【デッドマンズA:==『取り戻す』者の物語==】 作:enigma
EDpart1 予想外の帰還
「…戻って、来れたんだな。」
階段を上っていった後に見えた、いつものホテルの風景に思わず言葉を漏らす。
思えばあのダンジョンも長かった。文字通り運と経験だけが頼りだったし、前のダンジョン以上に死にまくったし。
まあ今回は思わぬ助っ人がいたからどうにかなったけどな。
「さて、とりあえず持ち物を整理してっと…」
亀の中に入り、持ち物をあらかた整理しておく。
ついでに、今ある手持ちの中でディアボロに聞いたとおりに合成を行い、メイド・イン・ヘブンとヘビー・ウェザーを作り出す。
これでもうやることは一つだな。
「露伴さん、お約束通り頼まれたもの持ってきましたよ~。」
そう言いながら件のディスク、ボヘミアンラプソディーを露伴に見せる。
「む、どれどれ…おお!確かにこれはボヘミアン・ラプソディーのディスクだ!まさか本当にやってくれるとは!(内心ダメなんじゃないかとは思っていたが、思ってたよりはやる奴だったんだな。)」
なんか心の中でいろいろ貶されてる気がするがたぶん気のせいだろう。うん、そう思いたい。
「いや、しかしよくやってくれたよ。お礼に君が主役の漫画を描いてあげよう。どんなのがいい?この岸辺露伴が描いてやろうというんだ。どんなのでも描いてやるよ。」
ま、まじでか!いや~どんなのがいいかな~♪…………いや…待てよ?
俺は自分の手持ちのディスクについて考える。
(…………俺の持つディスク、ボヘミアンラプソディはどんな物語でも設定と絵さえあれば現実にすることができる。これを使えば…いける!いけるぞ!)
「露伴さん、それじゃあこういうのをお願いします。」
そして俺は、露伴に自分の考えた漫画の物語を伝える。
「…なるほど、君が冒険の末に自分の世界に帰還するのを漫画にして書いてほしいのだね。」
「はい。」
何とかいってくれよ…
「いいだろう。少し待ってくれ。」
そう言うと露伴は、カバンから原稿用紙や万年筆などの画材セットを取り出す。
---ズババッ!ジャキィン!シュバッ!シュババッ!
それからの出来事は、このダンジョンで戦っていた事よりもよっぽど衝撃的だったと思う。
ほんのちょっと瞬きした間に、もうページの2,3コマは完成しているのだ。
とんでもないスピードと正確さ、五秒から十秒、時にはもっと短い時間で一枚の原稿が完成していく様と、漫画を描いているときの岸辺露伴のあの自身のすべてを捧げているかのような集中力は、正にこの人が真の漫画家たり得ていることを物語っているかのようだった。
荒木飛呂彦先生の漫画家としての理想像というのも、これならうなずける話だ。
…漫画を描いている光景を見続けて、いったいどれほどの時間が流れただろうか。五分?いやもっと短かったかもしれない。
「ほら、君の注文通り描いてやったぜ。」
あっという間に俺の漫画が完成してしまった。
「あ、ありがとうございます!」
これが…俺の求めていた物か。中を見てみると、確かにその一連の流れが漫画になっている。さすが岸辺露伴!俺たちにできないことを平然とやってのける!そこにしびれるッ!憧れるゥッ!
