もしもFGOがゲームではなく大人気実写特撮映画シリーズ『Fate/Grand Order』だったら   作:ルシエド
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 国民的大人気実写映画『Fate/Grand Order』。
 今日もフルスロットル、映画情報誌『シネマトゥモロー』編集部。
 FGO第二部公開記念、各特異点の登場人物にスポットを当てたインタビューコーナー!
 今回の特異点はFGOのクライマックスにしてラストを飾り、大人気を博したかの終局!
 『終局特異点・冠位時間神殿ソロモン』!
 優しき笑顔で支える者、ロマニ・アーキマン役を演じた、長永光流氏にインタビューだ!


冠位時間神殿ソロモン/ロマニ・アーキマン役/長永光流 インタビュー

―――すみません、ピアノの演奏中に。邪魔をしてしまったでしょうか

 

「大丈夫。僕も約束の時間までの暇潰しに触っただけだから」

 

―――本日は取材に応じてくださってありがとうございます、長永さん

 

「お仕事だからね。

 誰として応えるのがいいのかな?

 ロマニか。ゲーティアか。ソロモンか。それとも魔神柱かな?」

 

―――(笑)

―――こうして改めて見ると、本当に多芸ですね

―――終局特異点ではロマニとソロモンを分ければ、事実上の1人75役と言えるでしょうし

 

「声は特殊効果と演技があれば、同一人物だと気付かせないのはそれなりに容易だよ。

 腹と喉と舌で別人の声を作っていけばいいんだからね。本職の声優は凄いもんさ」

 

―――七色の声、とはよく言ったものです。長永さんも十分すぎるとは思いますが

 

「いやはや、俳優としては健くん(※1)やれんちゃん(※2)の苦労には及ばないさ。

 何せ僕の役って特殊効果だらけでアクションなんてほとんどなかったからね。

 魔神柱やゲーティアは声を吹き込んだだけだし。

 ソロモンにも体を派手に動かすアクションは無かった。

 ロマニ・アーキマンに至ってはモニター越しに話しているシーンが半分くらいじゃないかな」

 

 欄外注釈

 ※1 藤井健。『藤丸立香』役を演じる。長永光流を"最も優しい笑顔のFGO共演者"に挙げる。

 ※2 皆浜れん。『マシュ・キリエライト』役を演じる。長永光流を"最もメッセージ性を表現できていたFGO共演者"に挙げる。

 

―――長永さんのあの事件のこともありましたし

―――アクションの無い役運びだったことが不幸中の幸いでしたね

―――大怪我の後は時間を置かないと、体を動かすアクションは難しかったと思います

 

「いやあまさかあの章の撮影期間に路上暴漢(ロードレイジ)に襲われるなんてね、あっはっはっは」

 

―――笑い事じゃないでしょう、いや本当に

 

「顔が傷付けられなくて良かったよ。

 それに、そこまで重傷じゃなくて撮影の参加を続けられたのも良かった。

 白澤監督(※3)や白雪さん(※4)にはだいぶ無茶を聞いてもらったなぁ。

 トラブルでもその後の対応でも、随分お世話になってしまった」

 

 欄外注釈

 ※3 白澤章監督。オーディションの時、迷いなく長永光流を即決で選んだと言われる。

 ※4 白雪冴花。『レオナルド・ダ・ヴィンチ』役を演じる。長永光流を"最も仕事に対する意識が高いFGO共演者"に挙げる。

 

―――月単位の入院沙汰になったのは普通に重傷ですよ……

―――後に聞いた撮影の話では驚きました

―――長永さんは入院中に撮影と声の吹き込みをされていたこともあったとか

 

「僕の都合で変えられるほど撮影スケジュールに余裕はなかったからね。

 幸い、僕はカルデアと通信モニターに映る姿だけで特異点の映像を回せる。

 なら、特異点内で映る僕の映像姿は過去の素材を使い回してしまえばいいんだ。

 そこに後から声だけ合成すればいい。

 近年の病院には防音施設もあるからそこで声を録音してしまえば無問題、だろう?

 ……退院させてくれなかった病院には、とても渋い顔をされたけどね。はははっ」

 

―――本当になんというか……プロ根性ですね

 

「製作側の都合なら、撮影に弊害が出るなら納得できる。

 でも悪漢の都合で撮影に弊害が出るのは納得できない。

 個人的な考えだけど、『ロマニ』が悪い奴の暴力に屈するのは、何か違うだろう?

