艦隊これくしょん ~ナデシコの咲く丘で~   作:哀餓え男

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第九十五話 ようこそ居酒屋 鳳翔へ

 

 

 

 軽空母鳳翔。

 

 彼女は国防海軍が初めて建造に成功した最古の航空母艦であり、戦時中、提督の執務を艦娘が補佐する『秘書艦』と呼ばれた制度を確立させた艦娘でもある。

 また、戦争初期から終戦まで代替わりしなかった数少ない艦娘の一人で、他の艦娘、特に空母艦娘からは敬意と親しみを込めて『お母さん』と呼ばれ、歴代の横須賀鎮守府司令長官からも任務時以外はさん付け呼ばれていたと言われている。

 

 しかし、その実力や戦果については不明瞭な点が多く、『日本の全空母が束になっても敵わない』と讃えられる一方で『全空母最弱』と、蔑みに等しい意見もあった。

 

 俗説の域を出ないが、彼女が戦争中期頃から戦場に出なくなったのは性能不足のせいではなく、初代横須賀鎮守府司令長官が「最後の砦となってくれ」と懇願したためという話がある。

 

 その話の真偽を、開設当初から横須賀鎮守府に所属していた者に尋ねたところ「もし敵の大艦隊に攻められても、横須賀に長門と鳳翔さんさえいれば関東圏に爆弾や砲弾が落ちる事はないだろう」「長門が横須賀の守護神なら、鳳翔さんは差し詰め横須賀の母と言ったところか」などの意見を聞くことが出来た。

 

 終戦後判明したことだが、彼女は一部の艦娘、さらに艦娘黎明期を知る元艦娘達からは『つるべ落としの鳳翔』と呼ばれ恐れられていたという。

 

 

 ~艦娘型録~

 鳳翔型軽空母 鳳翔の項より抜粋。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 常々、他の艦娘たちに申し訳ないと思っているのですが、私は鎮守府の敷地内、寮にほど近い場所に一軒家を構えさせていただいています。

 

 事の発端は、私が夜に食堂の一画を借りて『居酒屋 鳳翔』と呼ばれる居酒屋を経営していた事です。

 今まで通り、夜だけ食堂を貸してくれるだけで良いと言ったのですが、前提督が「食堂だと気兼ねして来れない艦娘もいるんだ」とか「悪ノリした桜子が以前のような惨事を起こすとも限らん」と仰るので、嬉しさ半分、申し訳なさ半分で承諾しました。

 

 あ、ちなみにですが、桜子さんが起こした惨事とは正化29年の10月末頃。

 当時はまだ神風として前提督と同居していた桜子さんが前提督のお財布をもって来店し、酒好きの上位艦種に片っ端からお酒を振る舞った事件のことです。

 親とは言え人のお財布に入ったお金で酒宴を開くの自体も問題ですが、本当の惨事はその後。

 文字通り皆が皆浴びるようにお酒を呑んだせいで泥酔者が続出し、終いには食堂を吐瀉物塗れにしてしまったんです。

 ええ、あの光景を思いだしただけで吐き気を催してしまいますし、あの事件でどれだけの数の艦娘や職員に影響が出たか想像もしたくありません。

 

 おっと、話が逸れてしまいました。

 そんな事件を二度と起こさないためという理由もあって、翌年の夏頃からカウンター8席、4人掛けのテーブル席三つ、6人が座れる小上がりが一室の、平家建ての自宅兼店舗『新・居酒屋 鳳翔』を与えられて細々と営んでいるのです。

 

 「さて、掃除はこれで良し。次は……」

 

 私の朝は他の艦娘に比べると遅い。

 前の晩に何時まで店を開けていたかで若干前後しますが、だいたい08:00(マルハチマルマル)に起床し、09:00(マルキュウマルマル)までにお店の掃除や洗濯などを終わらせます。

 それが終われば仕入れです。

 お野菜などを仕入れる前に、うちの売りの一つである魚介類を三日に一度、10:00(ヒトマルマルマル)頃に、贔屓にしている漁師さんが港まで届けてくれるのでターレに乗って向かいます。

