ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
さあて、グレモリー眷属はどこまで持つか?
アザゼルSide
・・・その姿を見て、俺が感じた感想は一つだ。
「おいおいあの女マジかよ? ・・・今までとは別人じゃねえか?」
フィフスたちと遣り合った時のあいつらの姿は全然見てなかったが、もし見てたら真っ先に倒すように忠告してただろう。
動きに合った隙やぎこちなさが大幅になくなっている。もうあれば別人の戦士と考えたほうがいいぐらいだ。
確かにソーナはあえて匙を使って倒したかったようだな。
今の桜花なら一対一で赤龍帝の鎧を相手にすることができる。勝算だって十分のあっただろう。
『・・・ゼノヴィア、子猫ちゃん! 一分でいいから時間稼ぎよろしく!!』
そのやばさを肌で感じ取ったのか宮白が叫ぶ。
続いて木場を引っ張りながら後退して、朱乃の隣まで並びやがった。
『木場、朱乃さん!! 例の奴の緊急調整終わりましたからフィッティングするんで急いで!! 部長は下がって・・・いや、俺たちの隣にいてください!! 1人で行動してたら一瞬で開きにされる!!』
「あいつほんとに殺し合い経験少ねーのか? やばさを一瞬で把握しすぎだろ?」
「まあほかの面々も言われずともうすうす感じているとは思いますが。・・・というか、実質新兵器の緊急調整のための時間稼ぎでしたか、あの偽アナウンス」
「あ、あぅうう・・・。兵夜ぁ」
宮白の判断にそれぞれの感想を漏らす小雪とベルだが、ナツミはハラハラしながら見守っていた。
確かにあの状態の桜花が相手になっているのを見たら、判断も間違いないな。
・・・そこまで予測したわけじゃないだろうが、想定外の事態に新兵器で対抗というのは悪い話じゃない。相手が知らないものを使ってくるならこちらもまたしかりだ。
特に木場のは発想の転換だ。あいつの能力があってこそ真価を発揮するいい武装だろう。
んでもって朱乃のは目からうろこだ。俺に苦言を呈すだけあって、方向性の違ういいプランを組み立てたもんだ。確かにあの方向性は使い方次第じゃ化けるし、雷光だとつかえねえしな。
「く、久遠ちゃんが出た以上、これ以上はやらせないんだからね!! 覚悟しなさいサーゼクスちゃん! リアスちゃんの負けは決まったわよ!!」
「いや、宮白くんを甘く見ないほうがいい。彼の作り上げた回復用のマジックアイテムを見れば、魔術の力はなめていいものではないよ」
保護者のほうまで火花が散ってきやがったなオイ。
そんな保護者バトルが始まると同時に、桜花がリアスたちに突っ込んでいく。
『全員まとめて切り刻むよー!』
『なめてもらっては困る!!』
『行かせません!』
ゼノヴィアと小猫が立ちふさがり戦闘になるが、見ればわかるぐらいに桜花が優勢だ。
すべての攻撃をさばいて、隙あらば瞬動で抜けようとしてくる。
それができないのは小猫が仙術で即座に位置を把握して迎撃に移るからだ。その直後からデュランダルが迫ってくれば、聖吸剣をレンタルしてしまった今の桜花ではまともに打ち合えない。
とはいえそれをもってしてもじわりじわりと距離を詰めてるところもあり、この辺は地力の違いってやつか。
と、俺の隣で観戦していたオーディンがこっちを見るとにやりと笑う。
「なかなか面白いことになっているのぅ、アザゼル」
「俺も正直手に汗握ってるぜ。まさか開幕直後からここまで乱戦になるとは思わなかった」
宮白の判断があってのものとはいえ、どこもかしこも激戦でワンサイドゲームがない。
いくらイッセーを筆頭としたパワー戦ができないとはいえ、ここまでやるとは思わなかった。
「特に面白かったのはあのドラゴンの小僧じゃのう? ・・・ああ、赤龍帝のほうではないぞ? ヴリトラのほうじゃ」
「ああ、確かに面白かったな」
イッセーの奇想天外な新能力もあれだったが、匙のほうもなかなか面白かった。
最初見たときは自分の神器を一つも理解できてない奴だったが、ちょっと見ない間に一気に化けやがった。
さらに身体能力もすごい。平均的な身体能力なら、あいつを筆頭にソーナんところの連中のほうが高いんじゃねえか?