 逆に"負けてたまるか"って気持ちになったさ。演技にはむしろ気合いが入ったかもね」

 

―――……

 

「役者が舞台の外で役のイメージを損なっちゃうの、あまり好きじゃないんだ。

 それなら私生活とかでも役のイメージを意識しておく方が好きだな。

 映画ではかっこよかったのに、映画の外では悪党に負ける……

 ……そういうの、嫌というか、子供には見せたくない姿だなあって思うんだよ」

 

―――長永さん……

 

「幸い、撮影に工夫をすればなんとかなったからね。

 入院中に声を録って、特異点部分を先に作っておいてもらう。

 撮影期間の終わり際にカルデアパート撮影を回して、僕も急いで退院する。

 退院直後の僕が棒立ちでも違和感が無いよう、カルデアで他の役者が演技を工夫する。

 ロマニの服は包帯やギプスを隠すのには最高だった。

 健くんも、れんちゃんも、白雪さんも……

 カルデアパートの撮影時間がカツカツになったのに、文句も言わずよく助けてくれたんだ」

 

―――完成した映像に違和感はなかったと思います

―――むしろ、ニュースの後に映画を見たファンが"予想以上に回復が早いみたいでよかった"と安心してたくらいですね

―――撮影を休んでも誰も文句は言わなかったと思いますが

 

「予定外の公開延期、ロマニ抜きでの撮影、どちらも作品から良さを削いでしまう気がしてね」

 

―――それは……そういうものでしょうか

 

「かといって僕が情けない演技をしても作品が台無しになる。

 だから入院しないのも、半端な治療で病院から抜け出すのも論外。

 僕の早めの退院を待ってカルデアパートを撮影、という流れになってしまったわけだ」

 

―――そこまでのこだわりは、中々持てないものだと思います

 

「感覚的な話で、申し訳ないんだけれど……

 僕は自分が自分でなくなるのが嫌、というか。

 僕は作品の中で"自分の演じたキャラが死ぬ"のが嫌、なんだね。

 作中で殺されちゃったりするのは良いんだ。

 でも、僕が適当な演技をして……"自分が演じたキャラの魅力が死ぬ"のは本当に嫌かな」

 

―――なるほど……

 

「脚本陣の人達とは定期的に話してたよ。

 ロマニはああいうことする、ロマニはそういうことしない、みたいな。

 楽しかったなぁ。

 長永光流はここにいる。

 ロマニ・アーキマンは架空のキャラだ。

 なのに皆の心の中には、"これがロマニだ"っていう確かな認識があったんだからね」

 

―――物語の面白いところですね

 

「監督、脚本、僕。

 ここには共通する一つのビジョンがあった。

 例えばそれは、僕とダ・ヴィンチ、藤丸とマシュ、そこに『恒例の関係』を持たせたこと」

 

―――ビジョン?

 

「"サーヴァントと出会って導かれる人間"ってやつさ」

 

―――確かに、恒例です

 

「全ての設定が明かされたのは終局だけど……

 僕とダ・ヴィンチちゃんはサーヴァント。

 つまりこの時代の住人ではない死人だ。

 藤丸とマシュは本質的には人間。この時代に生きる人間、という設定だ」

 

―――はい

 

「死人は力を貸すだけ。

 その時代のことは生きている人間が決める。

 人間とサーヴァントの関係は、基本的にそういうものだからね。

 奇しくも、僕と白雪さんは先輩として、健くんとれんちゃんを助ける立場にもなった」

 

―――ですね

 

「運命の出会い、夜を共に駆ける相棒としてのサーヴァントがマシュなら。

 僕が演じたロマニはきっと、サーヴァントとの別れを担当するものだったんだろう」

 

―――かもしれません。ソロモンとしての役目、ロマニとの役目、というか……

 

「まあこれは僕個人の考えだ。

 違う人ならまた別の答えを出すんじゃないかな?

 皆違う。

 皆同じではない。

 この多様性こそが……うん、そうだ。『汎人類史の強み』ってやつなのさ」

 

―――ロマニが二部の重要ワードに言及してるって感じで、ジーンと来る言い草ですね

 

「君もたいがいファンだなぁ……

 僕らはさ、皆で一緒にずっとFGOを撮影してきたんだ。

 役者は何人居る?

 撮影スタッフは何人居る?

 話を考える人間だけで何人居る?

 そりゃもうたくさんさ。なのに皆違うことを考えてたりもする」

 

―――複数人のP、監督と脚本、俳優同士。それぞれが違うことを考えてたみたいですしね

―――シナリオ担当が違うと感触も全然違いましたし

―――まさしく、皆さんでぶつかり合い、助け合ったからこそ、出来た作品だと思います

 

「仲が悪い人達も居た。

 女癖が悪くて女性陣に唾を吐かれてた人も居た。

 演出の人と俳優の人が、演技に関して言い争うこともあった。

 トラブルがキャスティング変更にまで至ることもあった。

 不幸が重なって撮影に参加できないなんてこともあったね。

 トラブルは多く、困難は立ち並び、乗り越えるべきことはたくさんあったんだ」

 

―――けれど、それでも

 

「うん。けれど、それでも。

 皆で同じ場所を目指して、一つの映像を作っていった。

 一人じゃ映画は作れない。

 自分と違う考えの人達と助け合って、同じ方向を目指さないといけない。

 それは……不倶戴天の敵や、宿命の敵と共闘していく、人理修復と同じなんだろうと思う」

 

