艦隊これくしょん ~ナデシコの咲く丘で~   作:哀餓え男

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 三週間を余裕でぶっちしたのは私のせいではありません。
 ゴトランドがドロップしないのが悪いんです!(今だに出てない)

 と、言う事で7章開始です!





第七章 意地とプライドの七重奏《セプテット》
第六十一話 朝雲と山雲


 

 

 第一遊撃部隊第三部隊。

 通称 西村艦隊とは。

 

 平成3年に行われた敵南方艦隊迎撃作戦である捷一号作戦時において、扶桑型航空戦艦 一番艦 扶桑、同二番艦 山城、最上型航空巡洋艦 一番艦 最上、白露型駆逐艦 二番艦 時雨、朝潮型駆逐艦 三番艦 満潮、同五番艦 朝雲、同六番艦 山雲の七名で編成された一部隊であり、タウイタウイ泊地より出撃してスリガオ海峡を通り、敵本隊の背後を強襲したと伝えられている。

 

 しかし、大本営に提出された敵艦隊による海峡の封鎖状況、及び規模を鑑みると突破はもちろん敵本隊背後へ強襲するなど不可能であり、現在ではその存在自体が疑問視されている。

 

 ~艦娘型録~

 艦隊編成。第一遊撃部隊第三部隊の項より抜粋。 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「でね~?朝雲姉ぇが~、朝雲姉ぇでぇ~。朝雲姉ぇなのぉ~♪」

 「いや、訳わかんない」

 「どうしてわからないのぉ?満潮ちゃんは養成所で習わなかったぁ?」

 「うん、習わなかった。でも朝雲さんが姉妹艦だってのは知ってる。それでも山雲さんが何を言いたいのかはさっぱりわかんないけど」

 

 編成表を貼り出して数日後からだったかな。

 円満さんに一緒に艦隊を組むんだから仲良くしときなさいって言われて、暇さえあれば朝雲さんと山雲さんの二人と行動させられた時期があったの。

 具体的には、二人と最上さんを佐世保で降ろすまでね。

 ほら、横須賀を発ったワダツミは補給を兼ねて佐世保に寄ったじゃない?そこで三人は、扶桑姉妹と時雨と合流して別便でタウイタウイ泊地に向かったの。

 私?私はギリギリまで円満さんのお世話をしてヘリで向かったわ。パイロットの人に「乗り心地はどうですか?」って聞かれたから「シートが硬い」って答えたのは良い思い出ね。

 

 最初の会話?

 あれは山雲さんの挨拶みたいなもんよ。

 あの人って今も昔も朝雲さんloveでさ、口を開けば朝雲姉ぇ朝雲姉ぇって言ってたの。

 山雲さんの鳴き声なんじゃない?って思った時期もあったくらいよ。

 

 「も~、やめてよ山雲。満潮が困ってるじゃない」

 「え~、せっかく満潮ちゃんに、朝雲姉ぇの素晴らしさを擦り込もうと思ったのにぃ~」

 

 と、言いつつも満更じゃない朝雲さんが照れながら止めるってのがパターンだったわね。

 もっとも止めたら止めたで、今度は朝雲さんを直接褒め始めて私は蚊帳の外にされちゃってたけど。

 

 「あのさ、そろそろ晩御飯の買い出しに行きたいんだけど……」

 「買い出し?円満姉ぇのご飯の?」

 「そうよ。あの人って自分でご飯作れないから」

 「へぇ~意外。円満姉ぇって何でも一人で熟しちゃう人だと思ってた。山雲は知ってた?」

 

 朝雲さんに話を振られて「知らな~い」と答える山雲さんはニコニコしてたけど、暗に「興味な~い」って言ってるようにも見えたのを憶えてる。

 まあ私自身、円満さんがカップラーメンすらまともに作れない程の料理オンチじゃなけりゃ、桜子さんに料理を習うこともなかったはずだから、そう考えると円満さんが料理オンチで良かったって思うわ。

 

 何故かって?

 そんなの決まってるでしょ?料理が出来れば食うに困らないし、自分が食べたい物を好みの味付けで作れるからよ。

 でもそのおかげで、艦娘を辞めた今でも円満さんの胃袋を支えなきゃいけないのは誤算と言えるわね。

 

 「じゃあ私達もついてってあげる!一人じゃ荷物運ぶの大変でしょ?」

 「いいわよ別に。買い出しって言ってもこのエコバッグに入るくらいしか買わないもの」

 「でも4人分でしょ?エコバッグ一つ分じゃ足りないんじゃない?」

 「は?4人?どうして4人になるの?」

 

 うん、この時は朝雲さん言ったことが本気でわからなかった。

 どうも円満さんは、私と二人の親睦を深めさせるために、横須賀を発つまでの間一緒に晩御飯を食べるよう言ってたみたいなの。

 二人は聞いてても私は聞いてなかったからさ、もう軽くパニックよ。

 てっきりヘンケンさんが来るんだと思ったわ。

 ちなみに4人目は、ヘンケンさんと円満さんの子供。なんてバカな事も考えちゃったな。

 

 え?ないない!

