もしもFGOがゲームではなく大人気実写特撮映画シリーズ『Fate/Grand Order』だったら   作:ルシエド
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 国民的大人気実写映画『Fate/Grand Order』。
 最初期からこの映画を肯定的に、かつ誠実に記事にしてきた映画情報誌『シネマトゥモロー』編集部。
 今回は映画公開と婚約発表を同時にするというウルトラCでとんでもない話題性を呼んだ『永久凍土帝国アナスタシア』特集!
 カドック・ゼムルプス役/北上時尾氏、アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ役/西村里奈氏にインタビューだ!


永久凍土帝国アナスタシア/カドック・ゼムルプス役、アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ役/北上時尾さん、西村里奈さん インタビュー

―――ご結婚おめでとうございます、北上時尾さん、西村里奈さん

 

「いや僕らまだ婚約発表しただけなんですが」

 

「凄いわ、シネマトゥモローさんの脳にラムネと炭酸をぶちこんだノリがそのままよ」

 

―――お褒めいただき光栄です

 

「え、褒めてるの? 里奈今褒めたの?」

 

「シネマトゥモローさんはひと味違う雑誌だもの。

 取材対象を悪く言ったら死ぬ人達だから信頼できるわ」

 

―――ではまず馴れ初めから聞いてもいいでしょうか

 

「僕が―――」

 

「私が一目惚れして、交際を申し込みました。

 あれは夏頃だったでしょうか。

 海でぼうっとしている彼を私が見つけたんです。

 その時、運命を感じました。

 おそらくは、一秒すらなかった光景でしょう。

 されど。

 その姿ならば、たとえ地獄に落ちようとも、鮮明に思い返すことができます。

 あの日、私は運命(かれ)と出会ったのです。

 ……『アナスタシア』には、あの別れの瞬間まで終ぞ見られなかった光景だと思います」

 

―――ロマンチックですねえ。交際はそこから始まったんですか?

 

「僕は―――」

 

「はい、そこからバリバリに。

 こちらから誘わないとデートもあまり誘ってくれないんですもの。

 そりゃもうガンガンと。ドキドキしてもらわないと始まりませんし。

 ドンドン攻めて、サクサク関係を進め、時には部屋でゴロゴロしました」

 

―――臨場感たっぷりの説明をありがとうございます(笑) 近年の女性は強いですね

 

「僕の―――」

 

「生まれてこの方女性経験の無い方でしたので。

 私が世界で一番彼を愛していることをまず理解させました。

 その次に私が世界で一番彼を幸せにできることを納得させました。

 パーフェクトなチェックメイトです。

 後は八十年かけて世界で一番に幸せな人生を送らせるという最難関ミッションだけですね」

 

―――なるほど。ここからが本番だと

 

「僕が置いて行かれてる感がすごい! 一言も話せてない!」

 

「あなたを置いて私がどこかに行くわけないじゃない」

 

「里奈……」

 

―――水臭いですよ、私だってこんな話題沸騰中の激アツネタを置いて行きませんとも

 

「え、ここでインタビュアーさんも乗ってくるんですか!?」

 

―――時尾君の良さを引き出すにはこのくらいのノリが良さそうだと判断した

 

「まあ、流石シネマトゥモローさんはよく分かっていらっしゃる」

 

「なんだこのややこしい相互理解!

 ええい、里奈が僕を好きみたいな話ばっかしてますけど!

 実際は里奈より僕の方が強く愛してるんです! 僕の方が上なんですよ!」

 

―――おお……

 

「まあ、恥ずかしい。勢い任せでなく、普段からそういうこと言ってくれれば嬉しいのに」

 

「愛の言葉は必要な時にだけ言うものだろう。じゃなきゃ陳腐になる」

 

「……ええ、それが正解よ。そんなあなたが好き」

 

―――いいよー、いいですよー、もっと抉り込むように強烈なのをください

 

「何だこのインタビュアーさん……ええと、何を語ったらいいのか」

 

―――そうですね。これは編集部に許可を貰ってきたんですが

 

