【デッドマンズA:==『取り戻す』者の物語==】 作:enigma
===鉄獄===
49階
「いや~この階層のモンスターハウスは強敵でしたね^^」
いや、ホント冗談抜きで楽だった。今までの危機感が嘘だったかのように簡単だった。カーズとかクリームの攻略が尋常じゃないくらいに簡単だった。ぶっちゃけて言うと、これまで触れただけでミンチにされかねなかった攻撃の全てが、ピッチャーフライどころか綿毛で触られたような軽さだった。マジですごいよディスクの強化。
何?ヌルゲー?知るかそんなの!こっちは持てる全てを懸けてるんだよ!
霧が出てきた?それは失礼、今すぐ消えてもらいます。
まあそんなことはおいといて…………多分中途半端にディスクの強化をしてここまで来てたら、あっという間にボコられて終わっていたところだったろう。
いや、それ以前にここまで来れないか。
(ホントよくやったよ俺。いや、忘れてしまう前の過去の俺。)
今まで散々繰り広げられていたであろう、1階から19階までのループに戦慄し、過去の自分を称賛しながら次の階への階段を下りていく。
===ケープ・カナベラル===
---気をつけろ!!この階層は離婚した承太郎によって守られているぞ!
視界が戻ると同時に素早く状況把握を行う。
どうやら降りた先はボスのフロアになっており、割と広めの地形となっている。
そして、周囲にはストーンオーシャンのケープ・カナベラルでの決戦で出てきたキャラクターが主な敵として出てきているようだ。
「まずは一掃する!パープル・ヘイズ!」
まずは雑魚を片づけるためにパープル・ヘイズのウイルスを散布して、部屋内の敵のほとんどが死に絶えさせる。
(・・・・・・・・・よし、もういいだろう。)
ウイルスの効果がほとんど終わったところで、残っている奴がいないかと再度辺りを見渡してみる・・・
「{ガキィィィーーz_ンッ}ッ!これは…銛か!」
するとどこか遠くの方から、かなりの大きさの銛が猛スピードで飛んできた。それを弾き飛ばして飛んできた方向を見ると、ロングコートに学帽のような帽子をかぶった恰好をした男が立っていた。
おそらくあれがここのボス、第6部の承太郎なのだろう。
…というかさっきのアナウンスの名前、割とひどいな(^_^;;)
離婚したってわざわざ言うことかおい。
---ダッ
「おっとやばいやばい。まだ距離があるうちに削っておかないとな・・・」
こちらに迫ってくる承太郎の姿に警戒しつつ、とりあえずは全体攻撃系のディスクで奴が射程距離まで近寄ってくる間ひたすら攻撃し続ける。
---ドンッ タタタタタタ・・・・・・ドンッ
「時間停止か、やっぱり使ってくるよな・・・」
承太郎は一定のインターバルを挟みながら時間停止を繰り返し、極力ダメージを抑えながらこちらに移動してきていた。
発動をするたびに承太郎がボロボロになっていくのが遠目からでもわかるな・・・っと!?
(あっぶねぇ、いったいどこに銛を隠し持っているのやら・・・)
急に近くに現れて飛んできた銛を、道中で強化しまくったクラフトワークで危なげなくガードしながら内心でぼやく。一応念には念を入れてその場にしゃがみ込み、クリームとクラフトワークを盾にする形で配置する。これで銛が来ても防御面はほぼ大丈夫だと思う。
(・・・・・・・そろそろ奴の時間停止の射程範囲に入るな。)
お互いの距離が後10メートルになるというところで、鞄の中からあらかじめ途中で拾っておいた【承太郎の学帽】を取り出して頭に被り、今度は装備しているスタンド全てを防御態勢にして待機しておく。
(・・・・・・・・・・来るッ!)
