戦闘描写って難しいですね。
アインズさんにチョップされた頭をさすりながら私はアインズさんを睨むと
「人が情報収集してるのにお前は何をしているのだ」
あっ、コレはマジで怒ってますね。
「いやですね〜サボってる訳ないでしょ〜これは・・・人間観察?」
再び手を挙げるアインズさんを見て私は慌てて話をかえる。
「それよりも何かあったんですか? もしかしてアウラからですか?」
「ああ、実は・・・」
「アインズさんちょっと待って」
アインズさんと私が話をしている途中、村長が近づいて来るのが見てた私は一旦、アインズさんとの話をやめて村長の方を向いた。
「お、お話中に申し訳ありません。アインズ様、オキタ様」
「どうしたんですか。村長さん、あと私の事はオキタでいいですよ」
と何かに怯える村長を落ち着かせるように笑顔で答えた。
職業柄か男受けする作り笑顔はよく知っているのだ。
私の笑顔が効いたのか村長も少し落ち着きを取り戻し私達に用件を伝えてくれた。
何でもこの村に戦士風の者達が近付いているらしい。
まぁ、ようするにまた私達の力を借りたいのだそうだ。
その話を聞いたアインズさんは村人を村長の家に避難させて家の前にデスナイトを護衛としておいて私とアルベドと村長と共にその戦士風の者達を村の広場辺りで待ち受ける事にした。
実の所、その者達のことは村長が言いにくるよりも前には知っていたアインズさんにはアウラが私にはマーレがそれぞれその戦士風の男達の事をメッセージで知らせて来ていた。
そしてアウラにおおよそレベルを確認させた。
一番強い者でレベル30程度らしいのだ正直欠伸混じりに一掃できるレベルで村長が警戒している姿がひどく滑稽に見える有様だった。
服装や装備が統一されていない騎兵の集団が村へとやって来る。
報告で一応聞いていたがよく言えば歴戦の戦士、悪く言えば傭兵集団といった風に私には見える。
そして騎兵の集団は綺麗に整列してからその中の一番屈強そうな男が馬上から私達に声をかけて来た。
「私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。この近隣を荒らし回る帝国の騎士達を討伐するために王の勅命を受け、村々を回っている者である」
その屈強な見た目にあった重々しい声が私達のいる広場に響き渡る。
馬上の男が戦士長ガゼフだと名乗ると村長が驚いたようだ。
その反応を見たアインズさんもその人物が本当に本物の戦士長なのかを尋ねる。
「どのような人物で?」
「確か・・」
「貴方が村長だな。横にいるのは誰なのか教えてもらいたい」
ガゼフの射抜くような視線がアインズさんと私達に注がれる。
先程から部下たちを宥めつつも決して警戒を解いてはいない。いつでも武器に手が届くようにな位置に手を置いている。
この一連の動作だけでも相手は技量を感じさせるかがどの道、私達の脅威には今のところ足り得ないと私は判断したが村長はそうではなかったようだ。
「・・・」
ガゼフの視線に完全にビビっているが隣の人には効果はなかったようだ。
「初めまして、王国戦士長殿。私はアインズ・ウール・ゴウン。そしてこちらがオキタとアルベドです。私達はこの村が騎士達に襲われておりましたので助けに来た旅の者です」
それを聞いたガゼフは馬から降りてアインズさんの前に来て頭を下げた。
「この村を救っていただき感謝の言葉もない」
その時、村長とガゼフの後ろの者達が騒ついた。
王国戦士長という地位に就くものが見ず知らずのそれも身元も分からない相手に頭を下げることに驚愕した。
かく言う私も驚いていたのだからこういった上の地位にいるものはもっと傲慢で高圧的なイメージがあったからだ。
「いえ、私も旅の最中でしてね。たまたまこの村が襲われているのを見つけただけで。それに報酬目当てでもありますから、お気になされず」
「いくつか質問に答えていただけますかな」
「構いません」
少し考え込んでからカゼフはデスナイトに指差して
「ではまず、アレは一体?」
「アレは私が生み出したシモベです。そしてこの村の襲った騎士たちの相手もアレにさせました」
「そうか。ではその仮面を取っていただくことは出来るかな」
「それは出来ません。アレが暴走する可能性がありますので」
アインズさんがそういう村長はギョッとした。