「はい?」

 

―――カドックとアナスタシアっぽく絡んでください

 

「……もしかしてさっき撮影した写真とセットで掲載するつもりでは」

 

―――はい

 

「うわぁ改めてそういうことするの恥ずかしいですね」

 

「やりましょう、時尾さん」

 

―――お願いします

 

「分かりました。えー、こほん」

 

 

 

「―――アナスタシア」

 

「カドック……」

 

 

 

―――素晴らしい

―――先程まであったバカップルのベタついた熱量がどこにもない

―――どこか冷え切っていて、乾いていて

―――諦めきれない弱い男と、全てを一度諦めた後の強い女

―――だからこそ『支え合う』男女の関係

―――熱量が感じられないが、それでも強い繋がりは感じられる……そんな二人

―――まさしく、二部のロシアの最後で私が見たものです。感服しました

 

「この感想、この人本当に編集者だったみたいだぞ。里奈」

 

「時尾さん、もしかして今この瞬間まで疑ってたの?」

 

―――言うなれば、踏み固められた雪

―――カドックもアナスタシアは踏む側ではなく踏まれる側

―――だが踏まれたという過去が彼らを強くした

―――見下され、踏みつけられ、けれどそのために鉄よりも硬くなった二人の心

―――鉄よりも強い二人の絆

―――雪は溶けるから美しい、とも言います

―――強く繋がっている、打たれ強い、けれどいつかは溶けてしまう……そんな二人

 

「なんだこの人なんなんだ」

 

「シネマトゥモローは映画の評論書く時だけは本当に真面目なのよ」

 

―――藤丸立香とマシュはもうシリーズの中でやや甘ったるいくらいの関係が完成してますからね

―――それは悪くはないのですが

―――逆に言えばあちらは、やや甘酸っぱさや暖かみを感じる関係ということです

―――そこに、冷たく乾燥していても、強く確かに繋がるお二人の関係は新鮮でした

―――マスターとサーヴァントの関係はFateの肝の一つです

―――カドックとアナスタシアは、一種の原点回帰と言えるのかもしれませんね

 

「ですね。

 僕は過去作だと、言峰とギルガメッシュの主従関係が一番好きです。

 あ、主従関係って言うと何か違うかな(笑)。

 でもあの変化球気味のひねったかっこよさみたいなのが好きなんです」

 

「私はフィオレとケイローン……いえ、やはりイリヤとヘラクレスですね。

 あの主従が一番好きです。

 知ってますか? 時尾さん、男性のみの主従が基本的に好きなんですよ。

 ところが私は男女主従ばかりが好きで、好みが全然合わないんです(笑)」

 

「ちょっと(笑)」

 

―――(笑) それぞれの絆で結ばれた主従がぶつかり合う

―――ゆえに、勝利しても後味が悪かったり、思わず敵側を応援してしまったり

―――これこそがFate……『聖杯戦争』だ、という印象も受けた二部でした

―――FGO一部も文句のつけようのない出来でしたが、二部はそういった面も評価されています

―――あなた方が『マスターとサーヴァント』を最初に、きちんと魅せてくれたこと

―――ただ一人のファンとして、感謝しかありません

 

「あ、ありがとうございます。そこまで褒めていただけるとは……」

 

「普通インタビュアーは無個性に徹するものよ。

 インタビューで読者が見たいのは役者の発言なのだから。

 余計なインタビュアーの自己主張は時に読者の反発を招きかねない。

 でもシネマトゥモローさんは十年はこのスタンスも使って、人気を博しているの」

 

―――ありがとうございます(笑) 編集部一同、西村さんのその言葉だけで感涙します

 

「休憩時間に僕らは他の演者の方とも話しました。

 まだネタバレになるので、僅かな情報でも語れませんが……

 『マスターとサーヴァントの関係性を見せた上でのバトルロイヤル』

 という意味では、期待していいと思います。これはまさしく、七陣営の聖杯戦争ですから」

 

―――ロシアが落ち、残りのロストベルトは六。ここから更に激化するというわけですね

 

