ハリー・ポッターと不死の咎人   作:カドナ・ポッタリアン

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 フィオラ・レシューダside

 

 

 ハリー・ポッターがスリザリンに入った。

 その光景を目にした時、大半の生徒と教員は驚いたようだけど、私は大して特別な感情は湧き上がらなかった。

 ーー嗚呼、まぁ、そうだよね。

 という具合に、寧ろ納得した。

 

 だって彼、きっとマグルに対する憎しみを持ってるもの。組み分け帽子がそこまで読めたかは分からないけど、ポッターの本質は、紛う事なくスリザリンよ。

 環境は人を変える。

 幾ら彼がジェームズ・ポッターとリリー・エバンズの息子だといっても、勇気に満ち溢れた正義感の塊になるとは限らない。そういう期待をすべきではない。

 彼が元々どういう人間なのかなんて私は知らないけど、けど……ポッターはスリザリンで良い。

 

 

「セブルス、これから寮監として頑張ってね!」

「……ハァ」

 

 隣に座っているセブルスの肩に手を置く。

 とっくに晩餐は始まっているが、セブルスはあまり料理に手をつけていなかった。ふとスリザリンを見てみれば、ポッターが他の生徒に囲まれているのが見える。

 うんうん、仲が良さそうで何よりね。

 

 セブルスはきっと、ポッターを目の敵にする気満々だったろう。

 何てったって、学生時代に自分をいじめていたジェームズ・ポッターに瓜二つだものね、ハリーは。目はリリーだけど。

 本当あの四人組は……何度罰則しても全く懲りない。寧ろ私にまで悪戯してくるから、本当に困りものだった。

 

 成長する内に、自分達がやってきた事がどんなに残酷で酷いものか、彼等は分かってきただろうけれど。

 

「フィオラ、貴女は確か、非常に強力な『全魔法薬無効化薬』を作ったそうですな」

「あら、聖マンゴ情報?」

「知り合いがいましてね」

 

 そう言い、無言で私を見つめてくる。

 

「あー、はいはい。後でレシピあげるから」

「感謝します。……それと、この間新しい魔法薬を作ったのですが、それを見てもらいたいと思いましてな」

「了解。晩餐が終わったら部屋に行くね」

「はい」

 

 セブルスは、彼の学生時代とても親しくしていた。

 魔法薬が得意で、よく私の意見を聞きに来ていたわね……私は魔法史の教授だってのに。けど、魔法薬や闇の魔術に長けていた、とても優秀な生徒だったわ。私の『お気に入り』の一人。

 あぁ、闇の魔術って言ってもね、それはあくまでも名称。悪い意味に捉えないで欲しいのよね。

 

 だって、私の研究の産物には、闇の魔術だって多く存在する。

 それは報告した際に「人を傷つける恐れがある」として魔法省に闇の魔法認定されただけで、私が意図して作った訳じゃない。要は使い方だ。

 

 普通の魔法……例えば、一年生が始めに習う「浮遊呪文」。

 あれで人を二十メートルくらい上まで浮かせて、そのまま魔法を解除すれば、その人間は地面に当たった衝撃で死ぬ。

「忘却術」も強力よね。あれ超怖い。

 全ての記憶を忘れさせてしまえば、相手を無力化出来る。こちらに都合の良い記憶を植え付ければ味方にする事だって可能だ。

 

 そう考えたら、全ての魔法が闇の魔術よね。悪用しようと思えば幾らでも出来る。

 だから私は、そういった分類分けが馬鹿げてると思っているの。まぁ、『死の呪文』や『磔の呪文』は別よ?

 あれは悪意に満ちたものだもの。

 

『服従の呪文』は……あはは、あれは反省してる。

 実を言うと、かなり前に動物を操るために作った魔法なんだけど、それが闇の魔法使いの連中に広まっちゃってね。

 お陰様でこっちにも風評被害がありましたよ、えぇ!

 私が作った、って誰かがバラしやがって!

 後少しでアズカバン行きだったんだから! 犯人、本当殺す! いや、もう死んでるか……。

 

 

 まぁ、そういう経緯もあって、私は闇の魔術って言い方が嫌い。

 全てが全て、悪意を持って作られたって訳じゃないもの。

 

 

 うん、関係ない事話しちゃったな。

 私が言いたいのは、闇の魔術が得意=闇の魔法使い、じゃないって事。じゃなきゃ、私なんてとっくの昔に豚箱行きよ?

 

 

「これから楽しみね、セブルス」

「そうですな。……色んな意味で」

「生徒をいじめちゃダメよ。ま、君が減点する分、私が加点するけど」

「本当にそういう所は変わっていませんな」

「褒め言葉ね。ありがと」

 

 変わらないのは、良い事だ。

 私は年を取らない。寿命もない。

 だから私は、年老いた皆を変わらない姿のまま、受け入れる。

 

 人と接するのは辛い事でもあるけれど、けれど、嫌いじゃないんだもの。

 

 

 

 ***

 

 

 

「ポッター、スリザリンに入ったのね。おめでとう」

 

 晩餐が終わると、私はセブルスについて行って、スリザリンの寮までやってきた。合言葉は『純血』らしい。随分と”らしい”わね。

 私は寮監ではないから、夕食が終わったら自分の部屋に戻るべきなのだが、今からセブルスの部屋で新しい魔法薬を見なければならない。

 セブルスが部屋割りの書かれた紙を自室に取りに行っている間に、私は生徒に混じって寮の中に入り込んだ。

 

 見た目は十七歳だもの。

 黒いローブを着ていれば、生徒とそう区別はつかない。

 

