ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
転移のタネがわかったおかげで、何とか戦闘は持ち直せた。
要は姿を消したら足元を警戒すればいいのだ。影があるところ以外からは転移できない以上、警戒の難易度は大幅に下がる。
素早く行動しながら的確に対処することで、だいぶ余裕が生まれてきた。
余裕ができれば戦闘を観戦することもできる。すでにゼノヴィアの戦闘もある程度見ることができていた。
戦闘はほぼ互角。大容量の聖剣のオーラゆえに、対聖剣用神器ともいえる聖吸剣に渡り合っている。
とはいえ、この調子だとさすがにまずいか。
「ゼノヴィア! 一瞬隙を作るからデュランダルで一気に仕留めろ!!」
「いいのか!?」
「どうせ本陣強襲が失敗した時点で混戦は確実だ! これ以上時間をかけて評価を下げるより、あえて破損を受け入れて確実に倒すほうがマシだ!!」
さっきの爆発音は、間違いなく粉じん爆発のそれだろう。
つまり俺の作戦は失敗している。策では完全に会長に負けたと考えるべきだ。
都市内部での戦闘も視野に入れて木場には爆発防御用の聖魔剣の製造をさせておいたが、木場もさすがにただではすんでないだろう。
だとすれば、破損を極力避ける戦闘はこちらにとって不利になるだけだ。これ以上のダメージは避けた方が良い。
となれば比較的広い空間で破損しにくいこの現状、大火力とはいえ接近戦用武装であるがゆえに被害が少ないデュランダルを生かさない手はない。
「じゃあゼノヴィア、渡した礼装を起動しろ!!」
「ああ、了解だ!!」
ゼノヴィアが前もって俺が渡しておいた礼装を起動するタイミングで、俺も試作礼装を呼び出して起動する。
むろんそんなことを言えば警戒されるだろう。
だがしかし、これはそれどころの騒ぎではない。なぜなら―
「「・・・臭っ!?」」
嗅覚を刺激するちょっと変化球の精神干渉魔術だからだ。
ふはははは! まさかここで嗅覚刺激攻撃をするとは思うまい! これぞ相手の発想の裏側をついた陽動の基本戦術!
そしてゼノヴィアの手にデュランダルが握られる。これでいけるか! 嗅覚干渉系の礼装を渡していて正解だったぜ!!
「ではこちらもいろいろと面倒なことになったのでな。ここで決めさせてもらう!」
莫大なオーラを放つデュランダルをもって、ゼノヴィアが巡に切りかかる。
その瞬間、その間に副会長が割って入った。
なるほど、あれは味方の影からも移動できるのか。
などと感心している間に、副会長は腕を突き出す。
その空間が少しゆがんだかと思うと、なにか薄いものが姿を現そうとする。
その瞬間に、俺は袖に仕込んでいた仕込みを発動させた。
「
「
鏡がデュランダルで割れるのと魔術が発動するのはほぼ同時。
瞬間、ゼノヴィアが思いっきり吹っ飛んだ!
距離を取らせるのが目的だったが、しかしこの吹っ飛び具合はいくらなんでも吹っ飛びすぎだ。
「カウンター系の神器か!?」
「ええ、この鏡を砕いた攻撃は、その衝撃が相手に跳ね返ります」
ちょっと自慢げな副会長の説明は面倒だった。
正直アザゼルがカウンターを警戒していたが、俺はちょっと舐めてかかっていた。
カウンターと言うのはいわばボクシングで有名だが、あれだって使う人物に相応の実力があることが前提条件だ。
本当にスペックが違う相手に戦闘技術によるカウンターをたたき込んだところでそうやばいことにはなりづらいし、そこまで警戒する事はないと思っていたがこういう事かよ!?
鏡壊した衝撃をそのまま返すってそれカウンターというより反射攻撃じゃねえか!! これ攻撃そのものだったらどうなってるんだ!?
禁手になったらマジで攻撃そのものを反射するようになるんだろうか? ・・・だとしたらいやだ。
とはいえ事前情報とはまた違った能力を出されたのは非常にまずい。ただでさえ戦力見誤ってるのにこの流れはちょっとマジやばいぞ!
