もしもFGOがゲームではなく大人気実写特撮映画シリーズ『Fate/Grand Order』だったら   作:ルシエド
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 国民的大人気実写映画『Fate/Grand Order』。
 今日もフルスロットル、映画情報誌『シネマトゥモロー』編集部。
 FGO第二部公開記念、各特異点の登場人物にスポットを当てたインタビューコーナー!
 今回の特異点は2016年に公開され大人気を博した『絶対魔獣戦線バビロニア』!
 名脇役シドゥリ役を演じた、四季フラウ氏にインタビューだ!


絶対魔獣戦線バビロニア/シドゥリ役/四季フラウ インタビュー

―――本日は取材に応じてくれてありがとうございます、フラウさん

 

「お久しぶりです。元気にされていましたか?」

 

―――はい、こちらはなんとか。編集部の皆も相変わらずです

―――フラウさんもお元気そうで何よりです

 

「はい、元気です。今も元気に役者をやっております。

 ぎゃおー、ラフムだぞー! ……なんてね。ラフムになっても、私は元気です」

 

―――相変わらずなようで

 

「"分かる子供"にはこれをやると泣かれてしまいそうなので、大人にしかできないのが難点です」

 

―――いや……それは……本気で妥当だと思いますよ!?

 

「去年のことです。

 小さな子供が、街を歩いていた私に話しかけて来たんです。

 その子供は涙ぐんで、私にナイチンゲール印の絆創膏をくれて、こう言ったんです。

 『らふむにならないで』って。

 ……あの役を演じたことを、とても嬉しく、とても後悔した一瞬でした。泣かせちゃいました」

 

―――それは……なんとも……

 

「子供には分からないように、大人には分かるように。

 そんな風に仕込みと演出がされたシーンだったんですけどね……」

 

―――こっちまで辛くなってきました……

 

「では、インタビューを始めましょうか。ご要望はありますか?」

 

―――いえ、本日はそこまでは。フラウさんですしね

 

「では、こちらの好きなように。

 毎週愛読させていただいています。六章までの記事も拝見させていただきました」

 

―――恐縮です。お買い上げありがとうございます

 

「これまでのインタビューは拝見しましたので、少し毛色を変えたいと思います。

 撮影当時のほのぼのとした日常のお話をしましょう。それで大丈夫であれば、ですが」

 

―――撮影当時の日常風景?

 

「それで、読者の皆さんにも演者に親しみを持っていただければ……と」

 

―――なるほど。では、そうしましょうか。予定の質問よりそちらの方が面白そうです

 

「ではまずジャブのような話から。

 巴御前を演じる新稲ちゃん(※1)が言いました。

 『牛若のその服を着てる姿を全国に流されて平気なんですか』……? と」

 

―――……ヘビー級の右ストレートが飛んで来た!

 

 欄外注釈

 ※1 茨新稲。第七章円盤特典OV『獣躙前夜』で『巴御前』を演じる。

 

「義経を演じる佐美ちゃん(※2)は反射的に胸のあたりを隠し、

 『恥ずかしくないわけないでしょう! でも仕事選べる人間じゃないんですよ!』

 と叫びました。

 露出少なめな服でも、十分に女性らしい体の凹凸が目立つ新稲ちゃんを睨みながら」

 

―――ひどい

 

 欄外注釈

 ※2 佐々木紗里佐美。バビロニアでは『牛若丸』を演じる。デビュー当時ウケを狙って付けられた芸名と、デビュー当時自分の芸名を言おうとする度に舌を噛んでいた姿が印象深い。

 

「佐竹さん(※3)は言いました。

 『メドゥーサの時よりヤバい格好ですよね、姫百合さんのそれ……』

 姫百合さん(※4)は言いました。

 『いや、露出度で言えば楓ちゃんの凛からイシュタルへの変わった服の方が……』

 佐竹さんは乾いた笑いを浮かべこう言いました。

 『マジカルルビーよりマシじゃないですかねえ……? いやマシですよ多分』」

 

―――もっとひどくなった

 

 欄外注釈

 ※3 佐竹楓。『遠坂凛』『イシュタル』『エレシュキガル』等を演じる、アルトリアの小松原と並ぶヒロイン・オブ・Fate。

 ※4 姫百合桔梗。『メドゥーサ』『ゴルゴーン』等を演じる。ゴルゴン系の演者では最年長。『エウリュアレ』役の白縫美鈴等からは「お姉さま」と慕われる。40代後半OL役から20代の若き女教師役まで活躍の幅が広い実力派。

 

「私は言います。『シドゥリの服装と比べれば皆さんほぼ全員痴女では?』と」

 

―――台詞の切れ味!

