捷一号作戦草案。
phase1
台湾島南東、及びトラック泊地より軽巡を旗艦とし、索敵要員として軽空母を混成した対潜哨戒部隊を出撃させ、敵潜水艦を排除しつつ敵艦隊の捜索を行う。
phase2
敵艦隊発見後、トラック泊地より空母を基幹とした機動部隊を出撃させ、敵艦隊を北西へと誘導。(敵の編成次第では第一遊撃部隊第二部隊を支援として送る)
phase3
敵艦隊をルソン島東に誘導後、ワダツミ旗下の主力艦隊を出撃させ、敵を更に北、エンガノ岬沖まで誘引開始。(恐らく、数日間夜通し戦うことになるわね。ローテーションをよく考えないと)
同時に、タウイタウイ泊地より第一遊撃部隊第三部隊も出撃し、ネグロス島付近まで進出後、敵の誘引状況に応じてをスリガオ海峡を目指す。(一晩くらい野宿させる必要あり?)
phase4
第三部隊がスリガオ海峡へと進発後、第二遊撃部隊をサンベルナルジノ海峡へ向かわせる。(この部隊は第三部隊の撤退支援用。第三部隊の状態次第では敵艦隊を追撃させることも考える。旗艦は誰にするべきか……)
phase5
敵艦隊誘引に成功後、第三部隊の奇襲を合図に長門型と大和型を基幹とした第一遊撃部隊第一部隊をワダツミより全力出撃させ、敵艦隊の撃滅を目指す。(目指すとは言っても、渾沌は奇襲を受けた時点で撤退する可能性大ね。敵棲地と化している可能性が高いラバウル、ブイン、ショートランドを攻略する事も考慮しないと。頭が痛いなぁ……)
~戦後回想録~
紫印円満中将の手記より抜粋。
ーーーーーーー
『うぅおぇぇぇぇぇぇぇ!』
初っ端からすみません。
会議を終えて、部屋に戻った途端にトイレへ駆け込んだ円満さんが盛大に吐き始めたので少々お待ちください。
って、私は誰に謝ってるのかしらね。
もらいゲロしそうなほど長く円満さんが吐く声を聞いてるもんだから現実逃避したくなったのかも。
「円満さ~ん。大丈夫?」
『だいじょば……じょば……じょばぁぁぁぁぁ!』
うわぁ……。
一応声をかけてみたけどダメだこりゃ。
胃の中身なんかとっくに吐き尽くしてるはずなのにまだ吐いてるもの。
このまま聞き続けたら、私まで本当に吐いちゃうかも。
「部屋にトイレ作っといて良かったわね。共用のトイレだったら何人かもらいゲロしてたわよ」
「そう、そう……そうぬぇぇぇぇぇぇ!」
まだ吐くか。
会議中はもちろん、各提督と秘書艦達を見送るまで我慢したのは褒めてあげたいけど我慢し過ぎよ。
休憩の時に一回吐いとけば良かったのに。
「ううぅ……。喉と胃が変……」
「アレだけ吐けば当然よ。何か飲む?」
「お酒……」
「未成年が何言ってんのよ。ホットミルク作ってあげるからそれでも飲んでなさい」
「ケチ……」
とか言いつつも、お酒を諦めた円満さんは服を脱ぎ散らかしながらちゃぶ台の定位置に腰を下ろした。
みっともないなぁ。
年頃の乙女がTシャツ一枚にパンツ姿よ?ちなみに、胸の位置に『いつか生える』と書かれたクソT。しかもノーブラ。
男性が見たら幻滅するか襲いかかるかのどっちかね。
「吐くほど緊張するくらいなら、長倉提督に味方してもらえば良かったのに」
「あれは味方してくれてたようなもんでしょ」
「そうだけど、味方してくれってお願いしてたら大湊と佐世保の提督をもうちょっと抑えてくれてたと思うよ?」
「良いのよ。アレくらい言ってくれなきゃ……」
「罰に、ならない?」
「うん……」
やっぱり。
だから、長倉提督に味方しようとしないでなんてお願いしたのね。
罰を受ければ償える。いや、罰を受ければ、罪の意識が軽くなるような気がするから、かな。
「全員、作戦の実行に賛成してくれて良かったね。支援も約束してくれたし」
「大湊提督は仕方なくって感じだったけどね」
「でも、千歳さんと千代田さんを貸してくれるでしょ?」
「ええ、海防艦も何人か回してくれるって言ってくれたわ」
反対してた割に協力的ね。
対潜哨戒がメインの大湊において、海防艦は主力のはずなのにそれを貸し出すなんて。
「ごめんね……。満潮」
「何よ急に。何か謝るような事でもしたの?あ!もしかしてトイレットペーパー使い切った!?」
「ち、違う!使い切ったけどそのことじゃないから!」
「もう!全部使ったら替えといてっていつも……!って、違うの?」
じゃあ何の事?ヘンケン提督のプロポーズを。曲がりなりにも受け容れた真意を説明してくれてないこと?