村で騎士たちを一掃したデスナイトの力を思い返したのだろう。
それを見たガゼフは
「どうやら取らないでいて頂いた方がいいようだな」
「ご理解していただき感謝します」
おそらくガゼフはコレが嘘だということに気付いているような気がする。
それからアインズさんとガゼフはこの村を襲ってきた者達は帝国ではないのではないかなどの話から今回の村を救ってくれたお礼と報酬についての話になっていた。
「いえ、報酬は村長からいただいているので」
とアインズさんは断っていたけど。
まぁ、正直この地域の通貨や相場なんて知らないからなんだろうけどしかし、私はこの時、いい事を思いついた。
「それでしたら、あの騎士達が使っていた鎧を買い取って貰ってはどうですかアインズさん」
と私が意見を言ってみた。
「そうだな。そうして頂くとこちらとしても助かる」
そこで私は思いついたイタズラを仕掛ける。
「それでもし、私にガゼフさんが勝ったらこの鎧をタダで渡すというのはどうですか」
「なっ!何言っているんだ。オキタ」
「まぁ、いいじゃないですか。アインズさん、王国最強の戦士と戦う機会なんてないですよ! ね!いいですよね!ガゼフさんも」
と笑顔で言ってみる。
広場に二人が向かい合う。
互いに木剣を構える。
周りの戦士や村人も皆が手を止めてこちらの様子を伺っている。
微妙な表情を浮かべた者や少女がどの程度やれるかを話す者、そのどちらもどうやっても勝敗は決まっているといった雰囲気だった。
しかしその考えは模擬戦開始直後に覆ることになる。
sideガゼフ
「ぬんっ!」
右脇腹を狙ってきた斬撃を手にした木剣で受け止め、そのまま押し返す。オキタはその力を利用しそのまま後ろに飛び退いた。
その後の追撃はなく再び互いに木剣を構え直す。
ガゼフは目の前のオキタという少女の評価をまた一段上げる。
最初はこの村を襲った騎士の鎧や装備の売る権利をあえて勝ち目のない戦いで放棄し自分たちに貸しを作るための方便だと思った。
しかし、この数度の剣を交えてそれは違うと理解した。
彼女は・・・
「いや〜楽しいですね。ガゼフさん、真剣じゃないのが残念ですよ」
楽しんでいる。
俺も久しく思う。
王国では貴族のしがらみやらで真剣勝負などいつ以来だろうか。
おそらくはあの男との勝負以来だな、と自嘲しながら目の前の相手と再び木剣を合わせる。
すでに模擬戦とは思えないほどの攻防をガゼフとオキタは繰り広げてきたそんな二人を仲間の戦士や村人も唖然と見ているような状態だった。
その後も何度か木剣を合わせて思い知る。
力では俺が優っているが速さはオキタの方が上と言ったところだなと俺が分析していると
「やっぱりガゼフさんは強いですね!なら、コレで決めさせてもらいます」
するとオキタは体を低くして構える。
明らかに突撃の構えだ。
だがこれまでの打ち合いでオキタのスピードを知っている身としては侮れない何が来てもいいように俺も木剣を構え直す。
実戦ならこんな攻撃を受けるような真似はしないがこれは模擬戦だ。
ならば、その技を見切ってみせる。
するとオキタもそれを見て笑みを浮かべる。
「フフ、じゃあ行きますよ!!」
予想通りオキタは真っ直ぐこちらに突撃してきたがそのスピードは先程よりは格段に速い。
風の如しとはまさにこのことなのではと思えるほどだ。
なかなか速い。だが、見えないほどではない。
俺は右に飛んで回避する。
ここが狙いだ。
攻撃した後、攻撃を外した時は必ず無防備になるそこを叩く!
「武技、流水加速!」
しかし、俺が見たのはオキタの背中ではなく、こちらに迫るオキタの木剣だった。そこで自分が思い違いをしていた気付くオキタの攻撃はまだ終わっていなかったオキタはあえて最初の攻撃を外し俺を通り過ぎた直後に方向転換してこちらに攻撃してきたのだ。
この僅かな打ち合いで俺の技量を完璧に把握する分析力に驚嘆に値するがこの程度で終わるほど王国戦士長の座は伊達ではない!!
普通ならこの体勢からオキタの攻撃を回避することは不可能だろう
しかし
「武技、即応反射!!」
急に体制が整えた俺にオキタは驚愕の表情に変える。
それを好機と見て俺は体勢を立て直し迫るオキタの木剣と俺の木剣をぶつける。
そしてバキっと音を立ててオキタの木剣が折れた。