ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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ついにレーティングゲームスタートです。


初手カウンター、直撃

 

 

 レーティングゲーム当日。

 

 俺たちは控室でいろいろと準備していた。

 

 一応俺もそれなりに準備しているから負けることはまずないだろうが、しかし警戒しておくに越したことはない。

 

 なんてったってヴァーリがわざわざ警告するような相手だ。さらに凶悪な隠し玉の一つぐらいは持っていると考えたほうがいいだろうな。

 

「・・・なあ宮白。カウンターって習得したほうがいいかな」

 

「お前には当分いらんだろ」

 

 戦闘について話しながらも、イッセーの表情もけっこう鋭い。

 

「でもさ、ゼノヴィアそれでやられかけたんだろ? やっぱりカウンターってのは必要だと思うんだけど」

 

「あのなイッセー? 副会長の場合は特殊能力としてカウンターできるものだから行けたんだ。純粋な武技としてカウンターを持っていたとしたら、あのタイミングでもよくて相打ちがせいぜいだったぞ」

 

 だからこそ警戒が緩かったのは認めるが、少なくともイッセーがカウンターを勉強する必要は当分ないだろう。

 

 赤龍帝の能力にカウンター用の能力はない。魔法関係ならあるかもしれないが、しかしイッセーにそのあたりの才能は期待しないほうがいいだろう。そこから考えると、イッセーが使えるカウンターは格闘技系になるわけだ

 

 たとえばボクシングが有名だが、あれは相手の攻撃するタイミングを見てから、それを回避すると同時に殴るか、もしくはそれが届くより早く攻撃を叩き込む技。それにより、攻撃に意識を向いているがゆえに防御反応が緩くなった、しかもこっちに勢いよく来ている相手に攻撃を当てることでダメージを増大させる技だ。

 

 つまり、二つの行動を高レベルで複合させるか、相手よりもスピードのあるパンチを入れるかに分けられる。しかも相手が攻撃してくるタイミングを合わせる必要のあるきわめてシビアなタイミングの技だ。

 

 本来受け手にまわるという、戦闘において不利になる立場に身を置く必要だってある。はっきり言ってハイリスクハイリターンの高等テクニックだ。

 

 不良相手の喧嘩なら俺だって普通にできるが、レーティングゲームでは使う気はないぞ。あれはタフネス重視の奴相手に使うべき方法だ。

 

 ゼノヴィアがカウンター使いを力で押し切るといったが、それは確かに真理の一つである。

 

「攻撃反射系の特殊能力を使わない返し技は、敵の攻撃タイミングを瞬時に見切って機先を制することができる、つまり強いほうが弱いやつに使う技。・・・格闘技経験もろくにないお前は普通に先手を取って流れを持っていくことだけ考えてろ。弱者が強者に勝つ方法は先制攻撃による畳みかけだ」

 

 とまあ苦言を言っておくが、まあちょっとは嬉しい気分にはなる。

 

 戦闘について本格的に考えてるからこそのこの意見。成長してるじゃないか。

 

 できの悪い弟がテストで90点取ってきたような気分だ。なんというか、しんみりくるな。

 

「な、なんていうかすいません。私のせいでいろいろとご迷惑を」

 

 俺が渡した保険のネックレスを揺らしながら、アーシアちゃんが申し訳なさそうにしている。

 

 あいてがディオドラなこともあってか、アーシアちゃんがなんていうか恐縮している。

 

 なんていうかこの子も大変だな

 

 そんな感じで肩をすくめているアーシアちゃんを、後ろから部長が抱きしめた。

 

「構うことはないわ、アーシア。私のかわいい妹分に言い寄ってくるのだもの、お仕置きをするのは当然のことよ」

 

「全くだ。人の恋路を邪魔するものは、馬に蹴られるより先に私がデュランダルの錆にしてくれる」

 

「・・・正直ストーカー一歩手前ですね。ちょうどいいですし叩きのめしましょう」

 

「あらあら。久しぶりにじっくりしびれさせることができますのね? 楽しみですわ」

 

 同類意識が共鳴したのか、イッセーラヴァーズが割と本気になっている。

 

 これ確実に勝てる気がしてきたぞ?