 あ、余談ですが、ターレとはターレットトラックの略称で、他にもターレット、ターレー、ぱたぱたやばたばたなどと呼ばれる、フロント部に円柱状の駆動系が付いた荷役用の運搬車の事です。

 

 「おはようございます曙美(あけみ)さん。いつもすみませんね。気仙沼からわざわざ来て頂いて」

 「気にしないでっていつも言ってるでしょ?私としては、売れ残りを買い取ってくれて助かってるんだからむしろお礼を言いたいくらいよ」

 

 紫色のロングヘアをうなじの辺りで一纏めにし、浅黒く健康的に日焼けした彼女は先代曙の曙美さん。

 今は気仙沼で網元をしていて、陸路で片道6時間以上かかる距離を船で届けてくれているんです。売れ残りを売りつけてる。なんて嘘までついて。

 

 「ほら!どうこれ!今朝揚がったばかりのカツオよ!」

 「あら、立派な戻りカツオですね。でもよろしいんですか?こんな立派な物を譲って頂いて」

 「良いの良いの!これは私が一本釣りでした奴だし、市場に流す分は他の船に運ばせたから気にしないで!」

 

 とは仰っていますが、曙美さんが両手で抱えて見せてくれているカツオは優に80cmはある大物。  

 しかも、目は澄んでいて体に痣もなく縦縞がハッキリしていますし、エラも鮮紅色で鮮度は抜群。文句なしの一級品です。

 こんな良い物をただ同然の値段(しかも下処理済み)で譲ってくれるのですから、私は今だに気仙沼に足を向けて寝られません。向ける気もありませんが。

 

 「後はお約束のサンマと……あ!ホッケとかどう?」

 「もちろん頂きます。最近干物作りにハマってまして」

 「じゃあ有るだけあげるわ。塩焼きもお勧めだから、干物にする前にやってみて」

 「はい。是非そうさせて頂きます」

 

 そん感じのやり取りをしてお魚などを仕入れ、互いの近況を雑談がてら報告し合って別れるのがお約束になっています。

 会う度に思いますが、彼女も立派になりました。

 艦娘時代はツンツンして近寄りがたい子だったのに、今では笑顔が素敵な正に姐さんと言った感じなんですもの。

 もっとも、近寄りがたい性格は今の曙ちゃんにしっかりと受け継がれているようですが……。

 

 「おはようございます。すみません、少し遅れてしまいました」

 「あ、おはよう鳳翔さん!曙美ちゃんは元気でした?」

 

 曙美さんから頂いたお魚を店の冷蔵庫に入れたら今度は食堂です。

 お野菜やお肉は食堂の仕入れと一緒にして頂いているので、お昼の配膳時だけですがお手伝いをさせて頂いているんです。

 安く仕入れて頂いているのに、ただ受け取るだけでは申し訳ないですからね。

 

 「ええ、お元気でしたよ。奈瑞奈(なずな)さんに負けないくらい」

 

 セミロングを三角巾でまとめ、割烹着を着た小柄な彼女は元瑞鳳の奈瑞奈さんです。

 元祥鳳の祥恵(さちえ)さんと一緒に昼まで食堂で働き、夜は私のお店でアルバイトをしてくれてるんです。

 

 「元気と卵焼きだけが取り柄だもんね。奈瑞奈は」

 「ちょっ!酷くない!?他にも良いところあるもん!」

 「良いところ……。今だに中学生に間違われるくらい幼い容姿とか?」

 

 そして黒髪のロングヘアで同じく割烹着姿の彼女が祥恵さん。

 彼女は正化26年の横須賀事件後に艦娘を引退し、以来ずっとこの食堂で働いています。

 なんでも、あの事件で初代朝潮が戦死した事に変な責任を感じてしまったらしく、艦娘を辞めた今でも鎮守府から離れたくないんだとか。

 そんな彼女も今では二児の母。

 食堂で働いていた料理人さんと結婚して幸せな家庭を築いているそうです。

 