 

「佐美ちゃんは言い訳のしようもない牛若痴女服をタオルで隠し言いました。

 『うるせー! うるせー!』

 そこでジャガーマン役のメイリさん(※5)が笑って言いました。

 『いやあ、なんというか、皆が揃うと露出の多さも目についちゃって』

 『打ち切りの危機が近付いてきてテコ入れで露出が増えた少年漫画みたい』

 『ちょっと面白いくらいお色気お色気してて笑っちゃう!』と」

 

 欄外脚注

 ※5 空島メイリ。『藤村大河』『殺生院キアラ』『ジャガーマン』等を演じる。タイガース以外で始球式をしないとの噂は事実。

 

「全員が声を揃えてこう言いました。『殺生院演じてるあんたが言うの?』と」

 

―――そりゃそうですよ!

 

「メイリさんの殺生院笑いが場を和ませます。

 現場では、stay night時代からの古参メンバーが皆さんを先導していたのです。

 そこでギルガメッシュ役の高良さん(※6)がダンボールを玉座としふんぞりかえりました」

 

―――こ、この流れ、stay nightの時のインタビューで聞いたような見たような……

 

 欄外脚注

 ※6 高良詠司。『ギルガメッシュ』役を演じ、敵役人気投票・味方人気投票のどちらでも一位を経験した大人気演者の一人。話題作『金色の始皇帝』『ローマ皇帝トリケラトプス』などの主演も務める、"若き王"を演じる俳優の筆頭が一人。

 

「佐竹さんは身構えました。

 遠坂凛として彼女は複数の過去作でこの流れを予感していたのでしょう。

 姫百合さんはお茶を飲んでいました。

 のらりくらりとかわすつもりだったようです。

 メイリさんは中座して自然に逃げていました。

 藤村大河と殺生院キアラ、どっちの役もギルガメッシュに対しては弱くはない。

 ですが彼女は自分が演じた二役ほど、無敵の存在ではなかったのです」

 

―――丁寧な惨劇の前振りやめてくれませんか

 

「高良さんは笑いました。

 『いやはや、何年経っても新作が出る度に同窓会のようだ!』

 高良さんと初共演の皆さんが表情をほころばせます。

 ですが、

 『時に佐竹、お前今年でいくつだっけ?』

 と言った瞬間、凄い空気が流れます。

 『何歳でもいいでしょ』

 と佐竹さんが返します。遠坂ヘアーが揺れました。

 『お前が高校生を演じてたのは何年前だったか?』

 高良さんが煽りました。そしてトドメの一言。

 『英霊トーサカを演じられるようになった分、お前は確かに歳を食ったぞ』、と。

 佐竹さんは台本で顔を隠して何も喋らない亀になりました。沈黙の遠坂です」

 

―――ひ、ひどい

 

「沈黙の遠坂の次に、高良さんは王の目で姫百合さんを見ました。

 二人の目が合います。

 何故か姫百合さんの方が蛇に睨まれた蛙のように、石化したように固まりました。

 ギルガメッシュ・アイの破壊力です。君の瞳に乾杯、君の魔眼に完敗」

 

―――即興の小話にFGOの設定を的確に混ぜていくスタイル

 

「『メドゥーサと比べるとおばさん臭いゴルゴーンを的確に演じているな』

 高良さんの言葉がザックリと姫百合さんを叩きます。ゴーンと」

 

―――高良さん仲良くなった演者相手には本当に容赦ないな!

 

「『それは褒めているのかしら?』

 姫百合さんの受け流し返答!

