11話 清涼祭突入
激闘のAクラス戦を終え今までちゃぶ台だったものからみかん箱になったのにも慣れ始めた頃。文月学園では『清涼祭』……まぁ学園祭だな。その準備に追われている。この時期に学園祭をやるのはいささか早いように思えるが、なんでもこういった行事は早めにやってしまいセンター試験のある冬頃には勉強に集中してもらうためだとか。
そんなわけでどこのクラスもLHRではどんな企画をやるのかで話がもちきりだ。どのクラス、どの学年もひと味違う出し物をするために活気に溢れている。そんな中我らがFクラスはと言うとーー
「こいや明久ぁ!」
「勝負だ、光輝!」
「明久のへなちょこボールなんて、銀河の彼方へぶっ飛ばしてやる!」
準備なんてやりもせず、絶賛校庭で野球をしていた。
「言ったな?!こうなったら意地でも三振とってやる!」
俺はホームベースの土を何回か足で払ったあとバットを構えて明久の球を待つ。
「それって反則じゃないの?!」
「おいまて、一体どんな球を投げるつもりだったんだよ?!」
そんなやり取りをしていると校舎から全力疾走してくるものが。
「おいやべーぞ、鉄人だ!」
「貴様ら、学園祭の準備をしないで何をしているか!」
当たり前だが全員蜘蛛の子が散るように逃げる。
「吉井に虹村、貴様らがサボりの主犯か!」
「違いますよ!明久はともかく俺が主犯なわけないじゃないですか!」
「僕だって違うよ!どうしていつも僕達を目の敵にするんです?!雄二ですよ、クラス代表の雄二が野球を提案しました!」
確かに野球をしようと言ってきたのは雄二だ。責任を持ってこの自体を収束してくれると思い雄二の方を見る。
『フォークを 鉄人の 股間に』
「バカかお前、そんなことやってる場合か!」
「それやったら単に怒られるの僕だけだよね?!」
「全員教室に戻らんか!出し物が決まってないクラスなぞうちのクラスだけだぞ!」
「と言うわけで何か案がある人はいる?」
鉄人に全員しばかれた後、教室にてクラスで何をやるかを決めている。仕切っているのは雄二ではなく島田だ。やる気のない時の雄二はマジでなんにもしないからな、島田と強引に実行委員にさせられた明久に丸投げして今は寝ている。と言っても俺もそこまで興味が無いから秀吉とかとだべっている。
そして今どんな案が出ているのか気になって黒板を見てみたら……
『①写真館「秘密の覗き部屋」』
『②ウェディング喫茶「人生の墓場」』
『③中華喫茶「ヨーロピアン」』
「……やっぱりこのクラスはダメかもしれない」
流石Fクラスクオリティ。どうなったらこんな事が板書されるんだ。
っとそこに鉄人が入ってきた。そして黒板を一目見て一言。
「……補習の時間を倍にした方がいいかもしれんな」
なんてこった、
「……今失礼な事を考えていたいなかったか虹村」
「やだなー、そんなわけ無いじゃ無いですかHAHAHA」
俺の思考を読んできただと?!こいつやはりバケモノか。
「まったくお前達は……稼ぎを出してクラスの設備を向上させようとか、そういった気持ちにすらならないのか?」
『そうか、その手があったか!』
鉄人の一言により一気にやる気になるFクラス。単純な奴らだ。そして投票の結果うちは中華料理になりました。
「そしたらまずは厨房班とホール班に分かれてもらうわ。厨房班は須川と土屋に、ホール班はアキと虹村のところに集まって!」
あれ、いつの間に俺はホール班のトップにされてたんだ?ついでに明久も。オレは料理はそこまで出来ないからいいけど明久をホールにするのはもったいないな。
「それじゃ、私は厨房班に……」
「ダメだ姫路さん!君はホール班じゃないと!」
速攻で姫路を止める明久。メガグッチョブ!姫路の料理で厨房なんて任せたら食中毒の嵐だろう。
『明久、グッチョブじゃ』
『………(こくこく)』
姫路の料理の破壊力を知っている秀吉と康太も激しく同意している。一応幽香が説教をしたが、その威力は衰えて無かったという(明久の実体験)。