「完全に決まれば撃破もできましたが仕方ありません。どちらにしろ当分は立てないでしょうし、ここで終わらせていただきます」
「会長から真っ先に狙うように言われてるから、悪いけど覚悟してね?」
退魔家系コンビがこちらに獲物をむけ、慎重に近づいてくる。
わーいマジ警戒にもほどがあるよ畜生。
そりゃあ俺策士だから脳筋傾向強いうちのメンツに一人いるだけで一気にバランス整うよなぁ。俺でも狙う、当然狙う。
前線に出たのは失敗だったか?
さすがに空間転移使える相手とおそらく最速のメンバー同時に相手したら翻弄されるのは確実なんだけど!?
「み・・・やし・・・ろぉ!!」
撤退を考えていたほどの俺の耳に、ゼノヴィアの声が届く。
「投げるぞ・・・つかえ!!」
その声が聞こえると同時に、俺は全力で後方に飛びながら振り返る。
相手が攻撃する可能性はあるが、今はこれしか逆転の手がない!!
膝をついて振るえるゼノヴィアが、残された力を振り絞って放った最後の切り札。
それを見た副会長の叫びと、俺の声は重なった。
「「デュランダル!!」」
俺の体には聖剣の因子が存在している。
だからこそ偽聖剣が使えるわけだが、それでも単体ではデュランダルを使うことはできない。つかえたところでゼノヴィアほどうまく使えるわけがない。もし使うとするならば普通は木場だ。
だからこそ、限定特化型の鍛え方でデュランダルの運用方法を考える必要があった。
パワー重視のゼノヴィアと破壊に特化したデュランダルの組み合わせは一番性能を引き出せる。安定した剣技をもつバランス思考の木場なら、真価は発揮できないがこのルールでも安定して使えるだろう。
なら俺はその二人とは違う運用で行えるようにするのが一番だ。
「行くぜデュランダル! 全力・・・全開!!」
デュランダルのオーラが爆発的に増幅し、剣どころか周囲にまで漏れ出そうとする。
それでいい。それこそが、俺の求めたデュランダルの運用方法。
剣としての運用は生粋の剣士に任せればいい。俺はこれを聖なるオーラを放出する機構として扱おう。
喰らうがいい、聖なるオーラの無差別広範囲攻撃・・・!!
「デュランダル・・・バースト!!」
『ソーナ・シトリー眷属の騎士一名、リタイア』
『リアス・グレモリーの兵士一名、リタイア』
アザゼルSide
想像以上の大混戦になってきたな。
「敵も味方も食料品売り場を有効活用してんなオイ。ファックな食品の使い方だ」
あきれていいのか感心していいのかわからん表情で小雪がつぶやく。
まあ、対吸血鬼ニンニクフルコースに粉末製品全力投入の粉じん爆発だからな。どっちも容赦なく食品を武器に使いやがった。
俺としては兵夜の割り切りを評価したいところだ。
でかい破損をするなと言われても、それを気にしたら負けると思ったらある程度は即座に許容する状況判断能力。何をしでかしてくるかわからない不良相手に喧嘩に明け暮れたことで培った状況判断力はなかなかだ。リアスたちだけだと気にしすぎて誰かがうっかりぶっ壊さない限りやれなかっただろう。
それゆえにあいつが前線に出てきたのはミスだったな。使い魔を使って視界をのぞけるのなら、後方で待機して作戦指揮に徹するべきだったか。
いや、それだと王であるリアスの作戦指揮能力が足りな過ぎると上の連中から突っつかれるかもしれん。実践ならともかくレーティングゲームの時はリアスを立てて舵取りを完全にしないほうがいいと判断したか?
しかし、場を利用するというやり方ではソーナよりあいつのほうが上だな。不良相手にはトラップエリアに誘導したりとかしていたみたいだし、その辺の経験を生かしたか?