 対する高良さんも冷静です。

 『ああ、褒めているとも』

 『佐竹は今でも高校生の遠坂凛を演じられるだろうし』

 『お前は今でも若きメドゥーサを演じられる』

 『その若作りは才能と努力の賜物だ』

 ふっ、と高良さんは笑いました。

 ほっ、と姫百合さんが"切り抜けた"とメドゥーサっぽい表情をしました」

 

―――メドゥーサっぽい顔とは一体

 

「ゴルゴーンがしないちょっと気の抜いた表情です」

 

―――なるほど

 

「そこで佐智子ちゃん(※7)に高良さんは言いました。

 『この二人を見習うといい』

 『若作りという意味ではかなり理想的だ』

 『歳を食っても若い役ができるのは単純に強みなのだからな』

 高良さんは二人を褒めたのです。キャスターギルのような口調で」

 

―――……? あれっ?

 

 欄外脚注

 ※7 三村佐智子。『ランサーのメドゥーサ(アナ)』を演じる。親戚の『フェルグス・マック・ロイ(少年)』役の三村一刀が芸能界に入ったのを真似し、望んで4歳時に子役デビュー。拙いながらも『アナ』に求められる十分な演技を見せる。

 

「そして佐智子ちゃんは目を細めました。

 『私は露出の多い服がそもそも嫌いなのでこういうのはちょっと』。

 姫百合さんは自分の持ち役たるメドゥーサの、リリィ役のその言葉に、ギュインと俯きました」

 

―――王の財宝は隙を生じぬ多段構えの連続攻撃……!

 

「『高良さん……』

 と新稲ちゃんがあちゃーといった風に呆れます。あちゃーインフェルノ。

 高良さんは慌てて言い訳を始めました。

 『違うのだ』

 『俺はいい歳して10代の健(※8)と甘酸っぱい恋愛をしてる佐竹が気になるのだ』

 『撮影中に藤丸とエレシュキガルの頭の上に年齢の数字が浮かんで仕方ない』と。

 佐竹さんが変な声を漏らしました」

 

 欄外脚注

 ※8 藤井健。言わずと知れた主演・『藤丸立香』役。"個性を抑える汎用型主人公"を魅力的に演じきるハイレベルな演技力などが高評価。

 

―――そこまでやってよく許されましたね

 

「その日のお昼時のことです。

 佐竹さんが『これは凛の分』と高良さんの支給弁当からハンバーグを持っていきました。

 姫百合さんが『これはメドゥーサの分』と煮物や野菜などを持っていきました。

 佐智子ちゃんが『これはアナの分です』とプリンを持っていきました。

 櫻木(※9)が『かわいそうだから白米だけあげよう』と米を盛っていきました。

 白米とゴマだけが残りました。高良さんは笑いながらモシャモシャ食べてました」

 

―――これはこれで酷い

 

 欄外脚注

 ※9 櫻木光宏。『マーリン役』を務める。おそらくおかずじゃなくて米の方をあげたのはわざとだと思われる。

 

「午後には午前の話を聞いたバイソン翼(※10)さんが声を上げました。

 『私も早く因縁のマリー(※11)と共演したいデース!』と。

 バイソン翼さんはケツァルコアトル役だけあり、よく通る大きな声でした。

 あ、ケツァルコアトルの(ケツ)ァルコアトルを撫でようとした櫻木は蹴られました」

 

―――そのくだり要ります?

 

 欄外脚注

 ※10 バイソン翼。プロレスラーであったが、怪我で引退、後に女優に。現役時代の中本マリーの好敵手の一人である、とも言われる。代表作『レッスルエンジェルスシリーズ』『キングオブファイターズシリーズ』他。

 ※11 中本マリー。女子プロレス世界王者決定戦三年連続王者。2014年に吉本興業から中本マリー名義でお笑い芸人としてデビュー。七章の後、『エルドラドのバーサーカー』を演じる。

 

「バイソン翼さんは櫻木にトドメを刺してくれませんでした。

 炎、神をも灼き尽くせ(シネ・コアトル)とかやってほしかったのですが。

 それはそれとして

 『んもー日本の男はこれだから情けないしエロティカルだし嫌デスねー』

 とおっしゃられまして」

 

―――櫻木さんは全国の男に謝っても良いかもしれませんね

 

「そしてバイソンさんは言いました。『櫻木、何か面白いことしろ』」

 

―――雑かつ強烈かつ怖い話の振り方!