「え?明久君、どうして私はホールじゃなきゃダメなんですか?」
「え、あーと、ほら、姫路さんは可愛いからホールじゃないと利益が出な、痛っ!ま、魔理沙!僕の背中はサンドバッグじゃないよ!」
嫉妬からか魔理沙が明久の背中をポカポカ殴っている。姫路はと言うと顔を赤くして何かを言っていた。
「ホールも頑張りますね♪」
出来ればホールだけを頑張ってほしい。
結局ホールは俺、姫路、魔理沙、島田、秀吉。厨房は康太に雄二。明久は忙しい方に入ることになった。
「アキ、ちょっといい?」
帰りのHRの後、帰ろうとしてた俺たちを引き止めた島田と魔理沙。何があったのか聞くとどうやら姫路が転校してしまうかもしれないという。理由はクラスの環境とバカなところ。バカなところは召喚大会で優勝してFクラスを見直して貰おうとしているが、環境のところはどうしようもない。だから今回の学園祭の売上を伸ばして環境を整えようとしいるけど、それには雄二の力が必要不可欠なんだと。
「だから何とかして雄二に仕切ってもらいたいんだぜ」
「なるほど。確かに雄二が本気を出せば売上は伸びるだろうが…」
「問題はどうやって雄二をやる気にさせるかじゃ」
「今回は1ミリもやる気無いからな、難しいかもしれないな」
「……いや、僕にいい考えがある」
「却下」
「せめて内容を聞いてから否定しようよ!」
「仕方ねぇ、内容だけな」
明久が皆に説明をする。内容はなんて言うか……明久がシバかれる未来しか見えないものだった。
「…うん、いいんじゃない」
「でしょ!それなら早速」
携帯を取り出し雄二に電話する。Prrrrrと、ワンコールの後。
『もしもし』
「あ、雄二。ちょっと話が」
『明久か、丁度よかった。悪いが鞄を届けてくれないか?』
「え、まぁいいけど」
『サンキュー。じゃ、下駄箱でな』
「なんだって、雄二のやつ」
「鞄を下駄箱に届けろってさ」
「そうか、なら作戦は下駄箱でか。秀吉達は作戦通りここで待機で」
「任せるのじゃ」
「いたいた、おーい雄二!」
「お、来たか。すまないな」
「別にいいって。それより雄二に朗報があるぞ」
「そうか、嫌な知らせだったら殺すぞ」
「………」
「明久だけにしてくれ。こいつを」
一瞬ビビった明久に代わり携帯電話を雄二に差し出す。
「まったく、なんの真似だ」
訝しながらも電話に耳を当てる。
『もしもし、雄二か?』
「霧雨か、何の用だ?」
『ちょっと待て、今替わるから』
「替わる?一体誰とーー」
『……雄二』
「人違いです」
すごい速さと判断力だ。そんなにすぐ『人違いです』なんて出てこないぞ。
「コロス」
そして片言の日本語と殺意が明久にささる。片言なのが妙に怖い。
「ま、まぁまぁ、落ち着いて。お願いを聞いてくれたら悪いようにはしないからさ」
「お願い?ふん、どうせ喫茶店のことだろ」
「さっすが雄二、話が速くて助かる」
「……やれやれ、面倒だがそれくらいなら引き受けよう」
「なんだ、案外あっさり引き受けたな」
「……今、翔子の家に呼ばれてるんだ、家族に紹介したいと」
「……なんか……ごめん」
雄二の背中には哀愁が漂っていた。
「とりあえず、引き受けてくれてありがとう!」
「気にするな、翔子に内通されるよりはマシだ。それより霧雨と翔子は親しかったのか?」
「うん、Aクラスと戦った時に色々あったらしいよ」
「そうだったのか?そんな素振りはなかったが……」
「………実は電話をしてたのは声を変えてた秀吉でな、明久の作戦で……」
「目をつぶって歯を食いしばれ」
「光輝の裏切り者!」
やっぱり友達を騙すのは良くないと思うんだ。
そんなわけでクラスの老朽化を理事長に直訴するために理事長室に赴いた。
『……賞品の……として隠し……』
『……こそ……勝手に……』
「あん?なんか言い合ってるのか?」
理事長室の前まで来ると扉の向こうで言い争っているのが聞こえた。一体なんの話だ?
