バカと遊戯王と召喚獣   作:はまなつ

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19話です。今回で学園祭編が終わります。最後だからデュエルをしようかなとも思いましたが話の流れ的に無理でした。

次回から合宿編ですね。そこでもデュエルをする予定なので宜しければ応援よろしくお願いします。


19話 清涼祭エピローグ

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

光輝は常夏との試合の後すぐに例のカラオケ店へと走っていた。無事に救出したと連絡はあったがやはり駆けつけずにはいられない。なんせ彼女が拉致されたのだ。心配でじっとなんてしてられない。

 

「___あれ?光輝?」

 

「なんだわざわざこっちまで来たの___」

 

「幽香!」

 

明久、雄二の呼びかけにも応じずに一目散に幽香に抱きつく。

 

「……ほぇ?」

 

「に、虹村君大胆です……」

 

あまりの突然の出来事で全員唖然とする。女子はその姿を見て頬を赤くする。

 

「は、離しなさい。皆が見てるでしょ……」

 

いつもクールな幽香も流石に照れる。まさかの道の真ん中で抱きついてきたのは予想外だった。

 

「良かった……無事で」

 

「………もう、安心しなさい。明久達が助けてくれたから」

 

「ああ。ありがとうな皆!」

 

「なーに、気にするな」

 

「僕達もムカついてたからね」

 

「光輝も無事勝利を収めたようじゃな」

 

「もちろん。ボコボコにしてきたぜ!」

 

「流石だね!」

 

「でも光輝の戦いっぷりも見てみたかったな」

 

「そこは諦めろ雄二。……さて、じゃあ先に戻っててくれ」

 

「あなたは戻らないの?」

 

普通ならここで雑談でもしながら学校へ帰るところだが何故かみんなに先に行くように促す。

 

「いやー、もう明久達が助けてくれたけど、やっぱり自分で殺らないと気が済まないわ」

 

ニッコニコの笑顔にはなんとも綺麗な殺意が漏れていた。下手したら常夏の時よりも深い殺気かもしれない。

 

「そう。なるべく早く戻りなさい」

 

「大丈夫、表彰式までには戻るからー」

 

言いながらカラオケ店へと向かう。既に姿が小さくなるほど早く走っている。

 

「当たり前のように他人への暴力を許したな」

 

「恐ろしいカップルじゃな」

 

「あら、心外ね。酷いことされたんだもの。当然でしょ」

 

「……やっぱり恐ろしいよこの人」

 

絶対に敵に回してはいけない。そう全員が思った瞬間だった。

 

「………そういえば雄二」

 

「どうしたムッツリーニ」

 

「………光輝の試合は俺が録画してある」

 

「おお、流石ムッツリーニ。色んなところに手が回るな」

 

「じゃあ後でみんなで見ようね」

 

「どんな試合をしたのか拝見させてもらおうか」

 

この時は誰も予想していなかった。まさか召喚獣での試合以外にデュエルも行っていたと。

 

「にしても熱々じゃったな」

 

「本当だぜ。見てるこっちが恥ずかしかったよ」

 

「日本じゃあれが普通なの?」

 

「私もあれくらい積極的に……」

 

女子達の話題はやはりというか先程の光輝と幽香についてだった。そしてそれを見た明久は何を思ったのか__

 

「風見さんもデレデレだったね!」

 

自分も幽香を茶化してしまった。何故こうも自分の命を危険に晒すのか。

 

「あら。余程自分の命が要らないようね」

 

先程の光輝同様顔は綺麗な笑顔が咲いているがそれが枯れるほどの殺気を放っていた。

 

「すいませんでした!!」

 

目にも留まらぬ速さですぐさま素晴らしい土下座を披露する。

 

「お前にプライドはないのか明久」

 

「命に比べれば安いものなんだよ……雄二」

 

「あ、明久にしては妙に説得力があるな……」

 

それもそのはず。実際に命が刈り取られるかもしれない状況なのだから。

 

「まぁいいわ。腕一本ね」

 

「あ、良くてそれなんだ……」

 

光輝の大変さがしみじみ感じた瞬間であった。

 

♢

 

「え〜と、確か部屋は……」

 

明久達と別れてから数分。既にカラオケ店に着いて不良達の部屋へと入っていく。

 

「ここか。……結構派手にやったんだなあいつら」

 