 

「櫻木は答えました。

 『ルチャ・リブレなだけにムチャ・ブリだね! あっはっは!』。櫻木は蹴られました」

 

―――そりゃそうだわ

 

「佐智子ちゃんに」

 

―――まさかのランサーメドゥーサキック!?

 

「私はその頃、花咲くん(※12)と箕輪くん(※13)と話しておりました。

 彼らはカルデアの者と顔を合わせる前に、前史として死亡しているという設定。

 彼らと私ことシドゥリの認識が食い違ってしまうことは、万が一にも避けたかったのです」

 

 欄外脚注

 ※12 花咲吾郎。『服部半蔵宇宙戦争』でデビュー。『風魔小太郎』役を演じる。先月の一般女性とのご結婚、おめでとうございます。

 ※13 箕輪龍。ジャニーズアイドルグループ『F8』所属。主に声優業で成功を収める。Fate/Apocryphaから『天草四郎時貞』役でFGOシリーズに参戦。

 

―――円盤特典OV『獣躙前夜』でしか出ない人達ですね

―――ええと……天草四郎と、風魔小太郎と、茨木童子と、巴御前の四人でしたか

―――茨木童子はOVにもいませんけど

 

「あれは真ちゃん(※14)がアホだったせいです」

 

―――それは、まあ、はい

 

 欄外脚注

 ※14 津村真。『茨木童子』役を演じる。「本物のバカにしかああいうキャラは無理、演じるのは不可能」「全身パワーワード細胞の塊」と妙にファンに評価される。絶対魔獣戦線バビロニア撮影初期に、麻薬所持疑惑により、警察署に自主的に出頭。一躍話題になった。

 

「『テレビで麻薬所持俳優の話してる、怖いなぁ』

 『あれ、バッグに入れた覚えのないものが』

 『……白い粉?』

 『……ま、まさか、麻薬!』

 『ど、どうしよう、おかーちゃーん!』

 『あ、はうあっ、どうしたらええねん!?』

 『はっ、償わなきゃ!』

 『悪いことしたら自首しなくちゃ!』

 『それに、麻薬は悪いものだし!』

 『警察の人に私がどうやって麻薬を手に入れたのか教えてもらわないと!』

 で警察署まで行って小麦粉の入ったビニール袋出したアホの話します?

 その後の記者会見で全部真実を暴露しておバカを晒した話します?

 ほんの数日ですけど"FGO、麻薬の庭と化すか"とかとても放送されてた頃の話を」

 

―――いやもう事情は知れ渡ってますし大丈夫ですよ

―――多分

―――あのアホな流れは周知されてて、誤解も完全に拭われた……と思います

 

「おかげで彼女出演内定だったのに出禁ですよ、七章撮影中のスタジオに。もう」

 

―――(笑)

 

「一方その頃高良さんはギルガメッシュをやっていました。

 ティアマト役のシェリーちゃん(※15)が落ち込んでいるのを見て、声をかけに行ったのです。

 彼女は当時、少しですが撮影に参加していることを否定的に語られていました。

 それを気にしている様子でした」

 

―――そんなに否定的には語られていなかった気がしますけどね

 

 欄外注釈

 ※15 シェリー・フェザー。歌手業、声優業で主に活躍。『ビーストII・ティアマト』役の怪演を見せ、無加工での尋常でない高音の叫びにて、多くの視聴者を圧倒した。

 

「ですが、叩かれてはいたのです。少しですけどね。

 彼女は俳優の経歴が浅く、また、前回の出演作の評価がとても低かったのです。

 それを引き合いに出された叩きに、シェリーちゃんは落ち込んでしまっていました」

 

―――なんと

 

「そこに高良ガメッシュが語りかけます。

 『ファンの声ならば受け止めるべきだ』

 『だがファンですらない者の声ならば無視していい』

 『それらの声を無視したいのであれば、一手享受してやらんでもないが』

 高良さんの助言に、年若いシェリーちゃんは目を輝かせました。

 高良さんはおかずがないせいで中々食いきれていなかった白米を口に運びます」

 

―――午後の話なのにまだ白米食ってる

 

「"米一粒も残さず食べきるのが礼儀"が高良さんのポリシーらしいですよ?