「あの、ところでこれタイトルとかは決まってますか?」
どうでもいいことかもしれんが、一応聞いてみる。
「タイトル?いや、タイトルは決まっていないな…」
う~む、どうせだからタイトルを決めてみたいな。ボヘミアン・ラプソディーを使うのはそれからでも…
「このシュトロハイムがその漫画の名付け親(ゴッドファーザー)になってやるっ!」バタンッ ダダダダダッ
「ゲェーーーーッ!?シュ、シュトロハイム!なんでお前がここに!?」
マズイマズイマズイマズイ!今は装備が外れていてまともな防御も…
「オイオイ、何を勘違いしているかは知らないが今日の俺はこの漫画の名付け親(ゴッドファーザー)になりに来ただけだ。お前に危害は加えん。」
「…な、なんじゃそりゃ?」
そ、そんなことのためだけに来たのかよお前…大分はっちゃけてないかこいつ?いやほんとマジで。
「さてそれはともかくとして…そうだな、不思議のダンジョンに挑戦する梶原泰寛!という意味の『梶原泰寛の大冒険!』というのはどうかな!?」
おいとくんかい!まあそれはともかく…梶原泰寛の大冒険!か…
「よし、それ採用!」
それじゃあ使いますか…
「{ズブズブッ}ボヘミアン・ラプソディー!」
能力の発動と同時に、俺の意識が遠くなっていく。多少不安はあったものの、俺のこれまでの戦いの中で培われた直感がこう告げていた。
これが終わった先は…俺の世界が待っていると…
そして意識が落ちた。
「……………………………ここは…」
ふと周りを見渡す。この光景、どこかで見たような…
手元に視線を送ると、俺の手には、ジョジョリオンの四巻が握られていた。
「………そうだ。ここは確か俺が死ぬ前にいた漫画喫茶…ッ!今は何時だ!?確かこれから川平たちとカラオケの約束をしてて…」
カバンから携帯を取り出し、時間を見る。今の時間は…午後二時半。
どうやら俺は、あの死亡時間から少し前の時間まで戻されたらしい。ということは…
「………早いとこ店を出よう。このままぎりぎりまでいたら今度こそあの鉄棒で死んでしまうかもしれない。」
結論が出た俺は、ただちに漫画を元の所に戻しに行き、会計を済ませる。
そして店から出た後は、上からあの鉄棒が落ちてきても対処できるよう、常に上に注意しながら自転車に乗り、みんなの待っているカラオケ屋に急いで向かった。
「…来たのはいいけどどうしよう。まだこれからかなり時間があるぞ。」
あの場から急いで出てきてしまったが、確か待ち合わせは四時、今の時間は三時。
どう考えても一時間早かったですどうもありがとうございました。
「とりあえず『walk this way』でも聞いとくか。それにしても…」
カバンから音楽プレイヤーを出しながら考える。あのマンガ喫茶の見慣れた風景、ここに来る前のあのかつてはいつも見ていた光景、そして、俺の高校。
「本当に…帰ってこれたんだよな。」
「何が帰ってこれたって?むしろ今来たばっかりじゃないのか?」
……後ろから聞きなれていたはずの声が聞こえる。マズイ、聞いただけで思わず泣きそうだ。俺は不安と期待の混ざった状態で、後ろを振り返りながらその声にこたえた。
「川平さん!?それに矢部さん!お前らいつの間にここに来たんだ!」
振り返った先には、俺の高校での友人、川平桐満(かわひら きりみつ)と矢部啓一(やべ けいいち)がいた。こいつらは高校に入りたての頃、東方や月姫、2チャンネルなどの話題で盛り上がっていたところに俺が話題に入って行って、なんだかんだで仲良くなった奴らだ。あと二人とも男である。
ちなみにおれらやほかの部活仲間とかは、お互いのことを呼ぶ時さん付けしたりしなかったりするときがある。まあこれは気分次第だな。
…ヤバイ、少し気を抜いただけであっという間に号泣してしまいそうだ。本当に、戻ってこられたんだな、俺は…
「ん?ああ、実はさっきそこで川平さんにあってな、どうせだから少し早めに来て一緒にだべったりゲームでもしようかと思って…て本当にどうした?さっきからなんか今にも号泣しそうになってないか?」
「えっ、マジで?」
「マジで、目がかなり赤いぞ。なにかあったの?」
いかんいかん、うっかりしてた。仮に俺の体験を話してもただの可笑しな人扱いされるからな。
「ああ、ちょっとここに来る前に映画を見て感動してたんだよ。目が赤いのはそれで泣いてたからだ。」
「本当かぁ~?お前そういう映画見せても大概平然としてるからな~。それにお前…何か変わったか?なんかこう、いつもより頼りがいというか、逞しくなったというか…」
川平さんが疑り深そうに言い、矢部さんがそれにウンウンと頷く。失敬な。
「ホントホント。それよりこれからの待ち時間どうする?ゲームやるんなら俺はゲーム持ってないから横から見てるしかないけど。」
「いやいや、どうせだからそれは話題に困ったときにしようや。それよりお二人さん、実はおもしろそうな動画を入れてきたんだけど一 緒 に 見 な い か?」
「激しく嫌な予感がするが面白そうだ。気に入った。意見を言うのは最後にしてやろう。」
「メイトリックスwwwだがその意見に激同」
「よし、ちょっと待ってろ…よし、これだ。」
そう言って川平がおれたちにスマートフォンを見せてた。何が入ってんだろうな。
「ウホ、いい男たち。」
「おい馬鹿やめろ!前振りからなんとなく予想はついてたけどやっぱりこれ阿部さんの動画だったのかよ。」
「ハハハ、そんなことより二人とも、こいつを見てどう思う?」
「「すごく…カオスです。」」
動画の中身は、同性愛を禁止された日本で、阿部さんとそのほかの山ジュンキャラなどのホモたちが自衛隊やラスボスの総理大臣に戦いを挑むというものだった。
ゲイたちのナニがビームサーベルみたいになったり、道下が股間から金色の翼を出したりと、最初から最後までいろいろとひどいものだった。
「お前…もうちょっとましなのはなかったのか…」
「ええと、ああそういえば東方輝針城の面白いゆっくり実況とかもあったな。」
「「最初からそれを出せよ!」」
「返せ!あの動画を見た俺たちが失った元気と期待を返せ!」
「HAHAHA、スマソ てへぺろ(・ω<)」
あれを見てどんだけげんなりしたと思ってるんだよ。…いや、確かにかなり笑えたけども!正直爆笑してたけれども!
