【デッドマンズA:==『取り戻す』者の物語==】   作:enigma

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第四十二話

88階

===カツアゲロード===

 

「・・・・・・・・?ここは・・・」

 

ヴァニラ・アイスやウェザーの猛攻を切り抜け、俺は次の階への階段を下りてきた。

 

するとその先には、ごく普通の街並み・・・一般の人々が歩く、ごく普通の街並みが広がっていた。

 

(これもダンジョンの一種か?とりあえず状況確認をしてみるか。)

 

足は一ミリたりとも動かさず、周囲の状況を探る。

 

 

 

あたりに俺に向かってくる呼吸は無し。

 

 

 

どいつもこいつも敵意らしきものはなく、普通にただ歩いていく。

 

 

 

中にはそこら辺のベンチに座ったり、仲間同士で楽しそうに話をしている者たちもいる。

 

 

 

あと、道の真ん中や道の端にに大きな銀杏の木が並んで立っており、その枝から落ちたらしい木の葉が、そこら中にたくさん落ちているのが目に入った。

 

 

 

普通に見ればなんてことのない、一般人が暮らしていくにふさわしい・・・ただの日常の風景だ。

 

 

 

本当なら俺も、この日常の風景に交じって平和に暮らしたいと思うほどに・・・ごく普通の日常・・・

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だが・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

(これがダンジョンのうちの一つというのなら・・・それは、まったく別のお話ってやつだ。)

 

一見ただの公道、だが・・・俺がこれまで培ってきた経験が・・・今ッ!俺にこう囁きかけている。

 

 

・・・ここは・・・何かがヤバいと・・・・・

 

 

(・・・念のため、用心して進むか。今のところ、気をつけるのは『足元の銀杏の葉』といまだ見えない『罠』くらいか。)

 

一先ず、いつも通り一度スタンドに地面を殴らせる。

 

-----ドガッ

 

「・・・よし、異常はないか。」

 

罠の有無が確認できたところで、銀杏の葉っぱを踏まないように、殴ったところに向けて一歩踏み出した。

 

・・・その時だった。

 

「あのォ~~、少しよろしいですかぁあ・・・?」

 

「!?{バッ}・・・・・・・」

 

後ろを振り向くと、俺のいたあたりの銀杏の木、その隣にあるベンチに、子供と一緒に座っていたおばさんが俺に話しかけてきた。

 

「しくしく・・・しくしく・・・うえっ うえっ」

 

ベンチのあたりを見ると、隣で遊んでいた子供が膝を抱え、目をこすりながら泣いているように見える。

 

その下の地面には、靴の跡が付いた、割れたコンタクトがあった。

 

「もし私の何かの勘違いでしたら、本当に申し訳ないと思うし、心からお詫び申し上げます。」

 

「・・・?」

 

「{ズイィッ}でも、踏みましたよねェ~~~~~~~~?」

 

「・・・・・・・・・(・・・まさか!すでに俺は・・・・)」

 

おばさんの次の言葉が紡がれる前に、キラークイーンに俺の靴底を確認させる。

 

「そりゃあ、わたくし・・・お店のウィンドウを見てたので一瞬の出来事ではありましたけれど、でも確かなことには間違いありません。御自身の心の声にお尋ねになってみてください。」

 

「確かなことってありますよねェエ~~~?」

 

(・・・あったッ!俺の靴底に『クマのシール』があるぞ!『コンパクト』に張られているのと同じものだ!)

 

おばさんの御託を聞いている間に、キラークイーンが目的のものを見つけ出してくれた。すぐさまおばさんに見えないよう靴をずらし、俺に注意が向いている間にシールを引っぺがしてダウンの袖の中に隠させる。

 

(ついでに靴底は・・・くそ、どういうことだ?あの『コンパクト』についているのと同じ形だ!)