「ああいうのが伸びるんじゃ、ああいうのが。どうせおぬしが面倒見る一人じゃろう? ちゃんと面倒を見ることをお勧めするぞ」
そしてそれだけのものを提供したものが、今最後の砦として立ちふさがった。
ソーナの戦略にミスがあるとするならば、この女を終盤まで温存したことだろう。
レーティングゲームに通用する人材を育成するという観点から見て、元から圧倒的な才能を持っている逸材を単独投入してのワンサイドゲームなど取れなかったのだろうが、何人かをゲリラ戦で殲滅する程度していれば、今頃ソーナは勝っていただろう。
これだけの化け物とはいえ単騎で挑めば、集団戦術で倒しきれるだけのメンツがそろっている。
さて、どこまで粘れるかね?
木場Side
・・・準備は整った。
「ここからは僕も参戦するよ、桜花さん!!」
宮白くんとアーチャーさんが開発した新兵器をもって、僕は一気に駆け出す。
その僕の姿を見た桜花さんが、目を大きく見開いた。
「ロボットのバックパックー!? それむしろ邪魔じゃない!?」
確かに、これは非常に使いづらい強化武装だ。
僕が背中に背負っているのは巨大なバックパック。
八つのパーツで構成されており、それぞれが生み出した剣をつかむことが可能だ。
彼の世界の義手の技術が構成されており、重量増加による機動性能の低下を風の魔術の応用によるブーストで補うため、確かにロボット兵器のバックパックに近い。
反面、僕が魔術師でないこともあって腕としての使用は非常に難しい。しかも慣れていない今では、戦闘で運用するなど夢のまた夢だ。
だが、これの発想は全く違うところにある。
「強化外装、リョウメンスクナ・・・起動!!」
バックパックを起動すると同時、そのユニットの先端部に聖魔剣を生み出して装備させる。
・・・エクスカリバーの中にもあるように、所有者の身体能力を強化する武装はいくつもある。もちろん僕だって生み出すことができる。
とはいえそれは剣である都合上いくつも同時に持つことができないので、強化できる戦闘能力には限りがある。
だが、そのつかむ腕は複数あったらどうなるか?
その答えが、ここにある。
自分でも制御できるかわからない速度で一気に桜花さんとの距離を詰める。感覚強化の聖魔剣も用意しなければ転んでいただろう。
それにかろうじて反応した桜花さんは瞬動で下がるが、しかしすぐに反応して一気に距離を詰めた。
「ちょ・・・早ー!」
振り上げた剣をかろうじて受け止める桜花さんだが、表情はちょっと苦しげだ。
当然だろう。筋力強化の聖魔剣も用意しているし、彼女の瞬動を見切るために動体視力強化の聖魔剣も用意した。
確かに見違える戦闘能力を持っているが、この身体能力の強化は想定外だろう。
・・・そしてそれだけでは済まさない。
「朱乃さん! 全力でお願いします!!」
「ええ、うっぷんを晴らさせてもらいますわ!!」
「いやいやいやいや、逃がさないからねー!!」
朱乃さんのノリノリの声を聞いて、あわてた桜花さんが攻撃の密度を上げる。
大威力の雷光を警戒して僕を逃がさないようにするつもりなのだろう。
確かに大出力の雷光を完全に防ぐことは僕の聖魔剣でも不可能だ。それは認めるから判断そのものは間違ってない。
雷に変更したところで同じことだ。桜花さんの体捌きでは僕を楯にすることは容易だろう。包み込むほどの大規模でなければ意味がない。
だが、それは今までの話だ。
「ちゃんと見たほうがいいと思うよ? ・・・度肝抜かれるから」
「いやいやー。度肝抜かれるよな敵味方無視の攻撃とかきみ達じゃ性格的に無理・・・」