「異端の参加者という意味では……

 カルデア側がギルガメッシュのポジションなのかもしれません。

 『前回の戦争の生き残りである八陣営目』という意味でもそうです。

 いずれは……本当に主人公のような異聞帯ともぶつかり合ったりするかもしれません」

 

―――イヴァン雷帝、アタランテ、といったロストベルトを本当に守ろうとした者達

―――アヴィケブロン、ビリー、ベオウルフ、サリエリ、それでも味方をしてくれた者達

―――カドックとアナスタシア

―――そしてパツシィ

―――彼らの存在を前提に、カルデアはどう進んでいくと思いますか?

 

「迷いはすれど、止まることはないと思います。パツシィがいましたから」

 

「最後の最後まで勝ち抜くでしょう。パツシィがいましたからね」

 

―――ですね

 

「衛宮士郎だって友達の慎二が死んでも止まりませんでした。

 最も信頼するセイバーが敵に回っても止まりませんでした。

 HFなんて止まってもいいのに止まりませんでした。

 僕は、本来の聖杯戦争っていうのは、そういうものだと思います。

 正義ってなんだ、何するのが正しいんだ、って正義の味方の士郎くんが壁にぶつかって。

 『願い』と『正義』が別だってことを突きつけられて。

 その上で彼はルートごとに別々の正しさを見つけて、他人の願いを踏み越えていくんです」

 

―――それが、聖杯戦争ですからね

 

「冬木の聖杯戦争が皆に望まれてるかっていうと、そうではなくて。

 むしろ人が巻き込まれる分、皆が望むのは聖杯戦争の即時停止なんですよね。

 だから冬木の聖杯戦争では士郎は戦争を止めるために戦った。

 そして最後は大体聖杯の破壊と、聖杯戦争の原因の除去という形に収まるわけです」

 

―――士郎君は戦いを止めることが正しいと思ってる、というのが始点ですからね

 

「その過程で色んな願いが出て来るわけです。

 過去の後悔。

 親の遺志。

 自分と愛する人の幸せ。

 士郎君は戦いの中でそれらの願いを終わらせることもあれば、正義を捨てることもあります。

 僕が演じたカドックは少しHFの士郎君にイメージを寄せました。

 彼は自分の中のどうしようもない劣等感を乗り越える過程にあって……

 もしも、ですけど、それを乗り越えられたら、アナスタシアだけの味方になったのではと」

 

―――おおっ

 

「最後の令呪は『皇帝になれ』だったじゃないですか。

 あそこは自分の我儘でリテイク何度もさせていただきました(笑)。

 言葉にできない思いがあそこにいっぱい詰まっているんですよ。

 "ここから始めるぞ"とか。

 "僕と一緒に勝って皇帝になれ"とか。

 "イヴァン雷帝の守ろうとしてた世界をこれからは僕達が"とか。

 "お前とお前の家族が奪われたものを取り戻せ"とか。

 たくさんの想いがこもってるんですけど、カドックはアナスタシアを想いながら言ったんです」

 

―――カドックは設定上、アナスタシア皇女の人生を知っていたでしょうからね

 

「演じた僕の脳内設定ですけど、

 『絶対に勝て』

 と言おうとして、アナスタシアの背中を見て思わず

 『皇帝になれ』

 って言っちゃったんだと思います、カドック。ここに彼の心理が出てる感じです」

 

―――令呪の力で踏ん張り、限界を超えたアナスタシアの粘りの演技は見事でした。西村さん

 

「ありがとうございます。

 アナスタシアが、カドックを一方的に支えてるように作中では見えますが……

 実際はそうでもないんじゃないかと思って演じさせていただきました。

 アナスタシアはカドックがいたからあそこまで頑張ってくれて、支えてくれたんだと思います」

 

―――そうなのですか

 

「作中で、コヤンスカヤとマカリー司祭が二人の関係に口を出すシーンがありましたよね?」

 

―――ありましたね

 