―――FGOの設定を見ていると、本当にそうですね

―――人理修復でなければ殺し合いをしていそうなサーヴァントはいっぱいいて

―――けれど、皆が同じ方向を向き、同じ目的を持って力を合わせる

―――長永さんの言う通り、これは映画の作成に近いものがあります

 

「だからこそ、僕は思う。冠位時間神殿こそ……FGOという物語の、象徴と凝縮だと」

 

―――全ての者と全ての力。敵も味方も全ての者が、力を貸してくれましたからね

 

「敵だった者、味方だった者、全ての力を一つにして未来を取り戻す物語。

 ロマニ・アーキマンとソロモンの最期として、あれ以上の物は求められないね。

 白雪さんも問題を起こしたけど、戻って来れたし。

 ……いやそんな単純な話じゃないとは思うよ?

 白雪さんと他の人の摩擦はそのまんま残ってるからね。

 でもほら、やっぱりさ、嫌いな人とも協力して同じものを目指せるって思いたいじゃないか」

 

―――そうなれば、素敵ですよね

 

「良い映画を取りたいって意志一つで、皆一つになった。

 自分を最高の形で魅せたい人間も集まってるんだから……

 最高のものを作りたいって気持ちで協力できることもあるさ。

 そうなってほしい。

 これからもそういう形が続いてほしい。

 ……こういうインタビューしておけば白雪さんも問題起こさないように気を付けてくれるかな」

 

―――あ、はい。それっぽく編集しときます

―――ちょっとは考慮してくれると思いますよ、多分

 

「うーん、希望的観測だぁ」

 

―――そろそろ時間ですね

―――藤井君、皆浜さん、白雪さんが来る頃です

―――そうなったら四人での合同インタビューの方に移ると思いますが、何か他に残したい個人メッセージなどはありますか?

 

「無いね。

 ファンにちゃんと言うべきことは、終局特異点の後に言ってきた。

 サーヴァント・ソロモンとしての言葉も。

 人間・ロマニとしての言葉もね。

 別れの言葉もこれ以上は蛇足さ。ソロモン・オルタとかが出たらまた別だけど」

 

―――(笑)

 

「さて、それじゃあ皆が来るまで、一曲弾いていようか」

 

―――流石、シンガーソングライター

 

「こういう技術も、さっき言った事と同じさ。

 皆違うんだ。できることも、得意なことも、苦手なことも。

 だから互いの欠点を補い合ったり、ぶつかり合ったりもする。

 それぞれが違う『美しいもの』に感銘を受けたりもする」

 

―――この旋律は……

 

「FGO一つ見ても、ファンごとに、それぞれ好きになった『美しいもの』は別だったりもした」

 

―――『消えない思い』。今でも、Fateを代表する音楽の一つ……

 

「死や喪失の後にも、消えない想いがあるっていうのは、素敵なことじゃないかな?」

 

―――……はい

 

「そういうものを伝えられる作品は、とても美しいものだと、僕は思う」

 

―――はい

 

「それが僕の思った、僕の見た『美しいもの』。

 "ロマニ"はまた別のものを美しいと思ったんだろうけど、それは置いておこう。

 人によって、Fateの作品群に見た『美しいもの』は違うだろう。

 神話の時代の後悔の解決。

 因縁のサーヴァントとの決着。

 心についた傷の快癒。

 不可能を可能にした頑張り。

 かつて敵だった者との共闘。

 愛と恋。

 信念や妄執。

 運命の出会い。

 輝ける心の描写。

 力を合わせて起こした奇跡。

 掴み取った力と勝ち取った希望。

 人によって、それぞれが違うものに対し、『本当に美しいものを見た』と思うんだろう」

 

――そう、ですね

 

「人生なんてたったの数十年さ。

 映画の物語ならシリーズでも数時間から数十時間。

 ゲームの物語だってそうだろうね。

 物語を見たという刹那を繋げて、人間は何十年も人生を楽しんでいく。

 人生という刹那を繋げて、人の世界ってものはずっとずっと続いていく」

 

―――物語と、人生と、人世

 

「これを、『輝かしい、星の瞬きのような刹那の旅路』と言うのさ」

 

―――命とは終わるもの、生命とは苦しみを積みあげる巡礼

―――けれど、決して死と断絶の物語ではない、と

 

「君はいつもいい感じにファンやってるね」

 

―――いつもいい感じにロマニやってくれてる長永さんには負けます

 

「そうかな? ……お、健くんと、れんちゃんと、白雪さんが来たね」

 

―――最後に四人揃っての笑顔の一枚絵を撮影する予定です

―――それまでは、ご自由に

 

「それじゃ、想い出を語ろうか。まずは、藤丸とマシュが出会ったところからかな」

 

―――お願いします。どうか存分に語ってください。それだけで、きっと楽しいと思いますから

 

 

 




 本文と脚注は一部編集された上でインタビューページとして出版されました

 これにて完結です。皆さんもこういうの書きましょうぜ!
 連載にお付き合いいただき、ありがとうございました






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