「あっ、ありがとうございます。フィオ……えーっと、レシューダ先生」

「フィオラで良いのに。まぁ、好きに呼んでくれて構わないわ」

「先生はどうして此処に?」

 

 皆、私とハリーを交互に見ながらヒソヒソ話をしている。

 そんな中、プラチナブロンドの少年が、ハリーの横に立っているのが見えた。何処か、かつての教え子に似ている気がする。

 すると私の視線に気がついたのか、彼は自己紹介をした。

 

「僕はドラコ・マルフォイです。先生」

「あら、ルシウス・マルフォイの息子? 彼も私の教え子なんだけど……結局、ナルシッサと結婚したのかしら」

「はい。僕の父上と母上です」

「彼等は学生時代から優秀な上、仲が良かったもの。そう……結婚したのね。良かったわ。今更だけど、おめでとうって伝えておいてね」

「ありがとうございます。伝えておきます」

 

 堅い口調ではあるものの、両親を褒められた事が嬉しかったのか、少しだけ笑っている。

 それから適当に近くのスリザリンの新入生に声をかけていると、こんな事を聞かれた。

 

「先生は何処の寮だったんですか?」

 

 聖28一族の一つであるグリーングラス家の長女、ダフネ・グリーングラスがそう聞いてきた。

 あぁ、時々聞かれるんだけど……

 

「私、ホグワーツの生徒ではないの。此処が出来るずっと前に生まれて……けど、ホグワーツの創立には立ち会ったわ」

「って事は、サラザール・スリザリンにも会ったんですか?!」

「えぇ、仲が良かったわよ」

 

 ーーあっ、まずった。

 

 その途端、沢山の生徒からの質問が飛んできた。

 スリザリンがどんな人物だったのか、どんな事が好きだったのか、どんな事を話したのか。……まぁ、皆、スリザリンを尊敬しているだろうから、気になるのは分かる。

 そして歴史をこの身で生きてきたからには、私にはそれを教える義務がある。そういう訳で、私は快く口を開いたがーー

 

 

「フィオラ、新入生の落ち着きを乱さないでいただきたいですな」

「あ、セブルス」

 

 どうやら戻ってきたらしい。

 その眉間にはシワが寄っている。

 

「いやぁ、ごめんね皆。いつでも聞きに来て良いからさ、また後でね」

 

 あら、聞き分けの良い子達。

 皆残念そうにしてはいるものの、私の言葉を聞き入れてくれた。

 

 そして二人してセブルスの部屋で。

 寮から出る前に、悪戯心で腕を組んでやったら、思い切り頭を叩かれた。リリーが好きなのは分かるが、年上に暴力を振るうのはいただけないな。

 これでもお婆ちゃんなんだから。

 

 

 

 ***

 

 

 

 翌朝。

 私は睡眠を必要としないので何も体調不良はなかったが、セブルスは寝不足のように見えた。そりゃあ、昨夜は三時くらいまでずっと話し込んでいたものね。

 寝ても良いのよ、と言っても、もう少しだけ、と言って利かなかった。彼は私と違って人間なのだから、睡眠は必要だ。いつもより、更に土気色になっちゃうぞ。

 

 私は近くに座っていた生徒に挨拶をすると、自分の教職員テーブルに着いた。

 今日は授業初日。

 新入生にとっては緊張の一日になるだろう。けど私の授業は、歴代でも結構稀なものでね。

 

 今朝の教職員テーブルには、ミネルバとセブルス、ポモーナそしてクィリナスがいた。

 いやはや、目新しい教え子がいるのは嬉しいものだね。

 クィリナスも私の授業を真面目に聞いてくれる子だった。今までは『マグル学』を教えていたんだけど、ちょっと旅に出て……戻ってきたら何か知らないけどターバン巻き始めてたわね。まぁ、人のプライベートには顔を突っ込まないタチだから聞かないけどさ。

 何でも、アルバニアで吸血鬼にあったんだって。通りでニンニクの匂いがする訳よ。

 

「クィリナス、元気なさそうね」

「あ、こ、こ、これは……レシューダ先生……おは、ようございます」

「アハハ、君、そんなに吃ってたっけ? まぁ、疲れてるなら言ってよ。『元気爆発薬』くらいならすぐに煎じてあげるから」

「お、こ、心遣い……か、感謝、します」

「どういたしまして」

 

 そう、セブルス越しに声をかける。

 彼は別に『お気に入り』って訳ではなかったけど、同じ教員の好で親しくしているつもりだ。そうじゃなきゃクィリナスなんて呼ばない。

 

 何か嫌な気配を感じるし。

 

 

 教師としてあるまじき事だとは思うけれど、私にとって、私の「『お気に入り』と一般生徒の格差」は非常に大きい。

 トムもセブルスも、私の『お気に入り』の中の一人だ。近頃はポッターもお気に入り候補に挙がっている。これから精進してもらいたい。

 

 私は彼等に退屈を解してもらっている。

 そのお返しとして、私は彼等が困っていれば助けるのだ。勿論、その時の私の感情や気分によって、それは左右するけれども。

 

 長い人生送ってると、皆に皆、優しい人間ではいられなくなる。

 私は人と接する中で、人間の醜さや悲しさ、そして残酷さを知ったから。だから私は、全ての人間に平等に接する事なんて出来ない。私はとっくに、この世界には幻滅している。

 だから教師なんてものになったのかもしれない。

 

 

「今日は初授業ね……セブルスは、一年生に何を教えるつもり?」

「『おできを治す薬』。あれならトロールでも作れますからな」

「まぁまぁ、優しくしてあげなさいね」

 

 大広間を見渡しながら、私はゴブレットに入った水を口にした。

 さて、今年の新入生の中に、私の『お気に入り』になりうる人物はいるかしら。

 

 

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