「まぁ関係ないか、さっさと入るぞ」
「失礼しまーす」
ノックと同時に堂々と入る明久と雄二。そのふてぶてしさ、学校1の問題児の異名は伊達じゃないな※光輝も含まれてます。
「本当に失礼なガキどもだね。普通はノックを待つもんだよ」
「やれやれ。取り込み中だと言うのにとんだ来客ですね。しかもお前か虹村、一体何の用だ」
俺を見るなり露骨に嫌な顔になる教頭の竹原。なんでそうなるかって?実を言うと振り分けテストの時に俺が負かした先生がこの竹原なのだ。それ以来当然と言えば当然だが俺を毛嫌いするようになって、俺を一瞥する度に嫌味を言ってくるようになった。最近では俺を観察処分者にしようとしているらしい。
「これはこれは、竹原教頭じゃないですか。そっちこそ今度はどんなせこい手を考えているんですか?」
対する俺は完全に舐めきっている。デュエルも俺に及ばない癖に器も非常に小さいからな。言ってしまえば格下だと思っている。
「……ふん。邪魔が入りましたしこの話はまた今度という事で」
踵を返し理事長室を出る竹原。その時に何かを確認してたような気がしたが気のせいか?
「んでガキども、あんたらは何の用だい」
「今日は学園長にお話があって来ました」
あ、雄二って敬語使えたんだ。意外だ。
「私は今はそれどころじゃないんでね。それにまずは名前を名乗るのが社会の礼儀ってもんだよ」
「失礼しました。俺は2年F組代表の坂本雄二。それでこっちが2年を代表するデュエリストの虹村光輝。こっちがーー2年を代表するバカです」
「どうして雄二は普通に名前を言えないんだ」
「ほぅ……。アンタ達がFクラスの坂本と虹村。それに吉井かい」
「ちょっと待って学園長!僕はまだ名前を言ってませんね!?」
2年生1のバカと言われれば自然と明久の名前が浮かぶだろ。
「気が変わったよ。話を聞いてやろうじゃないか」
そこから雄二と学園長の交渉が始まった。途中雄二の敬語にボロが出ていたが何とか学園祭の稼ぎで教室の設備を整えることは許可さらた。これでひとまず設備はどうにかなるな。
その代わりに清涼祭で行われる召喚大会に出場して優勝してこいという。というのも優勝賞品の副賞のペアチケット。これには如月グループと結託して何やら黒い噂がたっているとのこと。だから優勝してそのペアチケットを回収してくるのが条件。
「召喚大会か……。光輝、明久。頼めるか?」
雄二が俺らに聞いてくる。雄二が大会に出ないのはクラスの経営のためだろう。確かに雄二が仕切った方が利益が出るだろう。
「愚問だな。ぱぱっと優勝してきてやるよ」
「これを受けないと設備が良くならないからね、受けるよ」
「頼んだぞ。それでババア。こっちからも提案がある」
今度は雄二が学園長に提案を提示する。ここからの話は頭のいい雄二に任せておこう。変に首を突っ込んでも邪魔になるだろうし。
「ふむ、いいだろう。それくらいなら協力しよう」
「……ありがとうございます」
どうやら話は終わったようだ。雄二の奴もなんか悪いことを考えている顔をしている。戦略を練るときは大体その顔をしているからな、今回も雄二の作戦に期待しておこう。
「さて。そこまで協力するんだ。当然召喚大会で優勝出来るんだろうね?」
「何を言ってるんだ、出来るに決まってるだろ。ついに脳みそももうろくしてきたか?」
「仕方ないよ光輝。戦国時代から生きてるババア長には死期が近づいてるんだよ」
「アンタら……。まぁいい」
ババア長はため息をついて呆れた顔でこちらを見ていた。なんだ、文句あんのか?
「それじゃボウズ共、任せたよ」
「「「おうよ!」」」