 「鳳翔さ~ん!祥恵がイジメる~!」

 「あらあら、心配しなくても奈瑞奈さんには良いところがいっぱいありますよ」

 「例えば?」

 「例えば……。卵焼きとか、あと卵焼き。それに卵焼きと……」

 「卵焼きしかなくない!?」

 

 おかしいですね。

 なぜ、奈瑞奈さんの良いところが卵焼きしか頭に浮かばないんでしょうか。

 でも、それで良いんじゃないでしょうか。だって奈瑞奈さんの卵焼きは絶品ですもの。

 奈瑞奈さんは他のお料理は月並みなのに、卵焼きだけは一流料亭の料理人さんが教えを乞うほど上手なんです。

 ちなみに、うちも看板メニューの一つでもあります。

 

 「それでは、お先に失礼します」

 「鳳翔さんお疲れさま~。あ、今日もいつもより早く行った方が良いですか?」

 「いえ、今日は予約もないのでいつも通りで大丈夫です」

 

 私の店は通常20:00(フタマルマルマル)開店なのですが、ここ一週間ほどは作戦を終えて帰って来た人達の祝勝会などの予約のため仕込み量を増やす必要があったので、奈瑞奈さんには一時間ほど早く来てもらってたんです。

 

 「今思い返すと、軽く修羅場っていましたね」

 

 数年ぶりの大規模作戦、しかも大勝利で終わったのですから騒ぎたい気持ちはわかります。戦死した人を偲んで泣いたり、逆に何もかも忘れて食べて、呑んで、箸が転がった程度で爆笑して、生きて帰れた事を確認する儀式は千差万別でした。

 三日前に提督がいらした日は平和そのものでしたね。

 大淀さんが寝てしまい、彼女を満潮ちゃんがおぶって帰ってから、提督と澪さん、そして恵さんの三人が何やら真面目な話をしていたのが気にはなりましたが……。

 本格的に忙しくなったのはその次の日、空母達が貸し切った日からでした……。

 

 「と、言う訳で、あの作戦が成功したのは瑞鶴の活躍があったればこそ。勲章の一つも授与されて良いと思うのですが、お母さんはどう思います?」

 「あらあら、加賀さんったらすっかり酔ってしまって」

 「この人って酔うとこうなんの!?加賀さんにベタ褒めされるとか恐怖しか感じないんだけど!」

 「あら、ここで呑んでる時はいつも瑞鶴さんのことばかり話してるんですよ?」

 「こんな風に?」

 「いえ、今日はむしろ控え目に褒めてます」

 

 加賀さんは、普段の訓練中は瑞鶴さんに厳しく接していますが、実際は瑞鶴さんの事が可愛くて仕方がないんです。本当は褒めてあげたいんです。

 でもそうしないのはプライドが邪魔してるのもあるんですが……単純に恥ずかしいんでしょうね。

 

 「鳳翔さんって、加賀さんとは長い付き合いなんですか?」

 「長いと言えば長いですね。加賀ちゃ……加賀さんが二代目加賀として着任した時からですから、そろそろ8年になりますか」

 「なるほど、8年も艦娘やってりゃ説教臭くもなるわよねぇ」

 「瑞鶴。お母さんの事はお母さん。もしくはママと呼びなさい」

 「ツッコむとこそこかよ!って言うか、加賀さんだって普段は鳳翔さんって呼んでるじゃん!」

 

 ちなみに空母艦娘、特に正規空母の子達は、着任後しばらくの間は私から艦載機の扱い方を習うのもあってか、私の事を母と呼び慕ってくれています。

 今でも空母艦娘達に呼ばれる度に「一人も産んだことないのに……」と落ち込むことがあります、さすがに呼ばれ慣れたのか嬉しく思えるようになりました。

 

 「でもまあ、空母達の時はまだマシでしたね」

 

 皆さん自立した大人ばかりですし、臨時アルバイトとして桜子さんに寄越して頂いた花組の目が光っていたので騒動という騒動はありませんでした。

 あまりの収拾のつかなさに、花組の皆さんが実力行使をせざるを得なかったのは一昨日の駆逐艦のみの集まりですね。

 例えば六駆の子達は……。

 