「あれが本当に的を射ていると思います。

 諦めていないから弱気なカドック。

 諦めた後だから強気なアナスタシア。

 カドックは弱く、アナスタシアは強く、カドックは一人だと間違える。

 でも本当は、アナスタシアの生きる目的は、カドックとの出会いの後に得たものなんです」

 

―――なるほど

 

「白澤監督も、本来汎人類史のアナスタシアにああした願いは無かったと言っていましたし」

 

―――あれはあのアナスタシアだけのもの、であるというわけですね

 

「ロシアの異分史。

 皇帝の禅譲。

 そして、カドックを守り、導き、共に歩むこと。

 アナスタシアがあの『聖杯戦争』にかけた願いは、マスターに貰ったものだったんです」

 

―――冬木にも、そういったサーヴァントは何人か居ましたね

 

「最後の戦いになると、もうカドックとアナスタシアは互いだけ見てたんだと思います。

 カドックは最後の令呪をアナスタシアのためだけのものに使った。

 アナスタシアは自分よりもカドックの命を上に置いていた。

 あの一瞬、二人は藤丸とマシュとほとんど同じ関係だったと思っています」

 

―――そうだとしたら、悲しくも嬉しく思えます

 

「聖杯戦争は、願いをかけて戦う物語だと私は思います。

 そして、サーヴァントとの別れに終わり、祈った者の願いが叶う物語でもあるとも思います。

 そういう意味では……カドックとアナスタシアの物語はここで一旦、終わりなのですね」

 

―――綺麗な終わりではあったと思います。続編が期待されますね

 

「はい」

 

―――ある程度平和な世界で、冬木の士郎とアルトリアのようなデートをする二人も見てみたかったものです

 

「僕の個人的なイメージですけど……

 カドックって自分からアナスタシアと腕組んだりしませんよね。

 典型的な、そういうことするの恥ずかしいから自分からはやらないタイプ」

 

―――(笑)

 

「じゃあ私も個人的なイメージ。

 アナスタシアはからかい目的でカドックと腕組めるタイプだと思います!

 それでカドックは顔を赤くするけどアナスタシアは涼しい顔をしているイメージです!」

 

―――ありそうですね(笑)

 

「それでそれで、私と……

 ……じゃなくて、アナスタシアとカドックのデートと、藤丸&マシュが会ってしまうとか?」

 

「藤丸とマシュは……なんか僕の中では逆に腕組まないイメージですね。

 街でデートしてる時、ふっと手が触れて互いを意識しちゃうイメージというか。

 手を繋ぐのが恥ずかしいからと、小指だけ絡めて、二人して顔を赤くして街を歩いてる……

 ……そんなイメージです。知り合いを見つけると絡めてた小指を慌てて離す、みたいな」

 

―――あー、いいですね! あの二人っぽい!

 

「こういう日常話になると、共闘展開とか来ないかな、なんて僕は思っちゃいます」

 

―――最初の藤丸立香が黒髪に白い『魔術礼装・カルデア』でしたからね

―――そこにカドックの白髪に黒い服というデザ

―――二人を背中合わせで共闘させたりすれば、コントラストが結構美しいと思いますよ

 

「でももう着替えちゃったじゃないですか、藤丸(笑)」

 

―――そうなんですけどね(笑)

―――あの黒い新デザインの服も世間では好評ですよ

―――服が色から黒になったことで、『手を汚す覚悟』を表現したとか

―――まさに二部を表現した着替えですね

 

「あ、私の聞いた話で、公式発表でなくて申し訳ないのですが……

 二部のあの黒いマスター服ですが、起案時点ではそういう意図は無かったそうです」

 

―――そうなんですか?

