「……乃々……そんなことが……」
凛さんは、私の言葉が終わるまで、ただ聞いていました。わざとらしく頷いたり、同情したりするような仕草も見せず、ただじっと、言葉をそのままに。
「……はいぃ……」
……そして私も言えました。言ったら、叔父さんたちに呪われるような気すらしましたが、言ったら案外、何か少しすっきりしないこともないような気もします。……もっとも、一時的なもので、むしろ言えることがわかった分楽になっただけのような気もしますが……。
……とはいえ、この肩の荷が降りた感じが何であれ、私が今まで抱え込んでいたものを吐き出せたのが無意味ではないことは、凛さんの顔を見ていたら何となくわかる気がしてきました。
「でも、今の話なら乃々が活躍するのは乃々のお母さんにとっても叔父さんにとっても悪い話じゃなさそうだけど……私とのデュオを妨害した理由はわかる?」
「……あぅ……それは私にもわかりません……。期待外れで申し訳ないんですけど……」
「……いや、乃々が悪いんじゃない。これだけのことがわかっただけでも前進にはなったよ。そうでしょ、プロデューサー?」
プロデューサーさんも頷きます。となると、我々がまず取るべき手段としては、下手に出た風を装って叔父と面談して探りを入れてみるかそれとも……。と思案しながら。
「……い、いえ!」
しかし、どういう訳か私は、森久保乃々は、突如として声を上げて立ち上がりました。私の身体を突き動かす感情が何なのか、そもそも理性なのか感情なのかもわからないですけど。
「……その前に、私が一度聞いてきてみます。……叔父さんよりも、お母さんに」
……森久保は一体何を言っているのでしょうか。私が、どうして嫌だったアイドル活動なんかを続けるために、同じくずっと嫌だった今のお母さんとお話しすることを買って出るというのでしょう。
……私は一体、何を怖れて何に縋っているのか……わかりません。考えれば考えるほど深淵に飲み込まれそうです。自分がどこから来てどこに行くのかみたいなことまで考えて怖くなってしまいます。
「……乃々、それでほんとうに大丈夫なの……? 震えてるけど……」
「だ、大丈夫じゃないですけど……。……でも、今は私のせいで凛さんたちは迷惑してるんですよね……?」
私は今まで、駄目な子である自分が何かをしたらきっと人に苦労をさせてしまう、そう思って、何もできないでいました。でも、今回はどうなんでしょうか。
私が何かをすることで迷惑を緩和できるとしたら? お母さんに話を聞く、そんなことができるのは、間違いなく私だけなわけで……。
「……こ、怖いに決まってます、決まってますけど。お母さんとはもう半年以上話してないし、私の言葉がお母さんをさらに傷つけるかもしれませんけど……。でも、私が今やらないと、何も変わらないのなら……」
こうなったらやけです。やけの私が押し通ります。
……やけになった森久保、それが「私」なのかも定かではありません。でも、もし私が私でなくなって、そこにいる私ではない何者かが凛さんたちに迷惑をかけないようにしてくれるというなら……私はその存在に全てくれてやりますけどォ!