異世界召喚 身勝手に呼ばれて身勝手に捨てられたので隠居する外伝集   作:ジト民逆脚屋

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シーナ
今回、誰お前とか言われそう

グレイ
イケメン、テライケメン、FGOのプーサーに、ヘクトールがちょっと混じった感じ?

竜胆さん
話を無理矢理動かすデウス・エクス・マキナ兼任のメアリー・スー。

麻野
趣味は食べ歩き。身体能力は召喚特典無しで、五輪強化選手並み。太目な女性好き大歓喜な体型。

浜名
役目は麻野のブレーキ。部下に慕われてはいるが、いまいち影が薄い金髪巨乳好きな忍者。



短編『それでは、今日よりお暇を頂きます』も宜しくお願い致します。


嘗ての幸せ

穏やかな寝息が聞こえる。

 

「んぅ……」

 

穏やかで静かな寝息は、朝日を吸い込む部屋に転がり、その主は薄いシーツにくるまる。

小さく丸くなった小柄な体、もし何も知らぬ者が、この様子を見たならば、その誰もが己の目を疑うだろう。

 

簡素ながら、その家具と調度品の質の高さが窺える寝室。その主が眠りに揺蕩う中、部屋に来客が訪れる。

 

「シーナ」

 

均整の取れた長身、細身だが服の上からでも解る鍛えられた肉体。端正な顔立ち、金の髪。理想の美男子がそこに居た。

 

「ほら、シーナ。起きて」

「……グレイ?」

「ああ、そうだぞ」

 

シーツにくるまったシーナを、グレイはそのまま抱き上げた。シーナの細く開かれた目を見詰めると、照れた様に彼の胸に顔を埋める。

 

「グレイ」

 

埋めた顔を擦り付け、猫が己の匂いを付ける様にして、シーナは己を抱き上げるグレイに甘える。シーナの、猫の毛の様に柔らかな髪を撫でると、彼女は嬉しげに目を細めた。

 

「どうしたんだ? 何時にも増して、甘えるじゃないか」

「ダメ?」

 

首に手を回し、こちらを優しげに見詰める瞳を見れば、そっと頬を撫でられる。

その心地好い感触に身を任せ、シーナはグレイにされるがまま、彼の腕の中で細めた目を瞑る。

 

グレイにとって、シーナは小さく軽い。こうして軽く抱き上げられ、戦場での苛烈な戦い方が嘘の様に思える。

だが、戦場で轡を並べ、共に戦うグレイには分かる。

身の丈を超える特殊な武器を振るい、砲という桁外れな威力で、戦場に雷を降らせる。

 

「ダメじゃないさ。ほら、何をしてほしい?」

「もっと、ギュッとしてほしい」

「いいとも」

 

ベッドに腰掛け、シーナを膝に乗せる。軽く小さいが、獣欲をそそる肉感的な肢体を、グレイは力を籠めて抱き締める。

毎日、毎晩の様に感じている体温と、体の柔らかさ。密着する温もりは、優しく感じる。

 

「んー」

 

筋肉など感じない細腕、肢体。華やかさに乏しい、しかし魅力的な容貌。グレイ・オーフィリアは、オーフィリア家というレミエーレ王国でも有数の名家の当主となる。

華美な装飾、過度な見栄、過剰な自尊、グレイは日々己に言い寄ってくる他家の婦女子に辟易していた。

グレイの極めて整った容姿、人間性、家柄、全てが夢見がちで、裏で策謀を巡らせる貴族には、極上の餌に見えた。

彼もそれを自覚していて、あまり舞踏会などには顔を見せなかった。

 

「シーナ」

 

容姿に合わず武骨者、それがグレイ・オーフィリア。そんな彼がある日、王宮の庭園で出会ったのがシーナだ。

 

「なーに?」

「ふふ」

 

こちらを見る顔、その額をそっと撫でる。目を細めるシーナは、彼女が好きな猫の様で、グレイは思わず喉を擽ってみると、シーナはこそばゆそうに身を丸める。

 

「グレイ、擽ったい」

「そうなんだ」

「きゃっ!」

 

グレイはシーナを抱いたまま、ベッドに倒れ込む。上質なベッドは、二人分の体重を吸収しきり、ほんの少しの反発で二人を揺らす。

 

