と、言う訳で一章投稿開始しま~す(´・ω・`)
第五話 ようこそ、横須賀鎮守府へ。
皆さんこんばんは。大和 撫子です。
本当はもうこの名前を名乗ってはいけないのですが、まだ慣れていないのでご勘弁ください。
だっていきなりだったんですもの。
昨日の夜、心友である やはぎんを探している途中に寝てしまったと思われる私は、昼前に起きたら艦娘になっていたんです。
何を言ってるのかわからないでしょう?私も自分が何を言ってるのかわかりません。起きたら大城戸さんに「不本意ですけど、貴女は今日から艦娘です」と言われたんです。説明不足にも程があると思いませんか?
「ちょっと!撃ってる!あの人たち撃って来てるんだけど!?」
ベッドから這い出た私は、用意された教官用の制服(男性用)に着替えて遅めの朝食を摂りました。どんなに遅くなっても、三食ちゃんと食べないと健康に悪いですからね。
「救援どうなった?姐さんに連絡したんだろ?」
「勿論っす。もうノリっノリだったっすよ」
「最近はドンパチもなかったし、育児とかでストレス溜まってたんだろうなぁ」
「自分も気にしちゃいたんすけど、良いストレス発散の機会が出来て良かったっすよ」
そうですね。ストレスは適度に発散させないといけません。
あ、彼らは私と やはぎん を横須賀から迎えに来てくださった軍人さんで、運転している方が……。あれ?お名前はなんでしたっけ?お聞きしたはずなんですけど……。まあ、頭が金髪だから金髪さんで良いですね。
そしてもう一人の「~す」と語尾に付けて話す方は付き添い兼護衛だそうです。
名前は……。うん、忘れたから海坊主さんでいいや。
だって頭はツルピカでサングラスをかけ、似合わない口ひげを生やしてるんですもの。子供の頃に呼んだ『都市狩人』ってマンガに出て来たキャラの劣化版って感じです。
その彼らに連れられて、昼過ぎに制服ではなく私服姿の やはぎんと一緒に横須賀鎮守府へ向けて出発しました。
「なんでアンタらこの状況で雑談が出来るの!?撃って来てるのよ?アイツら本気で撃って来てるのよ!?」
今思い出しても、やはぎんと大城戸さんの別れは感動ものでした。
涙を浮かべて別れを惜しむ二人と、その二人を見て「うおぉぉぉぉん!おんおん!」と号泣する金髪さんと海坊主さん。私も、親との雑談の最中だというのに思わず耳を傾けてしまいました。
「そういやぁ大和さん…だっけか?は、親のOK取れたのか?」
「あ、それ自分も気になってたんすよ。急に艦娘になって反対とかされなかったんすか?」
「はい。お国のためにご奉公して来なさいと言ってくれました」
理解のある両親で助かりました。
私が艦娘になった事を報告したら、「当分帰って来なくて大丈夫だからね!」とか「これで請求書に悩まされずに済むわ!」とか言って感動してくれたくらいです。
「あ!凄いですよ やはぎん!ドッカーン!って言いましたよドッカーン!って!花火でしょうか、それにしては色が地味だし高さもありませんけど」
「攻撃されてんのよ!今のは花火じゃなくてロケット砲!」
「いや、ありゃあロケット砲つうより無反動砲だな」
「見た感じカールグスタフっすかね。たぶん陸軍からの横流し品っしょ」
「どうでも良いわよそんな事!アンタら頭おかしいんじゃないの!?なんでこの状況で平然としてられるのよ!」
へぇ、花火じゃないんですね。あんなに綺麗なのに……。
でも、なぜ攻撃されてるんでしょうか。大阪を過ぎた辺りから急に黒塗りのセダンが4台ほど現れて、私たちが乗車しているハイエースに向けて花火……じゃなかった。鉄砲と無反動砲とやらを撃ち始めました。
それが始まってかれこれ1時間ほど経ちますが、今のところ命中弾はゼロ。あれだけ撃たれまくっているのに一発も当たらないなんて不自然ですし、殺気の類も感じません。
やっぱりエンターテインメントの一種ですよ。攻撃だなんて、やはぎんは大げさすぎます。
「ちょっと揺れるぞ。舌噛むなよ」
「え?ちょっと何する気?まさかとは思うけどぉぉぉぉ!」
金髪さんがハンドルを切ると、ハイエースの右隣、やはぎんが乗ってる方に着けようとしたセダンと私達が乗っているハイエースが接触しました。
凄いです!ドーン!ガリガリガリガリ!って音をさせながら、セダンをガードレールに押し付けました!セダンはそのままクルクルと回転しながら後方へフェードアウト。
こんな映画の様なシーンを生で見られる日が来ようとは夢にも思いませんでした。
「凄い凄い!もう一回やってください!もう一回!」
「お?大和さんはノリがいいなぁ。じゃあ、もう一回行くぜぇぇぇ!」
「やめてぇぇぇ!お願いだからもうやめてよぉぉぉ!」
きゃあ!きゃあ!本当にもう一回やってくれました!