中へ入ってみると男達が全員気絶していた。血などは飛び散っていないところを見ると大事にならないように綺麗にしたのだろう。

 

「おーい、起きろあんたら」

 

近くにいた男の頬をペちペちと叩き起こそうとする。

 

「………う、いってぇー」

 

一人が頭を抑えながらフラフラと立ち上がる。それから他の者も力無く起き上がる。皆どこかしら押さえてなんとも痛々しい状態だった。

 

「くそ。あいつら……」

 

「舐めた真似してくれやがって」

 

「ただじゃおかねぇ!」

 

それからすぐに明久達へ恨みを募らせていた。

 

(舐めたまねしたのお前らだろ)

 

これ程までの正論も珍しい。

 

「……ところでお前は誰だ?」

 

光輝の存在に気づいたのか話しかけてきた。

 

「俺か?お前らをボコボコにした連中の親玉だ!」

 

「なんだと?!」

 

あえて親玉と名乗ることで相手の怒りを煽る。何故そうするのか?相手の身体だけでなく心も完膚無きまでに叩き潰すためだ。

 

「じ、じゃあお前が仕向けたのか?!」

 

「うーん、そうとも言えるかな?」

 

「そうか。……じゃあ死ねや!」

 

不意打ち気味に光輝へと殴り掛かる。しかし光輝は予想していたように軽く受け流すとそいつの鳩尾に重い一撃をお見舞する。

 

「がぁ……あ!?」

 

ここで気絶できていればどれだけ楽だったか。しかしそんな甘いことはさせない。光輝の今の攻撃は痛すぎて気絶出来ない一撃だった。

 

「そう焦んなよ。ちゃんと順番にしばいていくからさ」

 

ジリジリと歩み寄っていく。一番怖いところは光輝がずっと笑顔なところ。なんとも言えない狂気を周りに与えている。この時点で不良達の戦意は0だった。

 

「ま、待ってくれ!俺達が悪かった!だから…__」

 

「聞こえねーなー!」

 

「「「「う、うわぁぁぁー!!」」」」

 

 

……ここがカラオケ店で良かっただろう。その悲鳴は聞くに耐えないおぞましい代物になっていた。

 

余談だがこの事件の後不良達は真面目に生きる事を心に誓ったと言う。

 

『悪魔って言うのは本当にいるんだと思ったよ……』

 

本人後日談より。

 

♢

 

「さてさて。全部解決したしババア長とお話といこうか」

 

無事光輝の怒りも収まり表彰式にて件のペアチケットも回収できた。ついでに召喚獣じゃなくて使用者本人が付ける特別な腕輪も貰った。

 

それはさておき今回の事件の真相をババアに聞きに行く。全てが終わってから話すってのも些か遅い気もするが……。

 

「おーす、入るぞ」

 

「お邪魔します」

 

「……だからノックをしろとあれほど……」

 

「いいじゃないかもう。それで、話してくれるんだろ?」

 

「……そうさね。あんたらをここまで巻き込んで事情を話さないってのも筋が通らないからねぇ」

 

「ババア長が言っていたペアチケットは回収したがこの話は嘘か?」

 

貰ったチケットをヒラヒラと見せつける。話から察するにこれが事件の確信って事はないのはわかるが。

 

「いや、その話も本当さ。けど問題があるのは優勝賞品のその腕輪さ」

 

「腕輪?この白金の腕輪ってやつが?」

 

「これの何が問題なんだ?」

 

明久と俺が付けている腕輪。表彰式で試しに使ってみた時は特に何も無かったけど。

 

「虹村が持っている方は問題ないんだよ。不備があるのは吉井が持ってる方だ」

 

「もう壊したのか明久……」

 

「使ったの1回だけだよ!」

 

「召喚獣を増やす方の腕輪はどうにも調整が上手くいかなくてねぇ。使用者の得点が一定を超えると暴走するんだよ」

 

「……なるほど。そういう事か」

 

もう既に事情を把握した様子の雄二。流石、頭の回転が早い。

 

「え?どういうこと雄二?」

 

「ババアは俺達に勝ち取って欲しかったんだよ。その腕輪を」

 

「不備があったんでしょ?回収じゃだめなの?」

 

確かに不良品をわざわざ賞品に出すなんてこと普通は避けたい。というかやらない。

 

「回収なんて真似は極力避けたかったんだよ。な」

 

