ゴールデンウィーク万歳!
えっ!もう終わる?そんな〜
sideアルベド
やった。
と私は己の勝利を確信しその事に酔いしれていた。
「フフフ、これでモモンーー」
と言い終わる前に私は壁際目掛けて蹴り飛ばされた。
私の体が壁に着く直前で何者かに頭を掴まれそのまま地面に叩きつけられた。
一体何が起きているのかまるで分からない。
そんな私の身に起きた疑問はすぐに解かれることになる。
「ふーん。やっぱり百貌の面か、なるほどなぁ〜通りでアルベドはんが傾城傾国を身に付けられる筈やわ〜」
その声を聞いて私はその正体にすぐに気付いたがそれでも信じられず首を動かそうとすると今度は私の背中に足が押せて私の体の重心を押さえつけられ身動きが取れなくなった。
いえ、本来の力があれば・・
「フフ、本来のアルベドはんやったらウチが足で抑えた程度で身動きできひんなんてことあらへんやろうけど、傾城傾国を装備するためにおそらくは巴はん辺りに適当なこというて借りたんやろうけど裏目に出はったねぇ〜 百貌の面は装備者にあらゆるアイテムを一つ無制限に装備できるようになるアイテムやけど、代わりに装備者のステータスを全て半減させてまうさかい、今のアルベドはんのステータスは大体レベル50ほど、対してウチは装備はあらへんけどレベル100のステータスのままやからねぇ」
確かにその通りだ。
私は巴を言いくるめて何とかこの百貌の面を借りたがその代償に本来のレベルの半分にまでステータスが下がっているしかし
「な、なんで貴女は・・確かにワールドアイテムの力を受けたはずなのに」
「ああ、それが気になってたはったん」
と先程から浮かべていた意地の悪い笑みがより一層増した気がした。
「まぁ、ええか。ほな話したるわ、ワールドアイテムの力は絶大やけどそれを防ぐ方法は二つある。一つはワールドアイテムを所持すること、そして二つ目はワールドアイテムの効果を防ぐことが出来る特殊なクラスに付くことや、まぁここまで言うたら流石に分かるやろ?」
その顔は笑っているが目は一切笑っていないそんな顔をして私を酒呑童子・・様は見下ろしていた。
そして私がやろうとしていた事は初めから全て無駄だったと理解し、この後のことを考え、私は力なく俯くしかできなかった。
そんな私を見た酒呑童子様は抵抗の意思はないと判断したのか私の背中から足を退けて顔を私の耳元まで近づけてこう話した。
「まぁそう言うことやアルベド、でもウチは少しあんたはんのこと羨ましいわ。 ウチはまだそこまで誰かを好きになったことあらへんからけど。でもモモンガはんを愛するようにしたんわ。タブラはんと"ウチ"やからこんな事やったらいつでもウチが相手したるさかい」
とそれだけ言うと酒呑童子様は私から離れていく。
「ああ、それとここは風呂場やし、アルベドも少し浸かってたらええんとちゃう、ほな"またねアルベド"」
その言葉を聞いて私は今度こそ完全に己の敗北を確信して力なくその場にへたり込んで目に溜まった何が少しまた少しと溢れ出してくる。
あの方はここまでの事をした私をまだ此処に居ていいと肯定してくれた。
それを思うとより目から涙が一滴、また一滴と溢れてその場を濡らすのだった。
side酒呑童子
ああ、危なかった〜
この体がリアルになってから始めてワールドアイテムの効果を生身に受けたあの感覚はゾワゾワとした気色の悪いものだった。
しかしそれを靄を払うようにして対処できて良かった〜と私は内心かなりホッとしていたが何とかそれを表に出すことなく、そして早足でこの場を去りたい気持ちも抑えつつ背後のアルベドを一応、少し警戒しつつゆっくり歩いていた。
私がワールドアイテム、傾城傾国を受けて無事だったのは私が持っているクラス、イブキドウジのお陰である。
これは私が一人であるアイテムの素材を集めていた時期に隠しダンジョンのボスモンスター、伊吹大明神を初見単騎でクリアした時に取得可能になったモノだ。
このクラスは各種耐性の強化と自動回復系を劇的に上昇させることとあともう一つあるがそれは今回のモノには関係はないがこのクラスの耐性はワールドアイテムの効果にすら耐性を得ている点だ。
これによって私は傾城傾国の魅了から身を守ることができたわけだ。
そして十分アルベドから距離を離れた所で私は呟いた。
「ほんならもう姿見せてもええんとちゃう千代女、パンドラ」
すると姿を見せた千代女と弐式炎雷だ。
かつての友人の姿を見て少し懐かしく思う間も無く弐式炎雷の姿はぐにゃりと歪んで本来の軍服を着た埴輪顔がその姿を見せた。
その姿は宝物殿で見たことがある彼はアインズさんが作ったNPCのパンドラズ・アクターだ。
ちなみに私がこの二人に気付いたのはアルベドから傾城傾国を受けてその反撃で私がアルベドに蹴りを入れた直後にこちらに向かってくる二人を目にした為だ。
焦っていたのか二人とも気配遮断が解けていた。
その後、私がアルベドを抑えたのを見て再び気配遮断を使用して私とアルベドの様子を伺っていた。
「まぁ言いたい事はたくさんあるやろけど今回の件はウチらで中で内緒にしてといてな」
「はっ!」
「・・・」
