艦隊これくしょん ~ナデシコの咲く丘で~   作:哀餓え男

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 全部書き終わってないけど八章の投稿を開始します。
 二、三日ありゃ残りも書き上がるだろ(楽観)


第八章 光と影の戯曲 《ドラマプレイ》
第七十話 神風が吹いた。


 

 

 

 

 その日、敵の侵攻が始まってからちょうど十日目の夜明け前。

 私たちラバウル基地残存兵は、けたたましい轟音で目を覚ましました。

 ええ、最初は敵の砲撃だと思いました。

 地下壕に隠って撃っては逃げ撃っては逃げを繰り返していた私たちに業を煮やした敵艦隊が、地面ごと私たちを葬り去ろうと無差別な艦砲射撃を開始したんだと。

 

 でも違いました。

 砲撃音と爆音はしても振動がありません。

 だから、私が地下壕から出て確認する事にしました。もちろん反対されましたが、偵察機を運用出来るのは私だけでしたから、提督も泣く泣く賛成してくださいました。

 

 青木さんもご存知の通り、砲撃はワダツミ旗下の艦娘によるモノでした。

 それがなんとなく想像できたから、私は地下壕から出てすぐに偵察機飛ばせたのでしょうね。

 

 その結果見えたモノは、火の海に包まれた敵艦隊と高速で接近する艦隊でした。

 恐らく紫印提督は明るくなる寸前、夜戦に近い状況で、戦艦による遠距離射撃で戦端を開いて敵の混乱を誘い、間髪入れずに水雷戦隊による雷撃を加えて、敵が冷静さを取り戻す前に数を減らそうとしたのでしょう。

 

 結果はご存知の通りです。

 敵艦隊は紫印提督の策に見事にハマって混乱の極み。そして、夜明けと同時に機動部隊による航空爆撃。私たちが苦しめられた100隻余りの敵艦隊が、僅か二時間足らずで8割方沈みました。

 

 後は消化試合です。

 私たちラバウル基地残存兵も加わって、海と陸両方から挟撃された敵艦隊は為す術無く全滅しました。

 敵が全滅した後、主力艦隊の随伴艦隊と思われる艦隊とワダツミに随伴してきた補給艦と護衛艦のみ残り、ワダツミはラバウル基地をスルーして珊瑚海方面へと進みました。

 

 その僅か半日後に、ブイン、ショートランドも開放された旨を伝える通信が入りました。

 それを聞いたとき、ラバウル提督はこう言いました。

 「彼女に餌として使われたのなら、僕は本望だよ」と。

 その時は納得できませんでしたが、私も後に、終戦を迎えてから思えるようになりました。

 

 戦争を終えることが出来たのは紛れもなく紫印提督の手腕によるモノ。

 その始まりとなった南方攻略に一役買えたことを、今では誇りに思えるようになったんです。

 

 

 ~戦後回想録~

 元練習巡洋艦 鹿島へのインタビューより。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「満潮、物資の揚陸作業はどう?順調?」

 「順調よ。順調すぎるから、白雪さんから負傷者の運搬も同時に進めて良いかって進言があったわ」

 「許可するわ。基地施設の方はどう?」

 「入渠施設は奇跡的に健在。あ、あとラバウル提督から二、三日もすれば基地航空隊が使用可能になるって連絡が入ったわ」

 

 私が復帰して二日。

 つまり、スリガオ海峡で派手に暴れてから五日目の昼下がり。提督居室に隠って地図と睨めっこしてる円満さんに遅めの昼食を持って来たついでに現状の報告をした。

 あ、逆の方が良かったかな?報告のついでに昼食を持って来たの。

 

 「取り敢えずご飯にしたら?一昨日からろくに食べてないらしいじゃない」

 「食欲がない」

 

 食欲がないですか。そうですか。

 まあ、気持ちはわからなくもないわ。

 原因はたぶん、私がワダツミからタウイタウイ泊地に発った後。さらに、西村艦隊が挟撃を成功させた後のコロンバンガラ島沖での戦闘とサボ島沖での戦闘。

 

 報告書でしか詳細を知らないけど、ブイン、ショートランドまで解放した日本艦隊は、夜陰に紛れて渾沌艦隊を捜すよう、第一遊撃部隊第二部隊の随伴護衛艦隊として編成されていた第二水雷戦隊に命じたそうよ。

 そして捜索の最中、コロンバンガラ島沖で会敵した敵艦隊との夜戦で旗艦だった神通さんが戦死した。

 臨時旗艦を務めた雪風さんの報告では、敵艦隊の最後の1隻が沈むまで、攻撃を一身に受けながら敵を探照灯で照らし続けたらしいわ。

 

 サボ島沖での戦闘はちょっと良くわからないわね。

 結果的に、後から合流した別艦隊の手で敵艦隊は殲滅されたんだけど、戦死した古鷹さんと吹雪さんも含め、敵と最初に会敵した青葉さんの艦隊員の弾薬消費がほぼ無かった。全く応戦しなかったようにも感じたわ。

 

