【デッドマンズA:==『取り戻す』者の物語==】 作:enigma
===鉄獄===
2階
「う~ん、やっぱそう簡単には見つからないか。」
この鉄獄、どうも今までのダンジョンに比べてカエルの出現頻度が高くなっているようだ。(ここまでですでに6匹見つかった。)
これだけあればしばらく腹持ちや体力などに問題はない。だが問題は、鉄球や装備ディスクが全く見つかっていないことだ。
鉄球は…まあこの際おいておこう。もともと出現頻度自体があまりないものだし、こういうのは焦っても始まらない。
そう、問題は…装備ディスクがまだ一枚も出ていないことだ。
前にも一度言ったが、この鉄獄は前に制覇した試練の敵の出る階が、通常の半分ほどになっている。
つまり試練で60階くらいで出てきた敵が、この鉄獄では25~30階ほどで出てくる可能性があるということである。
ここの生活が始まって、最早時間を数えるのも嫌になってきた今日までの日々。
俺も肉弾戦などの単身で戦うスキルは相当上がっているはずだ。現に最早半端な敵ではそうそうやられることはなくなってきた。そうなるほどの出来うる限りの努力と研鑽を積んできた俺ではあるが、それでもやはり、実際にダンジョンを攻略する時に一番重要となるのはダンジョンに落ちているスタンドディスクとその修正値の数である。
さらにここには、今まで散々頼りにしてきた、序盤で一番お世話になったであろうフー・ファイターズ(回復手段)やマン・イン・ザ・ミラー(体勢を立て直すのに欠かせないもの)などの射撃ディスクたちが無いのだ。
一対一でのやり取りならともかく複数に同時に攻撃され続けたりしたらいずれは心身ともに朽ち果ててしまう。
そのためにも早いところ装備ディスクを手に入れる必要があるのだが・・・なかなかそうもいかないのが現状だ。
「先が思いやられるな・・・ッとまたカエルか。」
これで七匹目か…そろそろ防御に特化したスタンドがほしいところだな。…前回はひとつを除いて半端な装備になって結局死んじゃったしなぁ。
まあなるようになるしかないと結論付け、さっさと次の階段を探しに行く。…ホントになんか出てほしいなぁ…呪いディスク以外。
4階
「ロープによる拘束からの・・・緋色の波紋疾走(スカーレット・オーバードライブ)!!」
「ぎゃああああああああああああ!!」
『オー!ロンサム・ミー』のロープでワンチェンを捕まえ、ロープに波紋を纏った俺の腕を走らせてワンチェンを殴り飛ばす。
ワンチェンが呻き声を上げながら融けていく姿を背に、俺はまたダンジョンの中を歩いていく。
現在の階層は4階、あの攻撃をひょいひょいと避けまくるドノヴァンがいなくなったためやりやすくなりはしたが、代わりにそこそこ耐久力のある敵が増えてきていた。
ワンチェンなどのゾンビ系の敵も、先手を取れなければかなり厳しい状況だ。俺は涙目のルカが消える前に落としたディスクを、愚痴を呟きながら拾う。
「やれやれ、いい加減『オー!ロンサム・ミー』だけでやるのも厳しいぞ。ここらでいっちょ決定的に強いディスクが欲しいところで…お!これは!」
拾ったディスクを漢鑑定(装備鑑定)をして確かめると、俺の隣にそのスタンドが現れる。
両肩と額には、ハートマークにも矢尻にも見えるマーク。
例えるならば、ファーストガンダムのジオングにも似た形の白い角。
目と鼻の部分に穴のあいた、顔の上半分を覆う黒いフードを被った髑髏のような頭部。
ジョジョの第三部終盤において、その恐るべき能力とDIOに対する異常を取り越した忠誠心のもと、アブドゥルやイギーたちを殺した男、ヴァニラ・アイス。
その男のスタンド、名はクリームである。
こいつは口の中が、どこにつながっているかは知らないが暗黒空間になっており、使い手を除いてそこに入ったものを粉々にして消滅させる力がある。