アレに関しては、私なりに円満さんの真意を理解してるから、謝らなくたって責めたりしないわ。
「アンタに本気で戦ってもらわなきゃならない。しかも、人前で……」
「ああ、そっちか」
包囲網完成の一ヶ月前に正式に発令される『捷一号作戦』。
その際に、ワダツミ旗下の本隊及び、サンベルナルジノ海峡を目指す第二遊撃部隊に先行する形で、タウイタウイ泊地から出撃する第一遊撃部隊 第三部隊。通称『西村艦隊』に選ばれた私の役目について謝ってたのね。
「別に謝らなくたって良いわ。私をあの艦隊に配属するって事は
「ええ……。西村艦隊がスリガオ海峡を突破できるかどうかはアンタにかかってる。何がなんでも……。」
艦隊を無事に突破させて。
って、続けようとしたのかな。俯いて黙っちゃったからわからないけど、円満さんは私に作戦の成否を託してくれたって事ね。
「本気で、やって良いのね?」
「本気でやって良い。使うタイミングはアンタに任せる」
「わかった。西村艦隊は私が絶対無事に送り届けるわ。だから……その」
「何?ご褒美に何か欲しいの?」
「違う」
「じゃあ、何?」
「この作戦が終われば一区切りつくでしょう?だから、終わったら幸せになることを考えて」
円満さんは精神的にも肉体的にも限界。いえ、限界を超えてる。それなのに、まだ苦しもうとしてる。
緊張とストレスで吐いちゃうクセに、それでもまだ罰を受けようとしてる。
どうしてそこまで自分を痛めつけるの?
泊地の人達を餌にするから?助けようと思えば助けられるのに、作戦のために死んでもらわないといけないから?
そりゃあ円満さんからしたら、自分で決めたことだから、その事で苦しむのに後悔はないんでしょうよ。
でも、見てる方からしたらたまったもんじゃない。殴ってでも止めたくなっちゃうのよ。
「それは無理よ。だって私は……」
「大勢の幸せを奪うんだから幸せになる資格なんてない。とか言ったらぶつよ」
「でも……」
「でも。じゃない!今の円満さんを見てると安心して出撃できないわよ!」
「満潮……」
「前に、私の改二が決まった時に円満さん言ったよね?強くなって安心させてって。笑って送り出させてって」
だから、私は強くなったよ?
お姉ちゃんにはまだ敵わないけど、お姉ちゃん以外に負ける気がしないほど強くなった。
『満潮』の名に恥じないくらい強くなって見せたわ。
それなのに……。
「円満さんが心配で出撃できないよ……」
「心配し過ぎよ。私の事は気にし……」
「気にしないなんて無理よ!だって円満さん、私が怪我しただけで泣いちゃうじゃない!」
「それは、そうだけど……」
「私が居なきゃご飯もまともに食べないし部屋も掃除しない!下着も換えない!」
「いや、それはさすがに換えるわよ?」
「うっさい!黙れ!いい?円満さんは私が居なきゃ人並みの生活さえ送れないのよ?私が死んじゃったら、円満さんも餓死しちゃうんだから!」
私、何言ってんだろう。こんな事が言いたい訳じゃないのに、感情に流されるままに口が勝手に動いてる。
「お、落ち着いて満潮!それは言われなくたってわかってるから!」
「わかってない!頭と見た目が良い以外取り柄がないクセに不幸ぶるな!円満さんより不幸な人なんて数えるのが馬鹿らしいほどいるわよ!」
「不幸ぶってなんかない!私はただ……!」
ただ?ただ何よ。
どうせ、私が幸せになったら死なせた人達に申し訳ない。だから幸せになることなんて考えちゃダメ。私は、私のせいで死んだ人たちを悼みながら死ぬまで苦しむ続けるの。
なぁんて、くだらない事考えてるんでしょ?