「まあまあまずはこれを見ろ。話はそれからだ。」
「やれやれ…それじゃあみますか。」
「だな。」
それから俺たちは、二つ目の動画を見た。ちょくちょくいろんなところでネタがはさまれており、製作者にかなりの動画作成センスを感じた。
「お~い。三人とももうついてたのか!」
「あらら、気が付かないうちに相当時間がたってたのか。」
あの後、色々と持ち前のネタなどについて話していると、他のメンバーがそろい始めていた。
どれも懐かしい面子だ…ヤバイ、また涙腺が緩みそうだ…;;
「これで全員か?」
「…そうだな。それじゃあ少し早いけど行こうぜ。」
「オイオイどうした?なんか会った時からこんな感じじゃなかったか?」
「ホントに何かあったのか?」
「え?どうしたんです?」
他の奴らと一緒に、川平たちがおれに尋ねてくる。
「…いや、ほんとになんでもないよ。さ、早く行こうぜ!テスト明けくらいパーッとはしゃぎたいよ。」
「あ、ああ。」
さて、今日は何を歌おうかな。
「ふう歌った歌った!しかし楽しかったな。」
「ああ、それじゃあこれで解散だな。また明日!」
「「「「「「ああ(はい)、また明日!」」」」」」
二、三時間ほどみんなで歌い続け、また明日と言って別れた。
そろそろ俺も家に帰らないと…まずは何を言おうか?
とりあえず…まずはただいま…だな。
自転車で全力で走り、あっという間に家の前まで帰る。
ずいぶんと久しぶりだ。他のみんなはそうでもなかったけど俺にはあの冒険があった。もう、長いこと見て無い気がする。
俺は家の扉を開け、中に入る。
「あれ兄貴、お帰り。カラオケ楽しかった?」
扉の前で俺の妹が偶然立っており、俺を出迎えてくれた。
「あ、ああ。楽しかったよ…ただいま。」
…俺は、本当に帰ってこられたんだな。
「お、帰ってきたか。風呂は沸いてるけど先に入るか?」
今度は通路から顔を出した父さんと母さんが、俺を出迎えてくれる。
だめだ…また泣きそうになってくる。今にも涙腺が決壊しそうになるのを何とかこらえながら、風呂に入るといって俺も廊下に上がる。あ…
「…父さん、母さん。」
「「どうした(の)?」」
「ただいま。」
「「ああ(ええ)、おかえりなさい。」」
…もう…限界が近いみたいだ。
「そ、それじゃあ俺風呂に入るから、また後でね。」
「ああ、風呂から上がるころには飯もできてるだろうから終わったらリビングに来いよ。」
「うん、わかった。」
それから俺は、風呂の中で思いっきり泣いた。
蛇口からお湯が流れる音で外にわからないようにしながら、今までの自分の努力と、ここに来るまでのすべてに感謝し、声をできるだけ押し殺しながらではあるがただひたすらに涙を流し続けた。
ある程度泣き疲れた後、風呂から上がって家族と食事をしながら十一時くらいまで一緒に談笑した。
久しぶりの家族との会話、とても昔のことのように思っていたことが、今また出来た。
そして歯を磨いた後、家族にお休みを言ってベッドの上に寝転がる。
「…………」
このまま寝てしまえば、またいつもと変わらない一日が、なんてことのない一日がやってくる。
何て事のない会話、触れ合い、人生。
今思えば、これこそが本当の幸福なのだろう。
そして俺は、あの体験を経て本当の意味で幸福とは何かを意識できたのかもしれない。
もう二度とごめんだが、そう考えるとあの体験もあながち悪いことばかりでもなかったのかもしれない。もう二度とごめんだが。
(………………願わくば、こんな人生がいつまでも続きますように。)
そう願い、祈り、俺は深い眠りについた。不安など最早微塵も感じられない、明日に希望を抱きながら…
SPECIAL THANKS FOR YOU!!
・・・・・・・・・・・・AND TO BE CONTINUED.