もしもFGOがゲームではなく大人気実写特撮映画シリーズ『Fate/Grand Order』だったら   作:ルシエド

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 国民的大人気実写映画『Fate/Grand Order』。
 今日もフルスロットル、映画情報誌『シネマトゥモロー』編集部。
 FGO第二部公開記念、各特異点の登場人物にスポットを当てたインタビューコーナー!
 今回の特異点は2015年に公開され大人気を博した『死界魔霧都市ロンドン』!
 CCCに続きアンデルセンを演じる、天才子役濱継ジュン氏にインタビューだ!



死界魔霧都市ロンドン/ハンス・クリスチャン・アンデルセン役/濱継ジュン インタビュー

―――今日はインタビューに応じてくれてありがとう、ジュン君

 

「こちらこそよろしくお願いします。

 あ、こちらどうぞ。お菓子の黒い恋人です、編集部の皆さんで食べてください」

 

―――ありがとう。インタビューされる側なんだから、そんなに気を使わなくてもいいのに

 

「いえ、こういうのが大事なんだって、メイリお姉さん(※1)にここに来る前持たされて……」

 

 欄外脚注

 ※1 空島メイリ。Fateシリーズを通し『藤村大河』『殺生院キアラ』役を演じる。演技の幅広さに定評があり、キャスト発表前のCCC予告編(トレーラー)では、体のほとんどを布で覆う尼の衣装もあり、匿名掲示板で殺生院のみ役者の名前が完全に特定できなかったと言われている。

 

―――相変わらず、仲が良いんだね

 

「……仲が良い、ですか」

 

―――? どうかしたのかい?

 

「ぼくはプロなんですよ。

 メイリお姉さんとぼくは仕事仲間でしかないんです。

 それを実の姉気取りで、いつまで経ってもベタベタしてきて。

 確かに背は全然伸びませんでしたが、ぼくももう中学生ですよ?

 いつまでぼくが小学生のつもりでいるんですかね。

 メイリお姉さんにはプロとしての自覚が足りないんじゃないですか?」

 

―――ああ、なるほど、なるほど。よく分かった

 

「やっぱり分かりますよね?

 メイリお姉さんの方は何度言っても分かってくれないんですよ。

 プロ意識はやっぱり優お姉さん(※2)の方が圧倒的に高いんですよね。

 優しいですし、ベタベタしてきませんし、変な絡み方してきませんし」

 

 欄外脚注

 ※2 四之宮優。代表作『ネオ大奥』『HIMIKO』他。FGOシリーズでは『玉藻の前』『タマモキャット』を演じる。EXTRAシリーズから継続して丁寧な演技が極めて高い評価を受けている。

 

―――そこは、芸歴の長さ、子役と接した数の差なのかもね

 

「いやいやいや。

 麗お姉さん(※3)とメイリお姉さんの芸歴そんな変わらなかったでしょ?

 でも麗お姉さんは普通ですし、やっぱりメイリお姉さんが変なんですよ!」

 

 欄外脚注

 ※3 志鶴木麗。CCCに続いて『メルトリリス』役を演じる。ダンス界、オペラ界、映画界で活躍するマルチ俳優。よく通る高い声と、切れ味鋭いダンスが売り。

 

―――心配は、愛されてる証拠だよ

―――君は例の事故もあったからね

 

「あー、あれは……本当に申し訳ないです。

 多分シネマトゥモローさんにもかなり迷惑かかったのでは……」

 

―――いいんだ、君は悪くない

―――それよりも、そこから這い上がった君の強さを、皆尊敬してるんだから

 

「あの飲酒運転に巻き込まれてなければ……

 ぼくの両親はまだ生きていたかもしれません。

 ぼくの声質が事故と手術で変わることもなかったかもしれません。

 EXTRAのぼくとメイリさんのシーンが全カットされることもなかったかもしれません。

 EXTRAの劇場公開が四ヶ月延期されることもなかったかもしれません。

 ぼくのリハビリもなかったかもしれない。

 予定外の編集がされたEXTRAが公開されることもなかったかもしれない。

 でも、結果的に、それが今のぼくに繋がってるとしたら。それも意味があったんだと思います」

 

―――ジュン君……

 

「ぼくらがEXTRAで少しだけ登場して、CCCで本登場という予定もなくなって。

 おかげでキアラについて語るガトーさんのシーンが浮いてたり。

 トワイスの掘り下げシーンがカットされてたり。

 編集後の完成度は、ぼくも驚いたくらいですけど……

 やっぱりちょっと、無理が出てましたよね。あれはやっぱりぼくのせいなんですよ」

 