 

「本来は最初と同じ上白・下黒の、一部と同じ服で行く予定だったそうなんです。

 最初のカルデアの服で、撮影も始まったんですが……その……

 積雪と豪雪の世界の中で、一部のカルデアマスター服は、白すぎて見えにくかったらしく」

 

―――(笑)

 

「それでまず、『ロシアの豪雪の中でも目立つ』黒い服が考案されたそうです。

 ロストベルトごとに別の服を着させるという案もあったそうですよ。

 結局それで上がってきたデザインがとても良かったので、二部の服に正式採用されたとか」

 

―――アナスタシアはヴィイの特殊効果で目立たせていましたが、確かにあの服は……

―――うん……そうですね。雪の中では見辛かった気がします

 

「今回の主要登場サーヴァント達の色合いはその辺りを考慮されていたらしいですよ。

 もしセイバー・リリィが登場予定だったなら、大幅にデザイン変更されていたと思います。

 ……アナスタシアは随分前からデザインを決定して広告も出していたので、変更無理でしたが」

 

―――(笑) お二人は、お付き合いを始めて、何か変わったことはありましたか?

 

「僕、恋人見せつけてくるやつ殺したいくらい嫌いだったんですよね」

 

―――え、あ、うん

 

「でも、里奈っていう最高の恋人が出来たんです」

 

―――今度は君が見せつける番だね

 

「いえ、そういう話ではないんです。

 こっそり彼女と付き合ってからも、奴らは僕にイチャイチャを見せつけてきます。

 里奈ほど顔や性格がいいわけでもない恋人とのイチャイチャを見せつけて来るんです。

 不思議と落ち着いた心で、僕は里奈の顔を思い浮かべ、余裕の心でこう思いました」

 

―――うん?

 

「ああ、彼らは石油王に小銭を見せびらかしているんだな……と」

 

―――凄いこと言ってんな君! ここ編集でカットしておくからね!

 

「ありがとうございます」

 

「ごめんなさい、時尾さん時々劣等感や悔しさでこういう感じになる男の子なので……」

 

―――美人の恋人を得たら油田得た石油王気分になる人とか初めて見たよ……

 

「私の方は、その……事務所の先輩との関係が……」

 

「それは私のことかな!」

 

―――あっ

 

「と、塔堂さん! 何故ここに!」

 

「私より先に結婚しないって約束したじゃないかぁ……なにチン負けしてんだよぉ……!」

 

―――塔堂さん、下ネタは普通に最低です

 

「あ、あの、そのですね、先輩、塔堂さん、その」

 

「事務所で私のキュケオーン美味しい美味しいって言ってくれたくせに!

 嬉しかったんだぞこんにゃろう!

 油断させて背中から刺す裏切り者め! なんとか言ったらどうだ!

 何で事務所の皆私にだけ黙ってたんだ!

 私がこういう反応すると分かってたからか!? 大正解だよ褒めてやる!」

 

「あ、キルケー役の塔堂さんだ」

 

―――面白いからこの流れの原稿掲載許可とか下りないかな……

 

「余裕ですね……あ、里奈が塔堂さんから距離を取った」

 

―――さて、どういう会話になるか

 

「塔堂さん」

 

「なんだ里奈!」

 

「私、塔堂さんを尊敬してます」

 

「……お、おう?」

 

「学生の時は、塔堂さん主演のドラマを毎週楽しみにしてました。

 『元人間のブタ。をプロデュース』、今でも好きな作品です」

 

「そうか。それは嬉しいな。ファンの声はいつでも嬉しいものだ」

 

「塔堂さんは先輩として励ましてくれたこともありました。

 辞めたら負けだと。

 芸能界に残り続けた者だけが勝者だと。

 そう言いながら、ドラマでの活躍を続ける塔堂さんは、輝いて見えました」

 

「……ん、そんな風に見られてたのか」

 

「第一線で輝き続けるあなたこそが勝者でした。

 私は負けず嫌いで、敗者になりたくなかった。

 だから私はあなたを目標に頑張って……

 今では、ゴールデンのクイズ番組のレギュラーにまでなれたのです」

 

「それは君の実力だ。君が頑張ったからだよ、里奈」

 

「今までありがとうございました。

 今までずっと塔堂さんのやり方を目指し、私は勝者だけを目指して来ました。でも……」

 

「……ん?」

 

―――流れ変わったな

 