「本当にアンタはよく頭が回るね……。そうさ。出来れば回収なんてしたくない。新技術だからね、見せてナンボのものだからね」

 

「それなのにいきなり回収なんてしたら新技術の存在が疑われるってことか」

 

なるほど。だから俺達に頼んだのか。

 

「そうだ。だからババアは『優勝の可能性を持つ低得点者』つまり俺達が必要だったんだ」

 

片方に問題があるなら片方が得点の低いペア__明久と俺が適任だったわけだ

 

「よく分からないけどとりあえず褒められたのかな?」

 

「バカにされてんだよ明久」

 

「なんだとババア!」

 

「それくらい自分で気づけよ……」

 

こっちも流石のバカだな。

 

「そうなると俺達を邪魔した竹原の説明もつくな」

 

「どうして?」

 

「試召戦争と試験召喚システムはただえさえ存在自体の是非が問われてるんだ。そんな時に暴走なんてしたら学校そのものの存在意義が問われる」

 

「それを利用して竹原は学園長の失脚を狙ってたのか。あのクソ野郎」

 

「ご名答。身内の恥を晒すみたいだけどね」

 

これで今回の事件の真相が全て明らかになったな。

 

……いや、待てよ?

 

「なぁ雄二。どうして常夏は俺達とババアが繋がってるって知ってた?」

 

「………まさか!」

 

何かに気づいたのか雄二が急いで学園長室の扉を開ける。するとバタバタと誰が急いでその場を後にする音が聞こえた。

 

「もしかして雄二!」

 

「ああ、やられた、盗聴だ!あいつらこの部屋の会話を盗聴してやがった!」

 

「ええ?どういうこと雄二?」

 

「常夏がこの部屋に盗聴器を仕掛けてやがったんだ!」

 

「なんだって?!」

 

「今の会話を録音されてたら不味いことになるぞ!」

 

そんなものが公開された日には今までの努力が水の泡だ!そんなもんまっぴら御免こうむる!

 

「明久はムッツリーニに報告。光輝は新校舎へ迎え。俺は放送室に行く!」

 

「了解!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!どこにいるんだあいつら!」

 

俺と明久で新校舎を1階から4階までくまなく見て探したが奴らの姿が見えない。雄二や秀吉、康太にも協力して貰っているのにだ。

 

「こんなに探しても見つからないなんて……」

 

「けどさすがに向こうも動き出すはず___」

 

prrrrr!

 

明久の携帯から着信音がなる。

 

「もしもし?」

 

『見つけたぞい。さすがはムッツリーニじゃ。遠くまでよく見ておる』

 

この声は秀吉。よくやった!

 

「ナイス!それであの連中はどこにいるの?」

 

『新校舎じゃ』

 

「新校舎だって?それなら僕と光輝が隅々まで__」

 

『違う。奴らが居るのは新校舎の屋上じゃ!』

 

屋上だと?!しまった、そこまでは見ていなかった!後夜祭用の設備が狙いか!

 

「俺らの上に居るのか!」

 

今俺達がいるのは新校舎の4階。一番階段から遠い所にいる。しかも屋上への扉は何かしらで入れないようにしているだろう。

 

「どうする光輝!もうそろそろ放送を始めるみたいだよ!」

 

「………明久。腹くくれよ」

 

「え?どういうこと?」

 

明久に今考えついた作戦を伝える。

 

「えぇ?!だ、大丈夫それ!」

 

「やるしかねぇだろ!死にたくなかったら全力でやれよ!起動(アウェイクン)

 

白金の腕輪を使い召喚フィールドを作る。

 

「もう分かったよ!試獣召喚(サモン)。そして二重召喚(ダブル)

 

そこに明久が召喚獣を出してこちらも白金の腕輪を使い召喚獣を二体に増やす。それでどうするかって?こうするんだ!