…ホント、なんでポルナレフがこいつに勝てたかが分からん。俺だってこいつに勝つのに大分消費させられて、それでかろうじと呼べるレベルだったってのに。
「試練の時は散々追い回されたせいで苦手意識が多少あるけど、自分で使えるとなるとここまで心強いスタンドも早々無いだろうな。」
ためしにこいつの口を開かせ、中をのぞいてみる。
中には得体のしれないドス黒い空間がただひたすらに広がっており、改めて見てゾッとした。
(う~ん、冒険してる中でこいつのディスクは二枚くらい手に入ってるから見たことはあるけど、やっぱり寒気が止まらねえな。)
スタンド能力とは基本的にその使い手の本質や心の底からの願いなどが能力に現れるものだ。
ポルナレフがヴァニラ・アイスの精神を、『バリバリとさけるどす黒いクレバス』と表現したのも、これならうなずける話である。これの口の中を見ているとお、底のない闇をひたすら眺めている気にさえなってくる。
何にしてもこれで助かった。口の中に入るにはまだディスクのエネルギーだよりにならざるをえないが、こいつがいれば最悪でも『攻撃は最大の防御』戦法ができる。
8階
6階では、一番厄介なハイプリエステスとハイウェイスター、7階では16,7階くらいで出てくるはずのゲブ神を暗黒空間にばらまきながらやり過ごし、ようやくここまで来ることができた。
前回死んだところまであと少しだ。
足音を忍ばせながら、着いた階の隣の部屋を目指していく。
「(えっとこの部屋には…オーラ付きのダイアーか、まずはンドゥールのディスクを準備して…シャアッ!){ビュンッ}」
寝ているオーラ付きのダイアーにディスクを投げつけ、視界を封じる。
頭にディスクが刺さったダイアーは異常に気付いて目を覚ますと同時に慌てだす。
俺はディスクの効果がある間にスタンドと一緒にジャンプし、ダイアーの背後に、気づかれないように静かに降り立つ。
(これで終わりだ。クリーム。{ガォォーーンッ})
そしてクリームの口から、ダイアーを頭から暗黒空間に入れて始末する。
終わるころにはダイアーが落としたスタンドディスクが一枚転がっているだけだった。
「ええとこのディスクは{ズブズブ}…よっしゃ!シアハがとれたとれた!」(^_^)
ディスクの鑑定結果は、キラークイーンの左手の爆弾、シアーハートアタックのディスクだった。
最初にこのディスクを見たときは何でキラークイーンとひとまとめになってないんだろうとかいろんなことを考えたが、よくよく考えてみるとスタプラとスタプラ・ザ・ワールドが分かれていたり、ウェザーリポートとヘビー・ウェザーが別のスタンド扱いになっているのと同じ理由なんだろうと、あとで思わず納得してしまった。
にしてもこいつの防御力はホワイトアルバムと同じくらいに頼りになる上に、発動の効果で自動的に敵を最低でも一体は始末してくれるから非常に便利だ。この段階で手に入れられたのは非常にラッキーなことだろう。
一先ず今のところ読んでいない4部のコミックスをこいつに読み、修正値を上げておく。これで大概の攻撃は防げるようになった筈である。
そしてアイテムを探しに、ひたすらダンジョンの中を歩き回っていく。
「ここは・・・違う。ここは・・・またカエルか。ここは・・・ピッツァと記憶。ここは・・・ゲッ、モンスターハウス!?」
最後に見つけた部屋では、序盤の方で猛威を振るったハイウェイスターだけが存在するモンスターハウスだった。
しかもその奥には階段があり、ここを抜けなければ次の階に行けない状態になっている。
---ヒュンヒュンッ
「だぁああうっとうしいな!{バシバシバシバシッ}(ここは一時廊下に逃げ込む!一対一ならこちらに分があるんだ!)」