しかも今回は、クルクルと回転しながら脱落したセダンが後方に居たもう一台を巻き込んで盛大にクラッシュ!動画に撮ってSNSに投稿すれば良かったと後悔しました。
「助けてぇぇぇ!教官助けてぇぇぇぇ!私こんな所で死にたくないぃぃぃぃ!」
「あ、やはぎん今の動画撮りました?撮ってるなら後で私にも送ってください」
「動画なんか撮ってねぇよ!助け求めてんのよ!」
あら残念。スマホを取り出して何か叫んでいたから実況でもしてるんだと思いました。
あ、残りの1台が真後ろに来ましたね。
助手席から覆面姿の人が乗り出して無反動砲…でしたっけ?を此方に向けて構えています。
「頼むわ相棒」
「OKっす」
もしや!海坊主さんも後ろの人みたいに窓から身を乗り出して銃撃するんでしょうか!
ますます映画っぽくなってきましたね。ハリウッドも真っ青なアクションシーンですよ!
「ほい、終わり」
「え~?アレで終わりですか~?」
「見てない!私何も見てない!人が爆散する瞬間なんて見てない!」
ガッカリです。
海坊主さんは悪い意味で私の予想を裏切り、左腕だけ外に出して拳銃を一発だけ撃ちました。爆発する瞬間は見損ねましたけど、後ろにいたセダンは爆発、炎上して吹っ飛びました。
けど、一発だけでどうやって?無反動砲の砲身に撃ち込んで誘爆でもさせたんでしょうか。
「お、やっと静岡に入ったな。そろそろ油注ぎたいとこだが……」
「鎮守府まで保たないっすか?」
「養成所を出てから一回も給油してねぇからなぁ。ちぃと不安だ」
「あ、ちょっち電話っす」
「誰からだ?」
「マイハニーっす♪」
おお!マイハニーって言う人って本当に居るんですね!それを口にしているのが劣化海坊主なのが凄く残念ですけど。
「ええ、燃料がちょっと…え?マジっすか?了解っす!熱海っすね!」
「熱海ぃ?今さら新婚旅行でもする気かよ」
「違うっすよ。熱海に迎えを寄越すそうっす。つうか、熱海が新婚旅行のメッカだったのは何百年も昔の話っすよ?」
いえいえ、そんな時代に新婚旅行なんて概念は存在していません。
確か、日本で初めて新婚旅行をしたのは坂本龍馬とお龍でしたっけ?だいたい百数十年前です。
それに、熱海に新婚旅行で行く人は今でも割といらっしゃるんですよ?さらに、熱海には温泉もあります。
相良湾を眺めながら露天風呂でゆったりと……。最高ですね!