 あの頃の二人は手さえ繋いだことなかったはずだもん。それなのに子供なんて以ての外。そんな事を考えちゃうくらい、私はパニクっちゃったの。

 

 どうしてパニクったのか?

 いやぁ……。今だから言うけど、私って山雲さんが苦手だったのよ。

 ほら、あの人っていっつもニコニコしてるけど、逆にそれ以外の表情が稀だから何考えてるかわかりづらくてさ。

 なんて言うか、無言で「邪魔」って言われてるような気になる事がよくあったのよ。特に、朝雲さんも一緒にいる時は。

 あの時だって……。

 

 「朝雲姉ぇ、このお肉美味しそうじゃなぁい?」

 「美味しそうだけど、料理作るのは満潮だしお金も満潮よ?勝手にカゴに入れちゃダメじゃない?」

 「大丈夫よぉ~。満潮ちゃんなら笑って許してくれるわ~。ね~?」

 

 ね~?って言われても困る。

 なぁんて思いながら、カートを押す朝雲さんに山雲さんが寄り添って、食材を好き勝手にカゴに放り込むのを見ながら疎外感を感じて溜息をついたっけ。

 だって本当に好き勝手、手当たり次第って言っても良いレベルで食材を放り込んでたのよ?

 憶えてる限りだと豚肉(ばら)、牛肉(ステーキ用のサーロイン)、手羽先、イカの塩辛、豆腐、キムチ、菜っ葉とかね。

 これで何作れって言うのよ。って、文句言おうかとも思ったわ。

 でも、円満さんに仲良くしとけって言われてたから言えなくてさ。

 

 結局何を作ったか?

 鍋よ鍋。食材全部鍋に放り込んでキムチ鍋にしてやったのよ。 

 そう真夏に。

 ええ、めちゃくちゃ暑かったし汗ダラっダラになったわ。でも意外と美味しくてね?食べ終わったあと、4人で「夏にキムチ鍋も有りね」って談笑してたくらいだもん。

 

 「ねえ朝雲、山雲。満潮は他の子とどう?仲良くやれてる?」

 「仲が良いかはわかんないけど、最近は四駆の子達とお喋りしてるのをよく見るよ」

 「そうね~。大潮ちゃん達が嫉妬してたわ~」

 

 まあ予想はしてたわ。

 私は普段、起きてる時間の八割は円満さんと一緒に居るけど、残りの二割は一人でフラフラしてるから円満さんは私が何をしてるか知らない。

 だからこの機に、私がどうしてるか二人に聞くのは予想できてた。話の取っかかりに、他の子と仲良くしてる?って聞くのもね。

 

 実際どうだったのか?

 いやいや、青木さんなら私が嫌われ者だったって知ってるでしょ?

 大した戦果も上げてないのに、円満さんの威光を笠に着て偉そうな事を言う生意気な駆逐艦。そう思われてたんじゃない?

 

 あ、やっぱりそうだったんだ……。

 ハッキリ聞かされるとやっぱりショック……って違うの!?その逆!?なんでそんな嘘つくのよ!危うく泣きそうに……。

 い、いや、何でもない!何でもないから!

 それより次の質問しなさいよ!もう少ししたら夕飯の買い物に行かなきゃならないんだから!

 

 その日以降?

 その日以降は、秘書艦の仕事を休む代わりに二人と一緒に行動させられたわ。

 そう、訓練がメインだったけど哨戒とかも一緒に出たりもした。もちろん、はぐれ艦隊と遭遇する事だってあったわ。

 それに、二人が強いって聞いてたから興味もあったしね。

 

 見たことなかったのかって?