 

「僕たちも頑張らないとね。当然力を貸すよ」

 

「ぼ、僕も微力ですがお力になりますぅ」

 

 俺たちの隣に、木場とギャスパーも集まった。

 

 打倒ディオドラを旗印に、オカルト研究部は一つになっている。

 

 ・・・いいだろう。生徒会相手にボコボコにされたことで発生した汚名、アガレス撃破で一気に名を挙げたディオドラをぶちのめすことで返上する!!

 

 そんな俺の意思を感じ取ったのか、部長が不敵な笑みを浮かべて声を挙げた。

 

「さあ、前回のような情けない戦いはもうゴメンだわ。完膚なきまでに叩きのめしてあげなさい!!」

 

「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」

 

 俺たちは転送の輝きに包まれて、レーティングゲーム会場へと転送されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

「どうやら予想通りの展開になったようね。よほど自信があるのか、ただの馬鹿なだけなのか」

 

「あいつらが馬鹿なのは当然だが、それにしても勝算がないわけじゃないだろ。両方だと考えたほうがいいな」

 

『ならば私たちも動くことになりそうですね。・・・そちらのほうは?』

 

『問題ない。第2ポイントから第14ポイントまで万全の体制だ』

 

「んじゃぁそっちはお前らに任せるぜ。イッセーたちは第1ポイントのすぐ近くだから、とにかく真っ先に合流しておけ」

 

『了解しました。・・・それでディオドラのほうは大丈夫なのですか?』

 

「十中八九問題ないと思うがな? あれの性能は今の赤龍帝の鎧とほぼ同等の戦闘能力だぞ? 使い手のスタイルもあって総合力じゃ間違いなく上回る。さらに奥の手の準備も万全だもんな?」

 

「・・・不味いわね」

 

『『「・・・え?」』』

 

「フィールドに細工をされたみたい。接続不良で再起動に時間がかかるわ」

 

『もしよろしければ、私自ら助けに行くが』

 

「あー・・・。一応準備頼むわ。俺も念のため後詰を送る。ちょうど適任が暇しててな」

 

『とりあえず急ぐことにします。全員総出で力押しするのが一番確実に無力化できますから』

 

「んじゃまあそのあたりは任せるぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かかってきやがれ禍の団。返り討ちにしてやるぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 た、たたた大変だぁあああああああああ!!

 

 寄りにもよってアーシアが攫われてディオドラが裏切りで旧魔王派がいっぱいで・・・」

 

「ちょっと落ち着けイッセー!」

 

 後頭部に宮白の手刀が叩き込まれて、俺は我に返った。

 

 にしても普段より威力が弱いし、なんていうか当たり所がおかしいような気がするな。まだ混乱してんのか、俺?

 

「焦ってるのは俺も同じだが、とりあえず冷静になれ。なにが起きたか一から言ってみろ」

 

「あ、ああ、まずはアナウンスが全然ならないと思ったら、いきなり旧魔王派の連中や、例のごとくのドラム缶が群れで登場したんだよな」

 

 真面目な話、両方合わせたら数千ぐらいいそうなものすごい大軍だ。・・・俺たち殺すためにどれだけかき集めてんだよオイ。

 

「で、その次に何が起きた?」

 

「あ、ああ。ディオドラがアーシアちゃんを誘拐したんだよな! しかもあの野郎、禍の団に裏切ってやがった」

 

 あの野郎! もしかして急激なパワーアップっていうのも禍の団が一枚かんでんのか?

 

 卑怯な手段で力を身につけやがって! 絶対にぶっとばしてやる!!

 

「・・・状況を把握したばかりで悪いけど、イッセーくんは早く禁手の準備を! このままだと間違いなく数に呑まれる!!」

 

 聖魔剣を呼び出しながら、木場が大声を張り上げる。

 

 た、確かにこの数を何とかするには俺が禁手になる必要がある。

 

 もちろん宮白の偽聖剣も重要だ。レーティングゲームじゃないんだし、出し惜しみする必要はない!!