「やりましたね やはぎん!今夜は温泉ですよ!」
「一人で浸かってろ!私は一刻も早く横須賀に行きたいのよ!」
「横須賀の温泉の方が好みですか?」
「ちっがう!貴女状況わかってんの!?私達襲われてるのよ!?」
襲われてる?やはぎんは誰が私達を襲っていると言うのでしょう。
さっきまで居た四台のセダンですか?それは違います。きっとあの人たちは、長時間のドライブで私達が退屈しない様に大城戸さんなり横須賀鎮守府なりが用意してくださったエンターテイナーさんたちですよ。
平和な日本で銃撃戦がある訳ないでしょ?ましてや、車が何台もクラッシュするような状況など起こり得ません。だって……。
「日本は平和なんですから!」
「平和なのは貴女の頭の中だけよ!」
「まあ、最近は平和だよな?食い物にも困んねぇし」
「そっすね。弾薬も消費期限気にしなきゃいけない程余ってるっす」
「もう嫌だこの空間!私が異常みたいじゃない!」
へぇ。弾薬にも消費期限があるんですね。そんな事知りませんでしたし興味もありませんでした。それに覚える気もありません。だって役に立ちそうにないですもの。
あ、ちなみに、現在私たちを乗せたハイエースは東名高速道路を降りて県道11号線に乗り、熱海港へ向かって東進中です。遠目に相模湾と思われる海が見えて来ましたね。
「お、見えたぞ。あれだ」
「迎えって二式大艇だったんすね。あ~でも、円満さん怒ってるっすかね?」
「怒り過ぎて血管切れってっかもなぁ。最悪、親父に話が行くんじゃねぇか?」
「それマズいっすよ!絶対ぇ怒られるっす!」
あらら。やはりどこのご家庭も同じなんですね。
暗くて細部までは見えませんが、たった今相模湾に着水した飛行機が、金髪さんが仰っていた二シキタイテイとやらでしょうか。それを勝手に使ったからエマさんとやらが怒って、さらにエマさんからお父様に伝わって海坊主さんが怒られると……。
「ふむ…つまり金髪さん、海坊主さん、エマさんはご兄弟と言う事ですね」
「いや、何言ってんすか?この人」
「俺ぁこんなハゲた弟なんていらねぇ」
「ハゲてねぇっす!剃ってるだけっす!それになんで自分が弟なんすか!自分と
仲の良いご兄弟ですね。「ハーゲ!ハーゲ!光が反射して眩しんだよ!ハーゲ!」とか「うっさいっすよクソDQN!30過ぎのオッサンが若作りしすぎっす!」とか言い合ってケンカし始めました。ケンカするのは良いですけど、ちゃんと前を見て運転してください。
「ちょっと!また来たんだけど!?またセダンが集まって来てるんだけど!?」
「あぁん?懲りねぇ奴らだなぁ……。ってぇ!20台超えてんじゃねぇか!集めすぎだろ!」
「相棒、そのまま二式大艇へ。自分が数を減らすっす」
あ~、後ろが明るくなったと思ってたらエンターテイナーさん達がまた来てくださってたんですね。今度はどんな余興を見せてくださるのでしょうか。
「ちょっくら御免なさいよっと。持って来といて正解だったすね」
私とやはぎんが座る後部座席の後ろ、荷台に相当する部分に移動した海坊主さんがライフルの様な物をケースから出して組み立て始めました。
かなり長いですね。銃身だけで70cmはあるんじゃないかしら。
「お二人は出来るだけ頭を低くしといてくださいっす。まあ、弾が車内に飛び込んで来る事は無いとは思うっすけど念のため」
「まさかバックドア開けるの!?冗談でしょ!?」
「いや、開けないと撃てないっすから」
そう言うや否や、海坊主さんはバックドアを開いて挨拶代わりとばかりに発砲。凄い音ですね。鼓膜が破れるかと思いました。
「熱海街道に入った!もう少しだ!」
「凄い!凄ーーい!やはぎんも見てください!凄いですよ!ヘッドライトが七分、夜空が三分です!」
「絶望的じゃない!なんでそんな光景見てはしゃげるの!?」
そりゃはしゃぎもしますよ。
海坊主さんが一発撃つ度に1台づつ減っていってますけど、熱海街道の車線を黒塗りのセダンが埋め尽くしてるんですよ?しかもクラッカーと花火のおまけ付きです。これではしゃがない方がおかしいと思うんですけど……。
「うん?ありゃあ……
花組?宝塚の女優さんまで余興を披露してくださるんですか?さすがにちょっと申し訳なくなる程の歓待ぶりですね。私と やはぎんは皆さんから歓迎されてるみたいです。
「はて、女優と言うよりは……」
軍人さんですね。
私達に進行方向に仁王立ちした5人は、ハイエースのライトで照らされてなければ夜闇に溶け込んでしまいそうな程黒い軍服、羽織ったコートの左肩にはそれぞれ違う色の腕章がつけれています。
向かって左から順に黄、緑、赤、桃、青。まるで戦隊ヒーローのような組み合わせですね。赤い腕章を着けてる人なんて髪まで真っ赤です。
身のこなしから察するに5人ともかなりの手練れ。その中でも髪まで赤い人は別格ですね。
私は子供の頃から、日本舞踊を習う過程で古武術も嗜んでいるのでそういうのはなんとなくわかるんです。エッヘン!