通気口を利用しての本陣潜入とか俺も唸ったし、今の方法もなかなか考えたやり方だ。これはソーナも足元救われるかもしれねえな。
「とはいえ実質、兵夜の判断ミスで生徒会優勢といったところですね。・・・相手の異世界の能力をどれだけ把握できていたかが明らかに分かれてますね」
「だな。先入観で桜花の世界の魔法体系を自分たちに当てはめた兵夜のミスだ」
俺たち側の魔法も、数式さえ理解できれば誰でも使えるものだったが、どうやら桜花側もそういう方面のようだな。
小雪の世界は異能力者が使うと命の危険があるし、簡単に魔術・魔法といってもいろいろ違いがあるわけだ。
異文化コミュニケーションをなめてかかった兵夜が悪い。
そして、俺たちの目の前で戦局がさらに大きく動く。
『ソーナ・シトリー眷属の兵士一名、リタイア』
アナウンスとともに消えていく匙元士郎。
赤龍帝相手によく善戦したとほめてやりたいが、しかし正面から殴り合うのはさすがに悪手だったか。
だが、それだけの成果はちゃんと出している。
『貴女の負けです、兵藤くん。匙は確かに、あなたののどに刃を突き立てました』
膝をついて崩れ落ちるイッセーを静かに見据え、ソーナがはっきりと勝利宣言をする。
ああ、まさか
・・・イッセーの血を吸い取って失血多量で強制的にリタイアさせるとは、こっちも奇策をぶつけてきたな。
禁手前に倒すのではなく、禁手になろうと残れない方法で相手を倒すとかよく考えたもんだ。
電流をダメージを受けることなくバイパスして流したり、匙の奴は間違いなく黒い龍脈を使いこなしている。ここまで使いこなした奴もそうはいなかったはずだ。
神器の性能を引き出すという点においては、ただ禁手に至っただけのイッセーより上だな。こいつぁ見事だ
『前だけを見て下を見なかったのがあなたの敗因です。匙元士郎に敗北したという事実をもって、あなたはここで倒れなさい!!』
こりゃ完全に勝負はソーナの勝利だな。
よりにもよって直前に禁手かしたことで、イッセーの注目度は飛躍的に高まっている。
それがたった一人と相打ちで倒されたとなっちゃ、王であるリアスは何をしていたのかといわれても文句は言えない。
兵夜の奴もガス対策や呪い対策とかはフルに用意していたみたいだが、失血は想定してなかったようだ。
まあ止血剤は用意していたんだろうが、直接奪い取るとは思うまい。
だが、イッセーは震える足を無理やり動かして立ち上がった。
『まだ・・・だ。まだ、新兵器を見せて・・・ない』
・・・イッセーの奴、まさか禁手に匹敵する新たな技をあの地獄の中で編み出してたのか?
洋服崩壊の遠距離版か? それとも服が透ける技でも開発したか?
「・・・なあアザゼル。すっげーファックな予感がするんだけどよ?」
横でぼやいた小雪の言葉が、ぶっちゃけ真理をついていた。
祐斗Side
「「「「「「「ド変態です!!」」」」」」」
僕がダメージを何とか乗り越えてたどり着いた先に、イッセー君がそう総出でいわれていた。
いったい何があったんだ? あとイッセー君が非常に弱っているんだが、桜花さんと正面衝突でもしたのだろうか?
「ち、畜生! とりあえず会長のおっぱいよ!! 今の作戦を教えてくれ!!」
・・・よくわからないけど、どうやらイッセーくんは洋服崩壊に並ぶであろうスケベ技を開発したみたいだ。
だけど胸に質問してどうするのだろうか? どうもそれまでの流れがわからないからどういう技なのかが全く分からない。
「・・・部長、この会長は僧侶二人がかりで精神を転送させたおとりです。本物の会長は・・・屋上、に。あ・・・血が足りない」
そこまで言って、イッセーくんが崩れ落ちる。
よく見ればイッセーくんの体には黒い管がつながっていて、その先は会長の僧侶の花戒さんの持っている輸血パックにつながっていた。
かなり大容量の輸血パックが、満タンいっぱいになっている。
まさか、匙くんの黒い龍脈でイッセーくんの血を抜き取っていたのか!?