ちらりとみた桜花さんがあわてて二度見する。
まあそうだろう。
ドSの笑顔を浮かべる朱乃さん? それは想定の範囲内だろう。
ドヤ顔の宮白くん? それだって、これだけの新兵器の活躍を見れば、発案と開発補助をした身としてそうなるだろう。
ちょっと引いている部長と小猫ちゃん? なんで引いているのかが問題だ。
では何を見て二度見したのか。
それは簡単だ。
「これだけ用意すれば効果は抜群ですわね。・・・イッセーくんに私の勇士を見させなかった報い、特と味わいなさい」
「ふはははは! 雷光を使いたくないなら、電力じゃないとできないことをすればいいじゃない! 我ながら発想の勝利!!」
・・・数十ものロケットランチャーのようなものが宙に浮かんでいる光景を見れば度肝も抜かれる。
朱乃さん用に宮白くんが開発した強化武装、
用途はきわめて簡単。朱乃さんが生み出す雷を磁力に変換し、その微細な流れの変化でいくつものパターンに分けて運用するというものだ。
今は複雑な操作の場合、宮白くんの協力のもと数十丁の銃火器を運用することしかできない。だがこのパターンを基に改良を施して、脳波操作式にすることでより複雑な運用を可能にするつもりらしい。
なんでも砂鉄を操作して自在に操る武装にするとか、もっとシンプルにサイコキネシスのように重量物を操ったり、それを利用して宙を高速移動したりとか言っていた。
そうなればどちらかといえば僧侶タイプの朱乃さんだが、これによって戦車や騎士よりの運用も可能になるかもしれない。
ちなみに今浮かべている武装はインパルスといって、暴徒鎮圧や消火作業に使う、霧状にした水を発射する装置らしい。
そして宮白くんでレーティングゲームといえば、ライザー・フェニックス戦で見せた聖水による対内注入。
当然それを連想したのか、桜花さんの表情が露骨にひきつった。
「まさか対聖水用の聖魔剣とかー・・・」
「今持ってるのがそうだよ?」
僕が応えると同時に発射された。
「ふ、風花、風障壁!!」
あわてて桜花さんが叫ぶと同時に、僕らをカバーするかのように風が発生する。
聖水の霧はそれに防がれてこちらに来ないが、しかしそこまでは想定内だ。
「いやー危なかったー。でもこれで痛いのは―」
「あいにくそこまでは想定内だ!!」
桜花さんの後ろに回り込んでいたゼノヴィアがデュランダルを振り下ろす。
僕はその瞬間に対聖水を対聖剣用の聖魔剣にかえ、デュランダルの余波を防ぎながら同時に切りかかる。
そもそもまともな剣術で彼女に劣るのは当然だ。ならば卑怯ではあるが数で責めるのが当然。
二刀流で数を有する僕と、圧倒的な力を体現するゼノヴィア。
前後から同時に相手をするのは、いくら桜花さんでも苦戦するはず!!
出し惜しみをして単騎運用した隙を逃すつもりはない!!
「ちょ、ま、まって―」
「「待たない!!」」
あわてる桜花さんをその隙に倒すべく、僕たちは全力で攻め立てる。
瞬動をさせる隙は与えない。この短時間で叩き潰す!!
実際今の桜花さんは明らかに苦戦している。それに―
「OKOK。そのまま抑えてろよ二人とも」
絶妙な場所に移動した宮白くんが、大口径の猟銃を構えていた。
当然、その弾丸は聖水を注入する特注仕様。さらにワイヤーでつなげることで強化の魔術を込められると念を入れられている。
桜花さんは防御方面ではライザー・フェニックスに劣るだろう。少なくとも体内に強化された聖水を注入されてただで済むとは思えない。
そこまで時間を稼げればこちらの勝ちだ。・・・これで決める!