「逆ギレすんな!死なせた人たちに申し訳ないと思うなら、死なせた人達の分まで幸せになる。くらい言ってみなさいよ!だって円満さんは聖人君子じゃないのよ?生活習慣はハチャメチャ。ちょっとの事ですぐ泣くくらい泣き虫で、胸の事を言われると発狂するくらい狭量のダメ人間よ!?」
「そ、それはちょっと言いすぎじゃない?私だって少しは良いところが……」
「ない!円満さんって頭良すぎてバカなのよ!少しはお気楽に考えなさい!もしかしたら、泊地の人達だって全滅しないかもしれないでしょ?しぶとく生き残ってゲリラ戦でもするだろう。くらい楽観的に考えなさい!」
無理だろうなぁ。とは、言った私も思うわ。
でも円満さんは逆に、それくらい物事を楽観視するくらいじゃなきゃダメ。
予知に迫るレベルの戦略眼は凄いと思うし頼りになるけど、円満さんはその戦略眼に振り回されてる。ガス抜きの仕方を覚えてくれなきゃ、私はいつまで経っても安心して戦場に行けないわ。
「そうだ!作戦前にヘンケン提督とデートしなさい!」
「は、はぁ!?意味わかんない!どうしてケンドリック提督が出てくるのよ!」
「だって付き合ってるでしょ?付き合ってるならデートくらい普通じゃない」
「いや、一応交際してる形にはなってるけど……」
よし、これで行こう。
ヘンケン提督とデートを重ねれば、男性経験が皆無な円満さんは乙女脳になっていい按配になるかもしれないわ。
「俺を呼んだか!?エマ!」
「ケンドリック提督!?なんでここに!?」
ドアをバーン!と開けて現れたのはご存知ヘンケン提督。
本当になんでここに居るのか疑問だけど、今は逆に都合が良いわ。良すぎると言っても良いわね。
ファイルみたいな物を持ってるのが少し気に……。いや待って?そう言えば、今の円満さんの格好って……。
「ちょっ……!ヘンケン提督!一回外に出て!」
「おいおい、どうしたんだMitchy。そんなに慌て……て!?」
ヘンケン提督が円満さんのあられもない格好に気付いて目を見開いた。
円満さんも、ヘンケン提督のリアクションで事態を察して慌ててTシャツの裾で股間を隠したわ。なんか、かえってエロいわねその格好。
それにしても、ノーブラでちょっと乳首が浮いちゃってる胸より股間を優先して隠すって事は、円満さん自身も胸は隠すほどないと自覚してるね。哀れ……。
って、それは今どうでも良い!
「見るな!それとミッチー言うな!」
「Oh, sorry!」
「謝んなくて良いから早く出て!円満さんはジャージにでも着替えなさい!」
「で、でもジャージが何所にあるか……」
「もう!タンスの二番目の引き出しっていつも言ってるでしょ!?いい加減覚えてよ!」
ったくこのダメ女は。
小難しい事ばっか考えてる暇があるなら、自分の服が何所にあるかくらい覚えろっての。
「ヘンケン提督もいつまで見てんの!さっさと出ろこのスケベ!」
「せ、せめて、エマのあの姿を写真に……!」
「却下に決まってんでしょ!バカな事言ってないでさっさと出る!ほらほら!」
私はヘンケン提督の足をゲシゲシと蹴って部屋から追い出した。失礼かな?とも思ったけど、乙女の部屋にノックも無しに乗り込んだこの人の方がもっと失礼だから良いよね?うん、良い事にしよう。
「これが眼福と言うヤツか……。当分困らないな」
「一応聞くけど何に?」
「フ……。Mitchyが知るにはあと10年早いよ」
「だからミッチー言うな。それに、10年も経ったら今の円満さんの歳超えちゃうけど?」
どうせ夜のオカズにするんでしょうが。私だって、それくらいの知識はあるのよ?