 うん、見たことはなかった。円満さんと辰見さんがあの二人の事を話してるのを聞いた限りでしか知らなかったのよ。

 だから、あの二人の強さの片鱗を垣間見た時は度肝を抜かれたわ。だって、二人で一人って言葉がピッタリ当て嵌まるほど、二人の連携は見事だったんだもの。

 

 「山雲!」

 「オ~ケ~!」

 

 戦闘中、二人はコレだけしか言わないの。

 でも、まるで視界を共有しているかのように、見もせずにお互いを援護し合うのよ。

 例えば朝雲さんが正面にいる敵を相手にしてる時に、さっきみたいに山雲さんを呼ぶと、朝雲さんの死角から攻撃しようとしてた敵を山雲さんが攻撃して守ったりするの。

 そうかと思えば、事前に打ち合わせでもしてかのように同じ敵に襲い掛かったりね。

 凄いでしょ?

 あの二人は脚技こそ習得してないけど、脚技を習得して使いこなしてる子並の強さを二人で連携する事で体現してたのよ。

 二人でかかれば通常時の私や叢雲さんより強かったんじゃないかな。

 

 え?通常時って何かって?

 それは秘密。さすがに言えないわ。言ったらその……。いろいろマズいの!青木さんだって拘束されちゃうかもよ!?だから言わない。この事はお墓まで持ってくんだから!

 それはそうと!

 『朝雲と山雲』って呼ばれ方自体が異名だって知ってた?

 そう、あの二人って実はネームドだったのよ。

 呼ばれ方が呼ばれ方だから、ほとんどの人は知らないんだけどね。でも、艦娘型録には載ってたはずよ?今度確認してみて。

 

 あ、そういえば。

 変な質問を山雲さんにされたことがあったわ。たしかこうよ。

 

 「満潮ちゃんって~。円満姉ぇとどういう関係なの~?」

 「どうって……。秘書艦兼、同居人じゃない?」

 「ふぅ~ん。そうなんだ~」

 

 え?続きは?って言われてもこれで終わりよ?

 その時だって、たまたま山雲さんと二人だけになったタイミングで急にそれだけ言われたの。

 私だって、当時はどういう答えを期待してたのなんかわからなかったわ。

 

 でも、ワダツミから輸送ヘリでタウイタウイ泊地に向かう道中、パイロットさんから「作戦の成功をお祈り致します」って激励された時に、初めて山雲さんがした質問の意味を理解した。

 山雲さんはきっと……。想像よ?あくまで私がそう思っただけだから、本当はどういう意図だったのかなんてわからないわ。

 

 どう解釈したのかって?

 それに答える前に、パイロットさんの激励にどう答えたかから話さなくちゃいけないわ。

 私ね、こう答えたの。

 「円満さんが立てた作戦が失敗するわけないじゃない!」ってね。

 だって頭きたんだもん!

 コイツは円満さんの事を信じてない。失敗するかもって思ってる。だから、円満さんを馬鹿にすんな!って、気持を込めてそう言ったわ。

 

 そう言い終わった後、山雲さんが不意にしてきた質問が脳内でリピートされたのよ。

 そしたら、自分が円満さんの事をどう想ってるか改めて思い知った。

 円満さんは私の先輩であり姉。そして友人であり、世話のかかる子供でもある。要は、大事な家族だって再認識させられたの。

 

 その時の感情が残ってたから、終戦してから円満さんの養子になるのに抵抗がなかったのかな。って、考えることがたまにあるわ。

  

 二人とは今でも会うのか?

 いやぁ、それがね?

 朝雲さんとはちょくちょく会うのに、山雲さんとは終戦以来会ってないの。

 ああでも、朝雲さんの話では元気にやってるみたいよ?子供もいるそうだし。

 

 でね?

 朝雲さんは終戦後しばらくして結婚して子供も生んだんだけど……。あ、男の子ね。

 その後、結婚式後に山雲さんが行方不明になったそうなのよ。1年くらい。

 で、フラっと戻って来たと思ったら子供、女の子を産んでてさ。しかも父親は不明!

 で、朝雲さんと再会するなり「将来、この子と結婚させましょう?」って朝雲さんに言ったらしいのよ。

 

 ねっ!うわぁ~……ってなるよね!

 私もその話を朝雲さんから聞いた時はそうなっちゃってさ。これでもかってくらい嬉しそうに話す朝雲さんを見ながら「怖っ!」って聞こえないように言っちゃったもん。

 

 自分がダメなら、自分の血を引いた次の世代に添い遂げさせようとか軽くホラーじゃない?

 え!?同じ事してる元艦娘って他にもいるの!?

 うわぁ……。

 終戦から数年経って、艦娘の闇を垣間見る事になるとは思わなかったわ……。

 

 

 ~戦後回想録~

 元駆逐艦 満潮へのインタビューより。

主要キャラ人気投票

  • 朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
  • 神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
  • 大和(影が薄い三部主役)
  • 紫印 円満(実質三部の主役?)
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