―――いや、それは

―――話の調整っていうものだよ

―――EXTRA単品でも十分面白かったし

―――EXTRAで調整して、それを布石に、CCCで最高の仕上がりにした

―――君の事故だけで駄作を世に送り出す人達じゃないよ。あの人達はプロなんだ

 

「はい。凄い人達でした」

 

―――それに、凄く個人的なことを言ってしまえば

―――映画四ヶ月の延期で流していい事故じゃなかったと思ってる

 

「しかたないですよ(笑)。

 広告の時期予定、グッズ展開の時期予定、クロスメディア展開の時期予定。

 全部決まってたんです。

 各社の都合があるんですから、ぼく一人の事故で全部動かせませんよ。

 むしろ迷惑かけたのが申し訳ないくらいで……監督達にも、頭を下げられてしまいました」

 

―――皆、大人で、君は子供だったからね

 

「あの頃は親のことで泣いてばかりで……

 ぼくの事故でぼくが抜けて、そのフォローをしてくれた人達のことを考えてもいませんでした。

 仕事のこととか何も考えないで、悲しんでいていい時間を、あの人達が作ってくれてたのに」

 

―――そこまで気を使う必要はないんじゃないかな。君は被害者だったんだ

 

「いえ、これが大事だったんです。

 この気持ちが今でもぼくの原動力。

 具体的には!

 あの時の共演者さん達皆のお役に立ち!

 シリーズを盛り上げて!

 事務所を儲けさせる! 決めたんです、最高のアンデルセンになってやると!」

 

―――おおっ

 

「小学生だからと甘えたことは言ってられません。

 頑張ってCCCでもロンドンでも、台本が二冊擦り切れるまで台詞を練習しました!

 おかげで皆さんに迷惑をかけず、お役に立てる演技ができたと思います」

 

―――ああ、おかげで素晴らしいものになった

―――大女優や大御所も舌を巻くような名演。特に語りは素晴らしい

―――事故で変わった声とはいえ、その外見とギャップのある声

―――そこから大ベテランのような語りが来るんだ。私も息を呑んだ覚えがあるよ

 

「事故の影響で、まだCCCの頃のぼくの足はあまり動いていなかったので……

 CCCではアクションをほぼ全免除されていたんですよね、ぼく。

 流石にロンドンの頃はアクションもやりましたけど。

 それのおかげで、ぼくはひたすら台詞回しの練習に集中していけたんです」

 

―――有名な話だね

―――君のアクション免除のため、当時それなりに動けたメイリさんが名乗りを上げたという話

―――おかげで、メイリさんのキアラが前衛、ジュン君のアンデルセンが後衛

―――奇しくも葛木とメディアのような関係が出来て、最高の戦闘シーンが撮られたという

 

「メイリお姉さん、あれからずっとキアラで格闘アクションやってますね……」

 

―――何か覚醒したのかも?

 

「ロンドンからアクションに挑戦して、メイリお姉さんの凄さを思い知りました……」

 

―――(笑)

 

「あ、そうだ。

 ぼくが練習してたのって台詞回しだけじゃないんです。

 監督に『他のキャラクターをこき下ろしてる時の表情』は練習しろと言われてました」

 

―――ああ、あれか

―――アンデルセンの表情の中では、あの笑みは一番印象に残るものだったね

 

「『君は優しい顔はできるから、練習するのはそれだけでいい』と言われました。

 CCCで新しく覚えた表情の動きと演技は、多分あれくらいですね。

 アンデルセンは決まった表情の動きで演技を組み立ててこそ、というイメージがあります。

 なのでロンドンでも基本的にはCCCと同じ表情の動きでやっていけました」

 

―――アンデルセンは感情の動きを大仰な体の動きで表さない方が良いのかもね

 

「静のイメージを持たれているので、感情を大仰な動きで表さない方がいいらしいんです」

 

―――ロンドンで例を挙げるなら……金時を演じた金剛さん(※4)、かな

―――あの人は大げさに驚いたりして、金時の感情を表現してる

―――でもああいうのをアンデルセンがやったら、おかしいからね

 

 欄外注釈

 ※4 金剛勝。FGOシリーズでは『坂田金時』を熱演。金髪が似合い、派手なアクセサリーが似合い、バイクが似合い、人情味溢れる男が似合う、2010年台を代表するヤンキー俳優。出演作『今日から俺は!!』『お茶にごす。』『カメレオン』『ホーリーランド』等で知られる。

 

「勝お兄さん凄かったですね……

 ベテランの優お姉さんが演じるタマモとの組み合わせが、かっこよかったです。

 あとはほら、腕です腕。勝お兄さんの腕がすっげーって感じでした」

 

―――腕?