「惚れた方が負け、というものです。

 私は惚れて敗者になりました。

 私は喜んで敗者になろうと思います」

 

「うわあああああっ!」

 

―――ご覧、時尾君。これが勝者と敗者だよ

 

「このインタビューの録音本当に雑誌に載せられるんですか!?」

 

―――炎上しないように載せる時は編集するのが汚い大人ってものなんだよ、時尾くん

 

「これが……大人の世界……?」

 

「そこの男二人! 里奈になんか言ってやってくれ!」

 

―――時尾君、ロシアロケはどうだった? 美味しいと思った食べ物とか

 

「暖かいものですね。肉がどさっと入ったボルシチがとても美味しかったです」

 

―――セリョートカ・バト・シューバは食べた?

 

「あ、あれびっくりしました!

 外見はケーキ、カテゴリはサラダ、食べてみるとニシン。

 ポテトや野菜の風味が魚の生臭さを消してて美味しかったです。

 動物の肉がたくさん入ったボルシチと一緒にいただきました」

 

―――やっぱり暖かいものが一番だね

―――私が前に行った時は野菜たっぷりの赤いボルシチと肉と芋のパイ(ピローグ)が美味しかったよ

 

「やっぱり取材で行ったりするんですか? あんな寒い場所なのに」

 

―――時々はね

―――白澤監督は確か、イリヤとバーサーカーの撮影の時、反省点が色々あったっていうから

―――今回は所々で、『雪の中のマスターとサーヴァント』を凄く美麗に撮れてたようだ

 

「ああ、あの雪の中でカドックとアナスタシアが向き合うシーン!

 あれそういうことだったんですか! 今見るとどことなく雰囲気が似てる!」

 

―――だからあそこで……

 

「聞けよ! 世間話してるんじゃない!」

 

―――あっ、あっ、塔堂さん襟掴んで揺らさないで

 

「他人事じゃないだろ! 聞けよ! そしてこの苦しみを取り除いてくれ!」

 

―――いや他人事……って言い切りたくないのが悲しいファンのサガです

 

「助けて! 助けてくれ! この哀れな29歳を!」

 

―――助けたいのに助ける方法が分からない、ってこれFGO感ありますよね

 

「結婚は人理の修復より難しいんだよ! 分かれ! 分かってくれ!」

 

―――でも私、藤丸立香とマシュは特に何かしなくても自然にくっつくだろ説派ですし……

 

「現実と創作をごっちゃにするんじゃない! キルケーヘルプだ! 私を助けてくれ!」

 

―――私達がFGOから学んだことは、自分の救いは自分で掴み取るとかそういう教訓で

 

「『人類史が滅びてもきっと誰かが直してくれる』って解釈もできるだろ!

 私の婚期が焼却された場合も婚期修復してくれる誰かがいたっていいじゃないか!

 このままだと私は永遠にソロ! ソロモン! 喪術王ソロモンになりかねない!」

 

―――なんで私はこの人のファンやってんだろう

 

「十年ファン続けてから何言ってんだ!」

 

―――……

 

「悩むな! ファン辞めるかどうかをそこで悩むな!」

 

「なんかこれ木曜どうでしょうで似た感じの見たな、里奈」

「見たわね」

 

「くそっバカップルが不可視型ケイオスタイド撒き散らしてる……!

 私の体と心が蝕まれて反転(オルタ)化する……! 耐えきれない……!」

 

―――そろそろインタビューのまとめに入りましょうか

 

「「 え、これこのまま放置でいいんですか? 」」

 

「息ぴったりか! 見せつけてくるなぁ!」

 

―――婚約発表の反応は概ね好評です

 

「はい」

 

―――この先、お二人には良いことも悪いこともあると思います

―――例えば、名作の弊害現象

―――あまりにも作品の人気が出ると、その役者に固定イメージを持たれてしまいます

―――お二人のカップリングは大人気ですが、それもまた諸刃の剣

―――固定イメージを持たれてしまうこともあるでしょう

―――また、若い内の婚約発表ということで、『独身』という売りもなくなってしまいます

―――ファンの一部が減ることもあるでしょう

―――その上で言わせてください

 