 では話を戻します。

 高良さんは言っておりました。

 『今お前を叩いているのはネットでだけ豪腕を振るうネットゴリラだ』」

 

―――ネットゴリラ!?

 

「『ネットゴリラ!?』

 『オンラインゴリラ児童とも言う。略してオリラジだ』

 『オリラジに何か恨みでもあるんですか?』

 シェリーちゃんが驚き、高良さんが話を進めます。

 『ネットゴリラはネットイナゴの進化系だ』

 『ネットイナゴならわたしも知ってますけど……』

 『奴らのネットでの知性はチンパンジーに等しい。ネットチンパンジーだ』

 『ネットチンパンジー!?』」

 

―――高良さんいつもこんな話してるなぁ……

 

「高良さんがふっと笑みます。

 『奴らの書込は"ウキャー"というチンパンジーの泣き声に等しいことしか言っていない』

 『さ、流石にもっと中身のあること言ってる気がしますよ?』

 『それはお前の頭の中が猿に近付いているからだ、シェリー』

 『猿に近付いてる!?』

 『猿の言葉に一理を探そうとしてる時点でお前は猿なのだ』

 『猿……猿!?』」

 

―――流石高良さん、共演者した人が図太くなると評判の男

 

「『そんな余計なことを考えてる時点でお前は猿の引力に引かれているのだ』

 『猿……わたしが猿……?』

 『良いか。悪口言われたら、猿が何か言ってて草ぁ~くらいで流せ。それでいいのだ』

 『いいんでしょうか……いいのかな……?』

 『猿の道理に合わせるから、猿と同レベルになって猿と言い合いになり、炎上するのだ』

 『あ』

 『ネットチンパンジーを無視している人間は炎上しないだろう?』

 『た、確かに』

 『猿と言い合っている人間も猿に見えるから、ムキになって反論したりするのはいかんのだ』」

 

―――かっこいい……

 

「サルガメッシュは続けて語ります」

 

―――フラウさんって語りに小ネタ入れないと死んじゃう病気にでもかかってるんですか?

 

「『シェリー! 人間は猿の書込を気にしない! 気にするのは猿だけだ! お前はなんだ!』

 『……人間です! 私は猿ではなく、人間です! ……これで、いいんですよね?』

 『―――違う! お前は人間ではなくビースト、ティアマトだろうがっ!』

 『えええっ!?』

 『まったく、プロ意識の足らんやつめ……』

 『えええっ……』

 こうしてシェリーちゃんはサルガメッシュにネット人類悪(ビースト)の対処を教わったのでした」

 

―――高良さんstay nightで衛宮士郎役にしてたことと同じことやってる……

 

「皆さん仕事とそうでないタイミングはしっかり分けています。

 シェリーちゃんとサルガメッシュの話が終わったら何が起こるか?

 そう、腕相撲大会です」

 

―――う、ん?

 

「ケツァルコアトルに娯楽提供を求められたマーリ……櫻木が名乗りを上げました。

 『オウッ、ノウッ、話をしよう!?』

 王の話をするとしよう、と言ったのだと私は解釈しました」

 

―――それマーリンがケツ蹴られてOh no 言ってるだけの命乞いの台詞なのでは

 

「というかこれの直前にもう一回コアトルケツに触りに行ってたみたいですね。

 同情する気にもなれない櫻木が語り始めます。

 『トナメの内訳!』

 トーナメント表が張り出され。

 『物見の(うてな)!』

 ダンボールの観客席が作られ。

 『会場の端から君に聞かせよう』

 櫻木は会場の端に逃げました。

 『君達の腕相撲は祝福に満ちていると……罪なき者のみ通るが良い!』

 瞬間、そこに居た女性陣が声を揃えて『櫻木有罪』と言いました。

 何が罪なき者だこいつ。

 『ガーデン・オブ・アヴァロン!』叫んだ櫻木はどこかへ逃げ去って行きました」

 

―――あの人ほんっとうに強いですよね……マーリン的に

 

「かくして腕相撲大会が開催されました。

 主人公気質で飛んだり跳ねたりが凄い藤丸立香・藤井君!