シアーハートアタックとクラフトワークで攻撃を防ぎながら後ろに後退する。後ろからドゥービーが来ていたが、波紋のエネルギーを込めた蹴りで頭を粉砕、消滅させて問題なく一対一に持ち込む。
「(手持ちの食い物はカエルが八匹とピッツァが一つ。ここから逃げ切る手段は今のところない。やるしかないか。)来い!全部倒してやる!」
その後、襲い掛かってくるハイウェイスターたちを養分を吸われながらも一体一体確実に倒していく。全て倒し終わるころには、俺も満身創痍に近い状態でその場に立っていた。
もっとも、倒したハイウェイスターの内、何体かが点滴を落としてくれたために栄養補給は十分できたため、結果的に俺の気力と引き換えにモンスターハウスでおなじみの多くのアイテムを手に入れることができた。
結果オーライってやつだな。はあー疲れた・・・
14階
特にこれといった問題もなく(強いて言うならこの状況そのものが間違いなくおかしいのだが)、ここまで下りてくることができた。
単行本も問題なく集まっているはずなんだが、状況が状況なだけに油断は許されない。そう、例えば・・・
「ギャハハハハハハハッ!{シュババッ!}」
「チッ!まだ出てくるのかよこいつ!?{ズドドドッ}」
アイテムの中にハイプリエステスが紛れてるときとかな。そこだ!!
「{ドゴドゴドゴッ}ウギャアアアアアアア!!」
不意打ちを何とか避けた後、ハイプリエステスを叩きのめした。
こいつ確か6階辺りから出てきたはずなんだが…いったいいつになったら出てこなくなるのか。あ、いやでもこいつが終わったら次はベイビィ・フェイスが出てくるのか・・・憂鬱だ・・・
「勘弁してほしいよなぁ。キッスは今ないからアイテム増やすこともできないし・・・うん?」
廊下の方から誰かが出てくる。即座に身構えると・・・何というか、その、ジープ姿の綺麗な女性が姿を現した。・・・こいつ誰だっけ?
「DIO様の邪魔をする者は、このミドラーが倒すわ。」
・・・え?こいつミドラー?そういえば昔プレイステーションで見たジョジョの格ゲーでこんなやつがいたような・・・
「あらあら、ボーっとしてる余裕があるのかしら?」
「マギギーーーーーーーッ!{ザシュウッ}」
「ガハッ!?(何だ!?今カバンの中からハイプリエステスが出てきて、俺の背中を切り裂いたぞ!?まさかこいつ、俺のカバンの中身をハイプリエステスに変えたのか、もしくは気が付かないうちに入れていたのか!?)」
いずれにしても早めに倒さなくては!ミドラーは徐々に近寄ってきているが、俺に近寄り過ぎないよう一定の距離を保っている。このまま俺を浪費させて殺すつもりなんだろうか。
「嘗められたもんだなおい。ザ・ハンド!」
ザ・ハンドを装備して、ハイプリエステスを捌きながらミドラーの方を向く。
「距離を取ったって無駄だ。{ガォォーーンッ}空間を削って~・・・」
---ドンッ
「なに!?」
「ほ~ら寄ってきた。瞬間移動ってやつだ。そして・・・」
---ガォォーンッ
「・・・・・・{ドサッ}」
「そのまま削り殺す。さて、残り一体・・・」
ミドラーを倒しても消えず、飛びかかってきたハイプリエステスをザ・ハンドで削り取る。消えたところには、久々にネアポリスのピッツァを見ることができた。
「{ゴソゴソッ}・・・やっぱりだ。一個アイテムが消えてやがる。無くなったのが出現頻度の高いエコーズだったのが救いだったってところか。」
次にミドラーと会うときはジョルノ以上に注意を払う必要があるみたいだな。クソ、せめて遠距離攻撃があればいいんだけどな・・・
19階
「チャンスをやろう。生きて選ばれる道か・・・さもなくば死への道か。」グアッ
「そもそもお前からそんなチャンスいらねえよ!」ガオンッ
影を伝ってきたブラックサバスをシアーハートアタックやクラフトワークで足止めし、逃げられないうちにザ・ハンドで削り取って始末する。