 

「「せーーっの!」」

 

明久と二人で窓から飛び出す。そう、窓からだ。普通だったら文字通り自殺行為。けどそんな訳じゃない。俺達の足元に明久の召喚獣を配置して手に持っている木刀を使い俺達を上へと投げ飛ばす。

 

「うぉぉ?!」

 

「届けー!」

 

本来ならそんなことしても大して上に上がらない。しかし人間の筋力を遥かに超えている召喚獣なら無理やり俺達を飛ばすことが出来る。どうやら予想どおりだったみたいだ。

 

「絶対に捕まれよ!」

 

「もちろん!」

 

そのまま屋上のフェンスへとしがみつく。それはもう必死に。失敗=死だからね。

 

「なぁ?!虹村に吉井!?」

 

「なんてとこから現れてんだ!」

 

そしてそこには今にも放送を開始しようとしている常夏コンビがいた。

 

「よう先輩(負け犬)方。なんか懲りていないみたいだからぶっ飛ばしに来たわ。明久は機械の方を頼む」

 

「了解!」

 

「ちっ!くそが!」

 

「舐めんなよ!」

 

どうやら向こうは俺とやり合うみたいだ。今日はよく喧嘩をする日だな。昔に戻ったみたいだ。向こうがその気ならこっちも殺るしかないよな。

 

「はっはー!死にさらせぇ!」

 

「……あれ喧嘩じゃなくて殺戮だよ」

 

 

この後は無事放送が止めることが出来た。ようやく一件落着と言ったところか。

 

♢

 

「いやー。疲れる学園祭だったわ」

 

後夜祭も終わり学園祭の打ち上げをやろうという流れに。特に店などには入らず近くの公園でお菓子やジュース等を買っての打ち上げ。これはこれで楽しかったりする。

 

「ほんっと。もうあんな真似はゴメンだよ」

 

「よくあんなことを思いつくものじゃ。下手したら死んでおったぞ」

 

「その時はその時だ」

 

「サラッと僕を巻き込まないで欲しいよ」

 

「何?アンタらまたやらかしたの?」

 

島田が俺達に話しかけながらコップを渡してきた。

 

「サンキュー」

 

「ありがと」

 

中身はオレンジジュースか。何故かちょっと苦いけど。

 

「何もしてないよ。なぁ明久」

 

「もちろん。至って真面目だったよ」

 

「絶対に嘘ね」

 

「そんな真顔で言わなくても……」

 

ダメだ。どうやら俺達の信頼は0のようだ。

 

「そういえば売上ってどんなもんだ?」

 

「そうね。凄いって程じゃないけど中々稼いだんじゃない?」

 

「ふむ。どれどれ……」

 

確かにまぁまぁな額になっていた。けどこれだとせいぜいが畳とちゃぶ台ってとこか。

 

「すいません。遅くなりました〜」

 

遅れて姫路もやってきたみたいだ。

 

「あ、瑞希。どうだった?」

 

「はい!お父さんもお母さんもわかってくれました!」

 

おぉ。どうやら当初の目的は果たせたようだ。

 

「姫路さんお疲れ様」

 

そこに明久が手に持っていたコップを姫路に渡す。

 

「あ、ありがとうございます。沢山お話したので喉が乾いちゃって」

 

「おーい明久ぁー!」

 

「うん?どうしたの魔理__」

 

「とうっ!」

 

「うわぁ?!」

 

さっきまで他の人と話していた魔理沙が走ってきたと思ったら明久に抱きついていた。

 

「……なんだと?」

 

まさかあの照れ屋の魔理沙がそんな大胆なことするとは。

 

「ど、どうしたの魔理沙。何か変だよ?」

 

「どこも変じゃないぜ〜」

 

………おっ?心なしか魔理沙の雰囲気がふわふわしているような。

 

「とりあえず1回離れようか」

 

明久が抱きついている魔理沙を離れさせようとする。

 

「嫌だ!」

 

「えぇ?!なんで!」

 

あっ、分かった。これ魔理沙酔っ払ってるわ。さっきのオレンジジュースが苦かったのもそういう理由か。

 

「むぅ、魔理沙ちゃんばっかりずるいです!私だって!」

 

「ひひ、姫路さん?!」

 

そこへ何を思ったのか姫路まで明久に抱きつき始める。

 

「おい、瑞希。明久はワタシのものだぞ!」

 

「独り占めはずるいです!」

 

「助けて光輝!このままだと僕__」

 

明久が自分ではどうすることも出来ないから俺に助けを求めてきた。けどまぁ__

 

「いいじゃん別に」

 

「この裏切り者!」

 

面白いので放っておくことにした。そうだ、康太に写真撮ってもらおう。そんで後でからかってやろう。

 

そんな感じで俺達の普通じゃない学園祭は無事に終了した。

 

「僕だけ無事じゃないよ!」

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