「今日はこのまま寝て過ごそうか?」

 

二人だけの寝室に、グレイの甘い声音が聞こえる。

シーナはその声が紡ぐ声に頷き、彼の胸に身を寄せる。頬には薄紅が差し、己を撫でる手を、ただ受け入れる。

背に回った腕に、僅かに背筋が強張る。

 

「グレイが一緒ならいいよ」

「当たり前だろう?」

 

シーナの唇を啄む様に、グレイは彼女に口付けをする。

数度繰り返し啄み、彼女の瞳が蕩けた頃、グレイはシーナの舌を吸出し、弄ぶ。

突然の事に、微睡む様に啄まれていたシーナが、身を震わせ、手足をバタつかせる。

 

「ひあぁ……」

 

舌、唇と続き、喉から肩へと、グレイの唇が降りていく。小刻みに震える肢体を確りと抱き、己から離れるなと、シーナに教える。

 

「グレイ……」

「シーナ……」

 

見詰め合う二人、微笑むと、密着していた距離を更に縮め、二人の距離が重なろうとした時、寝室の外が騒がしくなり始めていた。

それが何なのかと、二人が顔を上げると、寝室の扉が蹴破られる様に、乱暴に開かれた。

 

「よーう! お二人さん、盛ってる?」

「……リンドウ」

「……竜胆」

「お? もしかして、いい雰囲気に入っちゃった感じ?」

 

長く目立つ八重歯を剥き出しに、濃い隈を残す目の、痩せた女が妖しく笑っていた。

 

「帰れ」

「おいおい、山科。久々の休みに、竜胆さんが来てやったんだ。茶の一杯くらい付き合えよ」

 

ソファーに腰を下ろす。外は冷えるのか、季節の割りに厚着だが、痩せた竜胆はそれでも細く見える。

実際、竜胆は細い。ある意味、病的とも言える程に、彼女は痩せ細っている。シーナの多くはない友人の一人である麻野と並ぶと、その細さは更に顕著になる。

 

「竜胆、帰れ」

「なんだよなんだよ、和泉も山科も、私を帰らそうとするな。まさか、私に知られて困る事でも隠してんのか?」

「リンドウ、君に何を隠せるんだ? あの〝賄賂卿〟と揶揄されていたウィニアス卿の、不正と汚職を暴き立てた君に」

 

裸に近くなっていたシーナを、シーツにくるみ抱き寄せて、グレイは竜胆に問うた。

長きに渡り、汚職の証拠、その尻尾すら掴ませなかった貴族を、竜胆は事も無げに破滅させていた。

 

「あれは私に、碌な利権を渡さなかった奴が悪い」

 

竜胆は口の端を吊り上げ、グレイに答え、欠伸を漏らす。

恥ずかしげも無く、大口を開けて、数秒間欠伸を続けると、懐から一つの紙袋を取り出す。

 

「見ろよ、山科。ニャンコドーナッツ、下町の出店でやってた」

「ホント?!」

 

猫好きのシーナが、竜胆が紙袋から取り出した焼き菓子に、興味を持つ。

 

「雇用拡大がてらに、私らの世界の菓子やらを広めたんだが、これが中々に上手くいっててな。胴元の竜胆さんの懐はウハウハな訳よ」

「麻野が飛び付きそうだな」

「ん? 麻野なら、止める浜名引き摺って、屋台巡りしてたぞ。ありゃ、戦利品持ってこっち来るな」

 

ひひひと、竜胆が妖しく笑う。そして、また寝室の外が騒がしくなり始めていた。

 

『椎名ー! ニャンコカステラ見つけたー!』

『麻野、ここはオーフィリア家なんだ。竜胆の家じゃないから、串焼きは袋に戻せ』

『うっせ! お前も食えよー! あ、メイドさんも要る?』

 

「な? 時間稼いでやるから、着替えな」

 

妖しく笑う竜胆が、寝室から廊下へ、声の主二人の元へ行き、また適当な事を言っている。

グレイは隣のシーナを見て、シーナは隣のグレイを見て、おかしそうに笑った。

その笑顔は、本当に幸せそうだった。




こんな、日々があったんだ。
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