イビルアイがあのとき覚醒したら   作:copu

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王都襲撃4

 

 時は遡ること作戦前。

 イビルアイは自身の魔力を回復させるため、人払いを行った自室へと向かっていた。気分は不思議と落ちついていた。それは、ヤルダバオトに匹敵する戦士、モモンがいること。そして、部下だと思われるメイドも今なら有利に倒すことができると言う事実があってのことだ。

 

 扉を開けて中へと入る。いつもの変わらない・・・・・・。

 

「なっ!?」

 

 中へは入った瞬間、扉が勝手にしまっていく。そして、部屋自体が一種の異空間と変化していった。外との繋がりを遮断し、メッセージや転移を無効化しているように感じている。そして、その原因は、目の前にいる悪魔。腹部の開けた鎧を纏い、頭部には二本の角、そして、背中には翼が生えた異形の姿。推定難易度250。今のイビルアイでさえ、勝つことができない相手。

 

 ヤルダバオトがこちらの戦力を削りに来たのだろうか。緊迫した空気のなか、悪魔は動き出した。床に膝を付き、頭部を垂れる。それは、服従の意に見えた。

 

「お待ちしておりました、イビルアイ様。私の名は強欲の魔将(イビルロード・グリード)。我が主、ヤルダバオト・・・・・・いえ、デミウルゴスから言伝を預かっております」

 

 続く言葉にイビルアイは唖然とした。何を言っている? どういうことだ。イビルアイの頭のなかはぐちゃぐちゃとこの状況を理解できないでいた。そのとき、あの甘ったるい声を思い出す。自分であって自分でないあの声を。

 

「眷属化に成功したのか?」

 

「その通りでございます。デミウルゴスの主は、我が主。どうぞ、ご心配することがないようお願い致します」

 

 あのとき、イビルアイはヤルダバオトの首筋を噛みつき、眷属化を試みた。しかし、成功しないように見えていた。暫くしてから体を蝕むよう進行したのかもしれない。

 

「ハハッ、なるほどな」

 

 自身の急激な成長は、あの悪魔を眷属化した影響なのかと結論付けた。

 

 イビルアイの考えは惜しいところまで当たっていたが、少し違っていた。ユグドラシルのレベルという概念を詳しくは知らないことが原因だったが。

 

 デミウルゴスのレベルは100。それは、新たにイビルアイの眷属となるよう種族の追加は出来ない。そこで、イビルアイは自身が知らないうちにデミウルゴスの経験値を1レベル分奪ったのだ。99から100レベルまでの1レベル。しかし、その経験値はレベル50程度のイビルアイから見ると強大。その経験値を得たことで、イビルアイのレベルは20以上も上がったのだ。

 99レベルになったデミウルゴスに、イビルアイはタレントの力で経験値に関係なく新たに種族を1レベル分授けたのである。

 

 だが、それならおかしいとイビルアイは首を傾げた。

 そう、イビルアイはこんなことを望んでいない。自身の眷属となったら、主の言うことを聞く・・・・・・。

 

「お前たちには元々主がいるのだな」

 

 イビルアイは一つの答えにたどり着く。あの悪魔には元々主がいて、その主にもと作戦を遂行していたのだろう。

 

「恐れ入ります。その通りでございます」

 

 強欲の魔将(イビルロード・グリード)は仰々しく返事を返す。

 

「・・・・・・ぷれいやーなのか?」

 

 そして、最終的な終着点の言葉をイビルアイは言い放つ。これしか考えられない。あれほど、強大な悪魔を従えられるのは、ぷれいやーのみ。

 

「はい、私たちの主はプレイヤー。さすがは、真祖の中の真祖。ユグドラシルについてもご存知名のですね。ナザリック地下大墳墓。ギルド名、アインズ・ウール・ゴウン。ギルドマスター、モモンガ様。それが、私たちの主の名。失礼ながら順位付けを致しますと、イビルアイ様が一番、モモンガ様・・・・・・今はギルド名からアインズ様と名乗っておられますが、アインズ様が二番となります」

 

「一人だけなのか?」

 

「左様です」

 

 百年の一度、異世界から異邦人・・・・・・ぷれいやーがやってくる。十三英雄のリーダーもそうだったし、それよりも前、八欲王や六大神もぷれいやーだった。詳しい内容までは知らないが、伊達に250年生きていたイビルアイは、ある程度は知っている事柄である。

 

「モモン・・・・・・ガ?」

 

 ぷれいやーのモモンガ。気のせいだろうか、どこかその名を聞き違和感を覚える。そう、偶然なのだろうか。あの漆黒の英雄と似た名前。

 

「今、アインズ様は冒険者に扮してモモンと名乗っておられます」

 

「――ッ!? 漆黒の英雄がぷれいやーで、お前たちの主で、この事件の黒幕っ!?」

 

 

 ピースが一個ずつ嵌まっていく。

 いや、よくよく考えると、モモンはいいタイミングでイビルアイを助けたのだ。仲間は死に、残り一人になった瞬間を狙ったのだろう。向こうは、たまたま来たという感じを装いたかったのだろう。アダマンタイト級冒険者が手も足も出ない状況で、颯爽と助けに入るというシチュエーション。

 

「話せ。お前たちのことを。そして、今回の目的を」

 

 聞かなければならない。この状況を打破するのは、自分しかいないと。

 

 強欲の魔将(イビルロード・グリード)は簡単なギルドの説明、戦力を説明しつつ、今回の作戦目的を告げた。

 

「あの強さのものがそこまでいるのか・・・・・・この王都はただの足かがりだな。最終目的はなんだ?」

 

 その戦力はイビルアイの予想を軽く越えていた。そして、王都を手に入れるだけの作戦とは思えなかった。そう、最初の一手。そうイビルアイは感じたのだ。

 

「世界征服でございます」

 

「なっ!?」

 

 開いた口が収まらない。だが、不可能ではないとイビルアイは思ってしまう。最低限、この大陸を征服する戦力はあるだろう。対抗できるのは、法国の神人と真なる竜王ぐらい。他は戦力にもならない。イビルアイはすぐに、あの白銀に連絡をとろうと考えた。しかし、この状況を放ってはいけない。

 

「・・・・・・私はどうすればいい?」

 

「このまま知らない振りをしてください。後日またご連絡致します」

 

「王国の民を犠牲にしろと?」

 

「恐れながら・・・・・・今はまだ動くときではないとのことです」

 

 イビルアイは噛み締める。時間があればどうにかなったかもしれない。だが、準備も何もできてはいない。ここで下手に動けば、相手にばれて全てが無駄になる。チャンスを待つ。

 

「――分かった」

 

 イビルアイは心に決める。

 アインズ・ウール・ゴウンの野望を阻止すると。

 

 

 <完>




イビルアイ、アインズ・ウール・ゴウン攻略ルートです。


本編は以上です。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

誤字脱字後日修正致します。

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