 

「やってやろうぜ、宮白!!」

 

「・・・・・・・・・あ、えっと、その」

 

 なぜか宮代がものすごい汗をかいていた。

 

「何をしているの兵夜! 早くこいつらを片付けでアーシアを助けに行かないと!!」

 

 部長に怒鳴られるが、宮白はものすごい言いにくそうにしていた。

 

「と、とりあえずに先に二ついうことがあります」

 

「・・・なんですの? 正直余裕がないので早くいってくださいません?」

 

 怪訝な表情の朱乃さんに促され、宮白はすごい微妙な表情でしゃべりだす。

 

「とりあえずいいお知らせから。・・・アーシアちゃんの体は大丈夫です。少なくとも今からディオドラにどうこうされることはないです。それだけは断言できます」

 

「またなにか作っていたのか。いつものことだが頼りになるね」

 

「さすが宮白先輩です! それなら大丈夫ですね!!」

 

 驚きの発言だったが宮白のことだから信頼できる。ゼノヴィアもギャスパーも疑っていなかった。

 

 そっか、なら焦る必要はない! 俺と宮白でこいつらまとめて―

 

「で、悪いお知らせなんですが。・・・今の俺戦力になりません」

 

 ・・・空気が、凍った。

 

「追加でいうと武器も出せません。いや、アーシアちゃんの誘拐は想定してたんですが同時進行でこんな力押しによる襲撃がくるとは想定してませんでした。・・・マジで申し訳ありません!!」

 

 冷や汗だらだら流しながら、宮白が勢いよく土下座した。

 

「ちょ、ちょちょちょどうするんだよ宮白!? 朱乃さんはともかく、それじゃ木場もブースト出せないだろうが!?」

 

 それってマジでやばいだろうがぁあああああ!!

 

 あれかさばるから宮白が持ってるんだぞ!? 朱乃さんはむしろパワー重視で暴れるタイミングだから必要ないにしても、これはさすがにマズイだろ!?

 

「よくはわからんが好都合だな。・・・偽りの魔王の血族とその眷属よ。真なる魔王をないがしろにした報い、今こそ受けるがいい」

 

 ああ、旧魔王派の方々が魔力ためてきてるよ!?

 

 やっべえまだ禁手の発動まで時間が―

 

「―グングニル」

 

 莫大なエネルギーを、俺たちの視界を覆い尽くした。

 

 そのエネルギーに巻き込まれた悪魔たちは、一瞬で消滅していく。

 

「・・・セラフォルーの妹はまだ来ておらんようじゃの。やれやれ、老骨に仕事を振るとは罰当たりな連中じゃのぅ」

 

 その一撃を放ったのは、以前一度だけみた神様。

 

「・・・オーディンの爺さん!? なんでこんなところに!?」

 

 北欧の神様だとかいうオーディンの爺さんじゃねえか!?

 

「アザゼルの奴に駆り出されての。このレーティングゲームに禍の団が乱入してくることは想定内だったのじゃが、まさかお主らにここまで敵が集中するとは想定外じゃった上、特殊な結界のせいで入れるものが限られとる用での。入れる儂が駆り出されたということじゃ」

 

 この数の悪魔を前にしても平然としながら、爺さんは部長や朱乃さんの体をしげしげと眺める。

 

「とはいえこんな別嬪を生で眺めれるというのなら、まあ面倒なだけではないわい。・・・ほれ、ここは儂が引き受けるからおぬしら外に出ろ。セラフォルーの妹たちが合流のために近づいているはずじゃ」

 

 会長たちが!?

 

 ってことは桜花さんも来てるのか! よっしゃあ助かった!!

 

「ソーナが!? なんでソーナがこんなところに―」

 

「ああ、それは俺の仕込みです。念のために頼んでました」

 

 驚く部長を遮って、宮白が一歩前に出た。

 

 その宮白の姿をみて、オーディンの爺さんはなんというかあきれた表情を浮かべる。

 

「なんじゃお主いたのか? 失敗したわけではないの・・・ああ、礼装とやらが作動不良を起こしたのか」

 

「申し訳ありませんオーディン様。・・・すいませんが術式のほうが誤作動を起こしたので何とかしていただけると非常に助かるのですが」

 

 な、なんだなんだ?

 

 宮白のやつ、一体何したんだ?

 

「まあこれぐらいなら簡単じゃ。すぐ終わるから裏切り者とやらは任せたぞ」

 

「了解しました。・・・よし、これでアーシアちゃんは何とかなる」

 

 おお、何とかなるのか! でもどうやって?