この人とデートしろなんて言ったものの、円満さんのあられもない姿を思い出して絶賛ニヤニヤ中のこの人を見てたら、円満さんを託して良いのか不安になってきたわね……。
『み、満潮、着換えたから入ってもらって?』
お?着替え終わったみたいね。
声が会議の時以上に緊張して震えて……。いや、怯えてる?元帥さん以外の男性を部屋に招き入れるこの事態を怖がってるみたいに思えるわ。
招かれるヘンケン提督は「待ってました!」と言わんばかりにワクワクしてるわね。
「ジャージ姿もprettyだよエマ。脱がせていいかい?」
「却下。バカな事言ってないで座りなさい。お茶くらいは出してあげるから」
再び部屋に入った途端にこれである。
円満さんは「ちょ、ちょっと満潮!失礼でしょ!」とか言ってるけど、この人の方がよっぽど失礼だからね?
だいたいね、円満さん今、脱がしていいか?って言われたのよ?私が居なかったら、間違いなく今晩処女喪失してたわ。
「急で申し訳なかった。会議で言いそびれた事を言いたくて訪ねたんだが……。timingが悪かったな」
「いえ、この後予定もありませんし……。その、来てくれて嬉し……かったです。あ、でも、迷いませんでしたか?」
「ああ、Ms.辰見に案内してもらったから迷わず来れたよ」
「なら……良かったです……」
居辛い……。
ヘンケン提督は艦娘を指揮する立場にあるからか女性に慣れてるっぽいけど、親しい男性が元帥さんしかいない円満さんは完全に萎縮しちゃってるわ。
ここは、軽くパニック起こして黙り込んじゃってる円満さんの代わりに私が話を進めなきゃ。
「ヘンケン提督。会議で言いそびれた事って?」
「ん?ああ、これだ。我が軍のFleet girlを数名貸し出す話をしたかったんだ」
「米軍の艦娘を?」
「そうだ。彼女たちの詳細はこれにまとめてある」
言いながらヘンケン提督が円満さんに差し出したファイルには、英語で計5人分の詳細が記されていたわ。
私じゃ何が書いてあるのかわからないわね……。
「戦艦1。正規空母2。軽空母1。そして駆逐艦が1ですか」
「ああ、Iowa、Saratoga Mk.II Mod.2、Intrepid、Gambier Bay、Samuel B.Roberts。日本語が堪能な者が5人しかいなかったが、十分君の力になるはずだ。彼女たちを好きに使ってくれていい」
「お心遣い痛み入ります。秘書艦のIowaまでお貸しくださるなんて……」
「気にしないでくれ、彼女が志願したんだ。どうも彼女は日本の戦艦に興味あったようでね。大和classだったかな?今日、会議の場に来た彼女だ」
戦艦Iowa。
米国海軍最強と謳われるIowa級戦艦の一番艦。
火力や装甲は大和に多少劣るものの、総合的なスペックでは大和を上回るとも言われてるわね。
そんな戦艦を、当人が志願したとは言えポンと貸し出すって事は、円満さんの思惑通りになってる。と、言えるのかな。
「俺からのpresentは気に入ってもらえたかな?」
「ええ、豪華過ぎてどうお返ししたら良いかわからないくらいですよ」
「見返りなど求めてないよ。単に俺が、君の役に立ちたかっただけだから気にしないでくれ」
流れをぶった切って関係ない事を言っても良いかしら。
場違いな空気って言うか、自分がここに居て良いの?って感じることがあるじゃない?