 

「カッチコチだったんです、腕の筋肉カッチコチ!」

 

―――(笑)

 

「実際に触らないと分からないと思いますよ、勝お兄さんの腕のカッチコチ!

 ぼくを片手でひょいと持ち上げて、肩に乗せちゃったりするんですから!」

 

―――映画によっては、金剛さんバイクを武器にしてるからね

―――ライダー金時が出た時「どうしてバイクで敵を殴らないんだ……?」って言われてたし

 

「すっごい」

 

―――一種の男の憧れだよね。ヤンキーものは彼が居れば実写界では廃れないだろう

 

「はぁ……身長が欲しい……

 勝お兄さんの身長って190cmですよ?

 190cmで筋肉ムッキムキで……もう、強いですよね。強い。ああなりたいんです」

 

―――あんまり伸びないね、ジュン君の身長

 

「伸びてないわけではないんですけど……! ほんのちょっとは伸びてるんですけど……!」

 

―――(笑)

 

「身長ってどこで売ってるんでしょうか」

 

―――前に麗さんもメルトリリスとしてインタビューに答えてた時、同じこと言ってたなあ

 

「藤井お兄さん(※5)が言ってたんですよ。

 『脚部外してる麗さんめっちゃちっこくて可愛く見える』って。

 それに関してはほんっとうにそうだと思います! あれがギャップ……なんでしたっけ?」

 

 欄外注釈

 ※5 藤井健。FGOシリーズの主演・藤丸立香役を演じる。2015年製作『今日から俺は!!』で伊藤真司役を演じ、三橋貴志役を演じる金剛勝とダブル主人公を努め、ヤンキーコンビとして喧嘩アクションを披露したことも。

 

―――ギャップ萌え?

 

「そうそう、それです。いきなりちっちゃくなるのがなんというか……良かったです」

 

―――(笑)

 

「ギャップと言えばバベッジが一番ですね……

 バベッジスーツと声優さんの外見が今でもセットに思えなくて」

 

―――スーツと、スーツアクターと、バベッジの声優さんは全部別だからね

 

「ロンドンはバベッジのために凄い人が集まってたらしいですね。

 ぼくはあまりその人達の過去経歴を知らないんですが……モスラとか怪獣を飛ばしてた人や」

 

―――バベッジやヘルタースケルターを操演で飛ばしてた人かな

 

「マクロス、でしたっけ? それの系譜とか関係者の人とかや」

 

―――バベッジやヘルタースケルターで板野サーカスやってた人かな

 

「あとはこう、人形吊って撮影して、上手く合成してる人が途中から参加して」

 

―――飛び人形の達人も居たんだよね……

 

「他の戦闘も気合が入っていたんですけど、バベッジの戦闘はまた何か違った気が」

 

―――FGO、あんまりロボの戦闘やる機会ないからかな……

 

「大型スーツ作ったのに使わなかったりしてたんですよ? ノリがちょー変でした」

 

―――え、未使用スーツ?

 

「ほら、夏の『スチームエレクトリカルwithパパ』の……」

 

―――あれ未使用スーツの再利用だったの!?

 

「中に人を入れて動かすことも、外部からの操作で動かすこともできるんだとか」

 

―――なんという……なんという……

―――ロンドンでの戦闘ベストバウトは、最後のアルトリアVSモードレッドとよく言われますが

―――他にも名勝負が多くあり、ファンの中でも一つに絞れないというのが現実

―――そこにそんなバベッジが加わっていたなら、どうなっていたことか……

 

「ぼくは戦闘でほぼ目立ってなかったので影響なさそうです」

 

―――アンデルセンの戦闘も、見栄えはするが簡単なアクションで綺麗にまとまっていたね

―――特に辛かったことはあった?