そして距離が後5メートルになった時・・・承太郎の凄味が一気に強くなった。俺は帽子を深くかぶり、帽子を使用することを強く願った。
「スタープラチナ・ザ・ワールド!」
予想通り承太郎が時間停止をし、それと同じタイミングで俺の帽子も時間停止を発動した。
俺と承太郎以外の、全ての動きがモノクロに変色し、その動きを完全に止めたのだ。
---承太郎残り5秒
そんなモノクロの景色の中、承太郎が側に現れたスタープラチナとともに残り1メートルの所まで近寄ってくる。
俺は時止めの恩恵を極力維持するためにピクリとも動かない。
---承太郎残り3秒
「まさかここまで強力なスタンドを、それも複数体同時に揃えてきやがるとはな。しかもそのうちの一体はポルナレフのシルバーチャリオッツ・・・やれやれ、ゾッとする話だぜ。」
まだだ、まだ抑えろ・・・・・・動き出すのはここじゃねえ・・・
「だがかったるいのは嫌いな性質でな…とっとと倒させてもらうぜ。」
そう言った直後、スタープラチナが拳を硬く握りしめ、全身の筋肉を大きく隆起させる。
そしてスタープラチナの口が、その力強い雄たけびを上げようとした瞬間・・・
「(・・・・・・ここだっ!!)奇遇だな。実は俺もなんだよ。」
「!?キサマまさか!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
スタープラチナが咆哮すると同時に、装備したスタンドたちの攻撃が時の停止した世界で唸りを上げながら
---承太郎残り2秒、俺、残り5秒
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!』
スタープラチナの容赦のないラッシュが俺に襲いかかる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
それをクラフトワークを防御に回し、シルバー・チャリオッツとクリームを攻撃に回して奴の限界時間まで耐えるために全力で捌いていく。・・・・・・念には念を入れて慎重にやって見てはいるが、やはりコイツの攻撃も綿毛よりも軽い気がする。しかし、やはりスピードとテクニックは尋常じゃない。確実に捌き切る!
---承太郎、残り0秒
「ッ!!」
異様なまでに長く感じた数秒間、遂にスタープラチナの動きが停止する。
(限界が来たのか!ここで畳み掛ける!)
---俺の残り時間、約3秒
「くたばれえええええええええええええええええええええええ!!」
---ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴッ
油断も、慢心も一切ない。この機会で確実に始末しきれるように、残り時間全てを使って全てのスタンドで攻撃を叩き込んでいく。
時間切れで身動きのできない承太郎は、すべての攻撃をまともに食らい、徐々にその原型すらも失っていく。
---残り0秒
「これで、お終いだ!{ゴシャアアッ}」
時間切れが近いことを悟ると同時に、申し訳程度に残った承太郎の頭部に拳を叩き込む。
もはや命があるのかどうか怪しい状態の承太郎はとっくにスタンドのビジョンも掻き消えており、強化されたスタンドの攻撃を防ぐどころか抵抗する素振りすらまともに見せることなくそのまま頭部を粉微塵に破壊されてぶっ飛ばされる。
---ゴシャァアッ
「……………………………………」ドサァ
そしてコンテナの様なものにぶつかった後、何も話すことなく地面に倒れ、最後にはまき散らされた血や肉片もろとも、あとかたもなく消滅していった。
「………ハァーーーー…スゥーーーー……」
深呼吸をし、その場に座り込む。
倒した…長かったな。前のダンジョン程でないにしろ、とにかく長かった…
「決着ゥーーーーーーーーーーーーーッ!!」
地面に膝を突き、両の拳を突き上げて・・・・・・俺は果てしなく広がる青空に勝利の雄たけびを放った。
「さてと・・・・・・よし、そろそろ行くか。」
体を少し休めた後、階段を探し出して登っていく。拠点に帰ったら…今日はたっぷり休むか。
鉄獄…制覇!!
===ヴェネツィアホテル===
「よっしゃ戻ってきたーーーー!!」
ふう・・・いやはや、本当に疲れた。さっそく倉庫のソファーに寝て休まねば。まったくこの悪党二人はいつまでベッドを占拠しているつもりなのやら・・・
---ピンポーンッ
(…?なんだ?呼び鈴?)