「相棒!自分はここで降りるっす!あとは任せるっすよ!」
「おう!任せとけ!」
そう言って、海坊主さんは走行中のハイエースのバックドアから躊躇いもなく飛び降りました。
それよりも、私が気になったのは海坊主さんが飛び降りる寸前にすれ違った5人の女性達。
だって彼女たちの武装は、軍人の割に時代錯誤と言われてもおかしくない程前時代的だったんですもの。
黄の人は身の丈程もある長尺刀、緑の人は1mはありそうな巨大な扇子、赤い人は普通のサイズの日本刀、桃の人は番傘、青の人は長槍を装備していたんです。緑と桃の人が手にしていた物は武器かどうかも怪しい感じですけど。
「あの人たちはどんな人達なんですか?」
「あ~、ありゃあ『花組』っつってな、赤い腕章つけた人が居たろ?その人の近衛兵みたいな感じなんだが……。メンバー全員が元艦娘で兎に角強い。単純なぶつかり合いなら奇兵隊で一番だ。周りへの被害も……」
「ええぇ……。大城戸教官にしてもそうだけど、元艦娘って化け物ばっかなの?後ろが三〇無双みたいになってるんだけど……」
やはぎんの言葉に釣られて後ろを振り向くと、〇国無双みたいなシーンは見れませんでしたが、車が何台か花火みたいに打ち上がってる光景は辛うじて見れました。
せっかくの余興なのに、近くで見られないのが残念です。
「よし着いたぞ。二人とも降りろ。ナイトフライトと洒落込むぞ」
「軍用機?あれがニシキタイテイとやらですか?」
「川西 H8K 二式飛行艇。通称、二式大艇。外見こそ第二次大戦時の二式大艇だが、中身は現代技術の塊だ」
なるほど、全くわかりません。
ですが、私たちが今から沖合に停泊しているアレに乗ると言う事だけはわかりました。だから早く乗りましょう!街の光を眼下に眺めながらフライトとか最高じゃないですか!
「ねっ!」
「いや、いきなり「ねっ!」!って言われても困るんだが?」
「放っといて良いわよ……。まともに相手してたら夜が明けるわ……」
私は金髪さんと やはぎんを急かして港にあったボートに乗り込み、お尻の部分を海面に開いて待っていた二式大艇に向かい始めました。夜の海風というのも気持ちの良いものですね。私たちが離れた港の方では、今もエンターテイナーさん達の余興が続いているようです。
あ!赤いパトランプの大群が合流しました!聴こえる音的にも警察や消防の人達でしょう。怪我人でも出たのかしら……。
「足元気を付けろよ。寒いから落ちても助けてやんねぇぞ」
金髪さんが先にボートから降り、差し伸べられた手を取って私、やはぎんの順で降りました。
中は電車みたいですね。両壁際に座席が並べられています。左右合わせて10人は軽く乗れるのではないでしょうか。
「あと、これ着といてくれ。大和さんはコレもな」
「ハーネス……?嫌な予感しかしないのだけど……」
「念のためだよ」
「本当に?」
「……」
「目を逸らさないでよ!コレってアレでしょ!?パッセンジャーハーネスって奴でしょ!タンデムジャンプする時の!」
やはぎんは物知りですね。
と言う事は、私が着たハーネスはインストラクター用のヤツですか。追加で渡されたリュックサックの様な物はパラシュートでしょう。
まさか、養成所に侵入するために用いるはずだった手段を、侵入する必要が無くなってからやる羽目になるとは思いもしませんでした。
「ちゃんとこっち見てよ!まさか捨てる気じゃないわよね!?」
「だから念のためだって言ってんだろ!しつけぇ女だなぁ!」
「嘘!だったら、なんでずっと目を逸らしてるのよ!」
あらまあ、なんだか恋人同士の痴話喧嘩みたいになってきました。
けど、お二人では少々歳の差が……。いえ!歳の差が激しいカップルを否定したりはしないのですが、金髪さんってたしか、海坊主さんが30過ぎだと仰ってましたよね?やはぎんが私と同い歳ですから、金髪さんと やはぎんは一回り以上歳が離れている事になります。
年上の男性に憧れる気持ちはわからなくもないですが、心友として心配になる歳の差ですね。
「やはぎん、その内もっと良い人が見つかりますよ」
「話が拗れるから貴女は黙ってて!」
「きーきーうっせぇなぁ!おい!とっとと出せ秋津洲!早いとこ荷物降ろして戻らねぇと姐さんにどやされっぞ!」
金髪さんがコックピットに向かってそう怒鳴ると、スピーカーから『了解かも!』と言う女性の声が流れて、さっきまで開いていた二式大艇のお尻の部分が閉じ始めました。