今ね?正にそんな感じなの。
円満さんとヘンケン提督が見つめ合ってるんだけど、まるで恋人同士がキスする前に見つめ合う時みたいな雰囲気なのよ。
邪魔者みたいですんごく居心地が悪いわ。
「私、二時間ばかし散歩してこようか?」
「え?どうして?」
「いや、どうしてって……。ねぇ?」
と、ヘンケン提督を横目で見ると、この人は私の気遣いを察してくれたらしく「延長は可能か?」とか言ってるわ。
でも、残念ながら延長は不可です。
晩ご飯だって作らなきゃいけないんだから二時間以上は無理よ。それプラス、掃除もセルフでお願いします。それが嫌ならラブホに行け。
「ヘンケン提督。わかってると思うけど、無理矢理はダメだからね?」
「心配するなMitchy。無理矢理は俺の主義に反する。だから安心して一晩ほど散歩してきてくれ」
「ミッチー言うな。それに一晩とかバカじゃないの?そんな事するくらいなら誰かに泊めてもらうわよ」
無理矢理は主義に反するとか言っておきながらヤル気満々じゃない。米国の男ってヤル事しか頭にないの?
貞操の危機が迫ってる円満さんは意味がわかってないらしく、キョトンとして「何の話?」とか言ってるわ。
「少しは危機感持ちなさいよ。ホント、恋愛に関しては幼稚園児以下なんだから」
「え?え?なんで恋愛の話が出てくるの?それに散歩って……。一緒に居ればいいじゃない」
私に円満さんとヘンケン提督のまぐわいを見学しろと?アホか。生憎と、人のまぐわいを見学する趣味なんて持ち合わせてないの。
それとも何?円満さんって人に見られながらしたい人なの?変態か。
「ねえ円満さん。円満さんってヘンケン提督と付き合ってるのよね?」
「そ、そういう事にはなってるけど……。それと満潮が散歩に行くのに何の関係が?」
「いやいやいや。言わなきゃわかんない?私が居なくなれば、円満さんとヘンケン提督は二人っきり。恋人同士が密室で二人っきりになるの」
「ふ、ふた、二人っきり!?無理無理無理!一緒に居てよ!」
私の方が無理です。
こんな、甘ったるくて背中が痒くなるような空気になっちゃった部屋にはこれ以上居たくないの。本当に勘弁してください。
「じゃあ、キッカリ二時間後に戻って来るから」
「待って満潮!ホントに待って!二人っきりになんてされたら……!」
往生際が悪いなぁ。
円満さんはヘンケン提督を利用しようとしてるんでしょ?だったら、少しくらいサービスくらいしなきゃダメじゃない。
それに、たぶん無理矢理手籠めにされるのを想像して真っ青になってるんでしょうけど、無理矢理は主義に反するって言ってたから大丈夫よ。きっとね……。
「ヘンケン提督。くれぐれも、紳士的にお願いします」
「任せてくれMitchy。君が与えてくれた時間で、エマとの距離を縮めて見せるよ」
縮めるのは良いけどゼロ距離は却下だからね?
と、言おうと思った私は、部屋から出ようとドアへ向かう途中に見えたヘンケン提督の震える手を見て言うのを思いとどまったわ。
「ミッチー言うな。って、何度も言ってるでしょ?」
いつからなのかしら。
もしかして部屋に入ってから?それともここに来る前から?いずれにしても、女性に慣れてるプレイボーイ風の態度はブラフだったようね。
この人の女性遍歴は知らないし興味もないけど、好きな女性の前で緊張して手を震わせるヘンケン提督が少し可愛く思えちゃった。
「円満さん」
「な、何?残って……くれるの?」
残んないわよ。
正直に言えばちょっと心配よ?でも、ヘンケン提督なら円満さんに酷い事はしないって思えちゃったから二人っきりにするの。だから私はこう言うわ。
「どうぞごゆっくり」
ってね。
円満さんの「待って!置いてかないで!満潮ぉぉぉぉぉ!」と言う悲痛な声に後ろ髪引かれたけど、私は心を鬼にして部屋を出た。
ヘンケン提督が、凝り固まった円満さんの心を解きほぐしてくれると信じて。
主要キャラ人気投票
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朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
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神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
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大和(影が薄い三部主役)
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紫印 円満(実質三部の主役?)