扉の方からなぜか突如として聞こえてきた呼出音に首を傾げる。
---ピンポーンッ
(・・・・・・またか、いまいちよくわからねえが・・・一応確認しておくか・・・)
念のためにはずれてしまったスタンドディスクを差し込んで、用心深く玄関に近づいていく。
「(誰だ?こんな時に…)はーいただいま出ますよー。」
恐る恐る、扉に近寄ってのぞき穴から外を見てみる。
するとそこには、配達員らしき服装を着た男性が映っていた。
「すみません、どなたでしょうか?」
「え~~~~と『光丸デパート』ですが……………お届け物ですゥーーーーッ」
?どこだそりゃ。それとこの配達員、口元が動いてなくてどうもしゃべっている感じがしない。ますます怪しいな。
「…ちなみに配達物はなんでしょうか?」
「え~~~~~ッとですね……プラモデルとなっておりますね~~~」
「…そんなもの頼んだ覚えないんですけど、もしかして住所間違えてるんじゃないですか?」
ここは固定電話もないし、手持ちの通信機器はすべて圏外表示だ。無論今まで部屋の外がダンジョンかバーの二択しかなかった俺がそんなもの頼めるはずはない。いや、一応パソコン経由でペリーコロさんに買い物してもらうこともできるが、あれはレクイエムの迷宮以外には届かないしどっちにしてもプラモなんて頼んだことはないはずだ。やはりこの男、何かが怪しいぞ。
「そんなはずはないんですけどねぇ~~、ここ、○○市××区の1-4-11、ヴェネツィアホテル△△△号室ですよね?確かに届け先の住所はここになっているはずなんですよ~~~」
「(ここってそういう住所だったんだ…)すみません、でも僕ここからあまり出たことないし、そんなデパートで買い物したことはないですよ。やっぱり何かの間違いじゃないですか?」
「…………分かりました、それではこうしましょう。私がこれから扉の下の郵便受けに注文の受領書を入れます。それをそちらで確認していただいて本当にそうか確かめて頂けませんか?」
「…分かりました。それでいいなら…」
「畏まりました。それじゃあ今入れますねェ~~~」
そして会話が終わった後、いやな予感がしつつも俺は郵便受けに受領書が入れられるのを待つ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「…………………………………………………あれ?」
おかしい、これだけ待っていれば普通何かしら入れられるはずなのに、それどころかさっきまであった誰かの気配すら消えている気がする。
とりあえず、こちらで郵便受けの蓋を開けて外を見てみる。
やっぱり誰もいない。強いて言うなら、何かの写真を切り抜いたような感じの奇妙な紙切れが一つ落ちているくらいだった。
「………一体なんだったんだ?」
ただでさえ疲れているのに、まさかの悪戯だったというやるせなさが、言いようのないいらだちを感じさせる。
「ああもうやめだやめ!とにかく今は早く寝ようそうしよう!」
そう考え、亀の倉庫に入るために後ろを振り向いた。
…その時だった。
「…………あれ?」
部屋の端の方、机の後ろ側に、さっきまでは誰もいなかったそこに、突如として見知らぬ誰かが立っていた。
そいつは男だった。素肌の上に、細長い楕円状の模様が×を描いている厚手の服、ズボン、そして四角のもようが規則的にプリントされたネクタイを身に着けており、黒と赤を基調とした、ネクタイと同じ模様の帽子を被っていた。
そしてその男の眼差し・・・・・・どこか、あの吉良吉影に似ているような気がした。
(誰だこいつ…吉良に似ているけど、服装とかもどっかで見たような気がするんだよなぁ。どこだったっけ…)
とりあえずこの疑問はおいといて、突如として現れた謎の不法侵入者に近づいていく。
(・・・・・・ん~~?)