「に、荷物ぅ!?今荷物って言ったでしょ!って、ちょっと!触らないで!絶対着けないからね!ハーネスなんて絶対着けないから!」
「暴れるな!大和さん!悪ぃけど下の方やってくれ!俺がやったらセクハラとか言われかねねぇ!」
「今でも十分セクハラよ!って言うか痴漢よ!」
べつに手伝うのは構わないんですけど……。やはぎんが暴れてやり辛いし、離水しようとしている二式大艇の機内が揺れてさらにやり難い……。
「やめて!スカート捲らないでよ!丸見えになるじゃない!ってか丸見え!」
「だって捲らないと着けれないんですもの。我慢してください」
「出来るか!何よこの格好!完全に痴女じゃない!」
う~ん。確かに痴女と言われれば痴女ですね。
やはぎんの私服は制服程短くはない膝丈のナチュラルレングスのスカートですが、ハーネスを着けるためには捲り上げなければなりません。そのせいで、ショーツに隠された やはぎんのデリケートゾーンがチラチラと……いえ、丸見えになっています。
『たいちょ~!そろそろ鎮守府上空かもぉ~』
あら、もう着いちゃったんですか?10分ちょっとしか経ってないと思うのですが……。
やはぎんにハーネスを着けさせるのに悪戦苦闘してたせいで夜景を見損ねてしまいました。残念です。
「わかった。後部ハッチを開いてくれ。あと大和さん。パラシュートの使い方はわかるか?」
「これを引っ張ればいいんですよね?」
「そうだ。一応、高度に反応して勝手に開くようにはなっちゃあいるが、この高度なら飛び降りると同時に開いても問題ねぇ。ゆっくり夜景を楽しみな」
「はい♪」
「はい♪じゃない!やっぱり捨てる気だったんじゃない!最初から私を捨てる気だったのね!」
金髪さんは離水前に『荷物を降ろして早く戻らないと』と仰っていました。
つまり、荷物である私と やはぎんは一緒に鎮守府へパラシュートで降下すればいいんですね。
そうすれば、金髪さんとパイロットの…秋津洲さんでしたっけ?は再離水の手間を取らずに熱海港に引き返す事ができ、私と やはぎんは空からの夜景を存分に楽しめると言う訳です。最高ですね!
「じゃあ やはぎん。お邪魔になりますので早く降りましょう」
「なんでそんなに冷静なの!?貴女スカイダイビングの経験あるの!?」
「ありませんけど……。失敗しても地面とぶつかるだけだから大丈夫ですよ」
「だいじょばないわよ!それ死ぬって事じゃん!」
え~と、やはぎんのハーネスと私のハーネスを金具で繋いでっと……。これで準備は万端です。さあ、夜の街明りに向かってダイビングしましょう。
「もう降りていいですか?」
「おう、いつでも良いぞ。下には連絡しといたから」
「いぃやぁだぁぁぁぁ!絶対降りない!私絶対に降りないからぁぁぁぁ!」
「それでは行って来ますね♪」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!お母さぁぁぁぁぁぁん!」
私は愚図る やはぎんを抱えて二式大艇の後部ハッチを駆け下りました。
やはぎんの「あばばばばばばっ!」という変な叫び?声も風の音でほぼ掻き消え、眼下には星空と見間違わんばかりに光り輝く横須賀市の明かり。まるで、星の海にダイブしてる気分になってきます。
「あ、パラシュート開かなきゃ」
「ぐぅえっ……!」
勝手に開いてないからまだ高度には余裕があったんでしょうけど、私は迷わずパラシュートを開きました。だって、こんなに素敵な景色を楽しまないなんて損ですもの。
私は少しでも長く、少しでも一緒に、心友である やはぎんとこの景色を眺めたかったんです。
「見てますか やはぎん。あの眼下に広がる星の海が、これから私たちが暮らしていく場所なんですよ?」
「……」
ふふふ♪やはぎんは感極まって声も出ないようです。体から完全に力を抜いて、視覚に全神経を集中しているのでしょう。
そんな彼女に声をかけるなんて無粋ですね。私も、やはぎんと同じように景色に集中するとしましょう。
「ん?下から上がって来るアレは……」
飛行機?だけどかなり小さいですね。両の手の平に乗る程度の大きさではないでしょうか。
いえ、そんな事はどうでも良いです。折角の美しい光景が、上がって来る小さな飛行機のエンジン音と風切り音で台無しです。
どの艦種かは知らんが、そんな無粋な事をする奴は
「あれ…私は今何を……」
考えた?
