんが何をしても口は挟まない。その代わり……」

 「うん、ちゃんと説明する。アンタにだけは、嘘をつきたくないから」

 

 私にだけは……ね。

 それは、自分には嘘をつくって事じゃないの?自分の気持ちに嘘をついて何かをしようとしてるんじゃないの?ただでさえ傷ついてるのに、円満さんは自分で自分をさらに傷つけようとしてるんじゃないの?

 ホント……。

 

 「円満さんの……。バカ」

 「そうね。私って本当にバカだわ」

 

 そう言って、バツが悪そうに微笑んだ円満さんは私を抱きしめて、震える手で頭を撫で始めた。

 普段はこんなことさせない。

 でも今は、私の頭を撫でることで円満さんが気持を落ち着かせられるなら、と思って身を委ね続けたわ。

 私が円満さんにしてあげれるのはこんな事しかないの?

 という、歯痒さを感じながら。






 ボツにしようか悩んでるのは次回です。もうちょいお時間ください!

主要キャラ人気投票

  • 朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
  • 神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
  • 大和(影が薄い三部主役)
  • 紫印 円満(実質三部の主役?)
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