 

「ええと、ロンドンの章カラーは『霧』です。

 なのでとても濃い人工霧の中撮影してたんですが……

 前が見えないので、ぼくだけよく色んなものに躓いて転んでまして」

 

―――(笑)

 

「ぼく以外の皆さんは慣れた様子であまり転ばないんですよ。皆さんすごいなあって」

 

―――それで、君も慣れたのかな

 

「いえ、全然慣れませんでした。

 なので演出さんが霧を出す前にまずぼくの歩くルートを計算。

 そして霧が出された後、霧の向こうで小さなライトをチカチカつけてくれたんです。

 撮影の画面に映らないように。

 ぼくはその時々つく小さなライトを目印に、凸凹の無い道筋を走らせてもらいました」

 

―――なるほど

 

「ロンドンの人工霧、とにかく濃かったんです。

 霧の中でのアクション時は、進むべき方向もちょっと見失っちゃいそうなくらいで。

 近くでぼくを撮影してくれたカメラの人が、常に進むべき方向を指さしてくれていました」

 

―――そうか、カメラ目線でカメラの人の指示を見ながら霧の中を動いたりしていた、と

―――映像的に映えるアクション中のカメラ目線をそう使ったのか、白澤監督……

 

「こんなに濃い霧の中のアクションは撮影しても見えるのかな?

 って思ってたんです。

 でもほら、こう、うわーいっ! って感じで。見えないなんてこと全然なかったです」

 

―――モードレッドの赤雷、フランの雷、獰猛な動きで霧を吹っ飛ばすジキルとハイド

―――霧の中で本当に見えなくなるジャックの恐怖

―――特殊効果が多いFGOのアクションにおいて、霧は面白い演出に多様されていたね

 

「極めつけはやっぱり、ソード・オブ・パラケルススの発動シーンですね」

 

―――あれも面白かった

―――白い霧の中で目立つパラケルススの虹色の光

―――霧がソード・オブ・パラケルススの光を反射して、不思議な色合いの霧になる

―――『多彩な色の光を放つ宝具』をああ魅せられると、心が踊ってしまうね

 

「雷や嵐の破壊力表現に、霧を勢いよく動かしたり、散らしたり。面白かったです」

 

―――他に、印象に残ったことはあったかな?

 

「他に印象に残ったこと……

 あ、皆さんと一緒に監督に連れて行ってもらったお店のハンバーグが美味しかったです。

 上に美味しい目玉焼きが乗ってるやつで、目玉焼きとハンバーグを一緒に食べるのが……」

 

―――ごめんね、言葉が足りなかった。撮影に関することで

 

「……あっ、す、すみません!」

 

―――(笑)

 

「ええと、そうですね。ジャック・ザ・リッパーの服の初期案ですね」

 

―――……ああ、あの、黒い大布を全身にぐるぐる巻きする前の、やや変態的な

 

「ヤバかったです」

 

―――ヤバかったね

 

「なんであの初期案服パンフレットに載せたんでしょう……?」

 

―――分からない。本当に分からない

 

「現場でヤバいと言われ、ぼくもヤバいと言って、黒い大布ぐるぐる巻いたんですよ」

 

―――英断だ

 

「下手したら劇場公開後に大炎上してたかもですしね……」

 

―――うん、ジャック・ザ・リッパーを演じてる子の歳がね……

 

「それでも大布巻いただけなので、ちょっとだけ炎上しかけてましたからね……」

 

―――FGO終わったなとか言われたものなあ

―――いや『Fate終わったな』と『FGO終わったな』はもう何回言われたかも分からないけど

 

「そういえば篠井さんもそういう声を何度も聞いたと、笑ってました」

 

―――兼続さん(※6)? 直江さん(※7)?

 

 欄外注釈

 ※6 篠井兼続。『エミヤ』『無銘』等の役を演じる。

 ※7 篠井直江。『衛宮士郎』『千子村正』等の役を演じる。

 

「お兄さんの兼続さんの方です(笑)。共演していたのは兼続さんの方ですから」

 

―――なるほど

 

「そういえば、兼続さん達は正義の味方ですけど……

 ロンドンのぼく達の仲間、びっくりするくらい正義の味方感無いんですよね。

 一度図書館に行って調べてみたんです。

 それで『悪いやつばっかじゃん!』ってびっくりしました(笑)」

 

―――(笑)

 

「モードレッドは国と親を壊した反逆の騎士。

 ハイドは残酷な殺人鬼。

 フランケンシュタインはキレて人を殺す怪物。

 そこにアンデルセンとシェイクスピアも加えて……ってなってましたから」

 

―――FGOだから許される味方チームだね

 

「『新宿』もワルな人が集まってましたけど、味方がとても頼れたじゃないですか」

 

―――うん、まさにFGOだ

 

「なんと言うか……そう、正義と悪です。

 Fateって正義と悪がわやくちゃになってるイメージがあるんです。

 正義の味方が居て、正しい人がいて、悪い人だけど優しい人も居て」

 