 とまあ、この一連の出来事のせいで円満さんは食欲が減退しちゃってるわけ。

 サボ島沖での報告書を読んでから十円ハゲまで出来ちゃったしね。精神的にかなりまいってるのは確かよ。

 でも……。

 

 「食べなさい。今のままじゃ、作戦を完遂する前に倒れちゃうよ?」

 「でも本当に……」

 「無理?それでも食え。もう食べられなくなった人たちの事を想うなら吐いてでも食べなさい」

 「……わかった。相変わらず満潮は厳しいなぁ……。長門はそこまで言わなかったわよ?」

 「そりゃそうよ。そもそもあの人、円満さんがダメ女だって知らないでしょ?」

 「ダメ女って……。もうちょっと言い方が」

 「ない。だって掃除出来ないでしょ?洗濯はもちろん料理もからっきし。さらに言うなら、私が言わなきゃ下着を何日も換えないくらズボラでしょ?あ、あと胸が無い」

 「ちょっ!最後のってただの悪口じゃない!だいたい、胸は無い訳じゃなくて小振りなの!もしくは発展途上!」

 「はいはい。そういう事にしといてあげるからサッサと食え」

 

 ふう、荒療治だったけど少しは元気が出たみたいね。

 「あるもん……。いつかちゃんと生えてくるもん」とか言いながら食事に手をつけ始めたわ。

 でもね円満さん。

 胸は生えるものじゃないから。

 

 「このまますんなり行けば良いのにね。まだ渾沌の撃破どころか南方中枢の撃破も残ってるんだから」

 「何言ってるの?あと私たちがやる事は、精々渾沌の撃破くらいのものよ?」

 「え?でも中枢は?」

 「アンタ、作戦の説明をちゃんと聞いてなかったの?最初から、南方中枢の撃破は第7艦隊の仕事だったじゃない」

 「じゃ、じゃあ。私たちは囮?」

 

 そういう事。

 と言って、円満さんは食事に戻った。

 そういえば、そんな話を会議の場で説明してた気がするわ。私は佐世保提督を睨むのが忙しくて聞き逃しちゃったみたいだけど。

 

 「逆の方が良かったんじゃない?第7艦隊の方が数が多いんだから、囮ももっと派手にできたかもよ?」

 「それは無理。先生的にも米国的にもね」

 「どうして?」

 「今回の作戦は先生が私に課した試練であり、米国にとっては実験だからよ」

 

 円満さんの話では、元帥さんは円満さんに大規模艦隊の運用経験と精神的重圧。さらに大規模作戦を成功させたという実績を与えるために、作戦の立案から実行までを任せた。

 対して米国が得たかったのは、3年前に日本が先に得た中枢を討ち取ったという栄誉。

 そしてもう一つ。

 米国は中枢に対して新しい戦術を試そうとしているらしいわ。その詳細までは円満さんも知らないそうだけど。

 

 「じゃあ本当に、私たちがやるべき事で残ってるのは渾沌の撃破だけ?」

 「そうなるわね。起爆棲姫の撃破もできたし」

 「あ、終わってたんだ。敵本隊にいたの?」

 「いいえ?いなかったわよ?」

 「はぁ?いなかったぁ?」

 

 だったら、起爆棲姫はどこにいたのよ。

 新種の姫級はいたけど、少なくともスリガオ海峡にはいなかったわ。

 もしかして第二遊撃部隊が進んだサンベルナルジノ海峡の方にいたのかしら。

 

 「そう、いなかった。起爆棲姫がいたのはジャワ海だったわ」

 「ジャワ海!?どうしてそんな所に……。いや、それよりもどの艦隊が撃破したの?そっちに艦隊を回す余裕なんて……あ」

 

 あった。

 私たちがタウイタウイ泊地で待機してる間、どこに向かうのかハッキリしてない艦隊が一つだけあった。

 それは……。

 

 「第三遊撃部隊。神風達が起爆棲姫を倒したってこと?」

 「その通り。あの子達が頑張ってくれたおかげで、私たちは渾沌の撃破に専念できるって訳」

 

 神風達が頑張った。

 確かにそれは間違いないんでしょう。でも、会議の場で説明しなかった起爆棲姫撃破用の艦隊を一つタウイタウイ泊地に用意していた時点で、ジャワ海で起爆棲姫を討つのも円満さんの計画通りだったのがわかる。

 

 「敵の規模はどうだったの?水雷戦隊で倒したくらいだから小規模だったんでしょ?」

 「ええ、規模自体は小規模よ。重巡棲姫を旗艦に起爆棲姫と駆逐水鬼。それにナ級が3隻ね」

 「よ、よく倒せたわね。正直その……」

 

 信じられない。

 矢矧さんは兎も角、神風達のスペックはお世辞にも高くはない。脚技を習得してはいるけど、重巡棲姫の装甲を貫けるほどの火力はない。

 駆逐艦の実力はスペックではないと理解してるしそう思ってるけど、相手の装甲を貫けるだけの火力が無ければどだい無理。

 私みたいに、重巡棲姫を殴り飛ばしでもしたのかしら。

 