私がそういうと千代女はすぐに返事を出すがパンドラだけは返事をしない。
「なんやパンドラ言いたいことあるん?」
「はっ!それは何故なのでしょうか?今回の件は明らかに酒呑童子様への敵対行為のはずですが、なぜあの守護者統括を罰さないのでしょうか?」
「うーん。何て言うたらええんやろか」
私が考えるそぶりをしながら脱衣場に向かっている間、千代女は懐から取り出したタオルで私の頭から順に体を拭いてから始めてくれた。
正直、今回の件は私とタブラさんの設定のせいなところが大きいと私は考えているので、あまりアルベドをどうこうしようとは思っていなかった。
「そやね、まぁ少し猫がウチに戯れてきただけやしそんな気にすることでもあらへんと思うたからやろな」
「しかし・・」
それ以上先は私が手で制して言わせないように
こういう所がナザリックの面々の面倒な所だと思いつつ、私は適当にパンドラに答える。
「まぁ罰やったら罰を与えないていう罰でええやろ」
そしてようやく広い浴場を抜けて脱衣場に着いた私はそのまま歩みを止めず出口に向かう。
すでに私の体を千代女が拭き終え、次に服と装備を着せ始めてくれていた。
というか千代女ってこんなこと出来たんやね。
「さて、次はウチからやけどな。パンドラ」
そして千代女に装備を着せてもらい脱衣場を出た私はパンドラの方に振り向いて
「はい、なんでございましょうか酒呑童子様」
そしてパンドラは私の方を見て敬礼をする。
「罰は確かに与えなあかんとウチも思う」
「はい、その通りです御座います!しかしなぜ私の足を踏まれているのでしょうか?酒呑童子様」
私の行動にパンドラは疑問を持ち首をかしげる。
そう私はパンドラに近づいて足を踏んでいる。
「罰が必要言うたやろ、だからこうすんの!」
私はパンドラに腹パンをくらわした。
予想外だったのかパンドラはお腹を抑えて蹲った。
「グオオォォ!!な、な、なにを」
「まぁ、女湯に入ってウチの裸見たんやし、これくらいの罰はいるやろ。あとアインズはんにはこの件は適当に誤魔化しといてな。ほな、行くで千代女」
そして私は蹲るパンドラを放置してその場を去った。
side千代女
「この報告書を酒呑童子様に届けなくては」
と拙者が第九階層を歩いていると女湯に入ろうとする弐式炎雷様を目にしてしまう。
同じニンジャとして酒呑童子様の次くらいに尊敬している御方なので拙者はすぐに分かった。
それ故に今目にしたことが信じられずに声を張り上げてしまう。
「なっ!何をしておられますか!弐式炎雷様」
しかしそこで疑問に思う何故、弐式炎雷様がここに
「ん?ああ貴女は確か・・望月千代女でしたか。いえ、私は至高の御方の一人の弍式炎雷様ではなく同じく至高の御方のモモンガ様に創造されたパンドラズ・アクターと申します」
その名は確か酒呑童子様から聞いたことがある。
確か拙者の主人である酒呑童子様を含めた至高の41人全ての能力の8割を行使でき宝物殿の領域守護者にしてレベル100のドッペルゲンガーだとか。
だがしかしそれを差し置いても
「では、尋ねるでござるが何故パンドラ殿が女湯に入ろうとしているのでござるか」
事と次第によってはと言葉に少し殺気を出しつつ拙者は問う。
しかしパンドラ殿は拙者の殺気などには全く動じずに宝物殿からワールドアイテム傾城傾国が持ち出されていたことそしてそのことをアインズ様に報告しようとすると今は忙しいと言われたため、アルベド殿に相談して捜索の為のシモベの編成などのを相談をしようとここ第九階層に来た時にこの女湯に高位の隠蔽効果が発動されているため、先にここを調べようとした時に運悪く拙者と遭遇したということらしい。
そして拙者もパンドラ殿の話を聞き少し疑問に思ったので一緒に調べると言うことになり拙者とパンドラ殿は気配遮断を発動して中を入りアイテムの発生源を探していると大きな力の波動と光輝く龍を目にしてそこに急行すると酒呑童子様がアルベド殿に蹴りを入れている所に遭遇した。
その後、私とパンドラ殿は再度気配遮断をして事態を見守り、酒呑童子様がアルベド殿から離れた所でパンドラ殿はアルベド殿を罰さないのかと酒呑童子様に問うていたが酒呑童子様は特に罰は与えないと言われた。
私個人の意見を言えば罰を、いや処断すべきだと思うが酒呑童子様がそれを求めていないのなら拙者はそれに従うまでに御座いまする。
その酒呑童子様の裸を見たとしてパンドラ殿が酒呑童子様から罰を貰っていた。
それを見た拙者は多少気の毒と思いつつも酒呑童子様の肌を見た罪としては少し軽いのではとも思っていたりもした。
「千代女、何しとるん?はよ行くで」
パンドラの近くにポーションを置いて拙者は本来の用事である酒呑童子様の元へとついて行くのだった。
アイテム紹介
百貌の面
見た目は髑髏の仮面
クラスによって装備や使用できないアイテムなどを一つだけ使用可能にするアイテムただし使用者は全てのステータスが半減し一時間このアイテムを外せない。
ユグドラシル時代、酒呑童子はこれを使って女性メンバーとバンド的なことをしていた。
その時に茨木、巴、千代女に楽器を持たせて演奏させていたためこの三人はそれぞれ百貌の面を所持している。