 ギルガメッシュマッスルの高良さん!

 風魔小太郎もやしの花咲くん!

 『士郎内最弱』と言われる天草細腕の箕輪くん!

 優勝候補、レオニダスのミルロ(※13)!

 準優勝候補、弁慶の東海道さん(※14)!

 そしてまさかの参加をしてくれた、山の翁の厳凱おじいちゃん(※15)!」

 

―――うわあ楽しそう。見たい、けど収録とかされてるわけもない……

 

 欄外注釈

 ※13 ミルロ・ハット。『レオニダス一世』を演じる。K-1選手とタレントを兼業していたが、K-1引退後はボディビルダー系タレントとして売り始め、後に俳優業にも活躍の場を広げる。『見ていて楽しい筋肉』がファンの心を捉えて話さない。

 ※14 東海道東海林。『武蔵坊弁慶』を演じる。先行オンライン企画配信版"Fate/Apocrypha"で登場した弁慶役の早逝に合わせ、新弁慶(偽)として抜擢された。監督や俳優など撮影関係者一同の意向で、今でも『真弁慶』を誰かが代わりに演じることはない。

 ※15 厳凱可児蔵。『山の翁』を演じる。昭和の名演者、平成の伝説。彼の孫ほどの年齢の者達が芸能界にデビューする中、動きは少ないが信じられないキレのある剣技と殺陣を見せ続ける。

 

―――本命レオニダス、大穴藤井君で予想します

 

「妥当、ですね。案の定ですが箕輪くんと花咲くんは速攻で負けました」

 

―――あ、シーンカットが無情……

 

「そこで尻ァルコアトルのムチャ・ブリレに捕まったマーリンが引き込まれます」

 

―――え? ……ああ

―――マーリン抜いて七人ですもんね

―――バビロニアの現地で戦った男性のマスターとサーヴァントは八人

―――トーナメントやるにはぴったりの人数である、と

 

「長永さんはああですし、優美亜ちゃん(※16)は演じてたキングゥが中性なだけでしたし」

 

 欄外注釈

 ※16 岬優美亜。バビロニア本編で『キングゥ』を、回想では『エルキドゥ』を、来場者特典配布OV『聖娼シャムハト』ではシャムハトを演じる。

 

―――でも櫻木さん呼んでも

 

「はい、速攻で藤井君に負けました」

 

―――ですよね……

 

「そこで佐智子ちゃんがランサーメドゥーサの鎌で、櫻木の頬をぺちぺち叩きます。

 『純粋に疑問なんですけど、そんな情けない腕力で女性押し倒せるんですか……?』

 13歳の他意の無い言葉でした。

 『もしかしてまだどーてーで過去の悪行全部嘘だったりするんじゃないですか?』

 13歳の他意の無い言葉でした。

 『知ってます、それイキり嘘松っていうんですよね!』

 13歳の他意の無い言葉でした。

 ですがその瞬間、皆が思ったのです。

 ライダーメドゥーサの過去の姿であるランサーメドゥーサは、彼女にしか務まらないと」

 

―――騎は術に対しクラス相性ダメージ二倍! ……ひどい

 

「その後は予想通り、という感じでしたね。

 一番弱い認定がマーリン櫻木。

 その上に花咲くんと箕輪くんの細身イケメンコンビ。

 高良さんと藤井君が熱戦を見せ、高良さんが勝利。

 藤井君に"よく鍛えているな"と高良さんが褒め言葉をかけていたのが印象的です」

 

―――やはり、東海道さんかミルロさんが優勝で?

 

「いえ」

 

―――?

 

「東海道さんを倒したミルロの前に立ったのは……

 藤井君との激闘で体力を消耗した高良さんを瞬殺した、厳凱さんでした」

 

―――なんと!