 「ちょっと響!ウォッカのガブ飲みはレディーじゃないからやめなさいっていつも言ってるでしょ!?」

 「ウォッカは露国人にとっては水と同じ。故に問題ない」

 「オメェは血筋も育ちも純日本じゃねぇか。なのです」

 「ちょ、素が出るわよ電」

 「あ、雷ちゃんが母親面し始めたのです。電の事はほっといて、いつもみたいに暁ちゃんのオムツでも替えてろなのです」

 「そんな事した事ないけど!?」

 

 と、こんな感じで、終いにはプラズマ化した電ちゃんが暁ちゃん相手に管を巻き始めたので、花組の皆さんに自室へと強制送還されていました。

 さらに八駆と九駆の場合は……。

 

 「あ、あの、未成年がお酒を飲むのは……」

 「朝潮ちゃん、鎮守府内は治外法権だから問題ないんだよ?」

 「こら大潮。朝潮に出鱈目吹き込むな」

 「でもぉ、そうでも言わないと飲めないわよぉ?満潮ちゃんだって飲みたいでしょぉ?」

 「私はそもそも飲んでない。ってかそれ何杯目よ荒潮。飲み過ぎると明日の任務に支障が出るわよ?」

 「大丈夫よぉ~。朝雲ちゃんと山雲ちゃんなんて私より飲んでるわよぉ?」

 「あの二人はあの成りで、ここに居るどの駆逐艦よりも年取ってるから良いの」

 「ちょぉ言い方!言い方考えてくれない満潮!」

 「落ち着いてよ朝雲姉~。子供が言う事じゃない」

 

 山雲ちゃんのその一言が切っ掛けで、現朝潮型の年少組(八駆)年長組(九駆)の間で火花が散り始めました。

 そこから喧嘩に発展するのはアッという間でしたね。

 喧嘩を始めた姉妹達を、どうやって止めたら良いのかわからずにパニックを起こして泣き出した朝潮ちゃん。

 「見た目が若いだけの中身BBAが偉そうなこと言わないでくれるかしらぁ?」「見た目も中身もガキな荒潮ちゃんよりはマシだわ~」と、笑顔で怖いこと言いながら頭突きし合う荒潮ちゃんと山雲ちゃん。

 その二人を眺める夏雲ちゃんと峰雲ちゃんの目は何かを諦めていました。

 火付け役に等しい満潮ちゃんは……。

 

 「年取ってるのは本当でしょうが!私間違ったこと言ってないもん!」

 「間違ったこと言わなきゃ良いってもんじゃないでしょ!ちょっと説教してやるからそこに座りなさい満潮!」

 「はぁ!?説教!?説教臭いのは霞さんで間に合ってるんだけど!?」

 

 この時は花組の皆さんの苦労していました。

 なにせ他の子は兎も角、満潮ちゃんは桜子さんの直弟子とも呼べる子なんです。なので、尊敬する先輩である桜子さんの直弟子を手荒に扱って良いのかしばらく悩んでいました。

 私が責任を持ちますと言ったら、容赦なく簀巻きにして店から放り出しちゃいましたけど。

 

 まあ、騒がしく忙しかった祝勝会気分もなりを潜めて来たので、今日からはいつも通りの仕込み量で大丈夫でしょう。

 桜子さんさえ来なければ……。

 

 「あら?中に誰か……。まさか、本当に来てないですよね?」

 

 ターレを店の裏に停め、荷台の食材を運び込もうと勝手口に手を伸ばそうとしたら、店の中から何者かの気配を一瞬だけ感じました。

 私の気配に気付いて慌てて気配を消した。と、言ったところでしょうか。

 極稀に桜子さんが摘まみ食い(明らかに摘まみ食いの域を逸していますが本人はそう言い張るんです)をしに忍び込む事はあるのですが今回は違う気がします。

 桜子さんなら、迂闊にも私に気取られた場合は居直ります。慌てて気配を消すなんて事は絶対にしません。

 普段なら、この後遅めの昼食を摂って仕込みをし、訓練をするのですが……誰か来ているのならいずれかを諦める必要があるかもしれませんね。

 