 

靴底を確認してみると、あの子供の『コンパクト』についているものと『俺の靴の形』が『一致』していた。

 

「(どういうことだ?いや、まずは『あれ』を処理しなくては・・・・)?あの、あなたさっきから誰に話しかけているんですか?ひょっとして・・・俺に話しかけているんですか?」

 

おばさんに言いながら、俺はあるスタンドを出す。

 

「何ッ!おっしゃってるんですかッ!?今!踏んで壊したじゃあないですかッ!わたくしの子供がおもちゃを持って・・・・・・・ベンチで遊んでちゃあいけませんかぁあ?」

 

「・・・いいえ、別にそんなことはないのですが、だからと言ってなぜ俺の所にくるんです?俺は・・・さっきからここを動いていないんですよ?」

 

一つ説明を入れると、俺からあのベンチに座っている子供、それと、そのコンパクトがある位置までには大体4,5メートルほどの距離がある。

 

そんな距離を、物音立てずに一瞬で移動してコンパクトを壊し、また一瞬でこの元の位置まで戻ってくるなんて芸当、別にやる必要なんてこれっぽっちもないが、今の俺では手持ち的に無理があることだ。

 

(もしかして俺は・・・自分でも気が付かないうちに移動させられた?いったいどうやって・・・)

 

「何を言っておられるのでしょうかッ!?ご自身のなさった事ですよォ・・・!」

 

「だから・・・俺はあんたもコンパクトのこともまったく知らないし、そんなものを踏めば普通は気づくものでしょう?大体証拠はあるんですか?俺がそのコンパクトを踏んだという決定的証拠が。」

 

「ええ、ありますわよッ!見て!踏んだから靴底に『シール』が・・・?!」

 

「シールが・・・なんなんですか?そんなもの、ひとつたりともついちゃあいませんよ?」

 

自分の靴の底を、片方ずつはっきりとおばさんに見せてやる。

 

さっきくっついていた分をひとつ残らずとっておいたから、そんなものがあるわけはないのだ。

「で?もう一度お聞きいたしますけど・・・『誰が』『何を』踏んだんでしょうかねぇ?はっきりとッ!口に出してッ!お答えしていただきましょうかッ!!」

 

「・・・さ、さっきから何度も申しています!あなたが『踏んで』壊したのでしょうッ!!コンパクトについた『靴の跡』と、あなたの『靴の型』が一致するはずですわッ!!」

 

やってみろよオバサン、そんなものが・・・『いつまでも』あればなァ・・・!

 

「かまいませんよ。ただし・・・その『靴の跡』とやらがもし『一致』しなければッ!・・・人を勝手に『犯人』に仕立て上げたあなたには・・・それなりの『誠意』を見せて頂きますよ?」

 

ダンジョンで敵と相対した時と、同じくらいの殺気と敵意をおばさんに向ける。

 

おばさんはそれによってビビってしまったのか、足がすくんでいるようにも見える。

 

「わ、解りましたわッ!さ、さあ!ここにきて・・・靴底を見せてください!」

 

俺はベンチの下に落ちているコンパクトに近づき、コンパクトのそばに自分の靴を、底側がよく見えるように置く。無論、銀杏の葉っぱは踏んでいない。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・えっ?!」

 

おばさんはコンパクトと俺の靴を見比べると、思わず驚きの声を上げる。まあそうだろうな。だって・・・

 

 

                                     

 

「やれやれ、勘違いもここまで来るとひどいものですよね。よく見て下さい。・・・・・・・・・『靴の跡』なんてどこにもないじゃあないですか。」

 

・・・『靴の跡』なんてどこにもないんだから・・・・・

 

「え?え?そ、そんなはずはッ!さ、さっきまではこのあたりに「結論はッ!!」ッ!!」

 

「『靴の形は一致しない』・・・そうですよね?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

何も言い返せなくなったか。それじゃあ後は仕上げと行くか。

 

「さて・・・奥さん、さっきの話は・・・覚えていらっしゃいますか?・・・まさかッ!覚えていないなんてことはないでしょぉおぉお~~?・・・ねえ?人を勝手に・・・『器物破損』の『犯人』に、仕立て上げようとした奥さん・・・?」

 

以前俺は、さっきと変わらず殺気を放ち続ける。無論、ある程度話せるよう抑えてはいるが。

 

「・・・誠に・・・申し訳ございませんでした・・・・」

 

「おやおやおやおやおやおや~~~~~?まさか・・・ただ謝ればいいと・・・思っているんじゃないでしょうねえぇ~~~~?冤罪を掛けるというのは・・・人道に反した行いだと思いませんかぁ?こういう所で・・・お育ちって出ますよねぇ~~~~~~~~?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・これで・・・なんとか・・・・」

 