宮白くんはイッセーくんに色々持たせていたけど、さすがに輸血パックは用意してなかった! これでは回復の使用がない。
アスカロンさえあれば切り裂くこともできたかもしれない。完全に作戦が裏目に出た。
本陣強襲も読まれていたし、作戦においては完璧に会長に深くをとってしまったようだ。・・・これは上の評価がひどいことになりそうだ。
「イッセーさん!」
転送の光に包まれるイッセーくんに、アーシアさんが近づこうとする。
だが、イッセーくんの足元から浮き上がるように副会長が現れると、行く手を遮るように薙刀を向ける。
影を媒介とした空間転移? 桜花さんの世界の魔法かなにかか!
すでにイッセーくんはリタイアが確定しているといってもいい。しかも失血である以上、アーシアさんの神器でも効果は見込めないだろう。
それでもアーシアさんはほおっておけないのか、オーラの拡大かを試みる。
その懐に、花戒さんがもぐりこんだ。
特にダメージは受けていないのにあえてオーラに飛び込んだ。・・・何かあるのか!?
「アーシアさんダメ―」
「
回復の緑のオーラが、一瞬で禍々しいオーラに変わる。
とたん、アーシアさんの体が大きく震え、そしてリタイアの光に包まれる。
「回復の反対は・・・攻撃。会長、回復役は・・・倒しまし、た・・・」
口から血を流しながら、花戒さんもまた光に包まれる。
『リアス・グレモリー眷属の兵士一名、僧侶一名。ソーナ・シトリー眷属の僧侶一名、リタイア』
一度に三人もの人数が転送され、その場がやけに広く感じてしまう。
今の能力は聞いたことがない。順当に考えれば桜花さんがらみの能力かとは思うが、しかし恐ろしい方法を使う!
こちらの能力そのものを利用したカウンター攻撃。これが真のレーティングか・・・!
「・・・どうやら、一歩遅かったようだな」
僕の隣に、ボロボロになった戦闘服を着たゼノヴィアが並び立つ。
・・・やはり宮白くんはやられたか。正直、どんな手を隠し持っているかわからない今の状況で策士でかつ対応能力が高い彼が抜けるのは非常に危険だ。
「さて、気を取り直して戦闘を続けましょう」
副会長が薙刀を振るい、僕らに視線を合わせる。
状況的には数に勝るこちらが有利ではあるが、しかし油断はできない。
彼女たちがアーティファクトを持っているとすれば、むしろここからさらに畳みかける可能性が非常に大きい。
宮白くんの戦闘能力は、あのアーティファクトがあるからと言える点が非常に大きい。
大容量の武器庫をもち、そこから必要なものを適宜取り寄せることができる。戦術によって手札を変える宮白くんにここまで合致した能力もない。そのうえでアーチャーさんやアザゼル先生の協力で武装を集めているのだ。かなり恐ろしい組み合わせになる。
由良さんの場合は、接近戦主体の戦車というスタイルに合わせた通常攻撃用の武装と見せかけて、その伸縮自在という特性により遠距離戦もこなせる万能武装だった。
いわば禁手がない神器といったところだろう。とはいえアーティファクトが契約によって行われるという都合上、所有者に合った武装になるのはほぼ確実と考えるべきだ。
そのあたりを考えると、爆発力では劣るが使いやすさでは上回るはず。警戒を怠るわけにはいかない。
・・・と、そこに静かな足音が響く。
「イッセー君に、この力を使うところを見守ってほしかったのに・・・」
・・・朱乃さんが、マジギレしていた。
「・・・消えなさい」
経験的によくわかる。これはマズイ。
「ゼノヴィア走って!!」
「うぉおおっ!?」
強大な破壊力の雷光がはなたれ、僕とゼノヴィアは全力で距離をとる。
『ソーナ・シトリー眷属の僧侶一名、リタイア』
あまりの破壊力に正直度肝を抜かれた。
と、いうより周囲を破壊しすぎないようにという事前の通達を完全に忘れている!!
まさかいつも落ち着いている朱乃さんがここまでキレるとは!? 想像以上にイッセーくんの存在が大きくなっていたようだ!!
「く・・・っ これは想定外ですね・・・!」
一方雷光を辛くも逃れた副会長が逃走を開始するが、しかし逃がしはしない。
神滅具のイッセーくんと邪眼のギャスパーくん、さらに参謀格の宮白くんを撃破されたのは非常に痛い。
ここで逃がすわけにはいかない!