―――応援しています。頑張ってください

 

「はい!」

「はい」

 

―――時尾君、今撮ってるっていうポカリスエットのCMも頑張って

 

「はい!」

 

―――西村さん、女優としてもタレントとしても成功しているあなたの躍進を、願います

 

「はい」

 

―――塔堂さん、若人二人の門出に何か応援メッセージを

 

「鬼か君は!?」

 

―――名を売るチャンスですよ。いい感じにお願いします

 

「本当に私のファンかこいつ……

 あー里奈、不安なこととかある? 本当に独身って売り捨てちゃって大丈夫?」

 

「わからないこと、かわらないこと、どちらも私はちゃんと分かっています」

 

「むっ」

 

「分からないことは未来。変わらないものは私達の愛」

 

「……」

 

「どちらも、今の私にとっては、心躍らせるものなのです」

 

「……結婚する時は皆似たようなこと言うんだ。上手く行かなかった夫婦もそうだった」

 

「やっぱり、祝福はできませんか……ごめんなさい、塔堂さん」

 

「まあ嫉妬は多大にあるっちゃあるけどさ。

 ……だけど、それはそれとして、嬉しい気持ちも、祝福したい気持ちもある」

 

「!」

 

―――塔堂さん……

 

「あらゆるものは永遠ではなく、最後には苦しみが待っている。

 だがそれは、断じて絶望なのではない。

 限られた生をもって死と断絶に立ち向かうもの。

 終わりを知りながら、別れと出会いを繰り返すもの。

 ……輝かしい、星の瞬きのような刹那の旅路。これを愛と希望の物語と云う」

 

―――!

 

「結婚とは契約だ。

 私の残りの人生全てをあげます。

 だからあなたの人生の残りの全てをください。

 死が二人を分かつまで、ずっと一緒に居ましょう……そんな、原初の契約」

 

「塔堂さん……」

「塔堂さん、里奈……」

 

「結婚のその瞬間は、まさに愛と希望の結晶と言えるだろう。だから、頑張れ」

 

―――……

 

「私は今日まで舞台の上の里奈も応援してきた。

 でもこれからは里奈の私生活も上手く行くことを願う。……応援している」

 

「……塔堂さん!」

 

「なんだその顔は。今をときめく若手女優がなんて顔してるんだい」

 

「もし、もし子供が出来たら、その時は……

 子供には、塔堂さんの美味しいキュケオーン食べさせたいと思います!」

 

「はっ、私より上手く作れるものか! 身の程を知りたまえよ!」

 

「……はい。ずっと、私が勝てる気がしない、そんな先輩でいてください」

 

「私はキルケーで、君はアナスタシアだ。ま、どこかでまた同じ舞台に立つさ」

 

「その時は、またお世話になります。よろしくお願いします!」

「その時は、僕もお世話になるかも知れません。よろしくお願いします」

 

「ああ、全く、素直に嫉妬くらいさせろ気の使えない若人共め!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――さらりと暗唱しましたね、自分のものでもないFGOの長台詞

 

「一度でも見たことのある作品の台詞の暗唱、大女優(予定)の私ができないと思ったか?」

 

―――流石です

 

「それに、まあ……私もこの作品シリーズ、好きだからな。好きなものは覚えている」

 

―――時々舞台挨拶でこういうグッとくること言うから固定ファン居るんですよ塔堂さん

 

「はっはっは、もっと褒めろ。私褒められるの大好き」

 

―――感動しました。ファン辞めてましたが、塔堂さんのファンになります

 

「待て! さっき無言でファン辞めてたのか!?」

 

―――正直マスコミに煽られてるだけで29とかまだ余裕の年齢だと思いますよ

 

「やかましい! 男には分からないんだよこういうのは!」

 

 

 




 本文と脚注は一部編集された上でインタビューページとして出版されました

 この後から第一部もやるのでもうちょっとだけ続くんじゃ(冠位時間神殿まで)







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