「「コッチヲミロ~~」」
また出たよ!まあいい。こいつら動き自体はそんなに厄介じゃねえし。
「「コッチヲミローーッ!」」
いきなり加速し、飛び込んできた敵のシアーハートアタックの軌道上に、それぞれザ・ハンドの右手とクリームの口を用意しておき、
「どうぞいらっしゃ~~い^^」
「「コッチヲミ・・・ギャアーーッ!」」
そこに吸い込まれるように飛んできたシアーハートアタックを、それぞれの方法でこの世から消し去る。
「これでひとまず完了か、やれやれ、階段前だってのにずいぶん苦労させられるな。しかし・・・ぶっちゃけハンドの方が使いやすい気がしてきたな^^;」
時と場合にもよるが、ザ・ハンドの空間を削り取る攻撃はクリームの暗黒空間よりも使い勝手がいいものだ。
今の俺ではクリームは修正値を使わねばその真価を発揮することはできないし、どちらかというとよく使うことになるスタンド(出現の頻度が高いもの)を、優先的に使いこなせるよう鍛えているからほとんど使ったことがないのだ。
だから必然的に、クリームよりは断然出やすいザ・ハンドの方が何気にうまく使えたりする。仕方ないよね。そもそも攻撃手段の使いやすさも大きく違うし。
「まあその分クリームは乱戦状態で真価を発揮してくれるだろうけど。次の階は何が出るかなー。」
出来るだけ最高のパフォーマンスをできるよう適度に体の緊張をほぐし、少しだけ休みを入れてから次の階への階段に足をかける。
その時だった・・・
「・・・・・・私の仕事は『スタンド使い』を閉じ込めておくこと・・・・・・」
「!?だれだ!」
どこからともなく声が聞こえてきた!声の感じからして女のそれだと思うが…
「これ以上進むというのなら、私は貴様を始末しなくてはならない。」
これは・・・まさか下の階にボスがいるのか!?
「だがお前が大人しく戻るというのなら・・・3つだ、3つだけディスクを持たせて戻してやろう。」
(なんだと!?いったいどういうこと・・・待てよ?グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所でスタンド使いを知っている・・・それに3つ・・・この声はまさかミュー・ミューの物なのか!?)
冷静に今の状況を整理する。
(3つだけディスクを持たせて戻す…おそらく奴のスタンド、『ジェイル・ハウス・ロック』の影響でここまでで手に入れたアイテムのことを3つだけ覚えていられるということなんだろう。ミューミューは看守、囚人を刑務所から出さないのが任務だ。おそらく戻すというのはここの階層以前の場所に俺を戻すということなんじゃないだろうか?)
「如何した?おとなしく戻るのか・・・それとも、忠告を無視して先に行くのか、お前はどちらなんだ?」
(今の俺の装備…それ自体は強力な物には違いない。だがもしここから先がさらに凶悪なものである場合、修正値が絶対的に足りていない俺が今のままで進んだらおそらく勝ち目は低いだろう。・・・ならばいっそのことここから一度、選んだディスク以外の全てをやり直せば、さらに修正値を増やして勝ち目を上げられるかもしれない。)
正直、試練上層で出てきた敵が今の勢いで出てきた場合、このまま行っても俺に勝ち目はない。
そう結論付け、俺はカバンの中身から選ぶディスクをよく吟味し、選んだディスク以外をすべて部屋の中に捨てる。
「ああ、分かった。ここはあんたの言う通りおとなしく戻らせてもらうよ。」
「そうか・・・それではここでお別れだ。行け、戻りの道は向こうだ。」
ミューミューの言葉が終わった直後、階段の壁から突如として現れたジェイル・ハウス・ロックが俺に触れ、途端に視界が暗転する。・・・そう、今は素直に戻ってやる・・・今はな・・・だが、最後に勝つのは・・・この俺だ!・・・