「逃がしはしません!!」
だが副会長は不敵にほほ笑むと、そのまま陰に沈み込もうとする。
今からでは間に合わない―
「ああ、そこまでです」
その背中に、何かが突き刺さった。
それが飛んできた方向に視線を向けて、僕は度肝を抜かれた。
「・・・いやぁゼノヴィアを先に行かせてよかった。おかげで後ろの警戒ががら空きになったようで隙を突き放題でしたよ」
勝ち誇った笑顔の宮白くんが、ショットガンを片手に不敵にほほ笑んでいた。
・・・さっき撃破のアナウンスが流れていたよね!?
呆然とする僕の前で、同じく茫然とした副会長が、全身から血煙を上げながら唖然として視線を向ける。
「そん・・・な、馬鹿な?!」
「ああ、アナウンスのことですか?」
宮白くんは懐から携帯のようなものを取り出すと、そのスイッチを押した。
『リアス・グレモリーの兵士一名、リタイア』
・・・アナウンス!?
「放送設備があるところで、アナウンスを無条件に信頼してはだめですよ? 念のために声帯模写が得意な知り合いに頼んで一通り作ってもらって正解でした」
・・・確かにアナウンスの偽装をしてはいけないだなんてルールはないけど、まさかそんなものを用意していただなんて想定外だった。
そういえばわずかにアナウンスの内容が違う。そこで気づくべきだったか。
「く・・・っ! 桜花、後は・・・頼み―」
『ソーナ・シトリー眷属の女王、リタイア』
倒れ伏した副会長が消え、そしてアナウンスが鳴り響く。
これで生徒会のメンバーはあと二人。
1人はもちろんソーナ会長。
そしてもう一人は―
「了解しましたー」
カツン、カツンと、足音が響く。
そちらに視線を向けた僕たちは、その最後の障害を見据えた。
・・・聖吸剣ではなく鞘に納めた野太刀を手に持った桜花さんが、ゆったりとした足取りで僕たちに近づいてきていた。
「ごめんねみんなー。本当なら私が暴れて終わらせたかったけど、会長の目的のためにはイッセーくんは元ちゃんで倒すのが一番よかったからー」
両手を合わせて謝りながら、桜花さんはしかし鋭い視線を向けていた。
・・・彼女から、今までにない重圧を感じる。
間違いなく、今の彼女は今までの彼女よりはるかに強い存在なのだろう。それだけは間違いない。
「・・・みんな、後は任せてねー。ちょっくら一狩り、やってくるからねー」
野太刀を鞘から引き抜きながら、桜花さんがゆっくりと構えをとる。
「・・・最後の障害はやっぱりお前か。何となくそんな気はしていたよ」
「そうだねー。私も、兵夜くんはなんだかんだで私と当たるまで生き残るって思ってたよー」
宮白くんの言葉にわずかに笑みを浮かべる桜花さんだが、その表情はあくまで真剣だった。
「・・・一人でも多く倒して、ソーナの評価を上げようという覚悟。敵ながら見事としか言いようがないわ」
覚悟を見せる表情を前に、部長も戦慄を感じたのか息をのんで彼女を見る。
ふと、桜花さんが苦笑した。
「なーんか、勘違いしてないかなー」
「・・・なに?」
僕らが怪訝な表情を浮かべる中、桜花さんはポケットに手を伸ばす。
「・・・一人でも多く? いやいや違うよー」
そこから取りだしたものを見て、僕たちはさらに戦慄した。
あれは・・・パクティオーカード!?
「一人残らずうち滅ぼすにきまってるじゃんかー」
・・・仮契約というのは魔法使いが従者とする者に対して行う能力のはずじゃなかったのか!?
「・・・じゃあ、ソーナ・シトリー眷属兵士にして駒王学園生徒会庶務、んでもって―」
彼女はカードを見せつけるように突出し、堂々と名乗りを上げる。
「称号、忠義持つ流転の魂! 桜花久遠、参る!!」
Side Out
ヘルキャット編ボス、桜花久遠ついに登場。
ここからグレモリー眷属相手に大暴れしますので、自戒をお楽しみに!!