一瞬、見間違いかと考えて少し目を擦り、再度男をよく見てみる。
・・・・・・・・・・やっぱりだ。今近くで見て気づいたことなのだが、この男よく見てみると向こう側の壁が透けて見えてる。
おそらくこの男、生きた人間ではなく死人の魂のようなものなのだろう。(まあそんなことはどうでもいいが。)
「う~~ん、なかなか素晴らしい間取りだな。ここ自体がそこそこ高い階層なのもそうだが、駅の近くなのにもかかわらず車の通りが少ないせいかいたって静かだし、外の景色も落ち着いた雰囲気がある。…私もいつかこういう部屋を借りて、好きな曲でも聞きながら静かに暮らしたいものだ。」
…え?何この人…もとい幽霊。人の家(仮)に勝手に上り込んで今度は家の評価とかし始めちゃったよ。しかも最後の願望が思いっきり吉良さん思考…てこれくらいなら俺も似たようなもんか。
というか外の景色って、貴方それただの壁ぶち抜いてできた穴なんですが・・・
「しかし実際のところ、幽霊である私がどうやって部屋を借りればいいんだ?家賃を払うどころかまず部屋を借りるのさえままならないというのに………」
…さいですか。幽霊ってのも意外と大変なんですね。
…というかこの人本当に何しに来たの?たった今思い出したことだけどこの人ひょっとしたら『デッドマンズQ』の吉良吉影じゃねえのか?
確か今のやり取りってどこぞの殺人犯を始末するためにナイフを調達するためのものだろ?俺を始末しに来たってわけじゃないだろうが…本当に俺が標的だったら落ち着いた景色とやらの一部になっていただくか。
「………………………………ハッ!(こいつ、もしかして私の姿が見えているのか!?)」
吉良?は、俺が自分の姿を捉えれられていることにようやく気づいたのか驚いた顔をし出す。
そしてすぐに思案するような顔をし始める。
(…いや待てよ、こいつはもしかしたら利用できるかもしれないな。)
何だろう、今のこいつからはロッコ・バロッコと同じ気配がするんだが…
「驚かせたようで済まない。私の名前は吉良吉影、見ればわかるように幽霊だ。」
「ハア…。どうも、梶原泰寛と言います。」
「そうか、ところで話の続きなのだが、私は今一つの仕事を請け負っているんだ。」
俺の名前に対して興味が無いかのように速攻で用件を切り出してきよったよこの方。うん、もうね、話の流れで大体要件がつかめるよこれ。
「屋敷幽霊、というのを知っているかい?私も依頼人に話を聞いただけなのだが、早い話、物の幽霊が屋敷単位でこの世には存在するらしいんだ。私がこれから仕事の関係で会わなくてはならない人物はどうやら『軍人の家』と呼ばれる屋敷幽霊に住んでいるらしくてね。よければ君にも一緒に探索してほしいのだよ。」
「…はあ、でもそれだけならなんで僕なんかを誘うんですか?別に探索だけならむしろあなただけの方がよっぽど効率がいいのでは?」
「ああ、実はそこなんだ。というのもこれから行くその屋敷幽霊、依頼人の話だと少しおかしなことがあってね…ここ3年程の間に『56人』の近隣に住む住人が謎の失踪や変死を遂げているらしいんだ。私のような存在は死ぬことはないが、一応用心するに越したことはないからな。それでどうだろう。一緒に来てくれるかい?」
あ、これもう確定だわ・・・・・まあ、次の目的が定まったことは素直に喜んでおくべきだろうな。
・・・・・・・まあそれはさておき・・・
「…………………その前に一ついいですか?」
「…どうかしたのか?やっぱり行くのは嫌か?」
「いえ、行くことにはいくんですけど、そういうわけじゃなくて………今からしばらく寝てもいいですか?実はさっき冒険から帰ってきたばかりで正直もう限界なんですよ…」
だめだ…正直緊張が緩んできて立つのも億劫になってきた…うわぁ、スッゴイフラフラしてきた、そろそろ本気で休みたい・・・
「…そうか、それじゃあ私はしばらくここで待たせてもらうが構わないか?」
「ええどうぞ。そこの三人もそうですけど変に好き勝手しない限りはOKです…それじゃあお休みなさい…」
「ああ、お休み。」
もう無理だ…これ以上は無理…
亀の倉庫に入り、荷物を全部おろしてソファーの上に寝転がる。
(ハア………疲れた……)
これは完全に余談かもしれないが、横になって完全に目を閉じる直前鉄獄に入る前よりも圧倒的に倉庫の中の物が増えているように見えたのは俺の気のせいだったのだろうか…