おばさんはカバンから震える手で財布を取り出し、俺にいくつか金を渡してくる。

 

「次からは気をつけてください。こんなのは・・・俺だからすんだようなものですよ?」

 

「・・・はい。本当に・・・・・・・申し訳ございません。」

 

オバサンはそれだけ言うと、いまだに泣いている子供と一緒にすぐさまその場を立ち去った。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふう、やれやれ何とかなったって感じだな。」

 

平常心に戻り、一先ず手に入れた金を確認する。

 

「4000Gか。ま、こんなもんだろうな。(もっとも今更こんなもん手に入れたところで大した意味はないんだがな。せいぜいないよりはあった方がいいって程度だ。)

とりあえず財布の中に金を入れ、改めて自分に起こった現象について考える。

 

(おそらく俺は・・・何らかの原因で知らないうちにおもちゃのコンパクトを踏んでいたのかもしれない。大体見当はつく。おそらく原因は・・・)

 

足元のあるものを見ながら、俺はこう考えた。

 

(この『銀杏の葉っぱ』だ。おそらくこの階層に来た時、すでに俺はこの葉っぱを踏んでいたのだろう。そして・・・知らないうちに俺はあのコンパクトを踏まされていた。)

 

ちなみにあの主婦やこの辺の連中は本体ではないだろう。もしあいつらのうちの誰かがスタンド使いならば、主婦はまず間違いなくキラークイーンの腕を見て顔色を少しくらいは変えるだろうし、他の連中だとしたら、こちらを見ていた奴らに対してエアロスミスのレーダーに多少なりとも反応があってもいいはずだからな。

 

ついでに、道沿いにいる奴らをよく観察してみる。すると、やはりこいつらにも思った通りの共通点があった。

 

(あいつら・・・落ちている『銀杏の葉っぱ』を、『誰一人』として『踏んで』いない。やっぱりだ。きっとこの銀杏の葉っぱに謎があるんだ。)

 

踏まないように注意しながら、身をかがめて銀杏の葉っぱをよく見てみる。

 

-----『シシシシシッ』

 

(!これは・・・スタンド!?)

 

葉っぱと地面の間に、平べったい形をしたスタンドが5,6体ほど潜んでいた。こいつらが『気づけない瞬間移動』の正体だったのか。

 

(しかしどういうことだ?こいつの本体はどこに・・・待てよ?)

 

スタンド能力は本来誰かに見せたり、知らしめたりする者じゃあない。使い手が・・・それこそよほどの馬鹿でもない限りは。

 

まして、こんな公衆の面前でならなおさらだ。

 

それが・・・さっきの主婦や、おそらくこの道沿いにいる全員に、もし知れ渡っていることだったとしたら・・・

 

(このスタンドの本体は・・・おそらくまともな知能のある奴じゃないか、もしくは無意識にこいつを使っている奴のどちらかだろう。仮に普通の動物とかが本体だとしたら『瞬間移動』程度の能力をこんなふうに人前にさらすような真似をする意味がない。奥の手を隠しておくというのはもはや本能レベルでの行いだからな。)

 

・・・いや、しかし・・・・・・

 

(まだ答えを焦る必要はない。確か『岸辺露伴は動かない』の富豪村や、スティール・ボール・ランの『悪魔の手のひら』なんかは土地そのものが不思議なパワーを持っていて、踏み込んだものに何かしらの影響を及ぼす。ここはひょっとしたら、『スタンド能力を持った土地』なのでは?という可能性もある。)

 

・・・となると、可能性として考えられるのは『スタンドを無意識に使っている奴』か、『土地の持つパワーがスタンド能力となった』のどちらかだろうと結論付ける。

 

-----グギュルルルル~~~~~~~

 

「・・・・・・ふう、なんだかんだやっているうちに腹が減ってきたな。というかそろそろ限界かも・・・」

 

(飯にするか。ちょうどベンチもあることだし。)

 

先ほどの親子が座っていたベンチに銀杏の葉を払いのけてから座り込み、最後の食料であるポルポのピッツァを口に運ぶ。

 

「あ、そういやこれを忘れてたな。・・・いただきます。」

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、ごちそうさまでした。」

 

食事を終えた後は、銀杏の葉っぱと周囲の反応に気を配りながら階段を探し出し、俺は次の階へと歩みを進めた。

 

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