―――うん。君はその中で、アンデルセンという役を演じたわけだ

 

「アンデルセンは、多分正義にもならないし、正義の味方にもならない。

 正義の在り処に苦悩もしないし、悪いことでも必要ならすると思います。

 なんというか……それがいいんです。

 ぼくはきっとまだそういう苦悩が演じられないから。

 そういうものを上から目線で見下ろす演技だけでやっていける今の形が、きっと最善なんです」

 

―――そういう考え方もあるのか

 

「はい。

 ぼくが何かの役柄で正義を語るのは、もう少し演技を学んでからになると思います。

 でも、やっぱりぼくは愛や正義の方が好きな人間なので……

 そういうものをこきおろすアンデルセンの演技の中に、ぼくらしさが混じるかもしれません」

 

―――アンデルセンなら、それでいいんじゃないかな

 

「はい、ぼくもそう思います。

 毒舌でこきおろしながらも、アンデルセンはそこに別の何かを見てるというか……

 アンデルセンというキャラクターは、きっとその上で、そういうものが好きだと思うので」

 

―――君はアンデルセンという役を、そういうものだと解釈すると

 

「はい。

 なので正義はつっまんねーなー、みたいな顔をして。

 正義の味方みたいなことしてる人の、味方もしたりして。

 どこかの懸命に生きてる人を、素直じゃない演技で励ます役をやっていきたいと思います」

 

―――あ、そうだ

―――今、無銘としてジュン君と共演した人の話になったわけだけど

―――ナーサリーライムと楼座アリカさん(※8)について、違和感はなかった?

 

 欄外注釈

 ※8 楼座アリカ。9歳当時、EXTRAシリーズにて『ありす』『ナーサリー・ライム』の一人二役を演じた。

 

「違和感も反感もありました。

 あ、新ナーサリーライムの方の演技はとても良かったと思います。

 旧ナーサリーライムの代打でも違和感が少ない子をよく引っ張ってこれたなとも思います。

 でも……なんというか……ぼくにとっての『アリス』は、アリカちゃんだったので」

 

―――EXTRAから八年経っちゃったからなあ

―――CCCで君と共演した楼座アリカさんも、もう17歳

―――ロンドンの時、"成長したありす"を見せるか、"別の子供を使う"か

―――そこは結構悩ましいところだったと思う

 

「設定的にナーサリーライムは『子供の味方』じゃないといけないって分かってるんです。

 設定的に別の子供の姿の生き写しになっても変じゃないとは分かってるんです。

 それでも、なんか、納得できなくて。

 あー! 少女が成長しない世界があれば!

 ナーサリーライムがあの姿のままずっと『アリス』で居てくれる平行世界とかあれば!」

 

―――ゼルレッチじゃないとそこには行けないよ(笑)

 

「撮影の時、"ちっこい組"って言われてたんです、ぼくとアリカちゃん。

 だから撮影所の隅っこで一緒に遊ぶこともあったんです。

 ぼくの中ではその時からずっと、アリカちゃんだけがナーサリーライムなんですよ」

 

―――なるほどね

―――演技が上手くても、今のナーサリーライムはだから気に入らないと

 

「演技が気に入らないとかそういうのはないです」

 

―――気に入らないのは性格?

 

「今のナーサリーライムの演者の子も良い子ですよ?」

 

―――むう、なら違和感と反感とは一体

 

「今のナーサリーライムの子が気に入らないというかそういうのではなくて……

 うーん、ぼくのことなのにぼくがよく分からない……あ、そうだ。

 悲しいんです。アリカちゃんとまた同じ役で共演ができないのが、とても」

 

―――…………………………あー、あー。うん

 

「え、なんですその反応」

 

―――EXTRAから八年、CCCから五年か

―――思春期、青春、成長……皆子供のままじゃないものなぁ

 

「なんですかその反応?」

 

―――もし、五年後も君が役者続けていたら

―――五年後にこのインタビューのこと蒸し返すかもしれないし

―――事務所次第ではインタビューのこの辺も本誌には掲載されないだろうけど

―――気にしないで。五年後のお楽しみだから

 

「? はい、よく分かりませんけど、分かりました」

 

―――CCCも深海電脳楽土も愛が恋に負ける話で……まさかこういう話が聞ける日が来るとは……

 

「……?」

 

 

 




 本文と脚注は一部編集された上でインタビューページとして出版されました

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