 「どなたか存じませんが、まだ開店前ですの……で?」

 

 気配の消し方から相当の手練れと判断し、何をされても対応出来るよう用心しながら勝手口から中に入ると、薄暗い厨房の隅で身を縮めて怯える女性を見つけました。

 お会いするのは初めてですが、彼女はたしか……。

 

 「鳳翔!居るか!?」

 「え?はい、居ます。少し待って頂けますか?」

 

 彼女の名前を思い出そうとしていたら、店の入り口の外から長門さんに呼ばれました。

 何があったかわかりませんが怒っているようです。

 いや、長門さんの声で一層怯えた彼女を見て想像がつきました。

 

 「ここでじっとしていてください。あ、気配は()()()()()()()()()()()()。長門さんは鈍感ですから」

 

 人差し指を立てて「し~」っとジェスチャーすると、彼女は両手を口元に当ててコクコクと肯きました。

 さて、お次は入り口の外でイライラした風の演技をしているであろう長門さんを誤魔化すだけですね。

 

 「お待たせしました。何かご用ですか?」

 「ああいや、大した事ではないんだが……。大和がここに来てないか?こっちの方に逃げたはずなんだ」

 「大和さんですか?さあ、私は見ていませんが……何かあったんですか?」

 

 鍵を開けて招き入れると、長門さんは店内を見渡しながらそう聞いてきました。

 長門さんの身長は女性の割に高い方ですが、この位置からならカウンターの死角で身を縮めている彼女の姿()は見えないはずです。私も壁になれてるはずですし。 

 

 「今日は午後から砲撃訓練の予定だったんだが、アイツめ訓練を始めようとするなり艤装を放り出して逃げおったのだ」

 「はあ、やはりそうでしたか」

 「やはり?」

 「いえ、独り言ですので気にしないでください」

 

 危ない危ない。

 予想通り過ぎて、思わず迂闊なことを口走ってしまいました。

 ですが、予想通りなら予定通り長門さんをここから遠ざけないとなりませんね。

 

 「なんで逃げたのか。長門さんは察しているのでしょう?」

 「まあ……な」

 「ふふふ♪昔の貴女もそうでしたものね」

 「む、昔の事はいいじゃないか!それより!ここには間違いなく来てないんだな?」

 「ええ、来ていませんよ。()()()()()()()()?」

 

 私は目で訴えました。

 ここに大和さんは来ていない事にしてくれと。

 だって私の『気配を消さなくても大丈夫』という言葉を信じて彼女は本当に気配を垂れ流しているんですもの。いくら長門さんが、()()()()()()()()()()()()()()()()に入るとは言ってもこれなら気付きます。

 

 「そうか。来ていないのなら他を探すとしよう」

 「ええ、後はお任せください」

 「ふん、居ないのだから後も何もないだろう?」

 「ふふ♪そうでしたね」

 

 長門さんは厨房の隅を心配そうに見つめた後、静かに店から出て行きました。

 きっと、訓練から逃げ出した彼女と、臆病なだけだった昔の自分を重ねてしまったのでしょうね。

 私と、神風だった頃の桜子さんに叱られながら訓練をしていた頃の自分と。

 

 「あ、あの……勝手に入ってしまって……その」

 

 私が入り口に鍵をかけたのを見計らったように、彼女は長門さんよりも大きな体を申し訳なさそうに縮こまらせて立ち上がりました。

 怒られるんじゃないかと怯えているようですし、ここは笑顔で迎えて安心させてあげるのが先ですね。

 ならばここは、店主としてこう言って差し上げましょう。

 

 「いらっしゃいませ大和さん。ようこそ居酒屋 鳳翔へ」と。

主要キャラ人気投票

  • 朝潮(一部主役である二代目。大淀含む)
  • 神風(二部主役である初代。桜子さん含む)
  • 大和(影が薄い三部主役)
  • 紫印 円満(実質三部の主役?)
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