 

 よくわかってない俺たちのほうを見て、宮白は光に包まれながら親指を立てた

 

「んじゃ、アーシアちゃんはよろしくな」

 

 そのまま光は一瞬で強くなり、そして消えたときには―

 

「・・・あれ? イッセーさん?」

 

「アーシアぁあああああああああ!?」

 

 なぜかアーシアがこっちにいる!?

 

 っていうか、宮白どこ行ったぁあああああああああああ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 ふう、一時はどうなることかと思った。

 

「え? ・・・へぶっ!?」

 

 かなりきわどい距離にまで近づいて固まったディオドラの顔面を殴り飛ばしながら、俺はほっと息をついた。

 

 今回アーシアちゃんに渡したのは保険としての身代わり用礼装。

 

 感覚共有の魔術と、悪魔の肉体変性と、さらに認識阻害を兼ね合わせた試作品。一対のネックレスを持っている者同士で肉体の主導権を交換し、姿を惑わすことで完全な身代わりを可能とする施策型だ。

 

 ディオドラが誘拐に来るとするならば、開幕直後の混乱状態だと思ったので用意していたが、テストが間に合わなかったのでバグった時は心臓止まるかと思った。

 

 主神オーディンには感謝しなければならないな。こんど生八つ橋でも送ろう。

 

「ど・・・ど・・・どういうことだ!? アーシアはどこに行った!!」

 

 ようやく立ち直ったディオドラを見下ろしながら、俺は周りを確認する。

 

 ・・・数は眷属フルメンバー。ディオドラを含めると十五人だ。

 

「悪いがアーシアちゃんはまだイッセーのところだ。まさかお前が裏切ってる可能性に気づいてないと思ってたのか? これだからぼんぼんのお坊ちゃまはだめなんだよ。俺を見習ったらどうだオイ?」

 

 俺もたいがい坊ちゃんではあるが、少なくともこいつとは違う。もちろん俺の兄も姉も妹もこいつとは違う。

 

 仲の微妙な連中も多いが、みな己を高めることは忘れない努力形だ。そのうえ俺とは違って天才ぞろいだから始末に負えない。

 

 だがこいつは違う。

 

 歴史ある上級悪魔というのは特訓をあまりしない主義だ。眷属の戦力を強化するならトレードを選択するし、己の才能が自然に高まることを選ぶ。そもそも努力という行為を下等なものたちがするものだと見下しているふしがある。

 

 だが、努力というものはちゃんとかみ合えば必ず成果を出す。

 

 もちろん一位をとる、戦場で生き残るなどといった競争理念が働く方向においては必ずしも成功するとは限らない。だが、その努力と研究によって、人類は空を飛び深海を潜り、月にすら手が届いた。

 

 唯川の流れで丸まるのを待つ石より、磨いた宝石のほうが基本的には美しいのだ。

 

 ・・・ゆえに恐れる必要などどこにもない。

 

「薄汚い下級悪魔の分際で僕の腕をつかんだだけでなく、アーシアのふりをして僕の手に触れるとはね。・・・殺してやるよ! それも全員でじわじわとね!!」

 

 割と本気でマジギレしているところ悪いが、こっちも本気でマジギレしてるんだがな。

 

 ・・・何のためにイッセーたちと合流せずにこんな方法で来てると思ってるんだこの野郎。

 

「18禁調教ゲーム主人公の分際でよく吠える」

 

「・・・なに?」

 

 最初から怪しいとは思っていた。

 

 上級悪魔がアーシアちゃんをもってしても傷跡が残るほどの重傷を負ってアーシアちゃんと出くわすなんてありえない。

 

 そんな事態が起きれば間違いなく護衛がつくはずだ。いくらアーシアちゃんが善良な性格だからって、護衛が止めるに決まっている。

 

 ・・・状況証拠と経験者の証言でほぼ固まった。

 

 だからわざわざ俺一人で出張ってやってるんだろう? こんなのアーシアちゃんに知らせる必要はひとかけらたりとも存在しない。

 

「お前には一矢報いるという心の慰めすら与えん。しゃべる口と記憶を残す脳以外、無事で済むところは何もないと思え!!」

 

 




初手から見事カウンターをぶちかましました。

今回の作戦はアザゼルとソーナも一枚かんでいるので、うっかりの介入はありません。

さて、兵夜によるディオドラフルボッコタイムをお楽しみください!!

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