射撃とタイミングを合わせて同時に切り込む。これで―
『契約執行300秒間! ソーナの従者、桜花久遠!』
どこからか、ソーナ会長の声が響いた。
「・・・ナイスタイミングです、会長ー」
目の前で、刃が瞬いた。
「神鳴流奥義、百裂桜華斬!!」
円を描く刃が、僕とゼノヴィアを一気に弾き飛ばす。
デュランダルをもったゼノヴィアを弾き飛ばすだけでも驚きなのに、さらに桜花さんはそのまま蹴りを放つと発射された銃弾を蹴り飛ばした。
「・・・は!?」
ありえないものを見て宮白くんが大きく口を開ける。
当然だろう。あの状況下で一気に逆転するだなんて、普通はありえない。
「言ってなかったねー。仮契約は主人が従者に魔力供給することで身体能力を大幅に強化できるんだよー」
・・・今まで結構な戦闘を繰り広げていたはずだが、もしかしてその手段を忘れてたりしていたのだろうか?
「使ったことないから会長にどんなことができるのか聞かれるまで思い出せなかったよー。ごめんねー」
本当に忘れていた!
「油断大敵ですわね!」
「私も忘れてもらっては困るわ!!」
両手を合わせて誤る桜花さんに、我に返った朱乃さんと部長が一斉攻撃を放つ。
インパルスは一回きりのタイプだったのでそれを磁力で投射し、さらに消滅の魔力がピンポイントで放たれた。
だが、それがくるよりも早く桜花さんはさっき見せたカードを突き出した。
「―
カードと引き換えに現れたのは、半透明な美しい羽衣だった。
その直後、桜花さんにすべての攻撃が激突して爆発すら起きる。
・・・タイミングから言って防御系の武装か何かだろうか? とはいえあれだけの直撃を無傷で防げるとも思えないが・・・。
「・・・さすがに卑怯だから教えておくよー」
煙の中、桜花さんの声が響く。
「私の世界では気と魔力は反発する概念でねー。まあ、この世界の聖と魔みたいなものなんだよー」
一歩一歩歩いているのか、少しずつだが桜花さんの姿が見えてくる。
待て、なんで今その情報を言う必要がある?
聖と魔が反発するのはよく知っている。だから僕の聖魔剣はイレギュラーといわれているのだし、出力も高い―
・・・・・・待て。
まさか、組み合わせるものがあるというのか?
「・・・このアーティファクトは気と魔力が大量に必要でさー。会長がノウハウ無いから魔力供給なかなか苦労してて、まさかこの試合の最中につかむとは思わなかったよー」
この怖気はなんだ?
まるでコカビエルと相対した時のようなプレッシャーが、今の僕たちを襲っていた。
煙から、桜花さんがゆっくりと出てくる。
「感卦法っていうんだけどねー、これはそれを発動させてくれるアーティファクト、感卦の羽衣っていうんだー」
無傷で、桜花さんは立っていた。
「・・・さあ、ここからが本番だよー?」
Side Out
何気に考えるのが大変なのがオリジナルアーティファクト。
なんてったって前回書いた通り、ケイオスワールドでは普通に考えても「禁手のない神器」にしかならないから、オリジナリティを考慮しなければならないわけです。
そのため考えられるプランは
1 複数のアイテムのセット
2 開発当時では作られてないであろう近代技術系(銃とか)中心
3 ネギま! 世界観独自の技術が関与するもの。
ちなみに兵夜の場合は三つすべての複合タイプになります。
で、久遠の場合は3で行きました。 何気に生前の久遠は感卦法を使えないので、ある意味で生前を超えたことになります。