あの飛行機を見た途端、私じゃない別の誰かの考えが頭をよぎったような……。
いえ、きっと気のせいですね。それよりも、高度が下がったせいで下の様子が肉眼でもハッキリ見える様になってきました。
「あそこに降りろって事かしら……」
私と やはぎんの降下予想地点には巨大なマット。
感じからして、恐らくエアマットでしょう。その周りには無数の人だかり。大半は学生服やコスプレじみた格好の人ですけど、軍人らしき人も多数見受けられます。
「おっとと……。ふう、着陸成功です♪やはぎん、着きましたよ?やはぎん?」
「……」
あらら…やはぎんは感極まり過ぎて寝ちゃったみたいです。ですが、少々はしたないですね。
白目を剥いて、顔から出せる体液を全て出しながら寝ちゃってます。正直言って触りたくないです。
汚いし重たいから起きて欲しいんですけど……。
「いっか。寝てるし」
私は やはぎんと私を繋げていた金具を外し、次いで背負っていたパラシュートを降ろしました。
さて、これからどうすれば良いんでしょう。
このまま待ってれば、集まってる人達が余興の続きをしてくださるんでしょうか。
「まったく、こんな派手な着任の仕方は前代未聞ね」
その言葉を合図にしたように、人垣がモーゼに割られた海の如く左右に分かれ、上下真っ白の服で身を固めた人が姿を現しました。
声の感じは女性でしたけど……。
身長は140cmちょっとでしょうか。線は細いですが、見た目に女性的な凹凸はほぼ無し。髪の毛は明るめの茶髪で胸元にかかる位のセミロングです。残念ながら、お顔は帽子で隠れて見えません。
「アナタは……」
「私?私はこの鎮守府を預かる提督よ。たった今から、貴女の上官になるわ」
あ、たぶん女性ですこの人。
声色も喋り方も完全に女性ですもの。逆に、これで実は男性ですとか言われたらビックリしますよ。
ああでも、世の中には女性並みに声の高い男性もいらっしゃいますし、実は新しい性別の人なのかも知れません。いえ、体付きを考えるとそっちの可能性の方が高いですね。
「ニューハーフの提督さんとは驚きました。不束者ですが、末永くお世話になります」
「ほう?着任早々、上官にケンカを売るとは良い度胸だ」
あれ?違ったのかしら。
ですが、怒気を孕んだ口調の割に肩をプルプルと振るわせて笑っているみたいです。ギャグを言ったつもりはないんですけど……。人垣を構成してた人達は、何故か『知~らない』って感じで一斉に目を逸らしましたね。
「まあ、何にしても、一応歓迎するわ『戦艦 大和』」
私を見上げた提督さんの顔には青過ぎが浮かび、口の端はヒクヒクとしていましたが、帽子で見えなかった部分が見えた事でようやくご尊顔を拝見出来ました。
見ようによってはハーフにも見える端正な顔つき。お顔を拝見する限り、若干幼さが残っているように見えますが恐らく私と同い歳か少し上くらいでしょう。
それにしても、笑ってると思ったら怒ってたんですね。
何に怒っているのかは皆目見当がつきませんけど、提督さんはこう続けました……。
「ようこそ、横須賀鎮守府へ」と。
まるで「出て行け」と言ってるようなお顔で。
ですが、そう言われて私は、自分が艦娘になったんだとようやく実感できました。
それが戦いに身を投じる事とイコールなのだとは一切考えず、大和 撫子改め『戦艦 大和』は横須賀鎮守府へ着任を果たしました。
主要キャラ人気投票
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朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
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神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
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大和(影が薄い三部主役)
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紫印 円満(実質三部の主役?)