 「詳細は報告書待ちだけど撃破したのは間違いないわ。起爆棲姫の撃破も、矢矧達を回収してくれた奇兵隊員が確認してくれたから」

 「そう……」

 「神風達が、どうやって重巡棲姫を倒したかがわからない?」

 「ええ、ハッキリ言って、神風達の火力で倒せるとは思えない」

 

 重巡棲姫はその名の通り重巡洋艦。

 しかも姫級なだけあって、火力も装甲も並の重巡洋艦を上回る。確か、装甲値は200に近かったはずよ。

 神風達が、持てる魚雷を全て直撃させたなら倒せるんでしょうけど、他の随伴艦やメインターゲットである起爆棲姫も倒してなお、重巡棲姫を倒せるとはどうしても思えない。

 

 「『神狩り』って、知ってる?」

 「カミガリ?何それ」

 「私も詳細はしらないし、この目で見たのは一度切りなんだけど。たぶん、それを使って倒したんだと思う」

 「使って倒したって事は必殺技的なモノなの?」

 「個人的には、アレを必殺技だなんて呼びたくはないわね。強いて言うなら……特攻技かしら」

 「特攻?」

 

 要は自爆技?

 そんな危険極まりないモノを誰が考え……。って、そんなの一人しかいないか。

 

 「桜子さんね」

 「そう、艦娘時代の桜子さんが創作した特攻技。それが『神狩り』。あの大淀でさえ使うことを躊躇うほどの捨て身の一撃よ」

 「どんな、技なの?」

 「想像で良い?さっきも言ったけど、私は詳細を知らないから」

 

 円満さんの話では、見た目的には叢雲さんの『魔槍』に近いらしい。

 違うのは、接近する手段が装甲をほぼ0にした稲妻のみ。インパクトの瞬間には切っ先に集めた力場以外の全てをカットする事。

 聞いた限りでは、接近から攻撃まで『刀』の応用みたいに聞こえるわね。

 あ、一応説明しておくわ。

 桜子さんが創作した力場応用術に『刀』と呼ばれているモノがあるの。

 それは、例えば火力値50、装甲値50だとして、装甲値の50を20に減らして浮いた分の30を火力値に上乗せし、性能以上の火力値を得ることができるモノよ。

 もし『神狩り』が『刀』を使って、神風が扱える全ての力場を集約して装甲を貫くモノなら、神風の性能でも重巡棲姫を倒し得る。かもしれない。

 

 「たぶん、間違ってるけどね」

 「間違ってる?」

 「そう、私が『神狩り』を見たのは演習大会の時。桜子さんが雪風と戦った時なんだけど、その時に見た『神狩り』はさっき言ったモノで間違いない」

 「じゃあ、どうして間違ってると思うの?」

 「アレじゃあ精々、ル級くらいまでしか通用しない。それは叢雲が証明してる」

 「いや、意味わかんないんだけど」

 「叢雲の『魔槍』は、簡単に言うと桜子さんが演習大会で披露した『神狩り(仮)』に砲撃による加速を加えたモノよ。なぜ、砲撃による加速を加えたのかは言うまでもないわよね?」

 「ル級までしか通用しなかったから……ね」

 「その通り。でも、重巡棲姫を倒したという報告で全く違うモノだと確信したわ。アレは、突進して集約した力場で装甲を貫く単純な技じゃない。言わば、力場操作の極みみたいなモノよ」

 

 極み……ねぇ。

 確かに桜子さんならそのくらい極めてそうな気はする。そしてたぶん、『神狩り』を伝授され、重巡棲姫を倒したのは……。

 

 「やったのは神風?」

 「ええ、たぶん。矢矧達を回収してくれた奇兵隊員が通信でこう言ってたもの。『神風が吹いた』って」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 一応、一般には公表されてない情報だから話半分で聞いてね?

 

 第一遊撃部隊第三部隊がタウイタウイ泊地を発ってから64時間後に読むように提督から言われていた命令書に従った私たちは、金髪さんが操船する哨戒艇(と銘打たれたクルーザー)に乗って、戦場とは全くの別方向にあったジャワ海を目指しました。

 

 正直、どうしてそんな場所に向かわなければならないのかわかりませんでした。

 朝風たちは「場所を書き間違えたんじゃない?」とか言ってましたし、矢矧さんは「役立たずだから僻地に飛ばされるんだ……」とか言って落ち込んでました。

 

 でも、言われた通りにジャワ海に到達し、矢矧さんが夜偵と電探による探索を開始してほどなく、私たちは敵艦隊を発見したんです。

 

 その後の事は、毎週日曜朝9時から放送されてる『水雷戦隊カミレンジャー』の次週放送分を見てくれたらわかると思います。

 台本を見た時にみんなで「あの時とほとんど同じね」って言いながら笑ってましたから。

 

 

 ~戦後回想録~

 元駆逐艦 神風。

 現、戦隊シリーズ。『水雷戦隊カミレンジャー』カミレッド役女優へのインタビューより。

 

主要キャラ人気投票

  • 朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
  • 神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
  • 大和(影が薄い三部主役)
  • 紫印 円満(実質三部の主役?)
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