 

「そして始まる戦い。

 彼我の戦力差は絶対的でした。

 レオニダスと山の翁。

 その二つがぶつかるならば、創作の世界では勝負は分からない。

 けれども現実において、彼らの間には『若さ』という絶対の差があったのです!」

 

―――ごくり

 

「ミルロは役作りのため、見栄えのする実用的でない筋肉も付けていました。

 相手が老人の男性ということもあり、最初から全力も出していなかったでしょう。

 それでも"筋肉量"にある絶対的な差。

 若さによる筋肉の出力差は圧倒的でした。

 厳凱さんは押しに行かず、技量で耐え、堪え、それでも押し込まれ……その時!」

 

―――……っ

 

「佐智子ちゃんが叫びました。『おじいちゃんがんばってー!』」

 

―――おおっ!

 

「佐智子ちゃんは"厳凱おじいちゃん"と優しいお爺ちゃんを慕っていたのです。

 その瞬間、厳凱さんは呟きました。

 『―――晩鐘は汝の名を指し示した』

 誰もがその瞬間、彼を厳凱可児蔵と見ませんでした。

 何の衣装も付けていなかったのに。

 ここは舞台でもなんでもなかったのに。

 その瞬間の厳凱可児蔵が、"山の翁"に見えたのです。

 "山の翁"という力強いキャラクターの役を、彼はその瞬間に演じきり……勝ったのです」

 

――――おおおっ!

 

「あの瞬間のミルロの顔は忘れられませんね。

 もう一度やればミルロが必ず勝つでしょうが……それは負け惜しみというもの」

 

―――おおお……厳凱さん……伝説の剣豪俳優……

―――あの人が演じた『足利義輝』を一度でも見たことがある人間なら、そんな創作みたいな話されても納得しかできませんよ……!

 

「そこに現れ、皆の中心で語り出す櫻木」

 

―――え、帰って

 

「彼は厳凱さんの伝説を語り始めました。

 厳凱さんの武勇伝を流暢に語り始めました。

 語り始めに言った言葉はこうです。『(おう)の話をするとしよう』」

 

―――……そういうアドリブが利くの、本当に櫻木さんって感じがしますねぇ

 

「皆に注目されていることが気持ち良いと言わんばかりに、櫻木が語り始めます。

 穏やかに微笑んでいる厳凱お爺ちゃんの膝の上に、佐智子ちゃんが座ります。

 優美亜ちゃんがお菓子とお茶を皆に配ってくれて、皆が櫻木の語りを聞く姿勢に移ります」

 

―――優美亜さんは相変わらず気遣いの人のようで

 

「あれでバーチャルYouTuberのお仕事の方も成功していれば良いんですけどね。いまいちみたいで」

 

―――優美亜さん、とても美人で、声も綺麗なんですけど

―――……トークの評価はぶっちゃけ微妙ですからね……真面目な人なので……

―――実況って割と才能要ると思いますよあれ

 

「成功している数少ない実況の例なら、ネロ役の……」

 

―――あの人がやってるのはガバガバリアルタイムアタック実況だけなので例外です

 

「それ以外なら、刑部姫役の……」

 

―――あの人がやってるのもガバガバリアルタイムアタック実況だけなので例外です

 

「ガバガバリアルタイムアタック実況ってなんですか?」

 

―――よーいスタート、からゴールまでの時間を測るゲームの遊び方ですよ

―――例えば、聖杯戦争で、召喚契約から退場までのRTAを行うなら

―――バゼットを超える聖杯戦争RTA走者は居ないと言えますね

―――あれが一番早いと思います

 

「なるほど、よく分かりました」

 

―――では、誌面を埋めるため、もうちょっとインタビューにお付き合いお願いします

 

「はい、もう少しお話しましょうか」

 

―――まずは櫻木さんが『僕はさしずめロンドンのファック・ザ・ヒッパーかな』とコメントしてた件なんですが

 

「別の話題でお願いできますか?」

 

 

 




 本文と脚注は一部編集された上でインタビューページとして出版されました

 次回、最終回







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